【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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「聖グロリアーナ、強敵でした……大洗の戦車だと、ほぼ装甲を抜けないのも原因ですけど」
「そうだなぁ……Ⅲ突とM3くらい?Ⅳ号が長砲身のF2になればワンチャンかなぁ……?」


「―――エミさんなら、ダージリンさんのチャーチルの装甲を、どう攻めました?」
「うーん……前面装甲はまず無理。157mmは至近距離でも抜けない。

 ―――なので突撃、と見せかけて車体を滑らせて敵車輛側面で停車、側面の装甲を近距離でぶち抜く、かな……?(ジッサイみぽりんがやってたし。失敗したけど」



―――それは聖グロリアーナとの練習試合直後の、何気ない1コマだったはずで。



【 装填騎兵エミカス IF:小梅ルート ⑭ 】

【 #14 後には退けない戦いです ~『私と一緒に、戦ってくれるかい?』~ 】

 

 

 戦いは、静かに始まった。

お互いに礼の後は粛々と戦車に乗りこみ、起動。エンジン音を響かせて、二輛の戦車がそれぞれ動き出す。

 

 ―――お互い、距離を取るまで照準も合わせることはない。互いに射程の外へ。

 

 そうして十分に距離を取り合った後で

 

「「―――前進!!」」

 

 ―――ふたつは、同時に駆け出した。

 

 

****** Koume → Emi

 

 

 

 ―――どうしてこうなった!?(心の叫び)

 

 

 

 いやほんと、どうしてこうなってしまったのか……?

俺の当初の作戦ではかませ先輩とその取り巻き軍団にまぽりんが倒されそうならまぽりんに加勢してマウスと戦いつつ、まぽりんを適度に消耗、その後にまぽりんを狙撃で撃破。仮にかませ先輩ズが手も足も出なかったとしてもできた隙をついて狙撃してぶっ倒す予定だった。

 が、蓋を開けてみればまぽりんが一人無双ゲープレイヤーやっており、狙撃も偵察も見切られて失敗に終わり、偶発的ラッキーヒットを呼び水にまぽりんと相討ちになるのが限界だったわけで……

 

 

―――赤星さんの行動に至ってはもう予想すらできんかったし(迫真)

 

 

 ただし、何故赤星さんがみぽりんに挑んでいるのか。という予想ならなんとなくついていた。

 

 

―――そう。「俺というラスボスが不在だから」に違いない。

 

 

 物語におけるラスボスというのはその物語を締めるうえで絶対に必要な存在である。例えばドラ●エ。あれで姫を助け出すだけで●王が居なかったらなんか尻切れとんぼな印象を受けるだろう。兎角この手のストーリーモノに関しては、主人公を際立たせるために立ちはだかるラスボス!って感じの存在が必要不可欠なのだ。

 

 ―――ただ、惜しむらくは―――「赤星小梅」では「西住みほ」に比肩できるとは思えないというところ。

 

 それは俺であっても同じことだ。だからこそみぽりんと戦うための下準備を万全にと色々考えてきたのだ。それが全部灰燼と帰したわけで、やっぱり浅知恵で大きな流れに逆らうものではないなぁと再確認してしまったわけだが……。

 

「エミ。君は、後悔していないか?」

「……はい?」

 

 神妙な面持ちでそんなことを言うまぽりんに思わず素で聞き返してしまった。

 

「いや―――君は本当は、みほと戦いたかったのではないか……と、思ったんだ」

「ああ、いや、まぁ……約束、してたんですよ。みほと」

 

 この状況で言うのすごく辛いんだけど言わずにいるのも後でやばい約束の話を口にすると、まぽりんのテンションががくーんと下がった。表情があまり変わらないが落ち込んでいるのがもう手に取るようにわかる。

 

「あー……えっと、大丈夫ですよ?結果はコレでしたけど、どっちみちまほさんを打倒できなきゃ詰んでたと思ってるので、私が止めなきゃなりませんでしたし」

「……そうか」

 

