【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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―――戦車道高校生大会2回戦。対アンツィオ戦である。

「はーっはっはー!!」

 オープントップの車に足かけハコ乗り状態で登場したのはドリルツインテの総統、ドゥーチェ・アンチョビその人である。

「久しぶりだなぁ!!天翔ォ!!!」

 前に飛んで車から降りたドゥーチェは盛大に生徒会長をスルーして俺の手を強引に掴んでブンブンと上下に振って来る。加えてそのままハグから頬スリスリのコンボである。イタリア式ご挨拶なのだが俺の胃が軋み続けている―――どこか遠くの方から視線も感じる。
 即座に離れたいのはやまやまだが、頬をスリスリしてたチョビが目線を合わせた後、唐突に滂沱の如く涙を流し始めた。

「ごべんな゛ぁ゛……わだじがアンヅィオ゛を選んだばっかりにあんな゛ごどにな゛っでごべんな゛ぁ゛天翔ぉ……西住ぃ゛……ずっどな゛ぁ゛……、後悔はじでな゛い゛げどぉ、ずーっど気に病んでい゛だんだよ゛ぉ゛……!!」

 ずびずびと鼻を啜る音を響かせながら涙声で懺悔の様に「ごめんなぁ、ごめんなぁ」と繰り返すチョビ。節子、これアカンやつや(胃痛)

「わたしがぁ……わたしがおまえたちといっしょにいたらさぁ……お前が全部抱え込む必要もなかったし、西住妹と一緒に黒森峰を辞めることもなかったんだぁ……!!」

 感情の振れ幅がでっかいチョビをよしよしと撫でることしかできない俺。後ろで呆然としていたみぽりんもその様子に困惑していた。

 時間にして5分ほど、『わぁんわぁん』ではなく『お゛ぉ゛ん゛お゛ぉ゛ん゛』と泣いていたチョビは、大泣きしていたかと思うと某柱の男の様にスッキリした顔で持ち直して見せた。

「―――ふぅ。すまないな、恥ずかしいところを見せた。はじめましての諸君ははじめまして。わたしがアンツィオのドゥーチェ、アンチョビだ!敵が西住流だろうと島田流だろうと、天翔であろうと私たちは負けない―――じゃなかった、勝つ!!」

 チョビは再び高笑いをしながら去って行き、後に残されたのは微妙な表情で絶句する大洗メンバーのみ―――

「いっやぁ……濃かったねぇ」
「―――いや、悪い子ではないんですよ?面倒見がいいし、何より強い」

 俺の言葉に、みほが「あっ」と声を上げる。

「―――もしかしてあの人……愛知の?」
「思い出したか。まぁ、そういうこと。―――強いぞ?安斎千代美は」

 俺はチョビが去っていった方を見ながらさっきまでスリスリされてたほっぺたを軽く撫でながら、思った。


―――とりあえずさっきのもピロシキノートに加算しておこう。(PPが1上がった)



*****



「アンチョビねーさん。あの人知り合いなんスか?」
「あ、私も知りたいですドゥーチェ」

運転手のペパロニの言葉に一緒に乗っていたカルパッチョが追従する。二人の質問に「ああ、そうだなぁ」と若干もったいぶった様子を見せたアンチョビは


「―――倒すべき敵で、最愛の友(ミリィオーレ アミーカ)だ!」


フフンと胸を張って誇らしげに宣言した。




【 まほルート 第三話 (アンチョビ回?)そうだよ。 】

『 ~ 今回まぽりんの影薄い……薄くない?(薄い) ~ 』

 

 

 

 ****** JK → JC

 

 

 

 ――月――日

 

 みぽりんが入学した以上、みぽりんが副隊長になるよね?って感じでまぽりんに話を切り出して「副隊長やめまーす」宣言をする。

まぽりんもその辺を考えてたらしく「感謝する」と頭を下げるまぽりんになんか悩んでる様子が見えたので、自前の珈琲振る舞いつつお悩み相談開始。

 で、原因は俺にあると。

 とはいえ俺は別にこれまで副隊長として仕事をしてきたというイメージが全くない。作戦出すのまぽりんだし、それを伝えるのが俺って感じの役割分担なんで、ぶっちゃけ装填手兼通信手という感じで戦車道をやっていた感じでしかない。なので副隊長がみぽりんでも全く問題はないと思うんだが―――問題は多分アレだ、みぽりんに飲みニケーションはレベルが高いという意味だろう。

