【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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――西住流宗家 西住家

 西住流一門衆、及び分家たちが今、一同に介していた。

 上座に座するのは西住流次期家元と目される師範、西住しほ。

対して下座で対峙するのは、今しも斬首に処される罪人の面持ちで平伏する一人の女性。別に彼女自身が悪いわけではない。むしろ彼女自身は被害者と言えた。
 彼女は西住流に対して真摯であったし、西住流の発展に対しても尽力していた。強いて彼女の間違いを上げるのであれば

 ―――娘の教育を間違えた。ただそれだけである。

 決勝戦の現地からリアルタイムで送られてくる映像に、はっきりと映し出される『クーデター』の様子。そしてそれを鎮圧する西住まほの様子。黒森峰OGの西住流派閥が肝煎りで押し込んできた超重戦車マウスが、逆に黒森峰を襲う脅威となる姿と、圧倒的な数の差を意にも介さず西住流らしく蹂躙する西住まほの姿。

「―――顔を上げなさい」

 しほの言葉にも平伏したままの女性に、普段通りの無表情のまましほは嘆息する。

「―――この度の“反乱”ですが……事前に情報が流れていました」

 ざわりと周囲の分家たちが騒ぎ出す。大なり小なり西住流の人間として黒森峰に圧をかけたり影響を及ぼしてきた者たちは少なくはない。それが西住しほを追い落とすためのちょっかいである派閥だって存在する。
 では誰がその情報をしほにリークしたというのか―――?

「―――我々は、考え、改める分岐点に居るのです」

 しほはそこで一拍言葉を区切り、画面の方へ視線を送る。
画面の向こうでは、件のまほが指揮するティーガーⅠと、大洗のヘッツァーとの戦闘が終了したところだった。画面が切り替わり、黒森峰フラッグのティーガーⅠと、大洗車輛のⅢ号J型が対峙している状況を映し出す。

 天翔エミと、赤星小梅。ともに黒森峰を出て行った二人が、黒森峰に牙を剥き、今まさに首元に突き立てようとしている。

「これは我々の姿です。愚かな我々の、未来の姿です」

 しほの言葉に周囲がしんと静まり返った。平伏していた女性が顔を上げ、しほと視線を交わらせる。

「―――変わらなければ、近い未来、この光景が西住流そのものになるでしょう

 ―――故に、変えなければなりません。我々の世代で」




【 装填騎兵エミカス IF:小梅ルート ⑮ 】

 【#15 最後の決戦です! ~『 よォ、黒幕 』~ 】

 

 

 

*** Miho

 

 

 

 ―――やっぱりエミちゃんはすごいなぁ。と、再確認してしまう。

 

 複数の被弾痕を残し、さっきまで戦闘し続けていたⅢ号の動きは明らかに鈍くて、ところどころに隙ができ始めている。そのタイミングを狙って照準を合わせようと思うと射線を隠すようにⅣ号が邪魔をしてくる。時に砲撃で、時に車輛そのもので、時には、あからさまに隙を見せてこっちの視線を誘導してくる。

 

 それを“ごく自然に”やってのけている。不自然さもなく、露骨な隙を見せることで私たちからⅢ号戦車を、赤星さんを護っている。

 

「―――目移りしてたらダメってことだよね」

 

 うん。これはきっとエミちゃんからの挑戦状だ。露骨すぎる隙に目移りしていれば、いくら満身創痍のⅢ号であっても私たちを食い破る牙に成りえるということ。

 

「……スパルタだなぁ」

 

 なんだか少しだけおかしくて、クスッと笑ってしまった。Ⅳ号の搭乗口からこっちに顔を向けているエミちゃんと視線が合った。口ほどにものを言うと言われてはいるけれど、その目から何を言いたいのかは読み取れなかった。

 

 

 

****** Miho → Emi

 

 

 

 ―――みぽりん、こわいです。

 

 2対1でやり合ってるというのに有利な気が1つもしない。だって軍神だもの(迫真)。相手は軍神西住みほである。不利な状況になっても心折れることなく勝利の糸口を必死で探し、一縷の望みにオールインできる胆力を持ち、その胆力と西住流で磨いた腕前でどんな状況でも勝利をもぎ取ってきた傑物なのだ。