 どうにかこうにかフォローの言葉を絞り出すとぽつりとそう言って再び画面を食い入るように見つめている。

 ―――やや口角が上を向いているように見えるので、多分テンションは持ち直したと思う……きっと(希望的観測)

 

 

 

 ―――なので勝負の最中にP虎で狙撃して倒そうと思ってた計画は墓まで持っていこう(使命感)

 

 

 

****** Emi → Koume

 

 

 

 ―――やっぱり、手強い。

 

 市街地の団地群を駆け回る。建物の合間を縫うように放たれた砲撃が車体をかすめた。

あの間隙を撃ち抜いてくる精度の高さに冷や汗が背を伝うのがわかる。一瞬でも気を抜けない。頭の奥がチリチリと痛むし、集中を切らさないように思考しすぎて頭がどうにかなりそうなほどだ。

 

 ―――でも、楽しい―――!!

 

 自分がここまでついていけていること。今みほさんと戦える程に強くなれたこと。自分の可能性が目に見えて広がっていること

 

 

 

―――ここまでを、みんなで一緒にやって来れたこと。

 

 

 

 スタンプ〈踏〉で操縦手に合図を刻む。減速、旋回、砲塔2時―――

 

「―――撃てッッ!!」

 

 轟音と衝撃が身体を揺らした。みほさんと同じように搭乗口から上半身を乗り出して、常に周囲を見渡しているのだから、身体が揺れる衝撃を必死で抑え込みながら、砲撃の先を見据える。

 

 

 ―――加速、蛇行、直進、右旋回

 

 

途切れることなく合図を送り、目線はティーガーから外さないように―――

 

 

 ふっと、団地の裏側を通り抜けたはずのティーガーが、“視界から消えた”

 

「ッッ!!―――緊急旋回!」

「撃てッッ!!」

 

 

―――ゴゥッッ!!

 

 

 放たれたティーガーの砲撃はしかし私たちを狙ったものではなく、“わたしたちの進路を塞ぐもの”だった。前方の建物の張り出したベランダ部分を砕いた砲撃の余波で、飛散した瓦礫が降り注ぐ。無理やりに突っ切るのならば車内に避難せざるを得ない。

 

 そしてそれは、“団地を隠れ蓑に減速停車して私たちをやり過ごしたティーガーを、さらに見失う”ことに繋がる。

 

「―――急停車して旋回。急いで―――ッッ!!?」

 

減速するⅢ号の背後で―――ティーガーが顎を開いた。

 

「―――撃てッッ!!」

 

 砲弾が放たれる寸前。

 

「―――砲塔旋回!3時!左後方旋回!超信地!!」

 

Ⅲ号はやや左後方へ逃げるように下がりながら、その場でぐるりとスピンし

 

 

―――轟音とともに飛び込んできた砲弾を、“受け流した”。

 

 

 殺しきれなかった衝撃に、団地の壁に激突し、衝撃で全身が悲鳴を上げる。肺の中の空気を一度すべて絞り出され、げほげほと咳き込んで酸素を取り入れた。

 

 

―――運が良かった。二度は不可能だ

 

 

 直感でそう感じた。まず間違いではないだろう。車体も軽く建物にめり込む形で押し込まれたが、次弾装填までにどうにか立て直して路地に逃げ込み

 

「―――――はぁぁぁぁぁぁ…………」

 

 そこで漸く、安堵の息を吐くことができた。

 

 

 

****** Koume → Emi

 

 

 

  マ、ワ、シ、ウ、ケ?(白目)

 

 

 何で?(困惑) いや赤星さんに「強くなったね……」って感じのエエ話的な言い回しで褒めてやりたいところではあるんだ。あるんだけど……

何で戦車で回し受けキメてるの?どうやったらあんなことできんの??みぽりんとか一瞬絶句して攻撃の手を止めちゃってたし。赤星さんチームが気が付かないうちに俺の知ってる戦車道と違うゲームやってるみたいに思えてきて、言葉を失っている俺に

