【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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―――お互いに譲れないモノがあった。

「―――エミちゃんはモノじゃない!!」
「―――そう。エミはモノじゃない。島田の養女になる。アリス(私の名前)から一文字取って、エミリ姉様。大学飛び級仲間でずっと一緒―――」

 ボコ人形を抱えたまま、宙を見上げ夢想している愛里寿に、いつもおどおどしている態度と違い、強い怒りと決意を灯した瞳のみほ。ぼうっと宙をさまよっていた愛里寿の瞳が、不意にみほを射抜く。

「―――でも、そのためには西住流が邪魔。だから叩き潰す。島田の名に懸けて」
「―――大きく出たな。その言葉、宣戦布告と判断する。西住流に逃げるという文字はない。当方に迎撃の用意あり。西住の名を背負うものとして、その奢りを打ち砕く」

 強い決意と殺意の入り混じった視線を真っ向から受け止めるのはみほの前に立ち妹を庇うように視線を遮ったまほだった。



―――譲れないモノのために、己を奮い立たせた。

「―――隊長の邪魔は、させない!!」
「それは我々のセリフだ!」「我らミミミの恐怖!」「その目に刻め!」
「「「バミューダアタック!!!」」」

三位一体の戦車たちがⅢ号J型を包囲するように、一糸乱れぬ動きを見せる。

「―――何やってんのよ!」

間一髪で飛び込んできたT-34/85が体当たりでパーシングを吹き飛ばし、できた隙間から脱出するⅢ号。フンと鼻を鳴らし、再び突撃体勢を取るために大きく旋回するミミミを睨みつけ、大きく胸を張るカチューシャ。

「偉大なるカチューシャ様なら、3対1でも余裕なんだから!―――でも、あ、貴女さえよかったら、一緒に戦ってあげるわ!」
「カチューシャさん……はい!よろしくお願いします!!」
「Хорошо!!いくわよ!……えぇと……ウメーリャ!!なぁにがバミューダアタックよ!!こっちは元黒森峰とプラウダで三帝同盟*1よ!!格の違いってのを見せつけてやるわ!!!」



―――この戦いに、もしも意味があるとするのならば。

「T-28、撃破しました」
「ですが、この後のわたしたちの生還率は―――」

「みほさん、小梅さん。お二人とも頑張って―――勝負は最後の五分間にあるのよ―――」

 ダージリンの脱落の報告を受ける中、ティーガ―Ⅰの履帯が破損し、足止めを受けるみほの下へ駆け付けたのは―――

「じゃじゃーん!みぽりん!こっちこっち!早く乗って!!」
「西住殿。いつかのコーチの時以来ですが、我々も研鑽を積んで参りました」
「わたくしたちで良ければ、力になれればと思います」
「……早くしろ。間に合わなくなったら意味がない」

エミと黒森峰で苦楽を共にしたチームメイトたちの無念も背負って、Ⅳ号に乗り込むみほ。

決戦のステージへと向かうのは――――わずか6輛。




―――それはきっと、各々の心の納得に過ぎないのだろう―――。

「一応、ちょっとずつ直していたけど、本当にいいの?」
「ええ、ちょっと痛むけど、運転は出来ます」

自動車部に礼を言ったのは数日前の話。

「―――さてそんじゃぁ……―――悪いけど、私と一緒に死んでくれ。Ⅱ号(あいぼう)

 軽快な音を立てて走り出すのは“Ⅱ号戦車L型、通称【山猫(ルクス)】”
大破して再起不能と言われていたあの車輛である。



―――双方の納得のいく解決法が見つからないからこそ、争いが起きるのだ。

「……何の策もない特攻に付き合わされるなんて、流石に予想外だったよ」
「ああそうかい―――私もミカ(お前)が乗り込んでるとは思ってなかったさ」

 って言うかなんでいるの?BT-42と一緒に「皆様の武運を祈ります」みたいなこと言ってなかった?

