IS・ALUTIAUSS〈インフィニット・ストラトス アルティウス〉   作:ZERO式

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第15話 想いは閃光の彼方に

「──ん?ここは……」

 

真っ白い空間。

いや、真っ白ではない。

上を見上げれば青空が広がり、雲が流れている。

足元には膝下まで白い霧が立ち込め、歩くと水の音がする。

どうやら水の中を歩いているみたいだけど、なぜか濡れている感覚はない。

足を上げて確認してもズボンは一切濡れていない。

 

「なんだぁ……ここ?」

 

夢にしてはなんかリアル過ぎる気がする。

けど……うーん、考えるのがめんどくさくなってきた。

 

《これは夢、幻想》

 

「え?」

 

声のした方へ振り返ると、そこには木製のイスに座る1人の少女がいた。

こちらに背を向けているため顔は見えない。

だがその少女の赤くスラッと伸びる髪にオレは魅入られてしまった。

 

《……私は今まであなたと共に戦ってきた。力を貸してきた。そしてあなたはそれに応えてきた。……けど本来の私の力じゃない》

 

「……えっと?」

 

何を言っているんだこの子は?

というかこの少女は一体誰なんだ?

 

《本来の私の名を取り戻した時、私は解き放たれる。そしてあなたは絶大な力を得る》

 

「本来の名?……絶大な力?」

 

《けど今のあなたでは無理。あなたは何を守りたい?》

 

何を守りたい?

そんなの決まってる。

 

「オレの周りの人達。ラウラ──」

 

《無理》

 

真っ向否定されてしまった。

 

《犠牲なくして助けるなんて無理。犠牲無しで全てを助けられると思っているのは偽善者》

 

ずいぶんと辛口コメントをする子だな。

少女は続ける。

 

《何かを救うには何かを犠牲にしなければならない。あなたは……何を犠牲にする?》

 

 

「……んぁ?」

 

朝だ。

朝日が窓から射し込み部屋全体を柔らかな光で包み込んでいる。

 

「なんだった?あの夢……」

 

所々記憶が曖昧だが、“何かを救うには何かを犠牲にしなければならない”という言葉ははっきりと覚えている。

一体アレはなんだったのだろうか?

 

「犠牲、か……」

 

考えてみればオレは犠牲無しで全てを救おうとしていたのかもしれない。

けど、それはただの傲慢で端からみれば偽善者と言われても仕方ない。

 

「……けど、できるなら犠牲を出さないで全てを救いたい。でもその救うものを失った時、オレは……」

 

オレはどうするんだろうか?

自分と敵に怒り狂う?

自分の力が足りなかったんだと割り切る?

……分からない。

 

「……桜萪?」

 

眠い目を擦りながらラウラが起きる。

今日もどうやら朝早く部屋に忍び込んだらしい。

というかラウラのベッド潜り込みは1週間に4日はある。

嬉しいからいいんだけどね!

 

「おはようラウラ。どうした?」

 

「ん、なんか怖い顔してたから」

 

おっと、反省反省。

オレはすぐに笑みを浮かべてラウラの頭を優しく撫でる。

 

「ごめんごめん。何でもないから大丈夫だよ」

 

「そうか。なら良いのだが……」

 

そう、大丈夫だ。

何も心配する事はない、この平和な日常が崩れ落ちるなんてあり得ないのだから……。

 

 

◇◆◇◆

 

 

交際3ヶ月記念日デートの時に遭遇した無人機事件だが、機体に使われていたコアは全開と同様に未登録のものだった。

コアについては学園側が秘密裏に回収し、政府には全て破壊したと報告したらしい。

世界各国が喉から手を出したくなるくらいにISのコアというものは貴重かつ危険な代物だ。

国際的に立場の弱い日本政府に預ければ各国の圧力によって強制回収、または強奪が目に見えている。

 

ならば全ての政治的干渉を受け付けないIS学園で保管していた方が一番安全、という訳だ。

とりあえず学園祭は無事開催され、うちのクラスのご奉仕喫茶は大繁盛。

けど亡国機業の襲撃で一夏とオレは狙われるし、やっとその襲撃してきたISパイロットを捕まえたと思ったら増援が来て逃げられるし……。

 

というか何故こんなに敵対勢力から襲撃されなきゃならんのだ。

こちとら平和に安全に勉強して技術と知識を磨きたいだけなのです!

