IS・ALUTIAUSS〈インフィニット・ストラトス アルティウス〉 作:ZERO式
──午前10時20分。
オレは家の近くにあるケーキ屋に来てケーキを買っていた。
(暑いな今日も。あー、麦茶飲みてぇ……)
なぜ真夏の朝っぱらからケーキ屋に来ているのか……それは遡ること昨晩、ラウラの一言から始まる。
「──何?実家に行くだと?」
夕食を食べ終わり、一夏の部屋で寛いでいたオレ達。
ふとオレがそう漏らしたときラウラが真っ先に反応した。
「うん。せっかくの夏休みだからたまには自分の家に戻ってゆっくりしようかなって。期間は2日か3日くらいかな」
オレはブラックコーヒーを一口啜りながら続ける。
「オレがまだ両親と暮らしていた家でね。束に引き取ってもらってからもちょくちょく行っては掃除してた。最近行ったとすれば……夏休みに入ってすぐだな」
「どんな家ですの?」
セシリアが優雅に紅茶を飲みながら訊いてくる。
「至って普通の家だよ。部屋数が多かった気がするけど。両親がIS関係の仕事をしていたから金はあったんだろうね。それなりに良い家を買ったんだろ」
「そうか。なら話は早い」
そう言うとラウラはこちらをじっと見てきた。
「な、なに?」
「明日泊まる」
「……はい?」
いや、泊まる事には問題ない、むしろ嬉しい!
けどいきなり過ぎる。
「私はお前の彼女だ。なんの問題もなかろう?」
「それはそうだけど……。いきなり過ぎじゃね?」
「善は急げだ」
(──で、結局泊まることで決定したんだよな。他のメンバーも泊まる事になったし。まぁ賑やかなのは嫌いじゃないから良いけど……)
「はい、お待ちどおさま。ショートケーキ、チーズケーキ、ガトーショコラ、ブルーベリー、クレープ、イチゴのタルトだよ」
「おっ、ありがととねおばちゃん。はいお金」
「はいよ~。あい、おつり。こんなにケーキ買って、友達とパーティーかい?」
「友達が泊まりに来るもんで」
「そうかい。なら楽しむんだよ」
「ありがと。んじゃまたね~」
「はーい、また来てね」
時刻は10時35分……うん、まだ10分ある。
そう思いながら家の前に行くと、表札とにらめっこしている可愛らしい黒のワンピースを着ている銀髪少女がいた。
「………何してんだラウラ?」
「む?おぉ、桜萪。お前人をこの炎天下の中に置き去りにしてどこに行っていたんだ?」
ラウラはオレの声に反応すると、すたすたと歩いてきて胸ぐらを掴んできた。
こらこら、こんな道のど真ん中で胸ぐら掴むな。
「どこにって……皆来るんだからケーキを買いに行ってたんだよ、ほれ」
オレはケーキの入っている箱をラウラに見せる。
「あ……む、そ、そうか」
「おう。んじゃ立ち話もこの炎天下じゃ辛いから家に入るか」
「そ、そうだな。お邪魔するとしよう」
「荷物持つよ」
「ん、すまない」
オレはラウラから荷物を預かり玄関を開けると、先にラウラをあがらせた。
「ほぉ」
「ここが櫻井家だ」
「なかなかだな」
「そりゃどうも。それじゃあ、リビングに行こうか。今朝作ったばかりでちょっと薄いかもしれないけど、麦茶あるから出すよ」
そう言ってオレはリビングのソファーに座らせて、荷物をおろしてから自分とラウラの麦茶を準備する。
「なぁ桜萪」
「ん~?どした?」
オレは2人分の麦茶を運び、1つをラウラの前に置いて隣に座る。
「桜萪は家事が得意なのか?」
「ん?まぁ、得意っちゃー得意だな。なんでだ?」
「ずいぶんと家の中が綺麗だからな。気になったんだ」
「そうかい。それは光栄だな」
さりげなくオレはラウラの頭をわしゃわしゃと撫でた。
ラウラの銀髪はとてもサラサラで触っていてとても心地よかった。
「う、む……」
「嫌か?」
「嫌……ではない。ただ、ちょっと恥ずかしいのだ」
そう言うラウラの頬はほんのりと桜色に染まっていた。
うん、かなり可愛い。
ピンポーン。
「お?他のメンツも来たみたいだな。ちょっと出迎えしてくる」
「分かった」
オレはもう一度ラウラの頭を撫でてから玄関に向かった。
「はいど~ぞ~」
ガチャリ。
「おはよー。今日から3日間世話になるな」
一夏を先頭にシャルロットや箒達が入ってくる。
2泊3日だから皆の持ってるバックは若干大きめのようだ。
「んじゃ上がってくれよ。ラウラは先に来てリビングにいる」
「おう」
「「「「お邪魔します」」」」
「それじゃあ、先に自分達の荷物を置いてきてよ。部屋で希望はあるか?」
「う~ん。特にはないかな?」
「私はある」
そう言ったのはリビングから出てきたラウラだった。
「あ、ラウラおはよー」
シャルロットは笑顔でラウラに抱きつきながら挨拶する。
てかシャルロットって、かなりラウラにべたべただよな~。
「お、おはよう」
「で、希望の部屋は?」
「ん?あ、あぁ。もちろん桜萪の部屋に決まっている」
ラウラは腕を組んでさも当たり前かのようにしれっと言った。
「オレの部屋?」
「彼女が彼氏の部屋に泊まるのは当たり前だろう」
「よ、よくは分からんが……まぁラウラが希望するなら」
「うむ」
それを聞いた瞬間、女子4人の目がキラーンと光った気がした。
それはさながら1匹のシマウマを狙うライオンのような……。
「「「「一夏(さん)っ!」」」」
「 は、はいっ?」
「わ、私は一夏と一緒の部屋を希望する。幼なじみなんだからな!」
「ちょっと待ちなさいよ!一夏はあたしと同じ部屋で寝るのよ!ほら、一夏だってそうだって目してるし!」
「こ、コホン 一夏さん?良かったらわたくし、セシリア・オルコットが一緒に寝てあげてもよろしくてよ?」
「ぼ、僕も一夏と同じ部屋がいいなぁ。ほら、前も同じ部屋だったからね。あぁ、でも、一夏が嫌なら構わないんだけどね」
うーむ、早速始まってしまったよ一夏争奪戦が。
だがここは玄関、さすがに狭いしうるさい。
「ま、まぁ皆様方。ひとまずリビングに移動しようか?あ、荷物持つぞ」
「わ、悪いよ。大丈夫だよ桜萪」
「遠慮すんなって。お客様なんだから」
そう言ってオレは4人から荷物を預かると、リビングに運んでいく。
「桜萪、オレのは?」
「お前は男だろ。男なら自分の荷物は自分で持て」
オレはニヤリと笑いながら一夏を見る。
「わぁ、なんか言い返せない」
「それに、女性をエスコートするのは男の役目だしな」
そう言いながらリビングに入り、4人の荷物を下ろして台所で麦茶・オレンジ・ジュース・紅茶をトレーに乗せて運ぶ。
「まぁ座ってくれよ」
「おう」
そうオレが促すと先に一夏がよいしょ、と座る。
だが、ここでまたもやバトルが勃発してしまった。
「一夏の隣は私だ」
「いえ、ここはわたくしが」
「あたしに決まってるでしょ?」
「僕も隣がいいなぁ」
(まったく……いつでもどこでも一夏争奪戦は勃発するんだな。まぁ仲のよろしいこって)
オレとラウラは長座布団に2人で座りながら4人の様子を見る。
「まぁ一夏、ひとまず麦茶でも飲みたまえ」
「ん?あ、あぁサンキュー」
オレはコップに麦茶を注ぐぎ一夏に渡す。
喉が渇いていたのか一夏はゴクゴクと喉を鳴らして麦茶を飲んだ。
「ふぅ~、 生き返った」
「それは良かった。てかよ~4人方」
「「「「なにっ?」」」」
