IS・ALUTIAUSS〈インフィニット・ストラトス アルティウス〉   作:ZERO式

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第19話 代償

──5月27日某所。

 

「行ったぞ一夏ッ!」

 

「うおおぉぉぉぉぉ!!」

 

雪片弐型から零落白夜の光刃を発生させ一夏はソード・アームズを装備したゲシュペンストに斬りかかる。

上段からの逆袈裟、からの左薙ぎでゲシュペンストの近接ブレードと装甲を破壊する。

 

「トドメだッ!」

 

動きに隙ができたところに箒が両手に持った雨月と空裂での斬撃の乱舞でゲシュペンストをバラバラにする。

バチバチと紫電が走りゲシュペンストは爆散、コアも共に破壊され地上へと落下していった。

 

もくもくと上がる爆煙の中をもう1体のゲシュペンストがスピード・アームズによる高速機動で一夏へと迫る。

一夏は防ごうと雪羅に零落白夜の防御フィールドを展開しようと構えるが、それよりも先にオレは動いた。

 

「やらせるかよ」

 

迫るゲシュペンストの頭とヒートソードが握られた右腕を真正面から掴み、メキメキと右腕を肩の部分から引き千切る。

千切られた部分からは赤茶色の液体が吹き出し続けるが、無人機なため痛みなんてものはなく、残った左腕で攻撃をしようとしてきた。

 

だがそれよりも先にオレはゲシュペンストの頭を胴体から引っこ抜き、頭部を失なって混乱状態のゲシュペンストをヴォルテクスで一刀両断、撃破する。

 

「助かった桜萪」

 

「油断は禁物だ一夏、そっちは頼んだぞ。箒も頼む」

 

「任せろ」

 

コクンと頷き一夏と箒は他のゲシュペンスト部隊へと飛んでいく。

ハイパーセンサーにはラウラやステラ達もゲシュペンストやゴーレムⅢと交戦している様子が映し出される。

 

……連合軍に入隊してからはや1ヶ月が経過した。

ラビットの侵攻は以前にも増して激しくなり、ゲシュペンスト以外にも新型の無人機や有人機を投入してきた。

 

だがこちらもやられてばかりいられない、まだ少ないが撃破した敵ISからコアを回収しているのだ。

主にこの任務を任されているのはオレの所属するルシファー小隊と、一夏と箒、簪と楯無さんが所属するファング小隊、そしてシャルと鈴、セシリアとオータムが所属するライトニング小隊だ。

 

《9時の方向より敵機4接近!──照合。無人機『ワイバーン』と確認!》

 

水色と黒の装甲色をした飛竜のようなISワイバーンが、竜の翼のようなウイングスラスターを広げ、こちらに接近してくる。

 

「桜萪はやらせん!」

 

すかさずラウラが援護に駆けつけ両肩に搭載されたプラズマレールガン『シュネー・ヴァルツァー』を展開、プラズマ弾を迫り来るワイバーン4機へ向けて発射する。

 

1機に直撃し大破させるが残りの3機が爪の先からビームクローを展開し攻撃を仕掛けてきた。

 

「余所見してんじゃねぇよッ!」

 

怒号と共に1機のワイバーンが右肩から左脇腹にかけて真っ二つにされ爆散、地上へと落下していく。

見ればそこには鎌のように先端が折れ曲がった異形の剣『フォルケイドソード』を肩に担ぎ、ISフッケバインを駆るオータムの姿があった。

 

「加勢すんぜ。こっちは片付いたからな」

 

「頼む。ならそっちの双剣を構えている奴を任せた」

 

「あいよ」

 

ビームソードで攻撃してきたワイバーンの背後へとフルブーストで回り込み、オレはその開かれた翼を掴み、強引に引き千切り破壊する。

 

振り向き様にワイバーンはビームソードで斬りかかろうとするが、ビームソードが握られた右腕をこちらに届く前に掴みかかり、空いた左手でワイバーンの頭を掴む。

 

そして、そのまま零距離でワイバーンの頭に向けてディバイディングスマッシャーを放った。

 

《ワイバーン撃破。さすがです我が主》

 

「コアは?」

 

《無事です。ライトニング4が撃破したワイバーンのコアは破壊されてしまいましたが》

 

「何も敵機全てのコアを回収しろとは言われてないから問題はないだろう。さて……ラウラ、まだいけるか?」

 

「あぁ問題ない。損害は軽微だ」

 

ランブルデトネイターでワイバーンにトドメを刺しながらラウラは答える。

 

「ルシファー3が少々苦戦しているようだ。加勢してくる」

 

そう言ってラウラはレヴァンティンⅡを右手に召喚し、2機のゲシュペンストとワイバーンを相手しているステラの方へと向かった。

 

《──ワイバーン4機接近!ロックオンされています》

 

「ハッ!上等ッ!!」

 

ヴォルテクスをビームバスタードソード形態へと変形させ、天閃を発動させる。

左腕で集束・倍加されたエネルギーがウイングスラスターと脚部スラスターへと流れ、ウイングスラスターからはエメラルド色の粒子が溢れ出た。

 