 

さて、先週はキャノンボール・ファストが行われた訳だが、ここでまたしても亡国機業のお出まし!

おかげでキャノンボールはメチャメチャ、怪我人は続出するし、その後に行われた一夏の誕生日会では買い物に行った一夏が亡国機業に襲われそうになるし……はぁ。

とことんついてないよな、オレの人生はまさに山あり谷あり壁ありの前途多難ですよ、波乱万丈ですわ。

 

「どうした?」

 

「この先の人生をどうやったら平和に過ごせるか考えていたのだよ一夏」

 

「ふーん。苦労してるんだな」

 

お前にだけは言われたくない。

こいつの場合、箒達のアプローチをことごとく折りまくってるしな。

この間だってオレに鈴やセシリアが相談しに来たくらいだぞ?

 

「まぁな」

 

チラリとラウラの方へと視線を移してみる。

ラウラはニコニコとしながらクラスの女子達とガールズトークを楽しんでいる様子だった。

んでもって首にかけているロケットを開いて中に貼っているオレ達の写真を見せているご様子。

 

「ボーデヴィッヒさん、羨ましいなぁ」

 

「ホントに櫻井くんと仲睦まじいわね」

 

「ま、まぁな……」

 

おっと、どうやらなんか照れているみたいだぞ?

まぁラウラって褒められたり可愛いって言われたりすると、めっちゃ顔を赤くさせるもんな。

それを利用して色々とからかいがいある──。

 

スコーン!

 

「あだっ!?」

 

「何か失礼な事を思われた気がしたのでな」

 

こらラウラさん。

人の眉間めがけてナイフの鞘なんか投げちゃダメだって。

というか鞘じゃなくて右手に握られている、ギラリと光る得物を投げられてたら危なかったな。

 

「あ、あはは……」

 

ガラッ。

 

「皆さんおはようございます。朝のSHRを始めますよ?席に着いてください」

 

現れたのは我等がクラスの副担任山田先生。

山田先生の後に出席簿を持った千冬姉も教室に入ってきた。

 

「さて、今日は午後から2組との合同実習がある。あと、授業終盤にはいつものようにクラスを代表して短期決戦(ブリッツ)の模擬戦を行うから、各々準備は怠ってくれるなよ?」

 

『はいっ!』

 

短期決戦(ブリッツ)とはIS試合で導入されている種類の1つだ。

制限時間を設けてどちらかのシールドエネルギーが、片方より多く残っていれば勝利。

通常の試合とは異なり、シールドエネルギーが残っていても相手より少なければ負けとなる。

もちろん、シールドエネルギーをゼロにしても可。

 

もっとも、訓練機と専用機ではスペックが根本的に違うので、授業内のブリッツはもっぱら訓練機vs訓練機または専用機vs専用機だ。

そしてブリッツはオレのもっとも得意とするものだ。

武装がシャルロットのリヴァイヴ並かそれ以上に豊富なので、今のところ我がクラスではブリッツの成績は一番なのである。

フフフ……。

 

「あ、言っておくが櫻井。今日はお前は出さんぞ」

 

「なんですとっ!?」

 

「空気を読め空気を。お前を出すと試合が一方的になる」

 

「うぐっ……」

 

千冬姉直々に言われたのなら仕方ないな。

今日は大人しく模擬戦のレポートでもまとめますかね。

 

 

「……うぅ。戦いてぇ」

 

じっくりと1組と2組の代表同士の模擬戦を観察するオレ。

今回は一夏と鈴ではなく専用機無しの生徒による、訓練機を使ったブリッツとなっている。

我が1組は打鉄で2組はラファール・リヴァイヴを使用しており、若干2組が優勢なご様子。

 

「ふむふむ……。射撃回避と弾道予測にてこずっているみたいだな」

 