「なに―――因果は因果。他人の手で螺旋れる前に多少なりとどうにかしたい。そんな風が吹いただけさ」
「あー……もしかして、島田の?」
「さて?私は継続の“名無し”だよ。ミカというのも周りにそう呼ばれているだけさ」

 カンテレを爪弾き独特の旋律を奏でるミカに、それ以上の追及は無粋と思った。
島田ミカ説とか都市伝説だと思ってたが、事実は小説よりも奇なりってとこか。

「―――じゃあ何も聞かないし、何も聞かなかった。なんか変な理由で相乗りしてきた継続の人。悪いけど一緒に死ぬつもりで突撃してくれ」
「あの子を怪物にしたくない。それを止められるのならやってやるさ。君はどうなんだい?島田エミリさん」

 ミカの言葉に「やめてくれよ」と返答しつつ、より強くアクセルを踏み込む。

「―――私は天翔エミだ。天翔エミとして“約束”を果たしに行く」
「―――結構。“島田の亡霊(ゲシュペンスト)”ではなく、私もいまはただの【ミカ】だ。そう呼んで欲しい」
「オーケーだ。背中は任せたぜ!ミカァ!!」



―――互いにぶつかり合って生まれた結果に、双方が納得する結末は、あまりない。

 遊具の安全柵を突き破って強引にショートカットするセンチュリオン。必殺の間合いに晒された、Ⅳ号戦車。その射線の真っただ中に、飛び込んできた車輛が居た。

 6輛目の乱入者、Ⅱ号戦車ルクス。吸い込まれるようにその側面に砲弾が―――――



「ッッッッッエミちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!」




*1
正確には三帝同盟はドイツ帝国とロシア帝国以外にオーストリア=ハンガリー帝国がいるので1国足りない




【 装填騎兵エミカス IF:小梅ルート エピローグ 】

   『 #XX 後日談です! ~ 「 こんな未来認めてなるものか 」 ~』

 

 

 ――月――日

 

 洋上の日差しは強い。昨今は海洋温度が上昇してるとかで海が荒れやすいらしいので、航路も頻繁に変動するらしく、日の光と雨雲の位置を良く調査したうえでプラントの畑に太陽光や雨水を与えるために最適な航海をしているらしい。

 

 

 激戦といって差し支えなかった大学選抜戦。その結果、大洗・黒森峰及び高校生連合が勝利し、俺は「天翔エミ」を守り通した。

 島田エミリとか胃袋吐き出すか胃が捩じ切れて死ぬ未来しか見えなかったのでそれはまぁそれとして拒否一択だったのだが―――。

 

 あれから一月―――季節は秋に差し掛かろうと言ったところ

 

「エミr―――エミ。起きてる?どこか痛むところはない?」

 

 (俺が逃げられないように)そこそこの高さで固定されている老人介護とかに使うハンドルで高さを調整したりできるベッドの端からひょっこりと顔を覗かせるのは栗色の髪の幼子、島田愛里寿。今は大洗学園艦に所属する高校生である―――。

 

 あの決戦の後、俺は島田への詫びをどうするか考えるよりも、静かに涙を流す愛里寿を見て瞬間的に死にたくなり、愛里寿から「約束」について改めて聞くことになり、一周廻って死ぬことなく一生苦しむべきじゃね?となり―――、

 

「―――約束は守らないといけないよな」

 

という結論に至った。だからといって島田に養子入りするとかぶっ飛んだ結論に至ったわけではなく―――“愛里寿・ウォー”を思い出しただけなのだが。

 原作の愛里寿・ウォーでは「みほとは敵同士で戦いたいから」と入学を断った愛里寿だったが、これを快諾する。だってみぽりん大洗にいないからな(当然)。

 同時に、愛里寿が大洗学園艦に所属することで島田が表立って支援の体をとることができ、大洗・黒森峰同盟の繋がりに配慮する必要もなく両家が手を取り合って大洗学園艦のバックアップができる体制が出来上がった。これで文科省がgdgd理由を付けて大洗学園艦を廃艦にしようとするような事件は、少なくとも俺が卒業するまでは二度と起きまい。その後のことは後の世代に任せればいいのだ。所詮俺も、みぽりんが気に病む赤星さんが気に病む人情的に辛いってだけの理由で頑張っただけなのだから。

 

 だが、同時に四六時中愛里寿が後ろをついて回ることになり、守護らなければと思う反面、秒間でPPが溜まっていくカウント音が鳴りやまない俺である。

 

 ―――まぁそうは言っても今現在、俺は至近距離でセンチュリオンの砲撃食らって吹っ飛んだⅡ号の中で必死にミカァを護ってたせいで全身打撲と複数個所の骨折・ヒビにより歩くこともなかなかできない身体だったりするんだが―――