そ、そんなに睨まないでくれよ……。
「言い争っても仕方ないんだから、平等にじゃんけんで決めればいいだろ?さっきの一夏の部屋のも含めてさ」
「む……そうだな」
「まぁそれはそうですわね」
「絶対勝つ!」
「ま、負けないよ」
「ちょ、ちょっと待て桜萪!オレの意見は?」
「残念だが一夏の意見は尊重できないみたいだ。あの4人の真剣さを見たら分かるだろ?」
4人は余程一夏と一緒になりたいのかメラメラと燃えていた。
それを見て一夏も苦笑いしながら納得する。
「最初は席よ!」
「「「「じゃんけん……ぽん!」」」」
箒・チョキ、鈴・パー、セシリア・パー、シャルロット・チョキ。
「よしっ!」
「やった……♪」
「ぐぬぬぬ……」
「ま、負けましたわ。いいえ!まだ部屋が残っていますわ!」
3人は(シャルロット除く)ギャーギャー騒ぎながら部屋決めのじゃんけんを始める。
「桜萪、次はオレンジジュースが飲みたい」
「ん?はいよ」
ラウラは空になったコップを差し出してくる。
それを受け取って新しくオレンジジュースを注いで渡す。
「ほい」
「うむ」
──それから約5分後、ようやく部屋も決まった。
1日目は鈴と箒、2日目はシャルロットとセシリアという組み合わせになった。
部屋は和室の方がなにかと楽なので和室にしてもらった。
和室なら一夏を挟んで隣で寝られるしな。
◇◆◇◆
「ふぅ~、そうめんうまー」
お昼は手軽に作れる麺物にした。
メニューは至ってシンプル且つお手頃なうどん・そば・そうめんだ。
「やっぱり夏はこれだよな~」
「うむ」
「このおうどん、コシがあって美味しいですわ」
「ホントだー、そばも美味しい」
わさび抜きで食べているシャルロットとセシリアはちゅるんっと麺をすする。
「うむ、うまい」
ラウラはオレの隣でもくもくとそうめんとうどんを食べていく。
「あんまり腹に入れるなよ?まだケーキがあるんだからな」
それを聞いた女子5人はぴくっとこちらを見てくる。
「ケーキ?」
「おう、家の近くに美味しいケーキを作っている店があってな。値段が安い上にとても美味しいという事で、人気なんだ」
「へー、それは楽しみだなぁ」
「ちなみに何を買ってきたのだ?」
「それは後でのお楽しみだ。だからケーキが食べられるくらいの余裕は残しておけよ」
それから10分くらいで麺を完食した
「「「「「「ごちそうさまー」」」」」」
「お粗末様」
「桜萪、片付け手伝うぞ」
「おっ、サンキューなラウラ。それじゃあ食器を運んでくれ」
「分かった」
オレとラウラはてきぱきと食器を片付けていき洗い始める。
(むぅ……幸せそうだなラウラ)
(桜萪とラウラが付き合うって聞いた時はびっくりしたわ)
(2人が付き合うのは運命だったのかもね。ちょっと羨ましいな)
(わたくしもいずれは一夏さんと……そのためにも女を磨きませんと!)
4人がそれぞれこちらを見てきてそう各々が考えている事をオレは知るよしもなかった。
「よし、洗い物は終わった。いよいよお待ちかねのケーキだ」
オレは冷蔵庫からケーキの箱を取りだし、テーブルに持っていく。
「ショートケーキ、ガトーショコラ1、ブルーベリーケーキ、イチゴのタルト、クレープだ。好きなのを食べてくれ」
そう言ってオレはケーキの入った箱を開けて皆にフォークを渡していく。
「好きなケーキ取って食べてくれ。オレは最後でいいから」
ケーキをそれぞれのお皿に取り分けていき、皆の前に置いていく。
「それじゃあ、オレはブルーベリーをもらうわ」
「私はタルトを」
「わたくしも一夏さんと同じくブルーベリーを頂きますわ」
「あたしショートケーキ」
「僕はチーズケーキをもらうね」
「なら私はガトーショコラだ」
最後にクレープが余ったのでオレはそれにした。
一夏達は自分の食べるケーキを取るとぱくっと同時に口に運ぶ。
「おぉ」
「これは」
「あら」
「へー」
「うまいな」
「そりゃ良かったわ」
オレはクレープを食べながら、おいしそうにケーキを食べる皆の顔を見る。
うん、買ってきた甲斐があるというものだ。
「桜萪」
「ん?なんだ?」
呼ばれて隣を見ると、フォークの先端に小さく切ったガトーショコラを刺しながらこちらを見つめてくるラウラの姿があった。
……この展開ってまさかの?
「わ、私のガトーショコラもうまいぞ。ほら あ、あーん」
うん、まさしく『はい、あーん』ですね。
よくラブコメの小説や漫画にはお決まりのようにあるけど、まさか本当に体験する日が来るとは……!
「な、何をしている。は、早く食べないか」
「わ、わりぃわりぃ。あ、あーん……んむ」
ラウラのガトーショコラは口の中に入れた瞬間に、チョコの風味と香りが広がる
それに、ココアパウダーが振りかけられているので、ほんのりと大人の苦味がきておいしい
「う、うまいな。ありがとうラウラ」
「う、うむ。私もお前のクレープが食べたいぞ……」
「へ?んじゃ……あーん」
「あーん……いいものだな」
やっべー!
恥ずかしいけど無性に嬉しー!!
「「「「…………」」」」
4人はオレ達を見るとジロッと一夏を見つめる。
「な、なんだ?」
「一夏っ!私のタルトを食べろ!」
「あたしのショートケーキも食べなさいよ!ついでにあんたのも!」
「ぼ、僕のチーズケーキもおいしいから食べてほしいな」
「一夏さん、わたくしのブルーベリーもおいしくてよ?」
(((いや、食べてるの一緒だろ)))
そんな事を一夏、オレ、ラウラは同時に思っていた。
「「「「はい、あーん!」」」」
「あ、あはは……」
結局一夏は4人のケーキを食べた。
そして、「誰のケーキがおいしかった!?」の質問にかなり困るのであった。
◇◆◇◆
「17時か……夕食は何を作るかな?」
あれからオレ達は鈴が持ってきたボードゲーム等で遊びまくった。
その中でも、ドイツのゲームである粘土を使ってあそぶバルバロッサはかなり盛り上がった。
特にラウラとセシリアが作ったやつは形状が分からなさすぎて何を作ったのかさっぱりだった。
ちなみにオレは某猫型ロボットを作ったのだが、皆からはコ〇助と言われた。
むぅ……不満だ。
「大人数なら鍋。けど今は生憎夏だから暑いしな……」
それを聞いていた女子5人の目がキュピーンと光る。
「ならば私が作ろう」
「えっ?ラウラが?」
「うむ」
「そうだな。この3日は世話になるんだ。夕飯に関しては我々に任せてもらおう」
「そうですわね、でしたらとびっきりおいしいのを作らなくてはなりませんわね」
((いや、セシリアのはちょっと……))
「だから桜萪と一夏はあたしたちが作るから待ってなさい」
「頑張って作るからね」
「そ、そうか」
「ならお願いしようかな?あ、夕飯代はオレが出すからな」
それから20分後くらいにオレ達は家の近くのスーパーに買い物に行った。
その時に道行く人やスーパーの客に注目されたのは言うまでもない。
だって美少女5人が普通に歩いて買い物してるんだもの。
──そして今、買い物から帰ったオレと一夏はラウラ達が料理を作ってる間テレビを見ていた。
「なぁ一夏よ」
「なんだ桜萪」
「オレは明日の朝日を見られるだろうか?」
「奇遇だな桜萪。オレも同じ事を考えていた」
なぜかって?