弾道予測なんて勘で何とかなるもんだ。

相手の持つ銃の銃口とトリガーを引く瞬間を見極めれば、案外簡単に避けられる。

センサーも使えばより回避行動や防御へ素早く移れると思うけど、専用機持ち以外の生徒は実戦なんて経験してないからな。

ましてや模擬戦じゃ互いに遠慮してるところもあるし……。

 

「どうした桜萪?どこかつまらなさそうだが」

 

ひょこっと顔を覗かせるラウラ。

オレはラウラの頭をポンポンと撫でながら話す。

 

「んー、自分がやってる訳じゃないからな。どうしても見てるだけじゃつまらん」

 

「まぁそう言ってくれるな。いくら自分が模擬戦を行わないからといって、授業に消極的になるのはどうかと思うぞ?」

 

「いやー、オレらってイレギュラーな事態にばっか巻き込まれるからなんか、な。実際、実戦から学んでいる事もある訳だし」

 

「それはそれ、これはこれだ。割り切らなければこの先やっていけないぞ?」

 

おぉ、相変わらず真面目ですなラウラさんは。

さて、ラウラから模擬戦をしている2人へと視線を戻すと、先程よりもうちのクラスが苦戦してるご様子。

残り時間もあとわずかだし、何より打鉄の残存エネルギーもリヴァイヴより減少している。

 

「こりゃ今日はうちのクラスの負け──」

 

『やっほー☆』

 

突然アリーナに明るい声が響く。

するとアリーナに空中投影の画面が至るところで様々な大きさで展開し、1人の女性を映していた。

 

『あー、あー。マイクテスマイクテス。今日のお天気は晴れ後雨~☆。やっほー、天才科学者の篠ノ之束さんだよー♪』

 

こちらに向かって女性──束は手をひらひらと振りながら話す。

 

「な、なんで束さんが?」

 

「……姉さん?」

 

どよどよとこちらが騒いでいるのをよそに束は言葉を続ける。

 

『皆はこの世界は好き?今の生活は好き?この世界は楽しい?今の生活は楽しい?束さんはこの世界嫌い。今の生活も嫌い。この世界がつまらない。今の生活もつまらない。嫌いでつまらなさすぎて壊したいくらいなのだよ』

 

一体何を言っているんだ?

なぜずっと今まで表に出てこなかった束が今になって出てきたと思ったら、こんな意味不明で理解し難い放送をしているんだ?

 

「……!桜萪、どうやら篠ノ之博士はこちらの電波をジャックしているみたいだ。どこの国も使用していない特殊な電波を検知した」

 

ラウラがシュヴァルツェア・レーゲンの左腕だけ部分展開して説明する。

電波ジャック、だと?

一体何を考えてるんだ?

 

『だから決めた。この世界壊すよ』

 

ドゴォォォォンッ!!!

 

突然アリーナをけたたましい爆音と震動が襲う。

上空を見上げると複数のISが展開しており、IS学園を攻撃しているのだ。

 

「織斑先生!この学園全体を合計30機のISが方位しています!うち20機からは生体反応ナシです!」

 

「やってくれたな束ッ……!!」

 

ギリッと奥歯を歯軋りしながら、千冬姉は画面に写る束を睨み付けた。

 

『アハハハハッ♪今世界各地で束さんお手製の無人機が攻撃を開始したよ。私の宣言で攻撃開始できるようにしておいたの。さすが私』

 

ケラケラと愉快そうに笑う束。

けどその目には危険な色に満ちており、正気ではないと感じさせる程だった。

 

『そうそう。無人機以外にも有人ISがいるからね~。皆が悪いんだよ?皆束さんの機嫌を損ねる事しかしないんだもの。だから束さんはこの世界の神になって新しい世界を作るんだ☆どう?なかなか良い考えでしょ?さっすが束さん、天才は違うよね』

 

……呆れたよ束。

命の恩人だから信じたくはなかったけど、やはり今までの無人機襲撃の首謀者は貴女だったんだな。

 

「……纏え……アルティウス!!」

 

怒りに震えながらオレはアルティウスを装着し、近接アームズである『ソード・アームズ』を装備、主武装である77式近接長刀『レバンティン』と68式近接長刀『ゼガペイン』を引き抜く。

 

そしてスラスターを全開にして、上空に展開する無人機達へ向けて突っ込んでいった。

 

「はあぁぁぁぁぁッ!!」

 

こちらに向かってくるゴーレムⅠの1機の首をレバンティンで切り落とし、続けざまに背後に回っていた無人機──ゴーレムⅢの胴体へゼガペインを深々と突き刺す。

轟音を響かせながら爆発する2機、そしてもくもくと上がる黒煙を突き破って新たなISがこちらに牙を向けてきた。

 

ギャリイィィィンッ!!