「オレを斃したきゃ師兵団規模を投入して来いやッ!!!」

 

エネルギーを倍加させた出力でスラスターを開放し、オレは向かってくるワイバーン達へ超高速で突っ込んでいく。

そして構えたビームバスタードソードとスラスターから溢れ出る高出力のエネルギー粒子で、ワイバーン4機をまとめて斬り刻んだ。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「……チッ。生存者は少数か」

 

「それどころかまたもや女性が連れ去られている。ISを使って連れ去った様子はない、どうやら何らかの手段で女性達を転送しているみたいだ」

 

未だに炎や煙が上がる街の中をオレとラウラ、ステラは生存者がいないか捜索をしていた。

周辺には倒壊した建造物の壁や鉄骨が転がり、敵ISのものと思われる装甲の残骸も散らばっていた。

 

「ステラ、お前がラビットにいた時にも既に束は民間人を拉致していたのか?」

 

「私がラビットを抜ける直前には既に一部の部隊が民間人の拉致を束からの命令で実行していました。しかし、あくまで前線部隊だった私にその拉致する目的は告げられていません。それも私が抜ける理由の1つになっているのですが……」

 

ナイトレイドの頭部ハイパーセンサーを部分展開し索敵しながらステラは語る。

相変わらず無表情で何を考えているかは分からないけど、どこかその瞳には怒気が孕んでいる気がした。

 

ステラが瓦礫の裏を覗き込んだ瞬間、背後に倒れていたはずのワイバーンが動きだし、その凶刃をステラの心臓に向けて振り下ろす。

 

「やらせるかぁぁぁぁッ!!」

 

オレはワイバーンに向かって跳躍し急接近し、凶刃がステラの肉体に突き刺さる前に右手で掴みかかる。

 

「ソード・ブレイク!」

 

右手に力を入れるとバキンッ!と刃がまるで水溜まりに張った薄い氷が割れるかのようにバラバラに砕ける。

左腕にモーターブレードを召喚し左肩から右脇腹へと逆袈裟で斬り裂く。

斬り裂いたボディからコアが露出しそれをオレは左手で掴み、強引にボディから引き離す。

 

いくつものコードが繋がったコアを引き抜かれそうになって苦しそうにワイバーンはオレの首へと手を伸ばす。

首を捕まれるより先にオレはコアを完全にボディから引き千切った。

血の色に似た潤滑液のようなものがコードから吹き出し、オレの体を赤く染め上げた。

 

ガシャン、と力なく地に崩れ落ちるワイバーンを横目にオレは奪い取ったコアを懐に入れた。

 

「無事かステラ?」

 

「た、助かりました……ありがとうございます」

 

尻餅をついていたステラに手を差し出して起き上がらせる。

特に外傷等は見られない、どうやら無事みたいだ。

 

「無事かステラ!」

 

ラウラも急いで駆け寄り両手に6本のランブルデトネイターを召喚し周囲の警戒を行う。

オレもモーターブレード以外に右手を装甲化し右目とハイパーセンサーを直結させて索敵を始めた。

 

だが周囲を警戒するも味方ISの反応しかなく敵らしき反応は見られない。

 

「……死に損ないは今の奴だけ。潜んでいる奴もいないようだな」

 

《そのようですね》

 

「あぁ。なら右手だけ解除しておく──ん?」

 

……右手に意識を集中するが“解除”できない。

 

「どうした桜萪?」

 

心配そうにラウラが顔を覗き込んでくる。

 

「あぁいや、右手が元に──あ、戻った」

 

右手が一度光り元の生身の腕へと戻る。

気のせいか最近展開速度が速く収納速度が遅くなっている気がする……。

それに妙に疲労感を感じる。

以前はこんな事なかったんだが……。

 

《我が主?》

 

「いや、何でもない。引き続き敵に警戒しながら捜索を続けよう」

 

モーターブレードを展開したままオレは再び歩き出す。

後ろでラウラが心配そうな表情を浮かべている事に気付かないまま……。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「──で、“人形”達の稼働状況はどうなのかな?」

 

「上々ですわ篠ノ之博士。『ブレインコントロール』のおかげで我々の命令に忠実に従います。後は機体の完成を待つばかりです」

 

薄暗い部屋をいくつも空中に投影されたモニターが怪しく室内を照らす。

モニターもそうだが室内に設置された機器から光る赤い光によっても不気味に赤黒く染まっていた。

 

その不気味な光の中に篠ノ之束とスコールはいた。

2人の視線の先には真っ白の服を来た“女性”達が銃やナイフで殺しあっている映像がモニター流れていた。

 

そのモニターの隣には新型の有人ISと思われる機体のスペックや画像が空中投影で映し出されている。

 

「ふふっ。もうすぐ完成するよ、人形達の“伊邪那魅”はねっ。あとはスーちゃんの機体もねっ☆」

 