理由はいたって簡単だ。
「「セシリアの料理が一番不安だ」」
さっきからキッチンでのラウラ達のやり取りが聞こえるのだが、なんか危ない内容が耳に入る。
「赤色が足りませんわね」
「あっ!セシリア、火が強すぎる!」
「あぁもう!ちまちまめんどくさいわね!」
「斬る」
「ら、ラウラ!」
こんな感じだ。
誰だって不安を抱くだろう。
「そういえばある人が言っていたな……」
「なんだ?」
「時間の良いところと悪いところ」
「オレも聞いたことある」
「『時間の良い事を教えてあげよう。必ず流れる事だ』」
確かこんな感じだった気がするよ。
「『時間の悪いところを教えてあげよう。必ず来る事だ』」
そう、その時が来てしまった。
色とりどりにテーブルに並べられる料理。
まずは危険域の料理を見てみよう。
「さぁ一夏さん、桜萪さん。召し上がってくださいな」
「お、おう」
「そ、そうだな」
セシリアはハッシュドビーフを作ったと思うのだが、それからは強烈な鼻を刺す辛い匂い がした。
(せ、セシリア!お前赤いからってタバスコ入れたのか!?)
(タバスコだけじゃない!なぜかハッシュドビーフなのに唐辛子が浮いているぞ!?)
今食べたら逝ってしまいそうなのでこれは後から食べるとしよう……。
いや、食べないという選択肢が最初からないので、食べることは確定なのだ。
さて次の料理を見てみよう。
上からさつま揚げ・ちくわ・玉子・大根が串に刺さっている。
そして……こんがりきつね色に焦げ目が──ちょっと待てぇぇい!
「ラウラ……これは?」
「おでんだ」
「………………」
「おでん」
「2回言わなくていいから!てかおでんって焦げ目ついていたっけか!?」
「む 失礼な事を言う。おでんといえばこうだろう」
ラウラは腕組みをしながら自信満々に言う。
うん、まぁ本人が納得してるならいいや。
でも彼氏として、ちょっとセシリアの部類に入っていたのは残念だ。
「次はあたしのよ、どうよ?この肉じゃが、おいしそうでしょ?」
出された肉じゃがは……なぜかじゃがいもがブロック状になっており小さかった。
(鈴のやつ……皮と一緒にいもの部分まで切り落としたな……)
(なんかお子様カレーに入っているじゃがいもと人参を連想させるな)
まぁ……見た目はともかく!
味は大丈夫だろう、多分ラウラのおでんも。
そう思いながら安全域の箒とシャルロットの料理を見る。
おぉ
おぉ、これは普通にうまそうだ。
「わ、私のはカレイの煮付けだ」
「おぉ」
「ほぉ……」
見た目もかなり良いし、香りもかなりおいしそうだ。
「僕のは唐揚げだよ。前に箒がやっていた大根おろしのね」
シ ャルロットが差し出した唐揚げは小ぶりで一口サイズだから食べやすそうだ。
シャルロットだからこその気遣いだな。
「どれもうまそうだな(セシリア以外)」
「だな、ならはやく食べるか(セシリア以外)」
そう思いながらもオレ達はわいわい楽しみながら夕食を満喫(?)した。
余談だが、セシリアのハッシュドビーフ的な物を食べた皆は当然ながら冷や汗をかいた。
だが当の本人は自分の作った料理なのに一口も食べなかった。
この野郎セシリア、貴様まさか確信犯か!?
◇◆◇◆
さて、夕飯も終わり今はゆっくりとリビングでぬくぬくとくつろぎ中。
風呂は先に女子メンバーを入れる事にしたので、今はラウラとシャルロットが一緒に入っている。
うん、浴槽がある程度大きいから2人くらいなら十分入れる。
「なぁ一夏~」
「なんだ~」
お互いにお茶をすすりながら細目で和みながら会話なう。
「明日は遊園地行かないか?」
「遊園地?」
「おうよ。ちょうど電車で20分くらいの場所に遊園地があるんだ。さすがに明日もずっとオレの家だとつまらないし、息がつまっちまうしな」
ズズズーっと熱いお茶を飲みながら話す。
うん、幸せだ。
「そうだなぁ。でも金はどうするんだ?」
「それなら途中コンビニや銀行にでも寄って出せばいいさ。代表候補生なら金は沢山持ってるだろうしな~。まぁオレも金には余裕あるから全員分出すこともできるしな」
「さすがにそれは……まぁオレ達が勝手に決めるのもなんだから、あいつらにも相談しよう」
ちなみに、ラウラとシャルロット以外の3人はオレの部屋でゲームをやっている。
余程気に入ったのかかなり白熱した雰囲気だった。
だが鈴はボードゲーム等にはかなり強いが、テレビゲームは逆にめっぽう弱い。
なので鈴は箒とセシリアのバトルを観戦している。
「お風呂上がったよ~」
「ふむ、民家にしては大きかったな」
お風呂から上がったばかりのラウラとシャルロットの頬は、淡いピンクに染まっていてその髪はしっとりと濡れていてなんか色っぽさを感じた。
「そりゃ良かった。これで女子メンバーは全員入ったな」
「うん。あとは桜萪と一夏だけだよ」
「うむ、早く入ってくるといい」
「そうだな。それじゃ一夏、先に入って来てもいいよ」
「マジ?サンキュー♪」
一夏はパァッと顔を明るくさせながらリビングから出ていった。
どんだけ風呂が好きなんだあいつは?
ちなみに、風呂のお湯は一旦抜くように言ってある。
さすがに女子メンバーも自分達が入った湯船に男子が後から入るのには抵抗があると思ったからな。
「桜萪、オレンジジュースはあるか?」
「ん?冷蔵庫に入ってるから自由に飲んでくれよ」
「分かった」
ラウラは冷蔵庫からオレンジジュースを出してコップに注ぐとコクンッコクンッと可愛らしく飲む。
やべっ……萌える。
「そういえばさっき一夏と何を話していたの?」
シャルロットがオレの向かい側に座りながら訊ねる。
「あぁ、明日は遊園地にでもどうかなぁって話してた」
「遊園地かぁ。僕は賛成だよ」
「シャルロット、遊園地とはなんだ?」
ラウラはオレの隣にちょこんと座りながらシャルロットに訊ねる。
「えっ?ラウラ、遊園地知らないの?」
「うむ、ドイツにいた頃は常に訓練だったからな」
「そっかぁ。遊園地っていうのはね?沢山のアトラクションがあってすごくおもしろい場所だよ♪」
「ほう」
「だからラウラも楽しめると思うよ?」
「ふむ、そうか」
「それに……」
シャルロットはそこまで言うとラウラの耳にゴニョゴニョと耳打ちをする。
ボンッ!