 

金属同士が激しくぶつかり合い凄まじい音と火花が上がる。

 

「てめぇッ!オータムかッ!!」

 

「いよぉクソガキ!久しぶりだなぁ!?」

 

「ハッ!感動の再開とは程遠いな」

 

「いいねぇいいねぇ!マジでムカつくぜ、てめぇのその顔見てっとよぉ!!今度こそその顔引き裂いてやらぁッ!!」

 

オータムは醜悪な笑みを浮かべながら両手に持つ双剣で攻撃してくる。

武器もそうだがオータムが使っているISが以前とは違う。

 

【照合完了。スペイン製第三世代型IS『レベリオン』】

 

レベリオンと呼ばれるそれは迷彩色を施された装甲で、近接戦闘に特化した機体らしく、機体各所に設けられたハードポイントにはいくつもの近接武器が装着されている。

しかも機体は通常のISとは異なり、全身装甲タイプとかなり異質だ。

 

「どうよどうよこの機体!あの兎の博士の手も加えられているから、通常よりも数倍の能力を持ってるんだぜ?これでてめぇなんざ肉塊に変えてやんよ!!」

 

じわりじわりとこちらのISのシールドエネルギーが削られていく。

オレは一度オータムから距離を置こうとブーストするが、それを奴が許すはずもなく、こちらに鋭い斬撃を繰り出してくる。

もともとオータムは近接戦闘が得意なパイロットだから、アラクネを使っていた時もカタールと特殊ネットでの戦闘をしていたのを覚えている。

 

だがこちらもレバンティンとゼガペインで攻撃し、つばぜり合いの状態から段々とこちらがおしていっているのが分かった。

斬撃の中にパンチや蹴りを織り混ぜて攻撃のパターンを増やしていく。

伊達に現役日本一剣士(箒)と国家代表(楯無さん)達相手にしている訳じゃない。

しかもラウラ達を含めた代表候補生やあの千冬姉からもしごいてもらってるんだ。

 

「なぁオータム」

 

「んだよクソガキ!」

 

「打ち上げ花火は好きか?」

 

オレはニヤリと笑い、脚部にミサイルランチャー、オータムの背後にシールドソードビットを展開した。

そう、これは楯無さんとの特訓で身につけた技。

ずっと特訓し続けてきたお陰で同時展開できるアームズの武装も、当初の1種類から3種類まで増やす事ができた。

 

「しまっ──」

 

「吹っ飛べぇぇぇッ!!」

 

ランチャーから全てのミサイルが放たれ、シールドソードビットも一斉にオータムを蜂の巣にする。

ミサイルの爆発により機体装甲は弾け、ビットの斬撃で武装はほとんど破壊された。

 

「く、クソがっ!」

 

機体各所から煙と紫電が走る。

オータム自身も頭や口から血を流して満身創痍だ。

だがオータムは粒子化して無事だったロングソードを召喚し、再びこちらに斬りかかってきた。

こちらの攻撃によってその動きはかなり鈍くなっており、オータムの攻撃を回避する事は余裕だ。

 

オータムの攻撃を回避し続けながらオレはレバンティンをシフトチェンジさせ、刀身を分割させたワイヤーブレードモード『シュランゲフォーム』でオータムを捕える。

 

「クソッ!離せ!」

 

「チェックメイトだ」

 

刹那、オータムを捕らえていたワイヤーブレードがオータムとレベリオンの装甲をまるで紙のようにいとも簡単に切り裂いた。

ほとんどの装甲を破壊されたレベリオンは、もはや強制収納すらできなくなっており、機体各所から小さな爆発が起こっている。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