 

「―――避弾経始か。しかし、偶然に近いものだな」

 

 思案するようなポーズでそう呟いているのは隣のまぽりん。え?もしかしてアレできるの?マジで?と思わなくはなかったが、よくよく考えると『戦車道ノススメ』で砲塔旋回させて狙撃を弾いてるシーンがあったなぁとか思い出した。が、納得はできない。なんかしてしまってはいけない気がするから(戦慄)

 

 だがこうして見てるだけの立場になるとこう、何というか……ものすごくもどかしいのと、申し訳ない気持ちが溢れて来る。

 

 赤星さんもみぽりんも、勝利することでしか前に進めないとぶつかり合っている。そのうち“どちらか一方しか”その結果を得ることができない。

 もちろんこれは勝負の世界なのだからそれは当たり前なのだが―――

 

 

「―――あそこに行きたい?」

 

 

 不意に“下から”声を掛けられてビクリとなった。下を見ると車長の席から搭乗口の俺を見上げている会長が「にひひ」と笑っていた。

 

「そりゃ……行きたくないとは言いませんよ。あの場に参加できるものなら参加したい」

 

 そう。それは偽らざる本音だ。あの場に本来居て、みぽりんと死闘を繰り広げるラスボス枠は俺だったのである。赤星さんに代役を務めさせている現状はなんかこう、もにょる。(語彙不足)

 会長は俺の言葉に「そっかそっかー」と何度もうんうん頷いて

 

「―――よっし、言質取ったよー。よっろしくー♪」

 

 

そう会長が言うと同時に―――

 

 

「「はーい」」

「ほら、さっさと行くわよ!天翔さん!!」

「うわわぁぁぁぁっっっ!!!??」

 

 

 路地の影からかっとんできたルノーB1が横付けし、不意を打たれた俺を車内に引きずり込んでいた。

 

「んじゃ、カモさん。“車輛メンバーの回収”ご苦労さん」

 

 ひらひらと手を振る会長を置き去りにして、ルノーはその場から全速で離脱していく。そうして周囲のパンターやティーガーを片付けた運営がヘッツァーとティーガーⅠの撤去にかかると

 

「どーもどーも。大洗カメさんチームヘッツァー、乗員“3名”、全員いまーす」

「……黒森峰、ティーガーⅠ。乗員5名全員揃っています」

 

 

 二組のチームはそう言って退場したのだった。

 

 

 

*******

 

 

 

「ちょっとこれ大丈夫なの!?」

 

 一方でルノーに誘拐された俺は、全速力で現場を離脱する戦車の中でそど子に叫んでいた。

 

「ルール上、乗員の戦車乗り換えは問題ないわ」

「いや、撃破された車輛から乗員が乗り換えるとか(原作でも)聞いたことないんだけど!?」

「構わないわ!だってそもそも天翔さんはヘッツァーの乗員として登録されてないし!!」

 

 

なにそれきいてない(素)

 

 

「こういうルールの穴を付くのってすごーくイヤなんだけど……今回だけ特別よ。学園艦の未来とかかかってるし……非常事態だし」

 

 そらそうだろう。自他ともにルールに厳しいタイプのそど子ちゃんがこんなルールぎりぎりセーフなとこをタイトロープしてるのはストレスだろうとも。学園艦廃艦って理由がずっしりと全員の肩に圧し掛かってるのだろう。

 

―――その辺深く考えると決勝戦をみぽりんのフラグイベント扱いしてる俺、酷くない?って考えに至るので無意識に見ないふりしてた部分はある。

 

「もう少しで合流できるわ」

「合流……?」

 

え?ルノーで行くんじゃないのん?どういう事?頭がハテナマーク状態の俺を置き去りに走っていったルノーが減速する。搭乗口から押し出された俺の前に

 

 

 

「―――お待ちしておりました!」

 

 

 

*******  Emi → Koume

 

 

 「―――ハァ―――ハァ―――ハァ―――ハァ―――」

 

呼吸を一定に。思考を冷静に―――左。旋回、遅い、信地旋回!!