 こいつに勝利出来た存在が今のところダージリンしかいない時点でみぽりんの主人公補正を無効化するダージリンの恐ろしさを感じなくもない。でもダージリンだしなぁ……

 

 ―――話がそれたが、みぽりんマジみぽりん。

 

 もうね、一寸先は闇どころか奈落。ゴルゴを相手にワンミスで即死というクソゲーなFPSをプレイしている気分である。

 改めて言うまでもないんだが俺は車長の才能がない。からっきしと言っていい。

だというのにあんこうチームのみんなは車長の席に俺を座らせている上、信頼という見えないパワーで支えてくれているのである。このままだとどう考えても車輛の性能を生かすことなくぶっ潰されて終わりなので―――

 

 俺が決めて冷泉殿に下した指令は2つ

 

・冷泉さんの判断で行動していい。

・Ⅲ号が隙を見せたら合図をする

 

 これにより「赤星さんの判断が鈍ったタイミングで合図を送ると、状況に応じて冷泉殿が自己判断で隙を見せたり射線を遮ったりしてくれる」というモノだ。

自分で指示を組み立てて、それから合図を送って冷泉殿を動かしてると確実に間に合わないので、冷泉殿の天才さに全幅の信頼を寄せてお願いしてみた。

 「いいのか?」と聞かれたので「ええんやで」という言葉をオブラートで包んで返事すると、いつもの眠たげな目で「わかった、まかせろ」と男前なお返事をしてくれた。どの道俺の考えなんぞサルの浅知恵以下にしかならん。ならその方面の熟練者に全振りするだけだ。

 

 

 

****** Emi → Others

 

 

 

「―――いいのか?」

 

 天翔エミの言葉に、冷泉麻子は思わずそう聞き返していた。

 本気で戦う約束をした相手との大切な勝負。その総指揮に於いて、操縦のタイミングを操縦手に全て委ねる。それはいわば車長が置物に変わると言っても過言ではないものである。

 

「私は車長としての適性は最悪なんでね。どっかのたわけ様とかと同レベルかそれ以下か……まぁとにかく車長にだけは絶対置いてはいけないタイプなんで」

「そこまで卑下するものでもないと思うが……」

 

 たわけ様というのが何を意味するのか麻子にはわからなかったが、エミが自分自身の能力を低く見積もっているのは理解できた。

 

「それに元々4人で完結してたんだから、私がいきなり入ってあれやこれや言うのはノイズにしかならないだろうし」

 

 エミの言葉も何も、勝利を目指すとしては正しい。しかし、真剣勝負に於いて対戦相手の方を見ていないようにも見えた。そしてそれは、あんこうメンバー全員に、ある一つの理由を想起させる。

 

「―――それはやはり、私たちのせいですか?」

 

 砲撃を控えていたため手が空いていた五十鈴華の言葉に、やや重い沈黙が車内を満たす。外では砲撃が飛び交い、そのたびに車体を揺らして回避運動を取っているにもかかわらず、揺れる車輛に慣れた彼女たちにとってはあまり平静と変わらなかった。

 

「そうじゃないって言えばウソになるけど、それだけでもないな」

「じゃあ、何で―――」

 

 武部沙織の言葉に、エミはニッと笑う。

 

 

「そりゃ当然―――自分のためだよ」

 

 

 一瞬強く車体が跳ねた。砲撃を避けるために急激なS字旋回を行ったためエミの小さい体が左右に揺れる。それを上部ハッチに繋がる梯子に片手一本でぶら下がるようにして支えて、エミは続ける。

 

「私たちはさ、負けられないだろ?背負ってるモノがあるんだ」

「天翔殿……」

「それにみほも言ってたじゃないか、『お互い全部出しきって、全力で勝負しよう』って。だったら私は、誰に引け目を感じることもなく胸を張ってやるさ

 ―――『これが私の今できる本気で全力だ』ってね」

「―――はい!おっしゃる通りです!」

 

 砲弾を抱える両手をぎゅっと強く握りしめ、秋山優花里はエミを見上げるようにして力強く返し、敬礼する。

 

