IS・ALUTIAUSS〈インフィニット・ストラトス アルティウス〉   作:ZERO式

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第14話 狂い出した歯車

9月某日。

放課後の第三アリーナにてオレは一夏と共に実戦形式の練習試合をしていた。

 

「でやぁぁぁぁぁっ!!」

 

「当たるかっ!」

 

一夏は左腕の多機能武装腕『雪羅』から荷電粒子砲を放つが、それをオレは急降下や急上昇、左右に揺さぶりながら回避する。

ドライブリッツを装備したオレはその機動力を活かしながらヒットアンドアウェイの攻撃で、じわじわと白式のシールドエネルギーを削っていく。

 

「ほらほらっ!ばかすか撃つだけじゃオレには当たんないぞ!」

 

「くっ!このっ!」

 

一夏にとって射撃は今後の重要課題の1つだ。

第二形態へ白式が移行した事によって生まれた雪羅だが、それを一夏は扱いきれておらず、寧ろ振り回されていた。

もともと燃費の悪い機体である白式に余計エネルギーを消費する雪羅は、オレから見ればただ単にお荷物な気がする。

 

「……そろそろエネルギーが危ういみたいだな」

 

「うっ。けど負けるか!」

 

「いいね!なら来いやっ!」

 

一夏は零落白夜の刃を雪片弐型と雪羅に発生させてこちらに斬りかかってくる。

それをオレは真正面から近接武器であるイフリートで受け止める。

実体剣タイプのコイツに零落白夜の攻撃は効かない!

 

ニヤリとオレは笑い、イフリートはそのままに別のアームズへと換装する。

砲撃特化型──ブラスター・アームズに装備された高エネルギー砲『メテオ』がその砲口を一夏へと向ける。

既に一夏の得物からは零落白夜の光は失われていた。

 

「あ、やば──」

 

「ほい、チェックメイト」

 

緑色のビームが0距離で放たれ、あまりの出力に一夏はアリーナの壁まで吹き飛び、試合終了を告げる声がアリーナに響き渡る。

 

「はいっ。試合終了よ」

 

パンッ!と開かれた扇子には達筆な文字で『必殺』と書かれていた。

 

 

──さて、練習試合が終わりオレと一夏はこの学園の生徒会長である更識楯無さんから、IS操縦のご教授を直々に受けていた。

 

「ダメよ一夏くん?まだ雪羅の反動制御と機体の姿勢ができてないわ」

 

「す、すみません……」

 

「桜萪くんはまだちょっと換装スピードが遅いわね。コンマで出せるようにしなきゃ」

 

「うい」

 

さて、一夏の課題は『射撃と高度なマニュアル機体制御を同時に行う』というものだ。

射撃兵器が追加された一夏にとっては必要な課題であり、同時に厳しい課題でもある。

数日前、シャルロットとセシリアに『シューター・フロー』というのを見させてもらった。

射撃戦にそれぞれ精通した2人だし、代表候補生ともなればその操縦技術はかなり高い。

そのシューター・フローを円状制御飛翔(サークル・ロンド)で行い、簡単にやってみせた。

 

さて、オレの課題は『換装スピードの向上とバリエーション』だ。

武装換装タイプであるアルティウスだからこその課題。

言うなればアームズでの高速切替(ラピッド・スイッチ)を行えというものだ。

今アルティウスのアームズはまだ使ってないのも含めて8つある。

それらを使いこなすためにも換装スピードの向上は必須だ。

あともう1つ、楯無さんから言われたのは他アームズを同時使用できるようにするという事!

 

「桜萪くんの場合、今までは各アームズを完全に切り替えてたわね?けどそれだと換装までにタイムラグがあるし、いざという時に使用できない場合がある。そこで、この課題なのよ」

 

スピード・アームズを例にすると、スピードはかなりの機動力を持つ割には武装が乏しいため、どうしても使う場面が限られてくる。

そこに他アームズの武器を展開して戦えば、その高速をより活かした戦法が可能という訳だ。

 

さっきの練習試合ではその逆としてドライブリッツの武器であるイフリートを残し、砲撃仕様のブラスターを使った。

もともとブラスターには近接武器が搭載されていないため、近接戦闘に持ち込まれたら非常に厄介だ。

そこに近接仕様のアームズの武器を呼び出して使えれば、近接での戦闘に持ち込まれても撃破されないって訳だ。

まぁさっきの場面では一撃で一夏を撃破しちまって、ブラスター背負っての近接戦はできなかったけどさ。

 

「でも2人共最初の頃より技術が延びてきたわね。お姉さん嬉しい」

 

バッ!と口元で楯無さんは扇子を開く。

そして扇子の真ん中には『成長』と書いてある。

……いつ書き直した?