「ありがとうございます。機体が完成した暁には見事邪魔者共を葬って差し上げますわ」

 

「期待してるよー?特におーくんはいっくんや箒ちゃん以上に目障りだしねっ。……おーくんは絶対殺す。悲鳴を上げようと助けを乞うても何が何でも殺す!あの子は私の目に障る、感に障る、全てに障る。だから殺す!私の最大の“障”害は絶対にこの手で殺してあげるっ!アハハははハはハはハハッ」

 

甲高い笑い声を上げながら束は自分の言葉に酔い秘部を濡らす。

もはやそこにはかつて箒や桜萪を愛した心優しい姉の姿は一切無く、人の皮を被った悪魔のような狂ったマッドサイエンティストしか無かった……。

 

(……狂ってるわね。機体を受け取ったらさっさとおさらばしましょうかね。もうこの女に利用価値はない。世界を壊されるより前にこの女を始末しなきゃね)

 

狂ったように笑い続ける束をスコールはまるで害虫でも見るかのように冷たく蔑んだように見据える。

そしてそのまま部屋を出て行くのであった……。

 

(そうよ。真にこの世界を支配するのは篠ノ之束、貴女じゃないわ。この私よ……フフフフ)

 

 

◇◆◇◆

 

 

任務からの帰還後、オレ達ルシファー小隊のメンツはPXで食事をしていた。

時間帯もあり来ている人数は少なめだ。

 

「なに?それは本当か?」

 

「あぁ、どうやら最近展開と収納の速度が極端でな」

 

「ISに問題があるのでは?」

 

《いえ、特に故障やトラブル等の問題は見受けられません。故に原因が分からず仕舞いです》

 

不知火自身もこの有り様である。

うーん、と皆で頭を捻るがそれらしいはっきりとした原因は浮かんでこない。

 

「体調はどうなのですか?」

 

すると一緒に話を聞いていたクラリッサさんが訊ねてきた。

 

「特に問題はないけど……あ、でも装着を解除した時に疲労感はあるかな」

 

「疲労感……ただの戦闘による疲れではないのでは?」

 

「かもね。だけどここ最近になってからだから……うーん」

 

だめだ、いくら考えても時間を無駄にするだけだ。

解決できない事にモヤモヤとしながらもオレは気分を少しでも落ち着かせるためにコーヒーを飲んだ。

 

「精密検査を受けてみてはどうだ?何か分かるかもしれん」

 

「そうだな……けど今日はもう遅いから日が昇ったら受ける事にするよ。それじゃ部屋に戻るわ」

 

「私も行く」

 

席を立つや否やラウラも同じように席を立ちオレの手を握ってきた。

どうやらオレの部屋に一緒に来るらしい。

 

「ゴムは付けるんですよ」

 

しれっと爆弾発言をするステラに対しラウラは恥ずかしがるどころか何故か勝ち誇っている表情を浮かべている。

 

「無論だ。こうやって常に──」

 

「だあぁぁぁ!何を出そうとしてるんだお前は!ステラも変な事言うなまったく……」

 

何やらいかがわしいものをポケットから出そうとしたラウラを制止し、オレは軽くステラの眉間にチョップ(左腕)をくらわせた。

 

「せめて右手でお願いします」

 

「よし、右手だな」

 

「いやもういらないです、だから右手を構えないでください」

 

無表情だが若干頬を赤くしながらステラは抗議の眼差しを向けてきた。

 

心なしか目にはうっすらと涙を浮かべているように見えたが、敢えて見なかった事にしよう。

 

「ったく……それじゃ改めて部屋で──」

 

戻って休もうと歩きだそうとした瞬間、突然目眩がし足から力が抜ける。

 

(な……んだ……!?急に……体に力が入ら……なく……)

 

がくっとオレは思わず床に膝をつく。

すかさず倒れこまないように右手を出すも、右手にまで力が入らずにそのまま倒れこんでしまった。

 

しかも意識も遠くなって……。

 

「おい!おい桜萪!しっかりしろ!」

 

「櫻井中尉!誰か衛生兵を呼べ!櫻井大尉を医務室へ運ぶんだ!」

 

「ルシファー4、しっかりしてください……!くっ、私がルシファー4を運びます」

 

「待てミルカ少尉、下手に動かさない方がいい!」

 

「桜萪、桜萪!目を覚ませ桜萪ッ!!」

 

(……く……そ……一体何が……)

 

ラウラ達が必死に叫んでいるみたいだが何も聞こえない、目も霞んできてはっきりと見えない……。

 

オレはそのまま動く事も話す事もできないまま、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

「……ん……あ……」

 

──目を覚まして最初に目に映ったのは真っ白な天井だった。

ゆっくりと首だけを起こすと真っ白なベッドに寝かされている。

どうやら医務室に運びこまれたらしい。

 

「くそ……過労か?気を失うなんて情けないな……」

 

どれくらい寝ていたのか分からないが疲労感がハンパない。

ここ最近ちょっとした疲労感はあったが今は体を少し動かすだけでも辛い程だ。

 