「私たちが天翔殿の力となるのであれば、十全にお使いください!天翔殿にも、赤星殿にも、私たちは皆感謝しているであります」

「ありがとう秋山さん、そんじゃこれから説明するよ。私の考えた作戦。―――みほ風に言うなら

 

  “とりかえっこ作戦”だ」

 

 

 

******

 

 

 

 散発的に攻撃を繰り返す二つの車輛に攻撃時の連携の浅さを感じて、西住みほは思わず周囲を見回していた。彼女が感じた脅威は「車輛に天翔エミが乗っていない」可能性を考えてしまったことにある。

 エミについて、みほが下した評価は「既存の戦術と同じ枠組みで考えて居たらいけない相手」である。エミに関しては通常、何をやってきたとしてもおかしくない相手として認識していた。

 

 将棋に例えるならば彼女は桂馬だ。特殊な動きをするから素人は使いどころに苦心するが、使いどころを間違えなければ王の首元に刃を突き立てることだってできる。

 

 油断などしてはいない。さっきまでの赤星小梅との戦闘での疲労はあるが、まだ十全に周囲にピンと索敵の目を張り巡らせるだけの余力は残っていた。そしてそれも『継戦能力のないあちら側の2輛が、こちらの疲労をより蓄積させるための作戦』であることも理解している。だがそれに乗らなければ、幻影の刃は本物になって自分の首を刎ねに来ることもまた事実だと理解していた。

 敵に回すと本当に面倒な相手になるのだなとみほは思考の端で独り言ちる。目の前では二手に分かれた車輛が大きな団地の裏手に、左右から回り込むところだった。

 

 

「―――止まって」

 

 

ガリガリと履帯が地面をひっかいて車輛を引き留める。団地の裏側に回り込んだ二人を追いかけることはしない。回り込んだとたんに合流した2輛から鴨撃ちされるのは明白だった。

 しかし、待てども裏側から出て来る気配がない。エンジン音は続いているので完全停車して機をうかがっているわけではないのだろう。順当に考えるのであれば、シザーススイッチで交差した2輛が左右逆に飛び出るためのタイミングを計っているのだろうが―――

 

「―――フェイント、かな」

 

 みほは周囲の建物の壁やベランダに注意を払いながら、ぽつりとそう呟いた。

左右から入ってスイッチ、左右から飛び出して攻勢―――と見せかけて、団地裏手で方向転換。そのままの位置で飛び出してきて、Ⅳ号を狙っている自分にⅢ号を囮にⅣ号で止めを刺しに来る。

 

 

―――だったら

 

 

「榴弾装填!右30度、撃てッッ!!」

 

 

ガオンッ!と轟音を立ててティーガーの砲が火を噴き、団地の一部を吹き飛ばした。ガラガラと音を立てて崩れ落ちる瓦礫に、団地の裏手に通じる道のひとつが封鎖される。

 

 

―――だったら、片道を塞いでしまえばいい。これで出てくる場所は絞り込めた。

 

 

 みほは静かに、エミと小梅が飛び出て来るまでを待ち続けた。

 

 

****** 

 

 

―――ゴゥンッッ!!

 

 団地の間の道を砲撃が吹き飛ばした。巻き上がった粉塵で塞がれた視界を突っ切り、Ⅲ号J型が飛び出してくる。

 

「―――来たッ」

 

静かに照準を合わせ、迎撃姿勢を取るみほ。そのⅢ号の後ろ、影に隠れるようにしてⅣ号が続く。

 

 

「―――撃てっ!!」

 

 

 轟音を立てて飛び出した砲弾が、Ⅲ号の履帯を吹き飛ばした。衝撃で錐揉みながら回転し、砲撃があらぬ方向へと飛び出し、団地前の花壇に乗り上げる形で漸く止まった。

 その間にも、Ⅳ号は動いていた。ドリフトでもするように全速力で車体を振って、大きく円を描く動きで側面へと回り込もうとする。しかし

 

「―――きっと、そう来ると思ってたよ」

 

ティーガーは前進しつつ砲塔を旋回、白旗の上がっていないⅢ号が自分を狙っているのをしっかりと確認していた。互いの砲塔は互いの必殺の距離で照準を真芯に捉えている。が、先ほど砲撃したⅢ号よりもこちらの装填速度が上。

 Ⅲ号を沈黙させ、返す刃で相手の砲撃を躱し、追撃でⅣ号も叩く。みほの中で方程式が出来上がっていた。Ⅲ号を盾に、囮に使った最後の一撃もこれで―――

 

 

 

―――Ⅲ号を盾にⅣ号で突撃?あのエミちゃんが?