 

「さて、今日はここまでね。また明日にしましょう」

 

「はい」

 

「了解ッス」

 

お互いにISを解除してISスーツを着た状態に戻る。

ちなみに楯無さんはISを装着していないため制服姿だ。

 

「それじゃ、一夏くん。また後で♪」

 

ウインクしながら出ていく楯無さんに一夏はその場で大きなため息を漏らす。

 

さてさて、なぜオレ達が楯無さんのお世話になる事になったのか、それは数日前の全校集会での発言から始まった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

9月4日、SHRと1限目の半分を使って全校集会が行われた。

内容はもちろん、今月中旬に行われる学園祭についてである。

周りを見ても女子、女子、女子……もちろん男はオレと一夏しかいない訳だから、かなり騒がしくて喧しい。

学園の頃に来た時よりは大分慣れてきたけど、うるさいと思うのは仕方ない。

 

 

「それでは、生徒会長から説明をさせていただきます」

 

静かに告げたのは生徒会役員の1人だろう。

その声で、ざわめいていた女子の声が無くなっていき、ホールは静かになった。

 

「やぁみんな。おはよう」

 

壇上に上がり挨拶をする女子生徒。

黄色のリボンだから2年生みたいだ。

というか生徒会長が3年生ではなく2年生というのはちょいと驚きだな。

 

「さてさて、今年は色々と立て込んでいてちゃんとした挨拶がまだだったね。私の名前は更識楯無。君たち生徒の長よ。以後、よろしく」

 

にっこりと微笑みを浮かべて言う生徒会長──更識先輩は、異性同性を問わず魅了するらしく、列のあちこちから熱っぽいため息が漏れた。

 

「では、今月の一大イベントの学園だけど、今回に限り特別ルールを導入するわ。その内容と言うのは」

 

閉じた扇子を慣れた手つきで取り出し、横へとスライドさせる。それに応じるように空間投影ディスプレイが浮かび上がった。

 

「名付けて、『各部対抗織斑一夏&櫻井桜萪争奪戦』!」

 

ぱんっ!と小気味のの良い音を立てて、手に持たれた扇子が開く。

それに合わせてディスプレイにはオレと一夏の写真(生徒手帳用に撮ったもの)がデカデカと映し出され、それに合わせるようにタイトルが出現し、BGMまで流れた!

 

「え……」

 

『えぇぇぇぇぇぇ~~~~~~っ!?』

 

割れんばかりの叫び声に、ホールが冗談ではなくマジで揺れた。

あまりの出来事に唖然としていると、一斉にオレと一夏に視線が集まってくる。

 

「静かに。学園祭では毎年各部活動ごとの催し物を出し、それに対して投票を行って、上位組は部費に特別助成金が出る仕組みでした。しかし、今回はそれではつまらないと思い──」

 

びしっ、と扇子でオレ達を指す更識先輩。

 

「織斑一夏と櫻井桜萪を、1位の部活動に強制入部させましょう!」

 

再度、女子達の雄叫びともとれる歓喜の声が上がった!

 

「うおぉぉぉぉっ!」

 

「素晴らしい、素晴らしいわ会長!」

 

「今日からすぐに準備始めるわよ!秋季大会?ほっとけ、あんなもん!」

 

こら、秋季大会をあんなもん呼ばわりするな。

というか教師の方々はこんなイベントを承諾したってのか?

ちらっと千冬姉を見ると、腕組みをしてため息をついてらっしゃいました!

 

「ていうか、オレまだ了承してないぞ?」

 

一夏はともかく、というか、恐らく一夏も了承してないだろう。

ふと会長と目が合い──。

 

「あはっ♪」

 

ウインク&手を振って返された。

いやいや、意味が分からないんですけど!?