 元々骨折していた左腕がヒビ程度まで治りかけていたところに衝撃を加えた結果、左腕を複雑骨折。右掌にかなり大きめのヒビ、右大腿骨に縦方向のヒビと極めつけは頭部に数針縫う怪我を負って戦車から引っ張り出された時は血ダルマだったらしい。朦朧とする意識の中でとりあえずミカァ!を護らなければと必死だったんでまるで覚えてないんだが―――。

 と、まぁ以上の理由で片脚と両腕が使えない状態。文字通り手も足も出ないといった状態の俺に大洗メンバーや呼んでもないのにやって来るダージリンに各校の隊長格などなど、入れ代わり立ち代わりで交代でお見舞いにやってくるのに加え、僅かな時間を縫ってやって来ては甲斐甲斐しくお世話されている現状。舌噛んで死ぬべき状況なのだが、やったら確実に愛里寿が曇るのがわかり切っているのでできない。終局、俺の終末ノートに新しく罪状が雪だるま式に増えていっているのである。

 

 

―――最終的に全部完済できるのかすらわからない件。

 

 

 幸いと言っていいのか不幸と言うべきなのか、黒森峰学園艦が大洗学園艦と姉妹同盟を結んだので、大洗にたびたび寄港するようになり、そのたびにみぽりんとエリカがお見舞いにやってくるようになった。愛里寿とも仲直りできたのか、お互いボコグッズを持ち寄って、順調に俺の入院している部屋をボコで浸食して行っている。

 

 いずれにしても、身体を早く治さなければならない。でなければ最悪の事態に成りえるからだ―――

 

 

 

 

 ―――そう。留年(ダブリ)である。

 

 

 そんなことになってみろ、確実に戦車道通信に面白おかしく書き立てられるに決まっている。それにみぽりんやエリカと一緒に卒業して大学生活でもみほエリの進展を見守らなければならないのだ。グズグズしていられるわけもない。

 入院している間、最先端医療を受けられるということで回復は本来の状態よりも早くなっているらしく、3ヶ月もあれば単純骨折した部分は再生してリハビリが順調ならば動かせるようになるのだとか。元々回復が早い方ではあったが明らかにおかしいレベルの再生力ではある。でもぶっちゃけ興味ないし人体ってすごいね!ってことで納得しておく。

 

 

「エミさん、今平気ですか?お湯貰ってきました」

「ああ―――もうそんな時間なのか」

 

 ノックを二回して声をかけてきたのは赤星さんだった。お湯とタオルを持ってきて、朗らかに微笑んでいる。俺は愛里寿が離れるのに合わせて腹筋だけで上体を起こして、病人用の羽織るだけ入院服をはだけて落とす。

 

「―――えっと、はい。では、清拭、していきますね」

 

 若干上ずった赤星さんの声を背に受けながら「あいよ」と返す。愛里寿は赤星さんが清拭―――お湯とタオルで俺の身体を拭いて回る間、椅子に座って正面から清拭を受ける俺と行う赤星さんの様子をじーっと見ている。何をするわけでもなくニコニコとこちらを見ている愛里寿を見てると「あぁ~愛里寿可愛いんじゃぁ~~」と心がぴょんぴょんしかねないので若干視線を外すのが俺の礼儀である。

 

「―――少し、席を外すね?またね、エミr―――エミ」

 

 ぴょんと椅子から降りてとてとてといった調子で外に出ていく愛里寿。

部屋には俺と赤星さんの二人が残されることになった。

 

 

 

 ―――丁度良いタイミングだったし、今言うことにした。

 

 

 

「あのさ、赤星さん」

「は、はいっ!!な、なんでしょうか!?」

 

 おっかなびっくりと俺の身体をタオルで拭っていた赤星さんがビクリと身を竦ませる。

 

「ああ、構えなくていいよ。赤星さんに、言いたいことがあっただけなんだ」

「―――はぁ……」

 

 ピンと来ていない様子の赤星さんに、俺は少しだけ苦笑する。なんていうか、こう―――鈍いところがあるんだよなぁ、赤星さんは……

 

 

 

「―――赤星さん

 

 

 ―――ありがとう、戦車道を諦めないでくれて。戦車道から目をそらさないでくれて。

 

 

 ―――ありがとう、大洗で戦車道をやるって決意してくれて。私は本当に嬉しかった」

 

 

 赤星さんからの言葉はない。なんかもう、全部言いたいことを言ってしまいたくなったので、ぶちまけることにした。

 

 