 それならそっち方面俺がサポートすればいいだけじゃね?と思ったのでその辺を含めて語ったらまぽりんも安心したようだった。

 しかしこの隊長、妹にゲロ甘である。改めてそう思った。

 

 

 ――月――日

 

 みぽりんが副隊長に任命される。みぽりんが顔を真っ青にして壇上に上がって皆に顔合わせを行うのだが―――場内の空気が最悪です。なんでや()

 みぽりんの態度がどうとかそういうのではなく、まぽりんの方針にみんな何がしか言いたいことが溜まっている様子で、その空気に当てられてみぽりんが精神ダメージでゲロインに進化してしまいそうなほどに追い詰められている。これはちょっとよろしくない。

 

 

 この後めちゃくちゃ乾杯した。(プロージットォォォ!!)

 

 

 ノンアルによる場酔いもプラスさせて、みぽりんも交えて飲みニケーションで全部吐き出させてみた結果……俺は思っていたより周囲に評価されていたらしい。

 

 でもな下級生及び同級生(モブさんたち)には悪いんだけど副隊長とかガラじゃないんよ。こっちは装填スキルしか誇れるモンがないんよ。その装填も限界に達しててこれ以上の成長は見込めそうもないんよ。将来性考えたらみぽりん一択なんよ

 

 という俺なりの結論を、説得力のある理由を思いついた端から並べて繋げてジョグレス進化させた結果、周囲も納得してみぽりんも納得してみんなで笑って乾杯できた。とりあえずつかみはオーケーといったところだろうか……?

 

 

 

*****

 

 

 

「天翔副隊長以外に隊長の隣が務まるとは思えません」

「いきなりやってきて、『もう決まったことだ』*1と言われても……」

「正直、西住隊長の妹さんが副隊長に相応しいと思えません」

 

 否定的な意見を受けて、エミの隣で小さく縮こまるみほの背中に手を置いてグッと前に押し出すようにするエミ。「はわぁ」と声を上げるみほにエミは「胸を張りなよ」と声をかけた。

 

「皆の思う所はもっともだとは思う。みほさんはまだ黒森峰での日も浅いから心配するのも当然だ。だからまぁ、その辺は私がサポートするから心配いらない。それと副隊長交代の件だけど―――ぶっちゃけこの間私とまほで相談して決めた」

 

 どよめく周囲にエミはニッと笑顔で返し、ノンアルが注がれた器をぐいっと飲み干してテーブルにカンッと叩きつけるように置く。

 

「―――前からずーっと考えてたんだよ。もともと私は副隊長ってガラじゃないってまほには何度も言ってたし。なかなか聞き入れてもらえなかったんだけどね。まぁ、それはともかく、黒森峰は今まほがトップで、作戦命令もまほを中心として一個の生き物になってる。西住流かくあるべしって感じでね。でもそれだけじゃこの先どこかで絶対詰まるんだ」

 

 新たに注がれたノンアルで喉を潤して言葉をつなぐエミのその言葉に、皆一様に聞き入っていた。彼女の言葉を聞き逃さぬように、音がなくなったかのような空間が出来上がる。

 

「例えば攻勢と守勢の分隊を考えた場合、フラッグ車を護るための守備部隊への命令を、突撃したまほが担うのは間違ってる。かといって私にはそんな脳みそないし、そもそもまほの火力支援(ダイレクトサポート)で前線について行ってるんだから、後方の指揮なんか余計に無理無理。―――けれど、脳がもう一つあれば解決する。みほさんにはそっちを任せたい。加えて言うなら、彼女なら経験を積んでその先に活かせる」

 

 その先、というのは自分たちが卒業した後だと暗に語っていた。エミもまほも、まだ二年生の身でありながらとっくに先を見据えて行動していたという事実に、改めてこの飲み会に参加したメンバーは感嘆の声を漏らす。

 

「―――あの」

 

おずおずと手を上げたのは下級生の一人だった。少し自信なさげに上目遣いにエミの方を見て、口を開く

 

「さっきの西住隊長の『もう決まったことだ』というのは、その……天翔副隊長と決めたという意味で?」

「そうだよ。そのまんま何の裏もなく私とまほで決めたことだって意味*2。―――あぁ、そういう意味ではみんなの意見を聞かずに決めてしまったことは謝らなきゃいけないかもしれない」

 

後輩の言葉にそう言って「すまなかったね」と頭を下げるエミを慌てて止める後輩の少女。

 

「いえ!天翔副隊長が決めたことであれば私たちに異論はありません」

「そっか。まぁ、みんなが納得してくれたなら何よりさ」

 