「起きたか櫻井中尉」

 

するとカーテンを開けて千冬姉が入ってきた。

ゆっくりと体を起こし敬礼するが千冬姉は首を振り、オレの肩に手を回しベッドに寝かせた。

 

「無理をするな。寝たままで構わない」

 

「は……。えっと、なぜ織斑司令がここに?」

 

「お前が意識を失って運ばれたという報告をハルフォーフ大尉から受けてな」

 

近くにあった丸イスに座りながら千冬姉は続ける。

 

「それでお前が寝ている間にお前の体を調べさせてもらった。……結果を知りたいか?」

 

「……はい」

 

コクリと頷くと千冬姉は短く溜め息をつき、左手で持っていたタブレット端末を操作しながら話し始める。

 

「単刀直入に言おう。お前という人間( ・ ・ )は死ぬ」

 

一体何を言われたのかオレは理解できなかった、まるで能が考える事を放棄したかのようである。

だが段々と千冬姉が言った言葉の意味を理解すると体が震え始めた。

 

「そんな……オレはもう生きられないんですか?」

 

「あぁ、人間としてはな」

 

「人間としては?それはどういう意味ですか?」

 

「……中尉、右腕を出せ」

 

言われるがままにオレは千冬姉の前に右腕を出す。

すると次の瞬間、千冬姉は腰に携えていたナイフを取り出し、あろうことかオレの右腕に突き刺したのだ。

 

「なっ!?千冬姉一体何するん──」

 

「痛くないだろ?」

 

「……え?」

 

激怒するオレをよそに千冬姉の声は至って冷静だった。

そして恐る恐るナイフの突き刺さった右腕を見てオレはさぁっと血の気が失せる気がした。

 

「ほとんど痛くない……血も出てない……」

 

そうなのだ、ナイフが深々と刺さっているのにも関わらず痛みがほとんどと言っていいほどないのだ。

軽くつねられた程度、それくらいの痛みしかない、そして全く傷口から出血していないのである。

 

「お前の体を構成する細胞の半分以上が全く別なものに変異している。はっきり言うならそれはナノマシンだ。そのナノマシンの正体は……」

 

「……不知火」

 

「その通りだ。不知火はお前を助けるためにお前と融合し、その結果、お前は助かり且つ人智を超えた能力を身に付けた。だが、何事にもメリットがあればデメリットもある……お前の体は不知火に、いや、正確には不知火のコア( ・ ・ )に侵食されているんだ」

 

右腕のナイフを抜き一呼吸置いて千冬姉は続ける。

 

「ISのコアは未だほとんどが謎だ。それこそ人間であるお前と融合ができた理由でさえ不明だ。だがそんな未知なモノを体内に宿した人間が無事であるはずがない、それこそ神の使う武器をただの人間が扱えると思うか?」

 

「いえ……」

 

「つまりはそういう事だ。使えたとしても何かしらの反動が必ず来て体を蝕む。お前の場合、不知火を使う毎にその侵食が進むらしい。もちろん不知火を使用せずともそのコアを常に宿しているのだから侵食は受けているが、戦闘で使用する際の侵食率はその比ではない。少なくともあと数回、不知火を使えばお前の体は不知火そのもの──人の形をしたISになる。私が人間として死ぬと言ったのはそういう意味だ」

 

沈黙が空間を支配する。

だがオレの脳内では今千冬姉が話した内容を理解しようと必死に考える自分がいた。

 

細胞がナノマシン化?コアの侵食?人の形をしたIS?

もう何がなんだか分からない、頭がクラクラしてまるで後頭部を金槌やハンマーでおもいっきり殴られたみたいだ。

 

「……侵食の兆しは出ていた。まずは適正値検査の機械が反応しなかった事、過度な疲労感、ISの展開速度と収納速度の極端な差……だろ?」

 

「はい……」

 

「そして極めつけは自己修復機能の生身での発現だ。見ろ、今しがたナイフの刺さっていた右腕を」

 

千冬姉に言われるがままに右腕を見ると、ナイフが突き刺さっていた穴は完全に塞がっており、傷痕すらなく刺される前の状態に戻っていた。

恐る恐る左手で触ってみるがもちろん痛みは感じない、だが触覚は失っていないようで触られている感覚は感じ取れた。

 

「お前が望むならルシファー小隊から除隊しても構わん、もちろん軍からもだ。人間として残された時間を過ごすか、それともここに残り人間を辞める事になっても束と戦い続けるか……決めるのはお前だ」

 

“そう死に急ぐな。お前とはいずれ再び相対する事になるだろう。もっとも……それまで体が無事であれば”

 

初めてアストレアと戦った時、味方であるはずのパイロットを殺したブリッツ1と呼ばれた女の言葉が頭を過る。

……まさか奴はオレがこうなる( ・ ・ ・ ・ )事を予見していたのだろうか?