 

 

──という事があり、オレ達2人は学園祭の商品になってしまった。

それに乗じてうちのクラスでも『織斑一夏&櫻井桜萪のホストクラブ』『織斑一夏&櫻井桜萪とツイスター』『織斑一夏&櫻井桜萪とポッキーゲーム』『織斑一夏&櫻井桜萪と王様ゲーム』等々……却下続出のものばかり案が出された。

 

だがしかし、ラウラの案により我がクラスの出し物はメイド喫茶となった。

ラウラ曰く「飲食店は経費の回収が行え、尚且つ休憩場としての需要もある」との事らしい。

メイド服や執事服は前にバイトをした@クルーズで借りるらしい。

 

そして本題である楯無さん(呼び方は先輩から指摘された)について。

これは楯無さんから直々に言われたのだ。

 

 

──全校集会同日。

 

「私が君達のISコーチをしてあげる」

 

「「はい?」」

 

千冬姉へクラス会議の報告を終えてクラスへ帰ろうとしたオレ達は、職員室を出てすぐのところで更識先輩に出くわした。

そして今回の学園祭の争奪戦の代わりにと今に至る訳だ。

 

「いや、コーチはいっぱいいるんで」

 

こう言うのは一夏だ。

オレはもちろん箒に鈴にセシリア、シャルとラウラまでいる。

 

「うーん。そう言わずに。私はなにせ生徒会長なのだから」

 

「はい?」

 

「それとコーチがどう関係するんです?」

 

「あれ?知らないのかな。IS学園の生徒会長というと──」

 

ちょうど更識先輩が言葉を続けようとしたところで、前方から粉塵を上げる勢いの女子が竹刀を片手に襲いかかってきた!

 

「覚悟ぉぉぉぉっ!!」

 

「なっ……!?」

 

「はぁっ!?」

 

反射的にオレ達は更識先輩の前に立つが、それをするりと先輩はかわして扇子を取り出す。

 

「迷いのない踏み込み……いいわね」

 

そして先輩はそのまま先輩で竹刀を受け流し、左手の手刀を叩き込む。

女子が崩れ落ちると同時に、今度は窓ガラスが何かによって割られた。

 

「今度はなにっ!?」

 

先輩の顔面を狙い、次々と矢がこちらに飛んでくる。

外を見ると、隣の校舎の窓から和弓を射る袴姿の女子が見えた。

え、えーと……どゆこと!?

 

「ちょっと借りるよ」

 

倒れている女子の側にあった竹刀を蹴り上げて浮かせ、空中のそれをキャッチすると同時に放る。

割れた窓ガラスから投擲されたそれはスコーン!と見事に矢を射る女子の眉間に当たり、撃破する。

 

「もらったぁぁぁぁ!」

 

同時に廊下の掃除道具のロッカーから3人目の刺客が現れる。

その両手にはボクシンググローブが装着されており、軽やかなフットワークと共に体重を乗せたパンチでこちら(主にというか先輩メイン)で襲いかかってきた。

 

「ふむん。元気だね。……ところで織斑一夏くん、櫻井桜萪くん」

 

「「は、はい?」」

 

「知らないようだから教えてあげるよ。IS学園において、生徒会長という肩書きはある1つの事実を証明しているんだよね」

 

先輩は半分開いた扇子で口元を隠しながら、楽しげに話す。

その間も、ボクシング女子の猛ラッシュを紙一重で回避しているのだからマジで凄い!

 

「生徒会長、即ち全ての生徒の長たる存在は──」

 

振り抜きの右ストレートを円の動きで避け、とんっ……とその足が地面を蹴って身を宙へと踊らせる。

 

「最強であれ」

 

そして、ランスのようなソバットの蹴り抜きを食らい、ボクシング女子は登場したロッカーに逆再生よろしく叩き込まれて沈黙した。

そういえば気になったんだけど、今の人、更識先輩がここに来なかったらずっとロッカーの中だったんじゃね?