こちらの攻撃でアリーナ地面に叩きつけられたオータムは全身から血を流し、ボタボタと自身が立つ場所を赤く染め上げる。

オレはレバンティンをシュランゲフォームから通常のブレードフォームへと戻し、オータム言う。

 

「投降しろ。無駄な抵抗はやめといた方が身のためだぞ?」

 

「ッざけんな!このオータム様が!ションベン臭ぇガキなんかに負けるか!!」

 

ギギッと鈍い駆動音をさせながらオータムは一歩、また一歩とこちらに近付いてくる。

 

「てめぇみてぇなガキには……分かんねぇだろうな。多くの人間に蔑まれた者の気持ちなんざ」

 

対人用のダガーナイフを右手で握りゆっくりと近付いてくる。

 

「私はクソな親のせいで苦しい思いをしてきた。特に父親には吐き気を催すような事もされた。そのせいでオレは周りからも蔑まれた。けど、そんな父親と周りの人間から解放してくれたのがスコールだ!」

 

スラスターの出力を上げながらオータムは続ける。

 

「スコールはクズな父親と人間からクズな私を救い、戦士として、恋人としてくれた!分かるか?やっと自分の存在意義を認めてもらえた嬉しさを、救ってもらえた喜びを!!だから私はてめぇらを殺す!亡国機業のためじゃねぇ!私の全てであるスコールのためだッ!!スコールの邪魔する奴はガキだろうと誰であろうとこの私が殺すッ!!」

 

雄叫びを上げながらオータムは最後の力を振り絞ってフルブーストで突撃してくる。

その目は決意がこもっており、涙もうっすら浮かべている。

 

「あぁ、分からないよ。お前の気持ちなんて。オレはガキだからさ。けど、1つだけはっきりしてる」

 

ガギイィィィィンッ!!

 

オレはオータムのナイフをマニピュレーターごと破壊し、そのままオータムの顔面にパンチを放った。

 

「ぐあっ──」

 

「どんな理由でも仲間に手ぇ出す奴は許さない。ぶっ飛ばしていくだけだ」

 

もろにストレートに顔面に本気パンチが入ったため、オータムは遠くにぶっ飛び、地面に叩きつけられ動かなくなった。

ちょっとはシールドエネルギーで威力は削れたと思う。

本気で殴ったけど多分死にはしないだろう。

 

「桜萪!」

 

呼ばれて上を向くとラウラがシュヴァルツェア・レーゲンを展開して隣に降りてきた。

装甲の所々が焼けてたり失っていたりする箇所もあるが、戦闘継続には問題なさそうだ。

 

「ラウラ!そっちは大丈夫か?」

 

「あぁ。非専用機持ちの生徒は全員が学園地下のシェルターに避難が完了した。各学年の専用機持ちがこの現状を打破するべく、学園上空に展開しているIS部隊と戦闘中だ」

 

空中投影のモニターを展開して各所の戦闘を見る。

なるほど、確かに学園内の専用機持ち全員が出撃しているようだ。

先生方も訓練機の打鉄やリヴァイヴで無人機と有人機を相手に頑張っている。

 

「ちふ──織斑先生は?」

 

「教官なら山田先生と共に指揮を取っている。今はアリーナの管制室だ」

 

あの人にも戦闘に参加して欲しいけど、千冬姉にも考えはあるのだろう。

ならオレ達専用機持ちはその指示に従ってこの戦況を打破しなければならない。

 

【高速で接近中の機体を確認!──照合結果0件】

 

照合結果0件?

なら今こちらに向かってきているのは束の無人機か?

それとも亡国機業が独自に開発した新型──。

 

ズドオォォォォンッ!!