な、なんだ……今の爆発音は。
「そ、そそそっそんな事……!」
爆発音の音源はどうやらラウラのようだった。
なぜ分かったかって?
この言動と耳まで真っ赤になった顔を見たら誰でも分かるっしょ。
「ど、どうしたんだラウラ?」
「な、なななっなんでもない!し、しし心配するな!」
「うん、それは無理だ」
だってどう見たって大丈夫そうには……ねぇ?
「なぁシャルロット、お前何を言ったんだ?」
絶対何かを吹き込んだ。
間違いなく。
「ん~?乙女の秘密♪」
ぐはぁ。
まさかの乙女の特権使っちゃいますか。
それよか、ウインクして人差し指を口元にもっていく仕草……大半の男が萌え死ぬと思います。
確実にな。
「それはないかなぁ?」
「なんで読心術を使う!?」
そうシャルロットとスーパートークをしている間もラウラは顔を真っ赤にして何かを呟いていた。
「そ、そんな事……わ、わわ私には……」
おーい。
戻ってこいラウラー!
それからラウラが落ち着いたのは約20分後だった、やれやれ……。
◇◆◇◆
次の日。
天気は快晴、気温もポカポカして絶好な遊園地日和となった。
ヒャッホー!
時刻は現在6時43分……なんか中途半端な時間に起きちまったな~オイ。
「スー……スー……スー……」
「あぁ……そういえば一緒に寝てましたね」
あの後、箒とセシリアと鈴に遊園地の事を言ったら一気に目を輝かせて、ロックのライブでやるようなヘッドバン並のうなずきをした。
見ていて首が痛くなったのは秘密だ。
まぁあいつらにとっては一夏と距離を今以上に縮める絶好の機会だからな。
「んぁ……?もぅ朝か……」
ラウラが目をクシクシと擦りながらちょっと寝ぼけ顔でオレを見てきた。
うん、テラカワユス。
ちなみに今は前に買った猫パジャマを来ているから余計可愛さが増す。
「おはよ。今日は楽しみだな」
「うむ、おはよう。そうだな……早く遊びたいぞ……」
うん?また顔をほんのり赤く染めている。
抱き締めたくなるジャマイカ。
「ははっ、そうだな」
オレは笑いながらラウラの頭を撫でる。
「ふみゅ……」
……限界だ。
我慢できずにオレはラウラを抱き締めた。
「なっ!?ど、どどどどうしたのだ!?」
「わりぃ、ちょっとこのまま」
約15分くらいは抱き締めていましたね~。
だって可愛いんだもの。
仕方ないじゃん。
──さて、朝食の準備をしようか。
朝からラウラエナジーを充填したからテンション高いZE☆
「朝は何を作るかな?うーん……卵とベーコンがあるからベーコンエッグ。あとはカップスープとパンだな」
ひとまず引き出しの中からコーンスープとオニオンスープ、トマトスープの袋を出す。
それぞれ8つずつあるから普通におかわりできるな。
「それじゃー作ろっ」
卵とベーコンを炒めている間にトースターで食パンを焼いていく。
今の時刻は7時10分。
あいつらには飯は7時30分からって言ってあるから十分間に合う。
そう思いながらベーコンエッグと焼き上がったトーストをお皿に盛り付けてテーブルに並べていく。
テーブルには5人しか座れないので、残りの2人はリビングにあるこたつで食べてもらう事になる。
「おはよ~う……」
「あぁ、おはよう一夏」
一夏に続いて箒とシャルロット達がリビングに入ってくる。
「飯はもう準備終わってるからあとは食べるだけだ。各々、好きな場所に座って食べてくれ」
それからちょっと一夏をめぐって場所の取り合いがあったが、なんとか決まった。
テーブルが一夏・シャルロット・箒・鈴・セシリア。
こたつがオレとラウラになった。
まぁ予想はしてたからいいけどね。
「んじゃいただきまーす」
「「「「「「いただきまーす」」」」」」
パクパクモグモグとゆっくり食べていく。
その時にラウラが昨日と同じように『はい、あーん』をしてきたので、もちろん拒む理由はないからおいしくいただいた。
まぁそれに続いてテーブルでもまた同じように争い(?)があったが、オレとラウラは無視して平和に食べた。
◇◆◇◆
「さて……そろそろ時間だし行きますかー」
オレ達は必要な荷物を持って家を出て近くの駅へと向かう。
家から駅までは約10分ちょいあれば着くのでとても楽だ。
それから切符を買って電車に乗り込んだ。
席順としては、シャルロット・オレ・ラウラ・鈴・一夏・セシリア・箒となった。
うん、箒よ。
そんなにふてくされないでくれ。
鈴とセシリアもドヤ顔はやめてください。
見られているこっちが恥ずかしいんだから……。
「桜萪……」
そう言いながらラウラはオレの肩にそっと頭を乗せて、膝の上に乗せていた手をぎゅっと握った。
ドキドキが止まらないジャマイカ!!
「ら、ラウラ?」
「ちょっと眠い……着いたら起こして……く……れ……」
そう言いながらラウラ静かな寝息を立てて寝始めた。
うーん……下りる駅までは20弱なんだけどなぁ。
まぁ別にいいか。
「ラウラ変わったね」
ふとシャルロットが寝ているラウラを見ながらクスッと優しく笑った。
「そうだなぁ 転校して来た時とは違って、今の方はかなり可愛い」
「のろけないでよー」
シャルロットは苦笑いしながらオレの頭をペシッと軽く叩く。
だって事実だもの!
「まぁそう言うなって」
そう互いにおしゃべりをしている内に電車は駅に到着した。
その時のラウラの寝起きの顔を見た時は朝のように抱き締めたくなったが、なんとか自重する事に成功した。
そして約30分くらい歩いたところで遊園地に到着した。
最初はバスにしようとしたが、タイミングが悪くあと1時間は待つようなのでやめた。
タクシーも考えたが別れて乗るというのもなんか嫌だったので、行きは歩きに決定した。
「さぁてチケット買うぞー」
オレは人数分のチケットを買って1枚ずつ渡していく。
運が良かったのか今日は開園10周年という事で、20歳以下の客には1日フリーパスが特別価格の1000円で配布されていた。
……という事はだ。
1000円ですべて乗り放題、昼食と帰り賃を抜かせば大分金が浮く!
ヒャッホーイ!