それを考えれば登場できて良かったね、またロッカーに戻ったけど。

 

「……とね」

 

ソバットの際に手放した扇子を一回転の後で床に落ちる前に手に取り、ぱんっと開いてスカートの裾を押さえる。

 

「見えた?」

 

「みっ、見てませんよっ!」

 

「うんうん」

 

「それはなにより」

 

 

──んで、その後に一夏が楯無さんに弱いと挑発され勝負する事に。

オレは元々コーチをしてくれる事に前向きだったため、勝負はせずに楯無さんの指導を受け入れた。

そして、一夏はあっさり楯無さんにぼこぼこになすすべもなく完敗……。

こうして共に指導を受ける事になったのだ。

 

「うぅ。勘弁してくれ……」

 

一夏は肩を落としながら更衣室へと向かう。

その足取りはまさに今の一夏の心情を表しており、見ているこっちまでどよんとした気持ちになりそうだ。

 

「ま、慣れろ。シャルロットと一緒の部屋だったんだから大丈夫だろ?」

 

「簡単に言ってくれるよ。あの時とはかなり違うし毎日が疲れる」

 

はぁ……、と深い深いため息をしながらISスーツを脱いでロッカーから着替えを出す一夏。

その横でオレも着替えをしながらスポーツ飲料を飲んで水分補給をする。

ちなみにスポーツ飲料は人肌ぐらいにぬるくしてある。

一夏曰くその方が吸収しやすくて体を壊さないらしい。

 

「ま、この機会に女心を知るのも良いんじゃね?」

 

「は?」

 

「こっちの話~」

 

楯無さんで一夏の鈍感っぷりも少しは……なくなるか?

もともとこいつ、体の大半を鈍感が占めてるんじゃないかってくらいのフラグクラッシャーだし。

 

「桜萪っ」

 

すると更衣室にラウラが入ってきた。

こちらは上半身裸だったが、そんなちっぽけな事でラウラは戸惑いはしない。

一緒にお風呂に入ったくらいだものね。

 

「おうラウラ。どうした?」

 

「うむ。そろそろ夕食の時間だからな。迎えに来たのだ」

 

なんて優しい子なのでしょう。

今ので今日の疲れはぶっ飛びましたわ!

そしてラウラの胸元を見るとそこにはキラリと光るロケットがあった。

この間ドイツに行ったときにおじいさんからもらったエンジェル・ウイングという幸せのお守りだ。

 

あの日以来、ラウラは毎日このロケットを下げている。

寝る時や風呂の時はさすがに外しているみたいだけど。

 

「サンキュー。もう少しで着替え終わるから外で待っててくれ」

 

「うむ」

 

ラウラは素直に返事をして更衣室から出ていく。

それを確認してオレはいそいそと早めに着替えを終わらせようと制服を着ていく。

 

「ホントに仲良いよなお前ら」

 

「自分の気持ちに気付いて素直になれたからこそだな。そういえば付き合い始めてもうすぐ3ヶ月だな」

 

幸運にも3ヶ月記念日である9月7日は日曜日、デートするにはベストではないか!

 

「ま、一夏も頑張れ。アディオス」

 

テンションの高いオレはそう言い残して一夏より早く更衣室から出て、待っていたラウラと合流する。

 

「お待たせ」

 

「うむ。では行こう」

 

そう言ってラウラはオレの左腕に自分の腕を絡めて歩き出した。

最近のラウラはこれがお気に入りのようで2人きりの時は常にこれでいる。

まぁ人前では控えめに手を握る程度だけど、それでも周りからは黄色い声が上がりまくりだ。

 

「あ、そうだ。ラウラ、日曜日暇か?」

 

「日曜日?……!も、もちろんだ!予定は何もないぞ!」

 

こちらの真意に気付いたらしく、ラウラはぶんぶんと首を振って肯定する。

その反応を内心ほっこりとした気持ちで楽しんでいる自分がいる。

 

「それは良かった。その日は3ヶ月記念に水族館とかに行こう」

 

「うむ!3ヶ月、早いものだな」

 

「そうだな。それに最近は遊びに行ってなかったから色々と行こうや」

 

「楽しみにしている♪」

 

 

◇◆◇◆

 

 

そしてデート当日。

オレは学園のでかい門の前でラウラを待っていた。

今日の予定としては学園の近くにある公園に行ってから水族館へ向かい、最後は駅前でショッピングして帰るという日程だ。

敢えて公園をチョイスしたのはオレが自然が好きという理由から。

たまには2人で静かに過ごす時間もあって損はないだろう。

 

「待たせたな」

 

そしてラウラのご到着。

今日は白のインナーに黒の革ジャン、黒の短めのスカートにブーツという今までにないスタイルだった。

オレと出掛けた時に買ったものではなく、恐らくシャルロット辺りと一緒に買ったものだと思う。

 

「ん、大丈夫だよ。それにしても今日もキマってるなラウラ。とても似合うよ」

 

「に、似合う?そうか、似合うか……。えへへ」

 

ぐはっ!