 

突如目の前の地面が爆発しオレとラウラは素早く上空へと回避する。

 

「まったく、情けないわね」

 

「……お前がスコールか」

 

「そうよ。亡国機業が幹部スコール。以後お見知り置きを」

 

スコールはドレスの端を持ち上げるような仕草でこちらに頭を下げる。

その頭にはティアラのようなハイパーセンサーが装着されており、身に纏っているISもきらびやかなものであった。

 

【敵機体名『クイーン』。スペック不明】

 

クイーンと呼ばれるその機体はまさに女王のような威厳ときらびやかさを併せ持つ機体だ。

機体装甲は金と銀に染められており、機体フォルムも特徴的な形をしていて、フロントスカートとサイドスカート、リアスカートはドレスに見える。

右手には自身の身長を越える斧槍(ハルバード)が握られている事から、あれがクイーンの主武装である事は間違いないだろう。

 

「オータムがお世話になったようね。……ボロボロにされちゃったようだけど」

 

スコールは全身大怪我を負って気を失っているオータムを冷めた眼差しで一瞥する。

おかしい、これが恋人としての反応か?

普通なら自分の恋人がやられたなら激昂してもおかしくないと思うのだけれど。

 

「わりぃな。こっちにも譲れないものがあるんでね。再起不能とまではいかないけど、ボコボコにさせてもらった」

 

「別に?所詮オータムは私の命令に忠実な犬の1匹。補充はいくらでもいるわ」

 

……犬?

補充?

 

「可哀想なオータム。私が本気で愛してるとでも?私はなんでも従ってくれる駒が欲しかっただけ。恋人同士だなんて微塵も思ったことないわ」

 

氷のように冷たい冷笑を浮かべながらスコールはサイドスカートから射撃武器を展開し、その銃口をオータムへと向けた。

 

「役立たずな子はいらない。オータム、貴女との生活は……それはそれはつまらないものだったわ」

 

無慈悲にもスコールはオータムに向けて極太のビームを放った──が。

 

「……何のつもり?」

 

オレはビームがオータムに当たる直前にスピードで先回りし、ディフェンスの大型シールドで攻撃を防いだ。

 

「何のつもり、かって?それはこちらのセリフだ!なんでオータムを殺そうとした!」

 

「当たり前じゃない。使えない者を生かしておくほど私は甘くないわ。それに彼女は貴方の敵よ?別に殺しても問題ないじゃない」

 

ブチッ!

オレの中で何かが切れた。

 

「……ラウラ」

 

「あぁ。分かっている。手は出さん。──おもいっきりやれ」

 

「おう。オレ、もう限界だわ」

 

オレはドライブリッツを装備し右手にバスターソード『イフリート』、左手に近接長刀『レバンティン』を展開して瞬時加速でスコールに斬りかかった。

 

「てめぇだけはぶっ飛ばす!!」

 

「やってみなさいな坊や」

 

こちらの攻撃を流れるような自然な動きでスコールは回避し、右手のハルバードで突きと薙ぎのコンボでこちらを苦しめる。

しかもこちらのビーム攻撃が当たっても、クイーンの装甲には傷1つついていない。

 

「無駄よ。このクイーンにはABC(Anti Beam Coating)システムが搭載されてるの。レーザーやビーム兵器は無意味よ」

 

「そうか。なら──」

 

オレはオータムの時のようにレバンティンをシュランゲフォームにシフトチェンジさせ、複雑な刃の動きでスコールを攻撃する。

だがその攻撃すらもスコールは顔色1つ変えずに防ぎ、逆にブレード部分を破壊されてしまう。

 

「だからって物理攻撃も無駄よ?あまり私を舐めないでもらえるかしら?」

 

するとクイーンのウイングスラスターとリアスカート部の装甲が分離し、一斉にこちらに向かってと思いきや、凄まじいスピードでアルティウスのアーマーを削っていった。

 

「これは……ソードビットか!」

 

「ご名答。しかもあなたのシールドソードビットの発展型よ?このクイーンは篠ノ之博士が開発した機体で、貴方のアームズのデータが入っているの。旧型の貴方に新型の私を斃す事はできないわ」

 

アルティウスの後継機って事かよ。

まったく、束の奴もやってくれたもんだ!

