【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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新規時空なので実質初投稿です(強弁)


【 装填騎兵 エミカスF(フライング) 】
【 プロローグ 】


「―――まだ戦車道を続けているとは思わなかった」

「お姉ちゃん―――」

 

 みほを見下ろす無機質な瞳に、同じテーブルに着いている全員が何も言えないでいた。西住みほと、西住まほ。二人の間に何があったのかを正しく類推できる人間は、きっとこの場には―――

 

 

―――俺しかいないだろう。

 

 

「―――行きましょう、隊長」

 

 後ろから先を促すエリカに押されるようにして、まぽりんが別のテーブルに向かって歩いていく。

 俺と、おそらくみぽりんくらいだろう―――“たぶん何をどう言えばいいかわからず店員におまかせ状態で奥の席に持っていかれたのだろう”という事実を推測できるメンバーは。

 去り際に二人ともがこちらをちらりと振り向いて視線を投げた。

 

 エリカはみぽりんに、まぽりんは―――――俺に。

 

視線の意図までは分からない。まぁ多分みぽりんに声を掛けた結果俺に声をかけそびれてしまって気まずかったとかそういうのだと思う。

 

「―――ごめんね。まほは何て言うか―――言葉が足りないから」

 

代わりに席を立って頭を下げる俺。なんか逆に卓上のテンションがさらに下がった件……。

 

「えっと……みぽりんのお姉さん、なんですよね?あの人。エミりん先輩とも、何か関係が?」

 

武部殿の、おずおずと軽く挙手しながらの問いかけに、ちょっとだけ悩んで、

 

「―――まぁ、何て言うか……

 

 ―――まほが許していてくれるのなら、戦友だと思ってるよ」

 

 

 俺こと、“天翔エミ(原作にいないモブ)”は、それだけ応えて苦笑いするしかなかった。

 

 

―――いや本当。まぽりんの内面が視線からだとわからんのよ……言語フィルターはできるようになったから、声に出してお願いします(懇願)

 

 

 

  【 装填騎兵エミカスF(フライング) 】

 

 

『 プロローグ ~ 転生者は無条件で原作主人公と同級生だと思ってた時期が、俺にもありました ~』

 

 

 

***** JK → JC

 

 

 

 ――月――日

 

 転生して12年の歳月が流れ、俺は今日、黒森峰女学園の門をくぐることになる。

思えば辛く険しい道のりだった―――戦車道の本場であり乗員10万人を超える学園艦であり、そして屈指のマンモス校であるここ黒森峰は、戦車道の実力だけでなく、相応の学力をも必要とする―――この学園、実質西住流の傘下で次代の西住流を育成する場所と言っても過言ではないらしいからなぁ……そら学力や礼法も相応に必要だろう。知らなかった俺がその辺りを知ったのは2年ほど前で、慌てて礼法の勉強とかやりはじめたんだったか―――孤児院育ちには辛すぎる勉強地獄だった……。

 

 

 

 ともあれ、入学してしまえばこちらのもの。俺のスクールライフが幕を開けるのだ!

 

 

 

 さて、あらためて自身の目的を脳内で展開して、今後の方針を打ち立てていく。

 

・まず、みぽりん。西住みほと早期に接触する。できれば同じ校舎(クラス)、同じ寮内がベター。ただし同じ部屋で共同生活とか胃が捩じ切れる未来が見えるので消極的却下。

 

・次いで逸見エリカ。彼女にも接触して、二人の間を取り持つための下準備が必要―――できればエリカかみぽりん、どちらかの戦車に乗り込んで一緒に戦車道をする程度の仲に収まりたい。

 

・そして原作におけるターニングポイント、“プラウダとの決勝における事故”。ここでみぽりんの身代わりとなり、乗員を救出しなければならない。

 

・最終的にみぽりんとエリカの未来を作り上げる。そのためにこの人生を捧げてきたと言っても過言ではない。まだ12年だが今後も捧げる予定なので捧げてきたと宣言する。

 

 本日、俺は桜の舞い散る道を征き―――俺の戦車道人生の幕開けとなる、黒森峰の門をくぐった―――。

 

 

 

 

「貴女も新入生?私も今年から黒森峰(ここ)に通うことになっているの。よろしくね」

 

 

 

 

――――――――あるぇぇぇ??

 

 

 

 どっかで見たことある人がいるんですけど?今年から通うとかいってるんですけど?

 

 

 どういう事?これどういう事?

 

 

 

 誰か説明して(懇願)

 

 

 

 

――月――日

 

 

 やはりまぽりんだった(失意)

俺はどうやらみぽりんやエリカとは一年の差をつけて黒森峰に入学してしまったらしい。つまり向こう一年の間はみほエリの兆しも何もあったもんじゃねぇということ。失望しました。那珂ちゃんのファン(なってないけど)やめます。

 しばらくの間放心状態だった俺。自分の振り分けられたクラスを右から左に受け流し、フラフラとした足取りで自分のクラスへと向かう。俺の半端なく小柄な体型も相まって周りからの視線が凄い(悪い意味で)。

『プラウダ戦記』だの原作の黒森峰のみぽりんへの陰湿な雰囲気イジメだのを鑑みると、5連覇中の黒森峰の内部は多分緩やかに腐っていっているか割と最初から腐ってたかのどっちかだろう。そう考えると俺が一年早く生まれてみぽりんよりも年上になった理由は火を見るよりも明らかと言える―――。

 

 

―――神は言っている。『未だ(みほエリの)運命ではない』と―――

 

 

 俺がこの学年に生まれた理由はきっと。みほエリの土台を整えるための準備期間なのだ―――!!そう考えると活力が再びみなぎって来る。

 俺はまだ昇り始めたばかりだからよ―――この果てしなく長い百合道(みほエリ)坂を―――!