このラウラのはにかみ、これだけで白飯が何杯でもいけそうな気がする!

あぁ、オレってとことんラウラに依存&溺愛しまくってるな。

ラウラのいない生活なんて考えられん!!

 

「よし、んじゃ最初は公園に行こう」

 

「うむ♪」

 

 

──さて、学園近くにある公園に来た我等バカップルはとりあえず歩いて回ろうという事で、木々に囲まれた道をゆっくりとした足取りで進んでいる。

木々に生い茂る歯はまだ青々としているが、そよそよと吹く風は真夏の8月より大分涼しく感じられた。

 

「なぁ桜萪。あれはなんだ?」

 

「ん?」

 

ラウラの指差す方向へ視線を向けるとそこには池の水面に浮かぶ鳥型の人工物があった。

うん、あれしかない。

 

「あぁ。アヒルボートだな」

 

「アヒル、ボート?……乗りたい」

 

目をキラキラさせながらそうラウラが言ったので早速オレ達はボート乗り場に向かう。

……しかし。

 

「タイミング悪かったな。全部使われてるとは」

 

「アヒルボート……」

 

「相当乗りたかったんだな……」

 

「アヒルボート……」

 

「分かった分かった!今度必ず乗ろう」

 

「約束だぞ?必ずだぞ?」

 

「おうよ」

 

さて、ラウラの機嫌も治ったところでオレはよいしょよいしょと普通のボートを漕ぐ。

ボートなんて初めて漕ぐからいまいちコツが掴めない。

 

「な、中々に大変だな」

 

「貸してみろ」

 

「ラウラ漕げるのか?」

 

「うむ」

 

オレはラウラにオールを渡す。

それを受け取ったラウラはいとも簡単にオールを漕ぎ始めた。

 

「オールを漕ぐ時は左右の力を均等にだ」

 

ギィギィ、という音を出しながらラウラが漕ぐボートはゆっくりと池を進み始める。

 

「手漕ぎボートは夜間の作戦に向いている。エンジンを積んだボートだとその駆動音で、敵側に気付かれてしまうからな」

 

「ほぉほぉ」

 

ふとラウラに視線を戻すと、大胆に開かれた足に目がいってしまった。

しかも……。

 

「ら、ラウラ……。足閉じろ。パンツ見えてる」

 

「へ?……!」

 

バッ!とオールから手を離してスカートを押さえ足を閉じる。

 

「み、見たのか?」

 

「み、見てない。見てないぞ」

 

「色は?」

 

「白」

 

「やっぱり見ていたではないか」

 

しまった!

おのれ、誘導尋問とは虚を突かれた。

 

「むぅ。見たいなら見たいと言えばいいのだ。お前が見たいなら私は──」

 

「めくるなぁっ!」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「まったく。ダメだぞラウラ?そう簡単に下着を男に見せちゃ」

 

「夫の期待に応えるのが妻の役目だ」

 

応える内容が違う。

しかも周りには同じくボートに乗っていた人もいたからヒヤヒヤしたわ。

 

「まぁ人前ではなるべく控えてくれ。さて、と。目的地に着いたな」

 

モノレールに乗って学園の近くにある水族館へとやって来た。

そこまで大きくはないが、楽しむには十分なくらいだろう。

中に入って早々に最初の展示コーナーがオレ達を歓迎する。

展示内容としては太平洋側にいる生き物らしい。

 

「イワシ、サンマ、トビウオ……」

 

「タイ、カツオ……食べられる魚ばっかだな」

 

「この水族館は食料保存庫も兼ねているのか?」

 

「いやいや。展示内容がたまたま食える魚だったんだろう」

 

だが言われれば腹が減ってきた。

今日の昼飯は魚料理の店にでもしようかな?