 

「オレは──」

 

《コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!旧渋谷区駅跡周辺にラビットのIS部隊が出現!近くにある難民キャンプを襲っている模様!IS部隊は至急現場へ急行せよ!繰り返す──》

 

サイレンと共にオペレーターからのアナウンスが入る。

オレはベッドから起き上がりすぐに発進ゲートに向かおうと床に足をついていざ走ろうとした瞬間、不恰好にも転んでしまった。

 

「桜萪!」

 

《我が主……ご無理は──》

 

「不知火、身体動作の補助を頼む」

 

《しかし──》

 

「お前は知っていたんだろ?オレの体の事を」

 

《……はい》

 

オレの肩に現れた不知火は申し訳なさそうに俯きオレから目を反らす。

 

「お前は優しいから、オレに気を遣ってくれたんだな。けど、オレはここでリタイアする訳にはいかない。例えこの体がISに成り果てても……ラウラを守り束を斃すまで……諦める訳にはいかねぇんだよっ……!」

 

《…………》

 

オレの覚悟を受け止めたのか不知火は姿を消す。

消えた直後、体の疲労感が減り動く事も楽になった。

どうやらオレの言った通りにしてくれたらしい。

 

「ありがとう不知火……千冬姉、オレは戦い続けるよ。束をぶん殴ってラウラを傍でずっと支えるって約束したからな、必ず生きてこの戦争を終わらせる」

 

ゆっくりと立ち上がりながらオレは千冬姉を見据えてはっきりと言い放つ。

すると千冬姉は溜め息をついたかと思えば、優しい笑みを浮かべた。

 

「お前ならそう言うと思った。なら私から言うことはない、存分にやれ!」

 

「あぁ!」

 

千冬姉に見送られオレは駆け出し発進ゲートへと向かう。

到着すると既にそこにはラウラとステラの2人がいた。

オレが来た事に気付いた2人は心配した面持ちで近付いてくる。

 

「桜萪!気がついたのだな。しかしお前の体は……」

 

「ルシファー4、貴方の体の事は既に織斑司令から聞いてます。……それでも行くのですか?」

 

「IS人間舐めんなよ?こちとら生半可な覚悟で不知火を宿してる訳じゃないんだ。どんな姿になってもオレはラウラを守る、それだけだ。不知火!」

 

《はいっ!武装形態!》

 

不知火の言葉と共に体が深紅の粒子に包まれ、IS装甲が形成され装着されていく。

最後に頭部ハイパーセンサーが装着され、バイザー奥のツインアイセンサーが光る。

 

《焔帝ディストライザー展開完了。オールグリーン》

 

「さぁ、行こうぜ2人とも。早くこの戦争を終わらせるためにな」

 

「あぁ、行こう桜萪!」

 

「それが貴方の覚悟ですか……。なら私も最後まで付き合うしかないようですね、ルシファー4──いや、桜萪」

 

ラウラとステラはそれぞれ自分のISを身に纏い、カタパルトへ向かった。

 

「ステラ・ミルカ。ナイトレイド出ます」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、シュヴァルツェア・ヴォルフ出るッ!!」

 

電磁カタパルトによってラウラとステラは勢いよく加速しながら出撃する。

そしてオレも電磁カタパルトに乗り発進体勢をとった。

 

「ありがとな不知火、お前は最高の相棒だ。おかげでオレはラウラのために戦える。最後まで付き合ってくれるか?」

 

《当たり前です我が主。この力は全て貴方のために振るいます》

 

「あぁ、頼むぜ。櫻井桜萪、ディストライザー出るぞッ!!」

 

勢いよく電磁カタパルトから発進し先に出た2人に追い付く。

体のIS化が進んでいるせいか制御がとても楽だ。

 

ウイングスラスターもまるで直接背中から直接生えているかのように動いてくれる。

 

「奴等はまた女性達を狙って現れたのかもしれない。絶対に斃すぞ」

 

「「了解っ!!」」

 

 

◇◆◇◆

 

 

──渋谷、かつては沢山の若者で溢れかえっていた繁華街も今となってはその輝きは失われていた。

建物は倒壊し瓦礫で溢れかえり、見渡せば至る所で煙が上がっている。

 

その中でラビットのIS──アストレアの1体が斜めになっているビルの屋上から眼下に広がる光景を見て満足げに笑っていた。

 

「くっくっく……無様なものね。あぁ、早く(蛆虫)共を殺さなきゃ。この世界に男なんていらないんだから」

 

女の右手には無惨にも胴体と左腕を千切られた男の死体が掴まれていた。

男に対してかなりの恨みがあるのか掴まれている死体の顔は判別がつかないほど潰されている。

 

「まさかここに貴方がいたとはね、私を捨てて他の女に行った罰よ。恨むなら自分を恨みなさいなヤ○チン野郎が」

 

まるで害虫でも見るような目で女は掴んでいた男の死体を一瞥し、ゴミを捨てるようにその死体を放り投げた。

 

「あぁ、そろそろ殺しに行かなきゃ──」

 

刹那、女の体が真っ二つに切り裂かれる。

 