「さて、最初は何で遊ぼうか?」
「そうだなぁ」
「いきなり絶叫系でもねー」
皆でうんうん考えていると、ラウラが軽く手を挙げた。
はい、どうぞラウラさん。
「あれなんてどうだ?」
ラウラが指差した方向を皆は一斉に見る。
そこには黒い壁に赤い液体がタラーっと流れている事が印象的なアトラクション……お化け屋敷があった。
「……ラウラ、あれに入りたいのか?」
「遊園地ではお化け屋敷というアトラクションが、一般的に有名とクラリッサが言っていたからな」
「誰だそれは?」
「我が黒ウサギ部隊の副隊長であり信頼できる良き部下だ。それよりも皆どうした?顔色が悪いぞ」
オレや一夏はともかく、女子メンバーはちょっと顔が青かった。
それに目がかなり泳いでる。
「あ、あれは……なぁ?」
「そ、そうですわ。今はまだいいですわ!ね、ねぇ鈴さん?」
「えっ!?そ、そうよっ!お昼食べた後にするのが普通よ!」
((そうなのか?初めて知ったぞ))
一夏とオレは同時に同じ事を思った。
「だから今は別なアトラクションにしよ?」
「ふむ……ではお化け屋敷は昼食後に行こうとしよう」
結局お化け屋敷は行く事になってしまった。
うん、嫌なら嫌って言えば良かったのに。
……あ、そうか。
一夏がいるなら言いたくても言えないか。
恋する乙女は色々と大変だね。
さてさて、お化け屋敷はお昼になったので今は皆でブラブラ歩いている。
歩いていた橋の下をふと見てみると珍しいものを見つけた。
「なぁ一夏」
「なんだ?」
「橋の下を見てみ?」
「ん?……釣り堀か?」
なんか遊園地なのに釣り堀あったー!
オレの記憶が正しければ釣り堀がある遊園地なんて聞いたことも見たこともなかったぞ……。
「看板がありますわ。えーと……釣れる魚はアユとニジマスらしいですわ」
「釣りかぁ。やったことないな」
「あたしも」
「僕も」
「私はある。ジャングルなどの環境で餓死してはいけないからな。訓練では竿から作ったものだ」
「ラウラ、ここはもう全部準備してあるから ナイフ出すのはやめてくれ」
「ん?分かった」
何を思ったのかラウラはバッグからコンバットナイフを取り出そうとしていた。
てかラウラ、下手したら銃刀法違反で捕まるぞ。
「はぁ、まぁいいや。どうする?魚釣ってみるか?」
「オレはやる」
「い、一夏がやるなら私も」
「わ、わたくしは……せっかくのお洋服が汚れてしまうのでご遠慮させていただきますわ」
「あたしは~……一夏が釣った魚を食べるからいいや」
「僕はやってみたいからやるよ♪」
「無論私もやる」
という事で、セシリアと鈴以外のメン バーが釣りをする事になった。
釣った魚は1匹400円で焼いた魚と交換ができるらしく、オレ達は1人多くても1~3匹までとした。
「えぇい……!さっさと掴まらんか魚め!」
箒さん、そんな怖い顔をしながら魚を睨まないで。
魚もなんか逃げてます。
「わぁ!釣れた釣れた!見て見て一夏っ♪」
「おぉ、なかなかやるなシャル」
「えへへ♪」
ちょっとそこ!
笑いながらどす黒いオーラを出すのはやめて!?
そして鈴は甲龍の右腕を展開しないで!?
「桜萪、私も釣れたぞ」
「うんそうだね。そんなに釣って誰が食べるんだ?」
「もちろん桜萪に決まっている」
ドヤ顔しながら言わないでください。
いや、魚は嫌いというかむしろ好きだからいいんだけど……さすがに量が多い。
──3分後……。
クルッポークルッポー。
「鳩時計が聞こえたような……」
そんな事はどうでもいい。
あの後にオレ達は焼いた魚と交換して、パクパクモグモグとベンチに仲良く並んでアユとニジマスを食べている。
ちなみに一夏が3匹、箒が0、シャルロットが1匹、オレが2匹、そしてラウラはなんと10匹も釣った。
なので1匹も釣れなかった箒はラウラの釣ったアユを貰い、一夏の隣で大人しく食べている。
「ふぅ……ずいぶん食ったな(オレだけ)」
トータル11匹は食べた。
うん、ちょいと腹がきついな……。
「どぉれ……一応腹ごしらえもした事だし。なんかで遊びますか」
色々と案が出されたが一夏の提案で『ミラーラビリンス』というアトラクションに向かう事にした。
直訳すれば『鏡迷宮』、所謂鏡で作られた迷路だ。
「ふむ、なかなか面白そうだな」
「入るのは3人以上ペアだってよ……このアトラクション考えた奴はカップルが入るのを忌み嫌うのか?」
後半は誰にも聞こえない程小さな声でボソッと言った。
もちろんオレのペアはラウラだが、基本3人ペア(4人でも可)と看板には書いてあるのであと1人必要だ。
「わ、私が一夏と行く!」
「いいえ!このわたくしセシリア・オルコットでしてよ!」
「一夏ぁっ!あたしと行きなさいよ!」
「ぼ、僕も一夏と行きたいな!」
(よくも飽きずにやるよ。てか、健気過ぎてそれに気づいていない一夏が憎たらしいな)
どこまで鈍感を極めているんだこの男は。
もはや一夏の鈍感っぷりは神の領域に値する。
これでわざとではないというのだから余計厄介である。
「よ、よろしくね」
「一夏じゃなくてすまん」
「そ、そんな事はないよ!?」
結局……一夏とペアを組むのはセシリアと鈴。
負けた箒とシャルロットはオレとラウラとペアになった。
「箒もすまんな」
「あ、謝られる意味が分からん!フンッ!」
そんな未練タラタラな姿を見ていたら誰だって謝りたくなるよ……。
「それじゃあ行こうではないか」
一夏ペアが先に行ってから3分くらい時間が経った頃に、オレ達ペアはミラーラビリンスに入っていった。
相変わらずラウラはオレの腕に引っ付いている。
うん、嬉しいジャマイカ。
「こ、これはまた見事な……」
鏡!鏡!!鏡!!!
鏡だらけで目が痛い……。
うまく光が屈折してるから段差や壁などが分からない。
ゴチッ。
「いたっ」
ゴチンッ。
「あいたっ」
ラウラとシャルロットは可哀想におでこをぶつけたらしい。
涙目でオレを見つめてくる……うん、オレの理性ダムが決壊しそうだ。
「ははっ 2人とも気をつ──」
ゴッチーン!
「へぶしっ!」
見事に顔面から鏡にぶつかった。
我ながらへぶしっ!って……恥ずかしすぎる。
「桜萪……」
ラウラ達3人はなんか可哀想な生き物を見る目でオレを見つめてくる。
「「「ドンマイ」」」
うわあぁぁぁぁぁあん!!
「お、おう……すまん」
それからオレはフラフラになりながらやっとゴールした。
その間に何度も壁や段差で赤っ恥をかいた事は言うまでもない。
◇◆◇◆
「さ、さぁ!!次はいよいよメインイベントと行こうじゃないか!」
がた落ちしたテンションを元に戻すためにオレは皆をジェットコースターへと連れていく。
がた落ちしたテンションを元に戻すためにオレは皆をジェットコースターへと連れていく。
「まぁそろそろだと思っていたが」
「改めて見るとちょっと怖いな……」
「コースが急すぎますわ」
「ふ、ふーん」
「速そうだね」
「なんて事はないだろう」
オレはラウラ以外のメンバーに言いたい。
お前らISと比べたらこんなの楽勝だろ!?