ラウラは好き嫌い(抹茶がビミョー)がないから刺身とかナマモノの魚も食えるし。

 

「ブリ、スズキ、キス……キス?」

 

「キスもかい。ホントに腹が減ってくるな。……ん?」

 

隣のラウラを見るとなぜかほんのりと頬を赤く染めていた。

ちょうど館内も薄暗く、水槽からの淡い光によってなんか怪しい雰囲気が……。

 

「……ラウラ?」

 

「桜萪は、キスは好きか?」

 

……この場合のキスとは魚ではないだろう、流れ的に絶対。

これが一夏だった場合、必ず魚のキスと捉えるだろうけど。

 

「ラウラ」

 

「なん──いたっ!」

 

スコンッ!と綺麗にラウラのおでこにチョップがヒット!

もちろん義手ではなく生身である右手であるので問題はない。

 

「な、何をするのだ!」

 

「キスは好きだけどここではやらん。人目につく」

 

いくら薄暗いからといっても周りには沢山人がいる。

そんな中でキスするなんてチキンなオレには無理です!

特にキスは2人きりでが──って、何を考えているんだオレは。

 

「むぅ……」

 

ラウラは頬をぷくっと膨らませてちょっとご機嫌ナナメになってしまった。

 

「帰ったらキスしてあげるから、な?」

 

「……約束だぞ?」

 

上目遣いの確認、ヤバい……キュンってなる!

うむ、これを見られるのはオレだけだ。

 

「おうよ。さて、そろそろ昼飯時だな。ラウラは何食いたい?」

 

「そうだな……。海鮮丼が食べたい」

 

おぉう、まさかラウラから丼飯のリクエストが来るとは思わなんだ。

ホントにラウラって日本食好きだよな。

 

「おう、分かった。確かこの館内にレストランあったからそこで食べよう」

 

「うむ。では早く行こう」

 

ラウラはニコニコと笑みを浮かべながらオレの腕を引っ張る。

あぁ、こんな平和な生活がずっと続けばいいのにな……。

 

 

◇◆◇◆

 

 

水族館で昼飯を食べ終わったオレ達は街に出てショッピングを楽しんでいた。

以前シャルロットと一緒に来た場所でもあるため、デパートのフロアは大体把握している。

 

「いやー、買った買った」

 

「新しい服と日用品も買えたしとても満足だ」

 

荷物を抱えながらラウラは右手にあるものを見てフフッと笑みを溢す。

 

「そのプリクラ、ロケットにでも貼るのか?」

 

「うむ♪私の思い出だしな」

 

なんか気恥ずかしい気もするけどラウラが喜ぶならそれはそれでいいか。

そんな事を思いながらデパートから出たその時──。

 

ズドオォォォン!!

 

「なっ!?」

 

目の前で爆発が起き、もくもくと黒煙を上げながら広場が燃えている。

辺りには爆発に巻き込まれて倒れている人が多数いた。

パニックになりそうになるが、なんとか自分を落ち着かせてオレは隣にいたラウラに言う。

 

「ラウラ!ISを展開して怪我をした人達の救助を頼む!」

 

「なっ!?お前は何をするんだ?」

 

「オレは……こいつらの相手をする」

 

もくもくと黒煙の上がる空間から駆動音を響かせながら“奴等”は現れた。

 

「こいつは……ゴーレムか!」

 

1学期開かれたクラス対抗戦に乱入してきた無人機ゴーレム。

だが目の前の敵はそのゴーレムに似ているがカラーリングと装備が異なっていた。

巨大な腕はそのままだが、新たに銃剣らしきものが搭載され、明らかに近接戦闘能力が上がっている機体だ。

さながらゴーレムver.1.5と言ったところか。

 

「しかも2体。こんな人が密集する場所を襲撃するなんて……ぶっ壊す!!」

 

オレは駆け出すと同時にアルティウスを装着し、ドライブリッツを展開する。

右手にバスターソード『イフリート』を呼び出し、目の前にいた1体に斬りかかる。

だがすかさずもう1体がその巨大な腕からこちらにビームを放ってきたため、オレはシールドソードビットを呼び出してビーム攻撃を弾く。

 

「実戦での活用は初めてだけど、まずまずってとこだな。楯無さんと一夏に感謝──っと、人が感謝してる時に邪魔すんなよ」

 

こっちが2人に感謝している時にゴーレムはこちらに再びビームを放ってくる。

だがその攻撃をオレはシールドソードビットで防御し、攻撃へとシフトする。

 