「え?」

 

宙を舞いながら女は自分を斬った人物を見る。

だが自分が真っ二つにされたと認識する頃には女は漆黒の炎によって装着していたアストレアごと燃え爆散した。

 

「1機撃破」

 

漆黒の炎──辺獄烈火(ベルフェゴール)が燃える剣ヴァルキリーを肩に担ぎステラはぽつりと呟く。

 

ナイトレイド……“夜襲”の意味を冠するこの機体は夜にその真価を発揮する。

夜雀やミラージュ・アームズに搭載されているPhantom Stealth System──通称PSSの発展型がナイトレイドには搭載されており、レーダーやセンサーにも映らず、相手に気付かれないまま敵に接近、ノーダメージで撃破する事ができるのだ。

 

「お前ぇぇぇぇぇっ!!」

 

味方を殺られ激昂したアストレアの1人がステラへと急接近し、大型近接ブレードを振り下ろす。

だがブレードはステラに届く直前に爆発し砕け、アストレアはすかさず上空へと退避する。

 

「遅いッ!!」

 

アストレアを囲むようにランブルデトネイターが出現し、パチンという音と共に肉薄したアストレアへと襲いかかる。

ランブルデトネイターがアストレアに突き刺さったその瞬間、大爆発が起こり文字通りアストレアをボロ雑巾のような姿に変えた。

 

「そんな……なんで……」

 

「機体が高性能でも扱う者が優れていなければどうという事はない。そして、私の方が強かった、それだけだ」

 

そう言いながらラウラはアストレアに急接近し、勢いを乗せた右足での回し蹴りを放つ。

 

防御すらできずにアストレアはラウラからの回し蹴りをまともに背中に受け、近くのビルに突っ込みそのまま動かなくなった。

 

「おーいラウラ、殺してないよな?」

 

「無論だ。だがランブルデトネイターをまともに受けたからな、命の保証はするが四肢や内臓の無事までは知らん」

 

「おーおー怖い怖い」

 

上空からゆっくりとオレはラウラの隣に降りる。

つい先程オレ自身もアストレアではないが敵ISのワイバーン2体を撃破したとこだ。

 

その証拠という訳ではないがディストライザーの装甲にはワイバーンに流れていた潤滑油らしきものが返り血のように付着している。

 

「さすがですね桜萪、そーやって敵パイロットの返り血を浴びて敵と味方に恐怖を植え付けるんですね分かります」

 

「いやこれ無人機のだから」

 

今ディストライザーのマスクがデフォルメになった気がした、呆れた表情のギャグ顔的な。

だがステラはこういう性格なので気にしたら負けだと思う事にした。

 

「──また会えたな少年」

 

突然聞こえてくる女の声、しかもこの声は前に聞いたことがある。

振り向けばそこには黒く染められたアストレアを纏う女──ブリッツ1がいた。

 

前回はフルフェイス型のハイパーセンサーだったが、今回は羽のような形をしたヘッドギア型のものを装備している。

おかげでようやく顔を拝む事ができた。

 

「どうやら体は無事なようだな?マスターの見解によればコアに侵食されて排人になると聞いていたが……」

 

わざとらしくブリッツ1は顎に手を添える仕草を見せながら話す。

話の内容からして束もオレの体の事について知っていたようだ、しかしその予測は大きく外れたみたいだけどな。

 

「排人どころか現在進行形で進化中さ。あのウサギ頭をぶん殴るためにな」

 

ヴォルテクスの切っ先をブリッツ1へと向けて軽く挑発してみるが相手は乗ってこない。

だがブリッツ1は通常のアストレアとは異なり、右手に大型ビームソードを召喚した。

 

どうやらこちらでいう専用機らしくカラーリング以外に武装もポテンシャルも通常のアストレアとは異なるようだ。

 

《──機体名アストレア・ノワール。展開中の武装は対IS用高出力ビームソード『ヴォリーショナル』》

 

「実は私は君と戦う事を望んでいたんだ。だが通常のアストレアでは君と対等に渡り合えそうにないんでな、マスターに進言して専用機としてカスタマイズしてもらった」

 

「……束はオレを殺したくてたまらないらしいな」

 

「あぁ、そうだ。マスターの中で最も邪魔なのは織斑一夏でも篠ノ之箒でもましてや織斑千冬でもない。君だ、櫻井桜萪……IS操縦者(ドライバー)としてISと融合した唯一の存在、君は危険過ぎる。マスターの計画を完遂させるには君は消えなくてはならないんだ」

 

そう話しブリッツ1はこちらに仕掛けてきた。

ヴォリーショナルを右薙ぎに振るい、オレはヴォルテクスで受け止め鍔迫り合う。

バチバチと火花が散るがオレはウイングスラスター部を前方へ回転させ、そのままブリッツ1の背後へと回り込む。

 

「取った!」

 

「残念!」

 

ヴォルテクスで逆袈裟で斬りかかるがブリッツ1はヴォリーショナルを背後へ回し、こちらの斬撃を受け止めた。

 