 そう言ってエミは茹でたてで湯気を放つヴルストをフォークで刺してガブリとかぶりついた。

 モグモグと咀嚼する様子を見て周囲が小動物がモグモグしてる様子にほんわか癒されている事実を、エミはまだ知らない―――。

 

 

 

*******

 

 

 

 ――月――日

 

 三年生になったので(以下略)

二年生としての一年をみほエリの下地作りのために費やした(端的)

劇場版の子供時代に出てきた腕白でまぽりんを引っ張っていくレベルの快活さが何処へ行ったのかって程内向的で引っ込み思案なみぽりんを強引に連れ回して飲みニケーションで強引に周囲と交流させていく―――裏でエリカと交流して【フェイズエリカ】してるのを緩和していった。エリカは多少直情傾向で割と熱しやすいが、面倒見が良いツンデレなので、丹念に丹念にみぽりんと交流させることで結論を言うならどうにか関係を改善方向へ持っていくことができた。

 ただ、みぽりんとエリカに構ってる間放置してたまぽりんがスゴイ=フキゲンになってた。無表情で背景にチリッとした炎が揺らめいて見えるの。コワイ(確信)

 

 

 ――月――日

 

 会うたびに人のことをゴリラ呼ばわりしてた煽り罵倒厨がダージリンだと発覚しました。嘘だろ承太郎……(懇願)

 今後のみぽりんを決勝戦で救えなかった可能性を考えると俺が今コイツを再起不能にしたら最悪みぽりんが大洗に行った後で地味に詰む可能性があるやん……。過去の俺が問答無用でぶっ飛ばさなくてよかったと思った。

 

 

 ――月――日

 

 中等部大会も二連覇して破竹の勢いってのは学園に良いムードを呼ぶ。

が、まぁ適度に慢心し続けるという弱点もあるわけで……あわやピンチだったりした話もある。練習試合を申し込まれて伊勢湾に寄港。対戦相手は学園艦ではなく無名の学校。「しゃちほこ」だかなんだかって名前だったと思う。

 開幕突撃しようとしたまぽりんと先行偵察部隊は先んじて森中の細い山道の先に構築された分厚い防御陣を発見し、一旦進軍停止して後続との合流後に突撃しようと機を窺うことにした。この時点で俺の中にある種のデジャヴが過っていた。

 そんで、横方向に広がった索敵班からも恐ろしい速度で構築された防御陣の報告。これで三方を包囲する形で陣形を造られていることがまぽりんに伝わる。

 「無名と侮り過ぎたか……」と歯噛みするまぽりんの声。

 

 しゃちほこ、=愛知、中学、そして“常識的にありえない速度での陣構築”

 

脳内でパズルのピースが噛み合うように構築された。

―――『あ、これマカロニ作戦だ』

 まぽりんに「大丈夫だから」と一言断ったうえでヤークトの主砲で前方の防御陣を吹っ飛ばすと、書き割りの後ろでせっせと防御陣を構築している戦車たちが居た件。そこそこgdgdした戦況となったが、危なげなく勝利をつかみ取ったのだった。

 

 

 

*****

 

 

 

「三年かけてせっせと作ったんだがなぁ……“墨俣作戦”が破られるとは思わなかったぞ」

「あぁ……墨俣の一夜城か。そりゃこの辺の地方に良く似合ってる作戦だな」

 

 試合終了後、健闘を称える握手を交わすのは、黒森峰の装填手天翔エミと、チームを率いていた少女。三つ編みに眼鏡の地味っぽい少女。名前を―――安斎千代美。

 

「良い作戦だった。相手が黒森峰(うち)じゃなきゃ引っかかってやられてただろうさ」

「だが黒森峰には通じなかった―――それが全てだよ」

 

 かなり自信がある作戦を初見で見破られたショックからか、千代美の声は優れない。そんな千代美の下へと、まほがやってきた。エミにノンアルの入ったカップを渡して、千代美の前に立つ。まほの姿に一歩後ろに下がってノンアルのカップを傾けるエミ。対して黒森峰の隊長の突然の登場に慌てた様子で俯き、視線を外す千代美。

 まほは何を言うわけでもなく千代美をじっと見つめていたが、唐突に何かを思いついたように口を開いた。

 

「―――胸が重いのか?」

「はぁ!?」

 

 まほの言葉にびっくりした声を上げたのは千代美だった。いきなりセクハラから入って来る隊長の言葉にエミが呑んでいたノンアルを盛大に毒霧(プロレス的な意味で)に変えた。