いや、それとこれとは別だと言われたらそれまでだけどさ。
「まぁ見ていても仕方ない。結構な種類があるから色々と乗ってみようや?」
ジェットコースターは全部で7つくらいある。
コースの長いやつ・速度がめっちゃ速いやつ・とにかくめちゃくちゃなやつ・足が宙ぶらりんなやつ等々……。
ちょっと不安なやつもあるがまぁ大丈夫なんだろう……多分。
という事で最初はコースが長いやつにした。
速度はまぁ一般的(?)な速さだから問題ないが、コースターに乗っている時間が約4分間なのでそれなりに距離があるんだろう。
「それじゃあ乗るか」
ぞろぞろと空いている席に座っていくメンバー。
オレとラウラは先頭、箒と一夏が3列目、シャルロットとセシリアが4列目、そして可哀想な事に鈴は1人となってしまった。
7人でいるのだから1人が余ってしまうのは仕方ないがこれでは不憫だ。
「なぁラウラ」
「なんだ桜萪?」
「次のコースターからは他の女子面子と乗ってくれないか?」
そう言った途端にラウラが悲しそうな顔をしながらこちらを見つめてきた。
「わ、私といるのが嫌なのか?」
「ち、違う!実はな……」
オレはさっき思っていた事を全てラウラに話した。
それを聞いたラウラは快く引き受けてくれたのでオレはラウラの頭を撫でた。
「桜萪は優しいな」
「そう?」
「うん、優しい。だが、お前の願いを承諾してやったのだ。次は私の番だ」
ラウラはキュピーンと目を光らせながらこちらを見てくる。
「お、おう」
「さ、最後に……か、観覧車に一緒に乗り──」
「乗りましょう」
「お、落ち着け。言った私が恥ずかしいではないか」
ちっ。
安全レバーが無ければ今すぐラウラに抱き着きたいのに……。
ガクンッ……。
「お?」
「いよいよ……」
コースターはゆっくりと動き出しどんどん登っていく。
「ひえぇ……高い……」
そう言っているうちにコースターはガクンッと下がって一気に落下していった。
「うわぁぁぁぁぁぁあっ!?」
ISで馴れていると安心していたが侮っていた。
まさかここまで凄いとはぁ……!
「ぬおぉぉぉ……」
「大丈夫か?」
「お、おう。ちょっとだけ酔った」
侮っていた……。
コースが長い分、上がったり下がったりが多い。
そんな中ラウラは『もともと遊具としての設定だからこんなものか』と腕組みをしながら色々と分析していたみたいだ。
「それじゃあ次はあれだな」
次に乗ったのは足が宙ぶらりんなやつだ。
足が固定されていないのに加えてかなりのハードなコースとスピードだから、この遊園地の絶叫系アトラクションでは一番の人気を誇っている。
「確かあれって一番人気のやつだよな?」
「確かそうだと思ったが」
「その割にはがらんとしていますわね」
セシリアの言う通り、このジェットコースター『ヘルバスター』の乗り場には思ってたより人がいなかったのだ。
オレは不審に思い今日の日程のパンフレットを見てその理由が分かった。
「今日は12時からイベント広場でかなり有名なマジシャンによるマジックショーがあるみたいだ。今は11時50分だからだいたいのお客さんはそっちに行ってるんだよ」
「ほぉ、なるほど。誉めてやろう」
そう言いながら何を思ったのかラウラは背伸びしながらオレの頭を撫でてきた。
……Why?
「ら、ラウラ?」
「どうした?何か不満か?」
「別に不満じゃないが……なぜ」
「桜萪もよく私の頭を撫でるだろう。だから私もやる」
「そ、そうか。ありがとう。だけどそろそろジェットコースターに行かないか?」
後ろから視線……もとい死線がハンパない。
「「「………………」」」
主に女子3人からの……例えるなら後ろから槍で突き刺されたような感覚。
「あ、あはは……なんでしょうか?」
「別に……桜萪さんとラウラさんがイチャついてるのは『カップル』ですから仕方ありませんわよね。えぇ、えぇ、えぇ、全くその通りですわ」
「そうね。『カップル』だもんねー」
「ふん……」
やたらと『カップル』を強調して2人はジト目で見ながら言ってくる。
シャルロットは箒達の後ろで頬をポリポリかきながら苦笑いをしている。
一夏なんてオレ達のやり取りなんて耳に入っておらず、辺りを見回しているし。
まったく、呑気なやつめ……。
「お待たせいたしました」
10分程待ってようやくオレ達の番になった。
席はさっきラウラに言ったようにしてもらったので、鈴と一夏、シャルロットとセシリア、箒とラウラ、オレは1人になった。
ふむ、皆楽しんでるみたいで何よりだ。
◇◆◇◆
「ふぅ~楽しかったー」
あれからオレ達はヘルバスター以外のジェットコースターに乗って楽しんだ。
ラウラ以外の女子メンバーがちゃんと一夏の隣に座れるように配慮しながらね。
その後はラウラが提案したお化け屋敷に行った。
結構本格的で男のオレでもびびってしまったくらいだ。
だって中に入ると泣き叫んでる人や彼女をほったらかしにして逃げてしまった彼氏等々……正直お化け屋敷のレベルとしては最恐(さいきょう)だと思う。
セシリアとシャルロットは怖くて泣いてしまい、鈴は涙は流さなかったが瞳に涙を溜めていた。
箒は泣くどころか真っ青になってしまい、あのラウラでも挙動不審になってしまうくらいだった。
ここのお化け屋敷、恐るべし……。
「お化け屋敷は勘弁だよぉ……」
「もうあのお化け屋敷は行きたくありませんわ……」
シャルロットとセシリアは泣き止んだものの目が赤くなりまぶたは腫れていた。
「まぁ最後は気持ちよく終わろうや。観覧車に乗ってな」
それを聞いた女子メンバーはパァッと一気に顔が明るくなり恒例の一夏争奪戦が始まった。
「切り返し速っ!」
「まぁそれがあいつらの良いところだろう。そ、それより桜萪……は、早く乗らないか?」
時刻は午後7時30分。
閉園は午後8時だからあと30分だ。
「そうだな。お客も少ないからそんなに並ばないで乗れるな」
オレとラウラはカップルという事でカップル限定の席に乗せてもらう事になった。
余談だが一夏はシャルロットと乗る事になったらしい。
なんでも一夏がシャルロットを指名したみたいだ。
残りの3人は膝から崩れて嘆いたみたい……乙。
「さ、さすがカップル限定用……ピンク過ぎて目が痛いよ」
「こ、これは……ちょっと恥ずかしいな」
中に入ってみるとあらびっくり。
中はピンクに塗装されているばかりか座る椅子にはハートのプリント。
それにハート型のクッションが2つ置いてあり、窓ガラスもハート型になっている。
「ま、まぁ改めて見ると……カップルなんだからいいんじゃね?」
「そ、そうだな。カップルだもんな!」
ラウラは珍しく声が上ずっていた。
いつものクールキャラとのギャップに萌え……ゲフンゲフン。
とりあえず2人寄り添って座る。
「おぉ、綺麗だな」
「ホントだな。夜だから余計に」
頂上に差し掛かると周りの街が一望できた。
夜なので街の明かりの1つ1つがまるで宝石のように輝いている。
「なぁ桜萪」
「ん?」
ラウラはオレの手に自分の手を添え、あたまをこちらの肩に頭を乗せて言った。
「今日はありがとうな。桜萪のおかげで色々と楽しめた。こんなに楽しいと思ったのは生まれて初めてだ。も、もちろん臨海学校の時も含めてだぞ?!」