 

 

 

ありえない。あるはずがない。

 

 

 

 瞬時に思考を切って捨てる。天翔エミに赤星小梅を切り捨ててでも得る勝利などはない。ならばⅢ号を盾に囮にする意味は―――

 

 

―――ゾクリと、背筋に走った予感にみほはスロートマイクに向かって叫ぶ

 

 

「―――装填急いで!すぐに砲撃をk―――」

「―――撃てッッ!!!」

 

 

 時間にして僅か“3秒未満”、その刹那の間に装填を終えたⅢ号の砲撃で、ティーガーⅠが転輪部分を吹き飛ばされ、足を止める。

やや遅れて放たれた砲撃は、今度こそⅢ号に白旗を挙げさせた―――だが

 

 

「―――終わりです」

 

 

 足を撃ち抜かれ動けないティーガーの側部に回り込んだⅣ号の至近距離からの砲撃で、周囲が煙幕に包まれ何も見えない状況が続き―――

 

 

―――皆が見守る中、白旗が揚がったティーガーⅠを前に、“Ⅳ号戦車から顔を出した赤星小梅”は、“Ⅲ号戦車の装填席から顔を出した天翔エミ”と、ぐっと拳を向け合うハンドサインで勝利を彩るのだった。

 

 

“黒森峰フラッグ車、走行不能!よって、大洗女子の勝利―――!!!”

 

 

 

****** Others → Emi

 

 

 

 計 画 通 り !!(夜神スマイル)

 

 

 団地の裏手に移動したⅣ号とⅢ号から俺と赤星さんがそれぞれ移動、互いの戦車を乗り換える。Ⅳ号車長には赤星さん。Ⅲ号車長には装填手に座ってたモブ子さん(仮)が乗り込み、俺は代わりに装填席へ。

 はっきり言うと俺の乗るⅢ号は捨て駒だ。みぽりんの足を止めるため、みぽりんの砲撃の的になるため、ただそのためだけに死にに行く。そうしてできたかけがえのない時間を使って、赤星さんがⅣ号、あんこうチームと一緒にみぽりんのティーガーの側面、行けるようなら背面まで回り込み、一撃で貫く。シンプルな作戦と言えた。

 履帯をフッ飛ばされて片輪だけで錐揉みした結果、運よく花壇にぶっこんでみぽりんの方を向いていたのは僥倖だった。みほエリ神の加護と言えよう(偶像崇拝)

 2方向からの攻撃を受けるとき、移動する攻撃を躱すために軸移動を行うし、軸移動を行いながらの不確実な砲撃で移動する目標を攻撃するよりは、相手が移動していない目標を狙う。これは自明の理である。

そこに誤算があるとすれば、止まっている車輛ならば高校生でも屈指の速度で装填ができる俺という存在がⅢ号に乗っていたことと―――

 

 ―――赤星小梅、天翔エミという名前に気を取られて、同じ時間を練習に費やしてきた砲手の少女を、モブと意識外に置いていたことだろう。

 

 結果、俺はⅢ号でみぽりんに討ち取られ赤星さんはみぽりんに勝利する。二人とも勝利条件を達成し、かつ大洗が勝利したので廃校フラグもへし折った。

 正に完全勝利!栄光のロードは目の前に!!!