 

「―――違うのか?」

「違うとか違わないとかそういう問題じゃない!!―――おいそこの!!お前のとこの隊長どうなってるんだ!?」

 

 顔を真っ赤にしてエミに詰め寄る千代美に、ノンアルを噴出した勢いで気管にでも入ったかげほげほとむせるだけのエミは答える術がない。そんな二人の様子を眺めるようにして、まほが首を傾げる。

 

「―――ずっと猫背でいるのでな。胸が重いのかと聞いただけだが」

「そんなわけ――――――――わけないだろ!!」

 

一瞬口ごもる千代美。PJを圧迫して存在を主張するそれに関して、思う所がないわけではないようだった。

 

「―――ならば胸を張れ、前を向け。自分たちは黒森峰をあっと言わせた存在だと誇示すればいい。正直なところ驚かされた。エミが居なければ奇襲を受けて半壊もありえただろう」

 

 まほが珍しく冗長になっていた。長々と喋るのは悪徳であると戒めてきたというのに、目の前の少女に言葉が止まらなかった。

 

「貴女は、貴方達は自分たちを誇りなさい。黒森峰(われわれ)と戦い、一時でも圧倒したと誇ればいい。私たちは常勝黒森峰、不退転の西住流。この名この身に自負がある以上、私たちを圧倒した貴女を認めよう。その強さを称えよう」

「―――お前……」

 

エミから視線をまほに戻す千代美に、まほは相好を崩して微笑んだ。

 

「私は黒森峰隊長、西住まほだ」

「私は……安斎千代美だ」

 

互いに名乗り合い、微笑みを交わす。猫背だった背をしゃんと伸ばし、胸を張って前を向く千代美。その視線はまっすぐにまほに向いていた。

 

「西住!今日は負けたが次は負けない!―――いいや、勝つ!!」

「いいや、次も勝つ」

 

 再び短文モードに戻り、無表情に戻ったまほに「むきー!」と気炎を上げる千代美。そんな二人の様子を見て、エミは一人背景と同化することを選んでいた。

『これはまほチョビ来てますわぁ』

そんな呟きを誰にも聞こえないように漏らしながら―――。

 

 

 

*******

 

 

 

  ――月――日

 

 「卒業したらウチ来ない?」とチョビを誘っておいた。あとメールアドレス交換とかした。

遠距離恋愛って拗れやすいっていうし、筆まめなまぽりんの想像がつかんし。メールもすごい圧縮してそう。

予想外のポイントでまほチョビの芽が生えた。みほエリと共に見守っていける気がする。だがツーラビッツ・ノーラビッツ、という格言もある。みほエリを第一に、まほチョビはできれば程度に抑えて置く必要がある。

 故にの「ウチ来ない?」である。

アンツィオは省略されたしぶっちゃけ大洗にみぽりんが行ってしまうルートでもたかちゃんのフラグ以外に見る部分ほぼないし、ナポリターン習得イベントがあるかないかくらいじゃない?と考えると別に気にしなくてもいいとこだと思うし、愛知から栃木に越境入学してアンツィオ立て直しに行くくらいなら熊本にも来れるんじゃね?と考えたわけだ。

 まぁ、原作補正が働くのならアンツィオに行ってしまうのだろうけど、そこは仕方がない。駄目で元々というヤツだ。

 

 

 

******* JC → JK

 

 

 

“P40、走行不能!よって、大洗女子の、勝利―――!!”

 

「―――諸君。試合だけが戦車道じゃないぞ!勝負を終えたら、試合に参加したすべてのスタッフをねぎらう―――

 

  ――――これが、アンツィオの流儀だぁ!!」

 

 というわけで始まりましたアンツィオのメシの流儀(NOT漫画タイトル)

貨物の中から出て来るわ出て来るわアホな量の食料が。

 

「ほら天翔ぉ!こいつはお前さんも得意な奴だろー?」

 

 試合前のテンションが戻って最高にハイッってやつだぁぁ!!!なアンチョビが俺に乾杯を促してくる。まぁ、みぽりんに任せることもできなさそうだし―――

 

「そんじゃ――――」

 

グラスを掲げるのに合わせて皆も思い思いにグラスを掲げる。

 

 

「「「「「乾杯(プロージット)ッッ」」」」」

「「「「「Cin cin――――!!!」」」」」

 

 

―――あ、そこ統一しないのか。

 

 