戦って分かる、こいつは冗談抜きで強い。

機体性能だけでなくパイロットの技量としてもトップクラスだと感じ取れる程だ。

 

「ならっ!!」

 

オレはブリッツ1から一度離れ距離を置き、ヴォルテクスを変形・分離させ両腕に装備した『ダブルソードモード』に移行する。

そしてフルブーストからの瞬時加速を行い、ブリッツ1へと斬りかかった。

 

「ほう。その武器は様々な形態になるのか、大したものだ」

 

こちらの攻撃を正面から受けとめながらブリッツ1は冷静に淡々と話す。

続け様にダブルソードによる乱撃を繰り出すが、やはりブリッツ1には効かず乱撃全てを捌かれてしまった。

 

「次はこちらの番だな」

 

そう短く呟きブリッツ1はヴォリーショナルを構え、一撃一撃が思い斬撃を繰り出してくる。

その斬撃を両腕に接続したヴォルテクスでなんとか捌きながら防御するが、あまりの乱撃と威力でヴォルテクスの刃が欠けヒビが入り始める。

 

(マズイ……!)

 

マスクの下で額から嫌な汗が流れる。

スラスターを噴かせオレは再びブリッツ1から距離を置き、ヴォルテクスを再びバスタードソードモードに変形させ、突撃する──だが。

 

「なっ……!?」

 

ヴォルテクスの切っ先がブリッツ1に届こうとした刹那、突然ディストライザーの装甲が光の粒子となって消えた( ・ ・ ・ )のだ。

 

「悪いな」

 

ニヤリと邪悪な笑みを浮かべながらブリッツ1はヴォリーショナルをオレに向けて振り下ろす。

とっさにオレは義手である左腕のモーターブレードを展開、対抗しようとするが振り下ろされた凶刃は無慈悲にモーターブレードごと左腕を肩の付け根から切り裂かれてしまった。

 

「くっ……!!」

 

「終わりだ」

 

ブリッツ1は丸腰のオレに容赦なく蹴りを放ち、腹にまともに食らったオレは体をくの字に曲げ、そのまま瓦礫の中へと吹っ飛んだ。

 

出血はしていないが体を動かす事ができない、今の衝撃で右の義足も破壊されてしまった。

 

「なん……で……」

 

「なんでISが解除された?それはこの機体に搭載されたシステムのためだ」

 

ゆっくりと音もなくブリッツ1はオレの目の前に降りてくる。

上を見上げればラウラとステラがアストレア4体を相手に戦っているのが見える。

 

「特定の機体の制御を阻害するフィールドを形成、フィールド内に入れば操縦者と機体のリンクは絶たれ制御不能になり、装甲の展開維持もできなくなる。それがこの『ストラーフシステム』だ」

 

そう淡々と説明するブリッツ1の胸元──ノワールの胸部装甲にある水晶が赤く光っている。

どうやらあの水晶がそのストラーフシステムのフィールド発生装置らしい。

 

「確実に君を殺すためにはこうした方がいいんでな。悪く思わないでくれ」

 

立ち上がろうとするも力が入らずしかも右足もないので無様に倒れる。

そうしているうちにもブリッツ1はオレの頭上まで近付いており、ヴォリーショナルを構えていた。

 

(くそ……!動けよ!手よ足よ!こんなとこでくたばる訳にはいかねぇんだよ!)

 

“人間としてのお前は死ぬ”

 

ふと千冬姉の言葉が頭を過る。

 

(あぁ、いいさ……。もう覚悟はできてる、ラウラを守り抜くためならこの体も魂も全部捧げてやる!)

 

──ドクン。

 

何かが脈を打ちかつて感じた事のないような力が、エネルギーが体中を駆け巡る。

 

《……よろしいのですね?我が主》

 

(あぁ、もちろんだ)

 

《もう、人間には戻れないのですよ?》

 

(遅かれ速かれオレは人間を辞めるんだ。その時期が早まった、それだけだ。それとも、今やるのはまずいか?)

 

《ふっ……不知火に落ち度でも?》

 

「終わりだ、死ね少年」

 

ブリッツ1がそう告げヴォリーショナルがオレの頭に向かって振り下ろされる。

 

「うおおおおオオオオオアアアアアアアアアッ!!!」

 

刹那、身体中から紅い粒子が溢れ出し、オレは雄叫びを上げながら左腕( ・ ・ )を突き出し迫ってきていたヴォリーショナルを殴り飛ばした。

 

「なん……だと……!?お前、なぜ……!?」

 

ブリッツ1は驚愕する。

当たり前だ、切り落としたはずの左腕が新たに生えていた( ・ ・ ・ ・ ・ )のだから。

 

しかも壊れた右足も左腕のように新たに生えており、その形はまるで機械のドラコンの手足だった。

 

「馬鹿な……フィールド内ではISを使用する事はおろか、装着する事も不可能なはず──はっ!?まさか……お前……」

 