「ははっ、礼を言うのはオレの方さ。あの時ラウラが転校して来なきゃ、オレは今の生活を淡々と暮らしていた。でも、ラウラと出会ってから変わった。毎日が楽しいし次の日が待ち遠しい。そして……こうやって愛せる存在になった。ありがとう」
オレは言い終わるとラウラを優しく抱き締めた。
ラウラも最初はびっくりしたがそのままオレの背中に腕をまわして抱き締め返してきた。
「私自身もそうだ。あのまま桜萪と出会わなければ、私は自分の価値も見つけられず、心を閉ざし、一夏を憎み続けるしかなった。ずっと暗い暗い闇の中にいるしかなかった。だが、そんな深い闇に眩い程の光が私を照らした。その光はとても明るく、温かく……優しい光だった。その光は最初は一筋だったが、時間が過ぎる度に数は増えていき、最後はまるで太陽のような輝きで闇を消し去った。そして私は知った……人の暖かさ、優しさ、本当の強さを……」
そう言いながらラウラはぎゅうっと抱き締める力を強くした。
「桜萪、お前のおかげだ。お前がいるから今の私がある。感謝しても感謝しきれない程だ」
「ラウラ……」
「……桜萪」
ラウラとオレはゆっくりと目を閉じて顔を近づけていく。
そして、その距離が零になった時、お互いの唇が触れ合った。
あの爆弾発言の時のような一方的なキスではない……。
自分からという事もあって恥ずかしい気持ちも無くは無いが今は嬉しさが込み上げてくる。
今まで以上にオレとラウラの距離が縮まった……そんな気がした。
「………………」
「………………」
どれくらいキスをしていたか、オレ達はゆっくりと唇を離した。
ラウラはトロンとして顔が火照っているように見えた。
多分オレも同じだろう。
「お、桜萪?」
「ん?」
「そ、その……もう1回したい……」
ラウラは顔を赤らめてモジモジしながらこちらを見つめてくる。
「ん、いいよ……」
「うん……」
もう一度オレとラウラはキスした。
だが、それは最初にした軽いキスではなかった。
「…………!…………!?」
「……………………」
ラウラはオレの口の中に自分の舌を入れ、こちらの舌に絡んできた。
最初はオレも戸惑ったがそのまま続けた。
大人のする深いキス……それを今している。
「プハァ…………」
唇が離れると銀色に光る糸が細く伸びた。
それからはなんか2人とも気恥ずかしくなり、ゴンドラから降りるまで一言も話せなかった。
◇◆◇◆
それからオレ達はすぐに遊園地を出て、バスに乗り駅前で降りた。
時間も時間だから今日は外食にする事に決め、今はどこで食べるか店をお探し中。
今から家に帰って準備していたら食べるのは9時を越してしまう。
「何食べる?金はオレが出すから遠慮すんなよ」
「い、いや さすがに飯まで奢ってもらうのは……なぁ?」
「うむ……」
一夏をはじめ皆はちょっと不満、というか申し訳なく思っているみたいだ。
別に気にしなくてもいいのに。
「お前らが気にする事はないよ。オレが出したいから出す。それだけの事だよ」
「むぅ。何から何まで悪いな」
ペコリと一夏が頭を下げてきた。
「よせやい。頭を下げられるような柄じゃないよ。それより早く食べるものを決めようや。じゃないと電車に乗るのも遅くなるしな」
現在は午後8時10分。
次の電車は午後9時15分と1時間近く余裕はあるが念には念を入れなくてはね。
「さて~。何を注文するかな?」
皆で話し合った結果、和風レストランに決まった。
店内は結構お客さんがいて人気のある店みたいだ。
「オレは……親子丼定食だな」
それもメガ盛り。
どこぞの牛丼チェーン店みたいだなオイ。
「ならオレはトンカツ定食」
「私もだ」
「わたくしはヒレカツ定食を」
「んじゃあたしは鉄火丼」
「僕はしょうが焼き定食」
「私は……桜萪と同じでいい」
どうやら皆決まったみたいだ。
「ん、了解。すいませーんっ」
オレは店員さんを呼んで皆のを注文する。
その時に久しぶりに女性と間違えられたのはちょっとショックだった。
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
お腹をよっぽど空かしていたのか皆は箸を止めない。
うん、おいしく食べて何よりだ。
「親子丼うまうま♪」
「ここのカツうまいな」
「本当だな」
「とてもジューシーですわ」
「こっちもうまいわよ」
「僕のしょうが焼きも」
「うむ」
喜んでもらって良かった。
また機会があったら皆で来たいな。
◇◆◇◆
その後は電車に遅れる事なく無事に家に帰ってきた。
さすがに疲れているようで箒やシャルロットは目が眠そうだ。
「それじゃあ女の子達は先にお風呂だな。さっきスイッチを押したから入るまであと20分ちょいかな?」
「分かった」
「入ったらすぐに寝るよ。ふあぁ……」
よっぽど眠いのかシャルロットは大きなあくびをした。
それにつられるように他の皆もあくびをした。
あくびって本当に人に移るんだね。
「確か今日はシャルロットとセシリアが一夏と同じ部屋で寝るんだったな。でもさすがに騒ぐ元気もないだろ?」
「そうですわね。今日は早くお風呂で汗を流して寝たいですわ」
「僕もセシリアと同じく。早く寝る事にするよ」
そう言うと2人は部屋に戻って行った。
それに続いて鈴と箒も今日寝る部屋へと引っ込む。
「ふぅ。一夏、お茶飲むか?」
「お?飲む飲む」
「ん、了解。そ、その……ラウラは?」
「わ、私ももらうとしよう……」
どうも観覧車の事を思い出すとラウラの顔をちゃんと見られない。
「ラウラとなんかあったのか?」
「な、なんにもないよ。ほれ、熱いから気をつけろ」
「ども」
「ラウラも……」
「うむ……」
ズズズ……と3人でお茶を飲む音がリビングに響く。
こんなに静かなのはちょっと気まずいな。
「お?風呂が沸いたみたいだな」
オレは廊下に出て2階にいるであろうシャルロット達に階段下から声をかける。
「おーい。風呂もう入れるから入っちゃえー。時間も遅いから2人ずつくらいでなー」
すると上から「分かったー」とシャルロットが返事するのが聞こえた。
オレもお茶飲んだら部屋に戻るかな。
ひとまずリビングに戻ってお茶を飲む。
テレビをつけてもなんか面白そうな番組はやっていないのでオレは部屋に戻る事にした。
「一夏、オレは部屋に戻るから湯飲みは流し台に置いといてくれ」
「分かった。どうせなら洗っておくけど?」
「それは助かる。わりぃな」
「世話になってるんだから当然だろ?」
「ははっ。んじゃな」
オレは飲み終わった湯飲みを流し台に置くとそのまま部屋に戻った。
リビングから出る際に、ちらっとラウラを見たがちょっと頬が紅潮しているように思えた。
「ふぅ……疲れたぁ」
オレは真っ先にベッドにダイブした。
ふかふかの布団がとても心地よい。
「………………」
さりげなく自分の唇に触れてみる。
(オレ……ラウラとキスしたんだよな。それもソフトだけじゃなく、深い方も……)
思い出しただけで顔が真っ赤になり熱くなるのが普通に分かった。
(ぬおぉぉぉ……今思えばめっちゃ恥ずかしい!い、いくらラウラからやってきたとはいえ……だあぁぁっ!思い出すな!思い出すな櫻井桜萪ぁぁっ!!)