*1
『皆には悪いとは思っているが、天翔とも相談したうえで“もう決まったことだ”。これに異論があるのならば直接意見して欲しい。みほも一年生の身分、まだまだ至らぬところがあるだろうが、指揮等諸々を見たうえで皆の評価を聞かせてくれ』

*2
圧縮言語を理解している人間がいないので故意に「そういう事」にしています。




 ××月××日

 負けた。完膚なきまでの大敗北だ。
三年の期間をかけてホームグラウンドに作り上げたトラップも
即座に展開できるように仕込んだ書き割り式の戦車の壁も
何もかも打ち破られ無惨に討ち取られた。どうしようもない力の差に心が折れそうだった。
 だが、そんな負け犬の私に黒森峰の隊長は言ったんだ。「胸を張れ」と。
次こそは負けない。次こそは勝つ!下を向くのはもうやめだ。胸を張ること、常に自信であふれた私であれ!西住まほに、天翔エミに誇れる私であれ!!


 ××月××日

 天翔エミからは「卒業したら黒森峰の高等部に来ればいい。歓迎する」とお誘いを受けた。西住まほも満更ではなさそうな様子で、そこまで私を買ってくれたことがとても嬉しい。けれど私は、あいつらと肩を並べて同じ戦場で戦うよりも敵として戦いたいと願っていた。負けっぱなしで終わってたまるかとふつふつと燃え上がるモノが在るんだ。
 卒業前にスカウトにやってきたという栃木のアンツィオ高校のオファーを受けて、あいつらと敵対する進路に進む。
 待ってろよ天翔に西住!!私は今度こそ、新しい学園でお前たちと並ぶ戦車道チームを作り上げてみせる!!


 ××月××日

 アンツィオに編入して一年。まだまだ先は長い。
先代が残した遺産に、自分なりに金策したりして重戦車を手に入れるべく今日も出稼ぎだ。何か年計画なのかはわからないけど、受け継いだ意志を背負って進んでみせる。小さいながらも一国一城の主と言えるアンツィオの隊長になった旨を天翔と西住に慣れない操作で「お誘いを断ってすまなかった」謝罪と一緒にメールを送った。
 天翔からはお祝いの返信が、西住からは「再戦を期待している」と短い激励を貰った。目標へと前進する意欲が高まる。


 ××月××日

 戦車道高校生大会の黒森峰の敗北の記事。最初に受けたのは衝撃で、次にやってきたのは悲しみだった。
 彼女たちならばきっと常勝黒森峰を常勝のまま勝ち続けていると無条件に信頼していた自分が居たことに驚いていた。それくらい、彼女たちの強さを妄信していたのだろう。どうしよう、何も手に付かない。
 彼女らにどう声をかけていいのかわからない。自分がどういう立ち位置で居たいのかも、朧げでわからなくなっていった。


 ××月××日

 屋台を引いて出稼ぎ出張の日々。風の噂を耳にする。
 天翔エミと、決勝でフラッグ車の車長だった西住の妹が黒森峰を出て行ったらしい。頭の中が真っ白になったみたいだ。周りの誰の言葉もゆらゆらと届いて来ない。わたしが天翔の誘いを受けて黒森峰に行っていたら、私は彼女たちの力に成れたんじゃないのだろうか?彼女たちが折れる前に何か言葉をかけることもできたんじゃないのだろうか?

 たらればを考えたところでどうしようもないのは分かっているけれど、考えずにはいられない。

 実の妹も旧知の親友も失って、それでも西住流を続けなければならない西住まほは、今一体どういう気持ちで戦車道を続けて居るのだろうか?私はあの日あの時と同じ彼女たちに再会できるのだろうか?あの日と同じ思いでぶつかり合えるのだろうか?答えは出ない。まだ出してはいけない。


 ××月××日

 あいつらは諦めていなかった!何だ何だ全く心配をさせておいてなぁ!!

 ―――違う心配などしてなかったぞ。天翔は戦車道馬鹿で、西住は堅物の西住流。その妹もきっととんでもない戦車道馬鹿に決まっている。捨てようとしても捨てきれるものか!
そうだ。心配などあいつらには不要だったんだ!聞けばあいつらが再起したのは20年以上前に戦車道が廃れた学園艦。条件は私よりも悪いことだろう。

 ―――だからどうした?西住の妹だ、天翔だ。そんな不利なんか跳ね飛ばしてくるに決まっている!私が今できることはなんだ?すべきことはなんだ?

 ―――全力で、本気で、ぶつかることだ。我がアンツィオの全力で、天翔にあの日の続きを―――いや、あの日できなかった勝利をもぎ取って見せる!!
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