「ぶっ壊す!!」

 

右腕と脚部の展開装甲を展開し、右腕を攻撃モード、脚部をブーストモードにしてオレは2体へと突っ込んだ。

 

「うおぉぉぉぉぉっ!!」

 

──グシャッ。

展開装甲によって破壊力が増したパンチが1体の左腕の肩にクリーンヒットし、そのまま根元から破壊をする。

離れた左腕が地面に付く刹那、オレはシールドソードビットで本体の方を串刺しにし、戦闘機能を著しく低下させる。

 

「桜萪!」

 

すると一般人の救助と避難誘導が終わったラウラが合流し、シールドソードビットが突き刺さったゴーレムの首をレーザー手刀によって斬り落とした。

 

「ありがとうラウラ。そっちはもう終わったのか?」

 

「あぁ。途中から警察が来たのでそちらに任せてきた」

 

「なるほど。んじゃ、さっさと片付けてIS学園に帰ろうや」

 

「あぁ。そうだな!」

 

ゴーレムはこちらに巨大な銃剣を振りかざしてくるが、その攻撃をオレ達は左右に分かれて回避する。

 

「ラウラ!」

 

「任せろ!」

 

ラウラはワイヤーブレードを4本射出し、ゴーレムの右腕・首・腹部・左足に絡めさせる。

だがゴーレムは持ち前の馬鹿力で上空にいるラウラを引きずり下ろそうと自身に絡まったワイヤーブレードを掴む。

 

「くっ……!なんてパワーだ……!」

 

「おっと!こっちを忘れてるなよゴーレム!」

 

ゴーレムはワイヤーブレードの繋がれていない左腕をこちらに向けてビームを放とうとチャージを開始する。

 

「おせぇっ!!」

 

オレはドライブリッツを収納しスピード・アームズを展開する。

左腕にはドライブリッツの近接武器であるイフリートが握られており、オレはウイングスラスターを全開にして目にも止まらない速さでゴーレムの左腕を切り裂いた!

 

「ラウラ!ゴーレムを上空へ上げろ!」

 

「了解!!」

 

ラウラはワイヤーブレードを利用してゴーレムを上空へと投げ、繋がれているワイヤーブレードをレーザー手刀で切断した。

 

「バッチリだラウラ」

 

ゴーレムは体勢を立て直してこちらにフルバーストのビームを放とうとするが、それより早くオレはスピードの機動力でゴーレムに急接近し、チャージ中だった右腕を切り落とす。

そしてコアがあるであろう胸部に巨大なイフリートの刃を突き刺し、そのまま真上へ切り上げた後に真横に切り裂く。

 

3つに斬られたゴーレムはバチバチと紫電を走らせ巨大な爆発を起こして沈黙した。

 

「相手が悪かったな」

 

一夏の零落白夜であれば案外早く楽に倒せたかもしれないな。

まぁオレのISには消滅能力はないから仕方ないけど。

 

「桜萪!」

 

「ん?」

 

広場に降りてアルティウスを解除するとラウラがこちらに走ってきた。

あちらもISは解除しており、私服姿に戻っている。

 

「教官と連絡がついた。残ったゴーレムの残骸は学園側で回収するらしい」

 

という事はコアも回収でいう事になるのか。

さっきの奴はコアごと切り裂いちまったから、残ったのはこの穴だらけになったゴーレムのみ。

辛うじてコア部にはダメージは通っておらず、破壊したのは外装と駆動系だから問題はないだろう。

 

「はぁ……。なぜこのような日に限って……」

 

ラウラは肩を落とし深いため息をつく。

ラウラが落ち込むのも無理はない。

せっかくの記念日に襲撃されたら誰だって落ち込むし後味が悪い。

 

「起きちまったのは仕方ないさ。事後処理終わったらゆっくり部屋で過ごそう。温かいココアでも飲んでさ」

 

「……ケーキも」

 

「あいよ。食堂でレアチーズケーキとガトーショコラ買おうな」

 

この時はまだ知るよしもなかった。

まさか、あのような事に巻き込まれるなんて……そう、誰も、誰1人として知る者などいなかった。

 

ゆっくりと運命の歯車は狂いだす。

ケタケタと漆黒の死神が笑い、その鎌を無慈悲に幸せに過ごす2人に振りかざすのであった……。

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