オレは風呂が自分の番になるまでベッドの上で悶えていた。
うん、穴があるなら入りたいとはまさにこの事を言うんだなトホホ……。
「はぁ……いい湯だな……」
自分が最後という事もありかなりリラックスした状態で風呂に入っている。
「多分あいつらもう寝たよな?時間もそれなりに遅いし……」
昨夜は今の時間まで賑やかだったが遊園地での疲れもあるのだろう。
家の中はシーン……と静まりかえっている。
……父さんと母さんが死んだ直後みたいだな。
あの時もこんな感じに家の中は静かだったしな。
「……ったく。何を感傷的になってるんだか……今はあの時とは違うんだ」
そう思っているとカラカラと脱衣室の扉が開いた音がした。
しかしこちらはうとうとと半分寝ているような状態だからあまり気にもとめない。
(誰か来たのか……?まぁ洗面所もあるから顔でも洗いに来たんだろ……ボヘー……ん?なんかデジャヴを感じる……)
ガチャッ
「し、失礼する……」
「!?」
後ろを思わず振り返るとそこにはバスタオルを巻いたラウラが顔を紅潮させながら立っていた。
いやー、眼福です!!──って、じゃなくて!!
「ら、ラウラ!?な、なななんで──」
「シッ……あまり大きな声を出すな。皆が起きてしまうではないか」
「す、すまん……」
あれ、これシャルロット以来じゃね!?
ひとまずオレはラウラの体を見ないように背を向ける。
浴槽が広くて本当に良かった。
「ら、ラウラはもう入ったんじゃなかったのか?」
「シャルロットと入った。だが、ふ、夫婦が共に入浴するのは当たり前だろう?」
声のトーンからして多分赤くなりながら言ってると予想する。
でもお風呂も一緒って……さすがにそれはダメだろう。
いや、嬉しいんだけどさ!
(どしたんだラウラは?……眠気最高潮だったのにもう目が覚めちまったよ)
シャワシャワとスポンジで体を洗う音が妙に生々しく浴室に響き渡る。
とにかくこの状況から抜け出したいオレがいる。
「お、桜萪……?」
「な、なんだ?」
「よ、良かったら背中を流してやる。い、嫌なら別に構わないが……」
本当は風呂に浸かる前に体は洗ってあるんだよな。
だっていきなり風呂に入るのはさすがに汚いとは思わないかい?
まぁそんな事は今はどうでもいい。
せっかくラウラがこう言ってくれているのだ。
人の好意を踏みにじるのはいけないと思う。
ましてや彼女からのは……。
「せ、せっかくだから……お願いするよ」
「わ、分かった。任せろ」
オレは大事な場所が見えないようにタオルを腰に巻くと、浴槽から出て椅子に座る。
ちなみに左腕と右足は特殊合金でできているから錆びたりはしない。
「で、では洗うぞ」
「た、頼む」
お互いぎこちなく相づちをしてラウラはスポンジでオレの背中を洗っていく。
「り、立派だな……」
ラウラはスポンジで背中を洗いながらそっと左手で触ってきた。
「そ、そうかな……?」
「あぁ」
「ありがと」
「……ん。ただ……」
するとラウラはオレの左腕の義手を触ってきた。
背中みたいに感覚がないから触られている感じはしないけど。
「ら、ラウラ?」
「義手というのは辛くないか?もともと本来の腕と足があった場所に生身のものと異なるものがあるというのは……」
確かに最初の方は辛かった。
まさか爆弾テロに巻き込まれて父さんと母さんを亡くしてしまうばかりか、自分の左腕と右足の膝から下を同時に亡くすとは思っていなかった。
なんとか千冬姉と束のおかげで一命は取り止めたが目を覚ましてみると、自分の腕と足が生身ではなく機械になっていた事には正直ショックが大きすぎた。
そればかりか父さんと母さんが死んだ事を千冬姉から知らされた時には、一晩中泣きわめいていたもんだ。
2人とも優しかった。
オレが1つできるようになるとかなり喜んで写真やらビデオやら撮るくらいの親バカっぷりだった。
だけどオレはそんな2人が大好きで仕方なかった。
心の底から愛していた。
その幸せが一瞬にして壊された……。
大好きな2人はもうこの世には存在しない。
オレは1人ぼっちになってしまった。
そうずっと思っていた。
(だけど……)
「確かに辛かった。自分の体の一部を失ったばかりか愛する家族も失ってしまって……けど束と千冬姉はオレを家族のように……実の弟のように接してくれた。幼いながらもオレは感極まって号泣したよ」
だからオレはあの2人が大好きだ。
色々と厳しいがオレが泣いていると優しく慰めてくれた千冬姉。
はちゃめちゃで他人には一切の興味を示さなかったのに、オレを自分の子供のように可愛がってくれた束。
「感謝しても感謝しきれねぇよ。だから今は全然辛くない。一夏達もいるし、何よりラウラがオレの隣にいてくれるからな」
「桜萪……」
ラウラはシャワーでオレの体の泡を洗い流すと優しく後ろから抱き締めてきた。
「大好きだ桜萪。私はずっとお前から離れない。この先ずっとな……ずっと一緒にだぞ?」
ぎゅうっと抱き締める力がさらに強くなる。
それに応えるようにオレはラウラの頭を優しく撫でた。
「オレもだよラウラ。オレもお前から離れない、絶対だ」
それからオレとラウラはまた背中合わせになって風呂に入り、風呂から上がるとそのまま2人ともぐっすり寝てしまった。
もちろんオレのベッドで一緒に、抱き合いながら。
◇◆◇◆
──翌日。
「世話になったな」
「なかなか楽しかったぞ」
「また機会があれば泊まりたいですわね」
「また遊ぶ時に会いましょ」
「またね~」
一夏達は10時くらいに学園に帰っていった。
お昼も食べていけよと言ったら「さすがにそこまで世話になるのは……」と一夏に言われた。
なので実質的に今はオレとラウラで家の掃除をしている。
掃除といってもそんなに汚くないから早く終わりそうだ。
「悪いなラウラ。掃除まで手伝ってもらっちゃってさ」
「なに、気にするな。お前の女なら当然だろう?」
なかなか嬉しい事を言ってくれるジャマイカ。
「サンキューな。なんかラウラの役に立てればいいんだけどなぁ」
ピクッ。
なんかラウラが反応した気がする。
ふとラウラを見ると、頬を紅潮させながらこちらを見つめてくるではないか。
「な、なら桜萪。1つ頼みたい事があるんだが……」
「お?何々?」
そしてラウラはゆっくりと口を開いた。
「……わ、私と一緒にドイツに来て欲しい!!」
「…………はい?」
さて、ラウラの爆弾発言によりドイツに行くことになった桜萪。
ドイツでは彼にあのお方が仕掛けます、そう、あのお方です。