 

ギャリィ!!と地面を噛み軋ませて車体が滑り、すぐ傍を砲弾が通過した。

 

 ―――頭が痛い。眼の奥には針が刺さったようで、耳鳴りも酷い。

 

 今どれだけの時間戦ったのだろう?5分?10分?もっと長く?

もう限界だと脳が悲鳴を上げる。ギリギリと軋む頭を、ガツンと殴りつけた。脳が揺れて少し視界がブレる。

 

 けど、まだ戦える―――!!!

 

 まだ全部出しきってない。まだ何も見つかってない。まだ何も届いていない。

 

 

 

 ―――まだあの人の背中にだって手が届かない―――!!

 

 

 

 けれど私の想いとは裏腹に、限界を超えた思考は緩やかで

 

 

「―――撃てッッ!!」

 

そんな、みほさんの下令と同時に、こちらに向けられた砲塔が火を噴いて―――

 

 

 

 ―――ゴゥンッッッッ!!!

「「「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」」」

 

 

―――横から飛び込んできたルノーB1が身代わりになって吹き飛んで転がった。そして、それに続くように滑り込んだ見慣れたシルエットの戦車がⅢ号戦車を背中に、ティーガーに向けて立ちはだかり

 

 

「―――そど子ぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 

 搭乗口から覗く車長と思しき人物が、とても慌てていた。

 

 

『こちらカモさん!行動不能!あとは任せたわよ!!負けたら化けて出てやるんだからぁ!!』

 

 

 通信機から怒鳴り声が響く。どうやらルノーのメンバーは無事のようだった。

私は改めて、目の前の戦車を見る。Ⅳ号戦車の上から両腕で搭乗口の縁を掴んで平行棒の要領で身体を支えている小さな影。よいしょっと身体を腕だけで跳ね上げて搭乗口の上に仁王立ちする姿は、体格よりもより大きく見えた。

 

 

「―――待たせたなぁ!!みほォ!!!」

「待ったよー!!無事だったんだねーエミちゃーん!!」

 

 

 お互いに声を張り上げて軽快に挨拶を交わし合っている。その様子を見て、独り言ちる。“ああ、終わったんだなぁ”と。

 私とみほさんの勝負はここで終わり。後はエミさんとみほさんが約束を果たして最後の決着をつけるのだろう。それは少しだけ寂しくて、けれど約束を果たす二人の様子は喜ばしいもので―――

 

「―――約束は守らなきゃいけないものな!」

「そうだね―――約束は大事だもの!!」

 

 

 

「―――じゃあ2対1だけど―――卑怯とは言うまいね?」

「“全力で”って言ったよ!私は!!」

 

 

 ニッと笑うエミさんに、微笑みで返すみほさん。そうしてエミさんが私を振り返る。やや南中を越えた太陽が、下から見上げる私からでは、エミさんを後ろから照らすように見えた。

 

 

 

「そういう事になったんだけど―――私と一緒に、戦ってくれるかい?

 

 

   ―――赤星さん」

 

 

 そっと手を伸ばして問いかけるその姿に、私は

 

 

「―――こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 

搭乗口から飛び出して、その手を取った。

 

 

 

 

 いつかと同じ言葉で。今度は、対等の高さで――――。

 

 

 

 

 

 

*** Koume → Emi

 

 

 何やってんだそど子ォォォォォォーーーー!?(内心)

 

 

吹っ飛んだんですけど!?軽快に飛び込んでった直後に砲撃受けて吹っ飛んだんですけど!?大丈夫なの!?そど子大丈夫なの!?(焦り)

 

『こちらカモさん!行動不能!あとは任せたわよ!!』

 

 どうやら大丈夫なようで何よりだ、後で(会長に)お説教してもらおう(確信)

そんでみぽりんとお話タイム。若干の冗談を交えつつ、赤星さんを少しだけ休ませる。時間にして僅かなものだけど、雀の涙くらいは思考が休まったと思いたい。

 

 

―――なにせ赤星さんはこの戦いのキーマンなのだ。欠くわけにはいかない。

 

 

「そういう事になったんだけど―――私と一緒に、戦ってくれるかい?」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

俺の手を赤星さんが取り、チームが成立。

 

 さぁ正念場だぞ天翔エミよぉ―――ここからが本当に、正念場だ……!!