 

 

 

 

 ――月――日

 

 まぽりんと同じクラスになりました。これもまた一つのチャンスタイムと言える。俺という存在をアッピル()し、レギュラーの座を手に入れる機会である。

 

 ―――と、思っていた時期が俺にもありました。

 

もうね、舐めてましたまぽりんの戦車道というモノを―――。

 

 

*****

 

 

「わぁぁぁぁぁぁ――――――!!!?」

 

 右に、左に、振り回されている。ガリガリと地面をひっかく音とともに戦車が振れる。中の俺たちも振り回される―――!!

 

「反応が遅い!!次、右60度!装填急いで!!」

 

 

―――無茶を言いなさる!!こんな状態でどうやって装填せいというのか―――!!?

 

 

高速で動き回る戦車にブン回されながら、揺れる視界とブレる意識の果てに俺は思った。

 

 

―――俺とまぽりんの戦車適性、相性最悪じゃね?? と―――。

 

 

俺とまぽりんのファースト戦車道は、こうして(試合内容という意味では)クソミソな結果に終わったのだった。

 

 

 

 ――月――日

 

 まぽりんの戦車から降ろされました。(残当)

 

 もうね、まぽりんの視線がクッソ冷たいの。「この役立たずが」と言っているように見えるの。失望しました。那珂ちゃんのファンやめます(2度目)

 俺のこの全く大きくならなかった身体は高速で動く戦車と致命的に相性が悪い。動き続ける戦車の中では俺は姿勢を保てず、故に安定して装填を続けることができない。そしてそれは常に動き続けるまぽりんの突撃姿勢と相性が最悪だった。

 

 ああ、このガチロリ体型とペドホイホイな小柄体格が恨めしい―――。

 

 今日は紅白戦。まぽりんとは別のチームに分けられた。つまり敵にまぽりんがいるという事である。―――絶望じゃね??(迫真)

 

 なお、俺は捨て駒として周囲のメンバーから弾かれた所謂「コミュに適合できなかったメンバー」を寄せ集めた集団の一員として、“まぽりんが突撃してくるであろう地点”に肉盾扱いで配置された。搭乗車輛はヤークトティーガー―――って言うかこれ絶対中等部では誰も扱えなくて放置されてただけの車輛だろ(確信)

「できるだけ大きくて硬い戦車を用意してやったから、精々時間を稼げ」と来たものだ。言い方にもムカついたし、昨日まぽりんに振り回されてばっかりで全然動けなかったのもあるし、フラストレーションは溜まりまくっている。

 

 

 

    ―――やってやろうじゃん? “!?”

 

 

*****

 

 

「―――舐められたものね」

 

 試合開始と同時に真っ直ぐ敵陣に切り込んだまほは、高台の上に座している“それ”を見た時、失望の色を隠せなかった。

 ヤークトティーガーの砲撃力は高く、重装甲に裏付けられた十分に過ぎる防御力がある。故に狭い道の上に用意して進軍を阻むという運用は間違いではない。が―――

 

「―――中学生に運用させる車輛じゃあないでしょ」

 

 ばっさりと斬って捨てる。ヤークトの砲弾は総重量30㎏にも達する。そんな連射の利かない車輛など、案山子と同じだ。

つまりは―――ただの壁に過ぎない。

 

「西住流を甘く見過ぎよ―――」

 

相手の砲撃を一撃躱して、一息に近づいて、それで終了。

 

あとはそのまま敵陣に切り込み、一人で勝負を終わらせる。相手が別方向から攻勢に出ていたとしても守備隊が護っている間に事足りる。それがまほの認識であり、普通の戦車乗りの認識であった―――。

 

 

 

 

 この日、中等部に入学し西住流の時代を継ぐと目され、幼少より圧倒的な強さを見せつけ、『怪物』『傑物』『神童』と称され続けてきた西住まほは、自身の了見がまだまだ狭かったことを知る―――

 

 

 

 

       己の敗北、チームの敗北という形で。

 

 

 

 

*****

 

 

 わーい!装填たーのしー!!(ナチュラルハイ)

 

ホラホラどんどん撃って!どんどん装填するよー!

 

ヘイヘイ!どうしたぁ!敵さんビビってるよー!超ビビってるよー!

 

逃げるヤツぁ敵車輛だぁ!逃げないヤツぁよく訓練された敵車輛だぁ!

 

 

 

本当に戦車道は地獄だぜぇ!フゥハハハハハーーーー!!!

 

 

 




******* JC → JK


 ――年 ――月 ――日

 戦車道カフェで、家を出た妹と再会した。

 正直驚いていた。あれだけの事故を目の当たりにし、あれだけの悪意に晒されてなお「まだ戦車道を続けて居るとは思わなかった」から。

 幼いころは活発で悪戯好きなところのある妹は、中等部から鳴りを潜めて大人しく我を殺している印象があったが、根にある芯の強いところは変わってないようで何よりだ。

 それもこれも、きっと彼女が関係しているのだろう。

 できれば貴女の言葉で語って欲しい。いつか、機会に恵まれればいいのだけど



―――ねぇエミ、『貴女は何故、黒森峰(わたし)から逃げ出したの?』

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