 

「ごめんね。貧乏くじ引かせちゃってさ」

「いいえ、天翔さんにやっと恩が返せますから……!」

 

 赤星さんの勝利のために巻き込んでしまったにもかかわらず健気にもそんな風に言われると罪悪感を感じざるを得ない。モブさんだけど俺の人生の終末(ピロ)式ノートにPPを加算しておこう(使命感)

 

 ともあれ、後は表彰式だ。夕日をバックに優勝旗を掲げる赤星さん、良いねぇ絶対絵になるねぇ。もしもそれがみほエリであったならば俺はそのまま尊すぎて死んでいただろう(確信)

 

 

 

****** Emi → Koume

 

 

 

 戦車を乗り換える。

エミさんの言葉であっても、最初私は躊躇していた。団地の大きな建物の裏で降車して作戦を説明される。けれど、軽々しく承服できない気持ちがあった。

 

 だって彼女たちは一緒に頑張ってきた。決勝戦にこの車輛()を連れてきてくれた。その彼女たちを捨て駒にして、私だけが―――

 

「―――行ってきなよ」

 

 私を送り出したのは、Ⅲ号のメンバーだった。私の背中を押して、Ⅳ号の方へ

 

「私たちの分まで、託したから」

「貴女と天翔さんが居なかったら、私たちはここにいなかったから」

 

背中に手が添えられている。見えない手が添えられている。

 

「「「「―――行ってらっしゃい」」」」

「―――いって、きます」

 

 4人分に見送られて、Ⅳ号に乗り込んだ。最後の勝負。本当の、本当の意味での正念場。ギリギリまで悟られないように、車両の中で、顔を出すことは禁止―――

 

―――膝が震える。失敗したときの光景(ビジョン)がどうしようもなく脳裏に広がる。怖い。怖い―――

 

 

―――そっと、膝の上の手に手が重ねられた。

 

「大丈夫です。天翔殿も、みなさんもついています」

「―――約束します。皆さんの想いも、最後の一撃に乗せて撃ちます」

 

秋山優花里さん、五十鈴華さん。

 

「きっと大丈夫だよ!コウメちゃんも、エミりんも、頑張ってきたんだもん!」

「……操縦は任せろ。履帯が切れようと、目的の場所まで送り届けてやる」

 

武部沙織さん、冷泉麻子さん。

 

 私の背中を、肩を、たくさんの手が後押ししてくれていた。これまでも、これからも、手を引いてくれる人がいて、背中を押してくれる人がいて、私は歩いていける。歩みを止めても、立ち止まってくれる人がいる。その人のために、また歩ける。

 

『準備いいかな?赤星さん。

 

 ―――【約束】だ。私とⅢ号に何があっても、絶対に足を止めるな』

 

エミさんの言葉に、私は―――

 

「はい!赤星小梅、いつでも行けます!!」

 

今この瞬間だけは、たとえ相手が誰であっても負ける気なんて欠片もしなかった。

 

 

 




*** Koume → Emi

「―――やっぱりエミちゃんはすごいね」
「私の力なんて大したことはないよ。私はほら、装填(これ)以外取り柄のない女なんだから」

 試合後の撤去作業。試合で倒壊した、破損した市街地の状況などを確認したり、戦車を回収したりで運営が走り回る中、大洗・黒森峰両学園のメンバーはこの後の優勝旗授与のためにクールダウンに入っている。

「それじゃ、私はそろそろ行くね」
「ああ、エリカにもよろしく頼むよ」

 エリカは完全にへそを曲げてしまっているのか会いに来ようとしていない。或いは俺が謝りに行くべきなのかもしれない。土下座の準備は万全か?俺は(覚悟が)できてる。一人になって、ぼんやりと何をするでもなく空を見上げて考える。


 思えば―――最初から、違和感しかない展開ではあった。


ゆっくりと、土の地面を歩く足音がする。


 ―――みぽりんとエリカの情報量の違い、まぽりんと示し合わせた会長の会話。


静かに忍び寄る蛇のように、音を極力なくしたまま、歩み寄る者がいる。


 ―――例えば、全ての盤面を俯瞰して動かしていたものがいるとしたら……?


数歩後ろで立ち止まり、悠然と微笑みを浮かべ―――




「―――よぉ、黒幕」
「あら?やっと気づいたのかしら?」



 俺の後ろにやってきた黒幕は、トレードマークのカップとソーサーを手に優雅に微笑んでいた。
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