 

なんとかソードビットの攻撃を回避しようとするが、ビットのスピードはかなり速く、腕部・脚部・胸部・スラスター……あっという間に切り刻まれた。

 

「シールドエネルギー残量25%……やるしかないか!」

 

オレはアリーナ外へと飛び学園から離れ、海上にまで出た。

スコールもこちらについてきており、後ろからビットとビームの攻撃をしてくる。

 

「天翔翆牙!!」

 

そう叫ぶと機体はエメラルド色に輝きだし、シールドエネルギー表示も25%から∞へと表示が変わる。

 

「そんなこけおどしなど!」

 

クイーンのソードビットは先程と同じように攻撃してくるが、こちらの防御力も天翔翆牙によって上がっているのでアーマーもシールドも破壊されない。

 

「次はこちらの番だ!!」

 

ツインプラズマレールガン『プラズマノヴァ』を展開し、最高出力で放ちながらソードビットを破壊し、スコールに接近していく。

 

「無駄よ!クイーンのABCシステムがある限り、あなたの攻撃は私には──」

 

「じゃかぁしい!!」

 

スコールもビーム砲を最高出力で撃ってくるが、今のオレとアルティウスには効かない!

オレとイフリートをビームバスターソードにシフトチェンジさせ、出力リミッターを外した超出力のビーム刃でクイーンの左腕と背部ウイングスラスターの1つを破壊する。

 

「なっ……!?」

 

「ビームを無効化?ならその無効化処理が追い付かない出力で攻撃すればいい」

 

「やるわね坊や……。まったく、卑怯なワンオフを持ったものだわ!」

 

スコールは僅かに残ったソードビットを呼び戻し、ハルバードで攻撃をしかけてきた。

そのスコールの攻撃をオレはイフリートで受け止め、その流れで刀身をずらしてハルバードの刃を受け流し、背後を取った。

 

「このっ──」

 

「堕ちろッ!!」

 

イフリートを振りかぶり、そのまま袈裟斬りで残ったウイングスラスターとリアスカート部を破壊する。

 

だがまだクイーンは動けるらしく、脚部と腰部に設けられた小型スラスターでオレから距離を置いた。

 

「やるわね。貴女を甘く見ていたわ」

 

「こちとらいつでも全力全開がモットーなんでね」

 

再びぶつかり合おうとした瞬間、再びあの声が嫌でも耳に入ってきた。

そう──束だ。

 

『あらあら?学園側の方の制圧は随分手こずってるみたいだね?私達にお任せくださいって言ったのは誰だったっけ?』

 

「……申し訳ありません。予想を上回る戦闘力を持っているので苦戦しています。ゴーレムシリーズも残り僅かです」

 

スコールは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらスクリーンに映る束に頭を下げる。

 

『んー、まぁいいよ。もう撤退しちゃって?あとはこの束さんが自ら潰しちゃうから♪』

 

そう束は言うと何かのスイッチを手に取り見せつけてきた。

 

『このスイッチなんだと思う?これはねー、核ミサイルの発射スイッチなんだよ☆』

 

その一言に学園中の生徒と教師は目を見開いて驚愕した。

当たり前だ、そんなの撃ち込まれたらこの学園は跡形もなく無くなっちまう!

 

『しかもスイッチ押すと自動的にミサイルがIS学園上空に転送されまーす。あ、逃げるなんて野暮な事考えない方がいいよ?そんな時間も与えないで束さんスイッチ押すから』

 

「──だそうよ。ここは退かせてもらうわ。巻き添えはごめんだしね」

 

そう言ってスコールは亡国機業の残ったメンバーと共にこの場から撤退し、いの一番に逃げ出した。

 

「専用機持ち全員に告ぐ!直ちに学園地下シェルターへ避難しろッ!!」

 

千冬姉の怒号でISを身に纏っていた教師と生徒はパニックになりながら、アリーナピットへと戻り、地下シェルターまでの大型エレベーターに乗り込む。

 

『はーい☆じゃーねー、ポチ』

 

束は笑顔で核ミサイルの発射スイッチを押した。

するとIS学園上空にバチバチと紫電が走り、歪みだした。

 

「桜萪!」

 

「ラウラ!」

 

上空を見上げているとボロボロになったラウラが近付いてきた。

 

「何をしている!?早くシェルターに向かうぞ!」

 

「お、おう」

 

オレはラウラを担いでスピード・アームズを装着してアリーナのピットへと向かう。

しかし、ピットからシェルターまでのエレベーターはもう満杯、次来るのを待ってたらもう助からない。

 

《何かを救うには何かを犠牲にしなければならない》

 