「赤星さんまで戦車道をやめてしまっていたら、きっと私は大洗で戦車道を続けていこうとは思わなかったと思う。赤星さんが戦車道を大洗で始めなかったとしたら、きっと私はプラウダに包囲されたときに最後まで戦おうとは思わなかったと思う。―――赤星さんが私を止めてくれなかったら、きっと私は、黒森峰戦で、取り返しのつかないことを“正しいことだ”と思い込んで突っ走っていたんだろう。

 

 

 ―――ありがとう赤星さん、今まで言う機会がなかったけれど、ずっと感謝ばっかりだったよ」

 

 

 

「―――――ずるいです」

 

 

 

赤星さんの声は、震えていた。

 

「エミさんは、本当にずるいです―――感謝なんて―――わたしの方が、ずっとずっとたくさん、してきました―――」

 

背中に重みを感じる。赤星さんが背中に寄りかかるようにして顔を押し付けて泣いていた。体重がかかっているので実はかなり痛いのだが―――不思議と今は、そんな些末な事などどうでもよかった。

 

「―――ごめんなさいエミさん。わたしのせいで、わたしたちのせいでごめんなさい。それだけを言いたくて、ずっとずっと言いたくて―――でも、ごめんなさいって言ったら―――エミさんが悲しむって―――だから……っっ!!……うぅぅぅぅ……!!!」

 

 

 背中に涙の熱を感じて、俺は何と声を掛けたものかと悩んで居た。けれど、それはまだ早すぎる選択だったようだ。

 

 

「―――だから……

 

 

 ―――ありがとうエミさん……ありがとう、私を支えてくれて

 

 

 ―――ありがとう、わたしたちを見捨てないでいてくれて……

 

 

 ―――ありがとう、わたしたちを護ってくれて―――

 

 

 ―――わたしたちのところに戻ってきてくれて、ありがとう―――ございます……」

 

 

 

 最後の方は嗚咽が混じっていて、声がかすれていた。ポタポタと零れ落ちる涙が背中に落ちて熱を生んでいる。その熱がどうにも熱くて熱くて―――傷に染みてすげぇ痛いから―――

 

 

 

―――だから俺も涙が止まらなかった―――。

 

 

 

 せまっ苦しい病室の中で、二人で泣き明かした後は、何だかすっきりとした顔で笑い合えたような気がした。

 

 

*******

 

「みほさんよりも危険度は高い―――けど、エミリのために小梅さんは必要……」

「エリカさん……休戦協定……ダメかな?」

「一緒に居る時間よりも密度が濃かった分、赤星がかなりリードしてるみたいだし……いいわ、当面の間協力体制で行きましょうか」

 

*******

 

 

 ――月――日

 

 今日は久しぶりに日記を書いている。今までアタフタしてたし、両腕が使えなかったせいで携帯使えなかったししょうがない。

今回日記を書いているのはほかでもない。原作から逸脱したイベントが目の前で起きてしまっていたからであった。

 

 

*****

 

 

 

「天翔ちゃんさぁ――――生徒会長、やってみない?」

「―――は?」

 

 思わず間抜けな声を上げていた。

俺が次期生徒会長??いやいやいやいや……ありえない(迫真)

第一、次期生徒会長って――――――華さんやん?(原作(ドラマCD)的に考えて)

 

「あー……私には荷が重いんじゃないかなって―――」

「いやぁ……逆に聞くけど、誰が適任だと思う?」

 

 何やら意味深なことを言ってくる生徒会長。

 

「いや真面目な話ねぇ――――西住流と島田流のバックアップを受けてる状態のウチの生徒会長をさ―――両方に伝手のある人間以外誰ができるって話なんだけど?」

「あ、はい。わたしやります(棒」

 

 

―――ド正論過ぎて反論できねぇ!!?(戦慄)

 

 

 こうして俺は次期生徒会長に就任する羽目になったのだった―――。

 

 

 

 ――月――日

 

 馬鹿な――――ありえない。

 あっていいはずがない。こんな未来認めてなるものか……!!