「あぁ、そうさ。オレはもう人間じゃない……。IS( ・ ・ )そのものだ……!」

 

カシャカシャと左腕から体を構成するナノマシンが変形していき、オレの姿は人間である櫻井桜萪( ・ ・ ・ ・ )からISディストライザー( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )へと文字通り姿を変えた。

 

ウイングスラスターはかつての機械的なフォルムではなく、まさしくドラゴンの持つような有機的なフォルムへと変わり、リアアーマーからは先端が刃状のテールブレードが生えている。

 

まさしく人型のドラゴンと言っても過言ではない。

 

「まさか……自らの意思でISそのものになるとは……君は大馬鹿者だな!!」

 

大馬鹿者とこちらを罵るわりにはブリッツ1は嬉々とした表情をしており、一度上空へと上がった。

 

「そういう者を求めていた……君のような大馬鹿者な強者を!!」

 

そう叫びながらブリッツ1はウイングスラスターを変形させ両肩から2門のキャノンを展開した。

バチバチと紫電が走り砲口から赤黒いビームが放たれる。

 

「さぁ少年、これをどう対処する!?」

 

「ハッ!!」

 

オレはおもむろに右手を前に翳す。

 

『Eraser!!』

 

電子音と共に右腕の宝玉が輝きだし展開装甲がスライドする。

そしてサファイア色の粒子が展開装甲から溢れ出し、翳した手のひらにエネルギーが集束される。

 

『零幻発動』

 

刹那、翳した左手を中心にサファイア色のフィールドが形成され、迫っていたビームがフィールドに当たった瞬間、赤黒いビームはさぁっと音もなく霧散して消えてしまった。

 

「驚いた……そのような能力まで身に付けるとは。今のは零落白夜か?」

 

「……正確には違う。こいつはあれのようにシールドエネルギーは消費しない」

 

「おもしろい……!実におもしろぞ少年!こんなに心踊るのは初めてだ!」

 

ブリッツ1はヴォリーショナルの他に左手に近接ブレード『レイストーム』を召喚し、二刀流で斬りかかってきた。

それをオレは両手で捌きブリッツ1が肉薄した瞬間、彼女の腹へとヤクザ蹴りを放ち、その勢いを使い翼を広げて上空へと飛翔する。

 

「桜萪!?」

 

「離れてろラウラッ!!」

 

『Charge!!』

 

左手を下にいるブリッツ1へと向け、天閃を発動させる。

左腕の宝玉が輝きだしスライドした展開装甲からエメラルド色の粒子が溢れ、左手に集束されたエネルギーが充填される。

 

「食らえッ!!ディバイディングブレイカー!!」

 

ディバイディングスマッシャー以上の威力を持つエメラルド色のビームが真っ直ぐブリッツ1へと放たれる。

射線上にいたアストレア2機が回避できずに直撃、炎に包まれながら地表へと落下していく。

 

だがブリッツ1は回避しようとはせずにヴォリーショナルとレイストームを構え、2本を交差させるように振り切る。

 

すると斬撃が十字の衝撃波として放たれ迫っていたディバイディングブレイカーと衝突し合った。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「はああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

互いに一進一退、あまりの衝撃に周りの瓦礫は吹き飛び、地面には亀裂が入り、突風が吹き荒れる。

そして両者の一撃は相殺され消えるがその反動は大きく、ブリッツ1の纏うアストレア・ノワールはその衝撃で機体装甲の1/3が吹き飛び、左手のレイストームも砕けていた。

 

「ふむ……今の君はまるでドラゴンの形をした焔の魔神だな。その脅威的な力で猛威を奮い続けいずれは世界を、全てを滅ぼす。……私のマスターもまた魔神だ、圧倒的な力で世界を滅ぼし新たな世界に君臨する。そう、魔神の王だな」

 

破壊されたレイストームとヴォリーショナルを収納しながらブリッツ1は話す。

 

「束が魔神の王?ならオレはその上……焔の皇帝、魔神焔帝(カイザー)だ。束に伝えておけ、てめーの世界は認めない、オレが破壊するってな」

 

「いいだろう、伝えてやる。だがそう簡単にはマスターは討たせないぞ、次に会う時こそ私と君の決着としよう。私の名は……イクス、イクス・アーベントだ」

 

そう言い残しブリッツ1──イクスは撃墜された仲間を回収し、光学迷彩で姿を消し退却した。

 

オレはイクスが姿を消した場所をじっと見つめ続け、ゆっくりと自分の左手を見つめ肘から下の部分に意識を集中させる。

ぱぁっと光ったかと思えば今までディストライザーの腕だったものが人間( ・ ・ )の腕へと姿を変えた。

 

「……基本の姿はこっちか」

 

再び左腕をディストライザーの腕に戻しオレは思わず天を仰ぎ、ようやく自分が人間ではなく、ISに変わってしまった事を自覚した。

 

……最終決戦はもうすぐそこまで近付いてきていた。




大分空いてしまいました……。
ちびちびですがまた更新していきます。
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