ふと夢に出てきたあの赤髪の少女の言葉が頭を過った。

そして、その意味をオレは今理解した。

 

「桜萪!何をしている!早く乗れ──」

 

「わりぃなラウラ──お別れだ」

 

再びアルティウス・スピードを装着しウイングスラスターの出力を上げる。

もう装甲もスラスターもガタガタだ。

 

「な、何を言っている桜萪!早く──」

 

「行けッ!!」

 

ラウラをエレベーター内へと突き飛ばし、オレはエレベーターのドアを閉めてロックする。

ラウラを乗せたエレベーターは地下シェルターへと向かって降下していった。

 

「……じゃあなラウラ」

 

オレはフルブーストで学園上空へと飛び立つと同時に天翔翆牙を発動させて、ディフェンス・アームズのシールドと各アームズのシールドを全て展開した。

核ミサイルはもうゲートからほとんど出ている。

 

『な、何をしている桜萪!早く戻ってこい!』

 

ISのオープンチャンネルから通信が入り、そこには顔を怒りで真っ赤にさせて怒鳴っているラウラが映し出された。

 

「悪い。それはできない。学園は防御フィールドを持っていない。今の状態で爆発したら学園は文字通り消えてなくなる。地下シェルターごとな。だから──オレがこの身を犠牲にしても学園を守る」

 

『そ、それではお前が死んでしまうではないか!』

 

確かにラウラの言う通りだ。

いくらISがエネルギーシールドによって守られているといっても、核爆発の凄まじいエネルギーまで防げるかは分からない。

だが今のアルティウスにはエネルギーを無限に生み出す天翔翆牙がある。

 

しかもリミッターを外せばその出力は桁違いだ。

 

『お願いだ!戻ってきてくれ桜萪!桜萪が死んだら、私はどうしたらいいんだ!!』

 

とうとうラウラは泣き出してしまった。

ボロボロと大粒の涙を流しながらこちらに訴えかけてくる。

 

「……防御フィールド出力リミッター……解除」

 

アームズ全てのシールドとアルティウスのエネルギーシールドによって、学園がエメラルド色の防御フィールドに包まれる。

これでもう後戻りはできない。

覚悟は決まっている。

 

『嫌だ!桜萪!桜萪!!』

 

ラウラの顔はもう涙でグシャグシャだ。

あぁ、ラウラには泣き顔は似合わないな。

やっぱりあの愛くるしい笑顔がよく似合う。

 

「束ッ!!てめぇの思い通りにはさせねぇッ!!」

 

核ミサイルはゲートから完全に出現するや否や凄まじい閃光と共に大爆発した。

ミシミシと機体は悲鳴を上げ、周囲に展開したシールドもその馬鹿げた超高温と熱波により蒸発していく。

しかも爆発の衝撃波によって機体はおろかフィールドで守っている学園まで崩れ始めていた。

 

その全てを全身に受けているオレ自身も体から煙が上がり、骨が粉々に折れ、体の様々な所から血が吹き出している。

 

「ぐぶっ……」

 

衝撃波で内臓が潰れたらしく口から大量の血を吐き出してしまった。

頭はクラクラするし意識が朦朧としてきた。

 

展開していたシールドもほぼ全てが蒸発し、残されているのはアルティウス本体と装着されたドライブリッツのみ。

 

ドオォォォンッ!!

 

「がっ!?」

 

機体の右肩部の装甲が爆発し、その破片がオレの右目に直撃した。

完全に右目は潰れ血がドクドクと頬をつたい流れ落ちる。

 

「うぅっ……ウオオォォォァァァアアアアアッ!!!」

 

雄叫びと共にアルティウスのエネルギー出力がオーバヒート状態となった刹那、機体は大爆発をお越しオレはどうする事もできないまま、地上へと堕ちていった。

もうアルティウスを展開する事はできない。

爆発の衝撃によって体はズタボロになり、義手や義足も基本フレームだけを残してバラバラ。

 

「……ラ……ウラ…………」

 

──ゴシャッ。

 

嫌な音と共にオレは海面に叩き付けられ、そこでオレの意識は──完全に途切れた。

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