 

 

 

*****

 

 

 

「天翔エミ復活ッッッ!!天翔エミ復活ッッッ!!天翔エミ復活ッッッ!!」

 

 テンションを上げた状態で海王コピペで復活アピール。

大学選抜戦から約半年―――長かった……本当に()

 

 危うく溜まりに溜まったPPにベッドの上で自害を考えるか迷うところだったりもしたが、どう考えてもあの状況で死んだら大洗メンバーとか無理に時間空けてやって来る赤星さんとかあと愛里寿とかその時の当番が疑われるし、曇る(確信)。俺とて学習はするのだ。俺がピロシキで死ぬのならそれは誰に疑いの目が向くこともなく、そして誰も曇る可能性がない状態でそうすべきだろう。

 

 そんなこんなで復帰初練習を終えて、みんなで入浴を回避しつつ―――

 

「おかえりなさい、エミちゃん」

「おかえり、エミ」

「―――ただいま」

 

みほエリカの二人が並んで復活をお祝いしてくれて、二人並んでるときの距離が近いことを確認して内心でガッツポーズを取ったりもした。

 

 

 

―――が、これはどういうことなのだろうか??

 

 

 みほエリカがやってきたのは黒森峰学園艦が寄港したかららしい。

加えて言うと暦の上では冬到来。まぽりんがドイツに留学するという話をされる。

 

「ちょうどいい機会だし」

 

ということでなんか女子会のノリで体育館を使ってみんなで布団並べて夜通しお喋り会である。「ああそんなこともあったねー」という話をして色々盛り上がっていくんだが―――話が割とところどころ俺の話になるたびに「正座」って言われるの草生えすぎて大草原なんだが……。

 

 

 

 しばらくそんな話で盛り上がって―――やがて、誰からというわけでもなく眠りについて―――

 

 

 

 

「エミ―――まだ、起きているか?」

 

まぽりんの声が聞こえる。

 

「―――寝ちゃったみたい」

 

みぽりんの声も聞こえる。でもなんか近い。すげー近い。

目を開けるのが怖い。なんだこの嫌な予感は―――

 

 

―――聞かなかったことにしよう!(超法規的措置)

 

 

アッハイ。俺寝てるよぉー超寝てるよー。グースピーグースピースヤァスヤァー

 

 

「―――眠ってしまっているか……暫く逢えないからもう少し話をしたかったが」

「仕方ないよ……エミちゃんも久しぶりの戦車道だったし……」

 

 

 まぽりんみぽりんの声がバイノーラル音声ばりに耳元に聞こえる件。眼を開けたら死ぬ(確信) ウーンウーンムニャムニャー

 

 

「―――まほさんはドイツで頑張って……エミリのことは私にまかせて」

 

 

 愛里寿緊急参戦。しかもなんか右腕に熱源反応!!抱き着かれてます!胃袋!もちません!!メディィィーック!! 

 

 

「―――そうはいかない。みほが残る以上、島田の思い通りにはさせんさ。エミの帰る場所は黒森峰なのだから」

「おぉっとぉー……天翔ちゃんは大洗の生徒会長だよぉ?おねーさん、ちょぉーっとそればっかりは見逃せないな~?」

 

 

 生徒会長!?生徒会長ナンデ?!どういうことだ!?説明しろ苗木ィ!!()

ここにきて漸くではあるが好意のあるなしくらいはハッキリと俺にも理解できている。同時に胃に穴がポツポツ空いている感覚がすごい(語彙減少)。

 

 

「大洗にはさー、赤星ちゃんもいるし?ウチのチームの結束は強いよぉ?島田とか西住とかそういう家のつながりはどーでもいいけど、大洗か黒森峰かって言うのなら、おねーさんは譲れないねぇ」

「―――やはり貴女とは決着を付けるべきだったわね。角谷さん」

 

 

 まぽりんが口調を崩して会話してるのを耳だけで聞いてるとすごい違和感()

だが会話内容は半端なく俺の胃壁を削っていっている。でも寝ている間にこれ以上の爆弾が埋没していたらと思うと思考放棄して眠ることもできん!なんだこれ!?いつのまにこんなことになってしまったというんだ?!

 

 

「大洗なら…関東(ひがし)。島田のシマだからノーカンってお母さまも言ってた」

「エミちゃんは黒森峰(にし)だもん。通さないよ?」

 

 

 みぽりんと愛里寿の声が左右の耳からステレオサウンドで聞こえてくる。加えて両腕に負荷がかかっている感覚がすごい()

 胃がキリキリすりゅぅ……いっそ血を吐いた方が……いやだめだ、確実に全員曇る(確信)。

 

 

  ―――まほエミにあんエミ?アリエミに加えてまほエミあんとかまほエミアリとかどこを向いても邪魔なものがついて回っている!!なんてことだ!!あってはならない!!