 

【みぽりんとの決着をつけ、きちんと敗北してみぽりんの一歩を見守る】

【赤星さんを勝利させ、赤星さんとチーム赤星の復帰第一歩を踏み出させる】

 

 

―――両方やらなくちゃいけないのが原作ルートを改変した俺の辛いところだ。覚悟は良いか?俺は出来てる(パッショーネ感)

 

 

 

 

 若干の回復時間を得たとは言え、まだまだ赤星さんの状況はグロッキーに近い。Ⅲ号戦車もところどころに被弾痕を残していて満身創痍。一方でⅣ号はほぼほぼ無傷である。が、何しろ車長の席に座っているのが俺という致命的な状況。長期戦になればなるほどこちらが不利になると言えた。

 

 

 ―――つまるところ、勝負を決定するのは一瞬。一撃勝負というやつだ。

 

 

 みぽりんもその辺りは分かっているのだろう。ニコニコとしているがこちらの射程に入ることなくじんわりと微速前進している。今更ながら軍神を敵に回した恐ろしさというモノを背中にひしひしと感じていたりする。にこやかに微笑んでいるだけなのにみぽりんからのプレッシャーが半端ない件(迫真)

 

 とはいえ、じっとしてたらいい的なので、動き出すことにする。

 

「あんこうチーム。急増の車長だけど、よろしく」

「大丈夫!エミりんならどんな状況でも、問題ないない!」

 

武部殿の根拠レスだが強い励ましを受け、

 

「砲手は任せて下さい。」

「天翔殿ほどではありませんが、不肖秋山優花里!装填は途切れさせません!」

 

五十鈴殿の優しい声と、秋山殿の使命感に燃える声に後押しされ、

 

「―――相手が西住さんなら、かなりキツめに行くぞ。

 

   ―――エミには恩がある。操縦(こっち)は任せろ」

 

冷泉殿の男前な言葉に支えられて車長としてⅣ号に乗車してる俺。こんなんピロシキ不可避じゃない?アカンことない?

 

 

 

 

―――うん。試合終わったら暫く試合ないだろうし、腕一本へし折ろう(使命感)

 

 

 

 

 

「それじゃ、行こうか赤星さん」

「はいっ!!」

 

 

 俺と赤星さんの準備が整ったのを見て、みぽりんもゆっくりと臨戦態勢に入った。さっきまでと変わらない柔らかい微笑みの中、瞳だけが闘志に燃えてメラメラと滾っていた。

 

 

「「「Panzer Vor!!!」」」

 

 

市街地に三者三様の“戦車前進”が響き渡った。

 

 

 




「―――そう。やっぱり最後を持っていくのね。天翔エミ」

いつの間にやら平静を取り戻していたダージリンが冷めてしまった紅茶を一口。
隣で慌てていたオレンジペコも胸をなでおろしていた。

「かたや満身創痍と言っていいダメージのⅢ号戦車。多少なりとダメージを負っているとはいえティーガーⅠ相手では置物にすらなるかどうか……」

状況を告げるオレンジペコの言葉に、ダージリンの瞳が、口元が、少しだけ愉しそうに緩やかな弧を描く。

「―――雨垂れ石を穿つ。努力と研鑽の日々は、無駄に終わることなどありはしないわ。
 ねぇ?赤星小梅さん―――」
「『漢書』の一節ですね」

オレンジペコの言葉に「よくできました」とばかりに微笑んだダージリンは再び電光掲示板を見つめる。


「まぁ―――お楽しみはこの試合の後なのですけど」

ダージリンの小さな呟きは、誰にも届かず消えた。
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