 

 

 俺が内心の憤怒と胃の痛みに耐えている中この姦しい談話は夜更けを越えて続き―――朝、疲労の果てに眠った俺が目を覚ました時には俺を中心に円陣を組むかのように寄り集まっている構図が出来上がっていて―――

 

 

 

 

―――なんか逃げ場がないように感じられた俺は、反射的に「上空」に逃げていたのだった。

 

 

 

 

「―――やぁフッド、この際紅茶でいいんだ。なんかこう、胃に優しいものをくれないか?」

「夜討ち朝駆けされる筋合いは有りませんが―――大丈夫ですの?死にそうな顔をしてますわよ?」

 




―――時は流れ、俺は大洗女子を無事に卒業し―――


「西住隊長!全員揃ってます!」
「―――ああ、ではこれより、作戦会議だ」

 俺の言葉に鷹揚に頷いたまぽりんが作戦議長の席で弁舌を振るう。
それに大人しく作戦目的やコードなどを聞き入っている連中の輪の中に紛れ、俺は一息吐いて肩の荷を下ろした。

「―――お疲れさまです、エミさん」
「ありがとさん―――――赤星さん」

―――あのとんでもない事実が判明した後、死ぬほど考えた俺は、

 結局赤星さん(しゅじんこう)にくっ付いてコバンザメすることに決めたのだった。

 主人公の補正というのはどんなストーリーであろうと強力な補正として仕事をする。たとえば、主人公の親友ポジってのは大体が、時折イイ感じの見せ場を貰ったりする代わりに主人公を引き立てる空気のような扱いを受けるものだ。

 ―――つまり、俺が赤星さんの傍についているだけで、自然と他のフラグは消えていくという寸法だ―――!!

 そう考えたら赤星さんが俺に依存している傾向は別段気にすることはなく、むしろ多少依存を含んだ信頼というくらいでちょうどいいとまで考えていた。我ながら鬼畜な思考だと思わないでもない。

―――あの後、大洗女子のメンバーの中核を担う人物はかなりごっそりと卒業してしまい、翌年はなんていうか―――大洗女子というより「島田」といっていい感じのチームメンバーになってしまった部分もあってか、高校生大会は本当に大変だった―――おケイさんが居なくなってこれで好き勝手に「卑怯汚いは敗者の戯言よぉ!」ってノリで動けると思ってたアリサがかわいそうになるほどボコボコにされたりしたが、決勝の黒森峰と大洗の決戦は見所の試合になったと思う。

 そんで、アールグレイパイセンが手を尽くして中等部時代になかったことにした俺の二つ名【機関砲(オ-トカノン)】に代わる二つ名【強肩(アームストロング)】が授与され―――今度は断れなかった。

そんなこんなで高校生活が終わりを告げ―――赤星さんを一度黒森峰に連れて帰るという「約束」を果たすために一路熊本に向かった俺がしぽりん以下西住流に囲われそうになる【西住事件】だの、その西住の囲いを突破して俺を助けに来た継続・大学連合の事件【島田重勇士】だの、まぁ色々アレな事件が起きたりもしたが、おおむね平和だったと思う(棒)

―――そんで、ドイツから戻ってきたまぽりんに誘われる形でホイホイと熊本を本部とするプロチームに参加。赤星小隊を率いる独立遊撃部隊で試合に参加している俺である―――。

―――尤も俺たちの隊は二人の二つ名を併せた通称で呼ばれることの方がはるかに多くなったのだが。

「―――作戦は以上。エミ、赤星と共に小隊を率いて威力偵察を行え」
「了解ッッ!!行くよ!赤星さん!!」


「―――はいっ!チーム【赤肩(レッドショルダー)】、これより威力偵察に向かいます!!」


 ―――目下のところ、赤星さんの俺を見る目に俺の胃が軋む回数が増してきている点が問題点である。最近なんか身体の調子も悪いしなぁ……ちょっと胃の調子とか調べてみるかなぁ……?







 のちの戦車道において、「赤肩小隊」と呼ばれるチームが存在した。
プロリーグに在籍しているこの部隊の練度はすさまじく、また、どんな状況でも決して諦めることも、相手に屈することもなく、最後まで戦い抜く姿勢をやめない点から、強く支持されている。
 この部隊の隊長は、実は鬼籍に入っている人物で、彼女の遺志を継いだとされる副隊長がその名前を永久に記し、隊の名前を恒久に戦車道に残さんとしている。らしい―――

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