IS・ALUTIAUSS〈インフィニット・ストラトス アルティウス〉   作:ZERO式

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第2話 売り言葉と買い言葉と涙

「……で?どうしたんだよ一夏」

 

オレ──櫻井桜萪は朝から沈んだ顔をしている友人である一夏に訊ねた。なんか朝からセカンド幼なじみ(一夏が命名)の鈴音との仲がよろしくないのだ。

 

「オレに聞かれてもなぁ……。聞こうとするとあっちから避けるんだよ」

 

頬杖をつきながらため息を吐く一夏。んー、それはもしかしたらお前が原因かもしれないぞ?よくは分からないけど。

 

「まぁ……。どっちみち早く事実を聞かないと、後々取り返しのつかない事になるから気をつけろよ?」

 

「あ、あぁ」

 

一夏の肩をポンポンと軽く叩いてからそう言い残し、オレは席に戻る。それにしても、今日もいい天気だなぁ。窓側の席で良かったよ、ホントに。

 

「お~ちゃん、おりむーと何話してたの~?」

 

「やぁのほほんさん。ちょっとアドバイスというか、釘を刺してきたんだよ」

 

「釘ぃ?それ痛いよぉ」

 

ゆっくりと身震いしながら痛そうな表情を浮かべるのほほんさん。こらこら、なんか勘違いしてないかい?

 

「実物の釘じゃないからね?言葉のあやだから」

 

「そうなんだぁ。新たに私の辞書に刻まれたぁ」

 

いやいや常識ですよのほほんさん?ていうか、話は変わるがのほほんさんの制服の袖って結構長いよな。

 

「てか、のほほんさん。やけに袖が長くない?」

 

「あぅ~。IS学園の制服はカスタマイズ可能だからね~♪」

 

さすがIS学園と言ったところか……他の学校じゃありえないからな。オレも後期からしてみようかな?そんな事を考えながら窓の外に広がる青空を見つめるオレであった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

それから数日が過ぎた。相変わらず鈴音とは仲が悪く(主に鈴からの一方的だが)、日に日に関係が悪化している気がする。

 

「結局話せてないのかよ」

 

「仕方ないだろ?ずっと鈴が避けてたんだし」

 

まぁ確かにそうだが……。しかも、来週のクラス対抗戦の一夏の対戦相手がよりによって鈴音だからな。

 

「おい一夏!」

 

そう名前を呼びながら腕組みをして一夏の前に立つ箒。

 

「明日からアリーナは対抗戦の準備で使えないんだから、テキパキ動け」

 

相変わらず厳しいな箒は。まぁ言っている事は正論な訳だが。

 

「まぁでも、操縦もようやく様になってきたな」

 

「あら?できない方が不自然ですわ」

 

と、さらに一夏の横に立ちながら腰に手を当て、髪をなびかせるイギリスの代表候補生セシリア・オルコット。相変わらず、腰に手を当てた決めポーズが様になっている。代表候補生だからか?

 

「何せ……わたくし(・ ・ ・ ・)が教えているんですもの」

 

今明らかにわたくしがを強調した。どうやら箒に対する対抗心のようだ。

 

「中距離射撃型の戦闘法が役に立つか。第一、白式には射撃装備なんてないのだからな」

 

そう箒の言う通りだ。一夏の専用機である白式の武器は刀型近接ブレード『雪片弐型』のみで他にはない。言うなれば、超近接特化型の機体仕様だ。

 

「それなら篠ノ之さんの剣術訓練も同じじゃなくて?ISを使用しない訓練なんて……。時間の無駄じゃありませんこと?」

 

セシリアも負けじと箒へダメ出しをする。それに対して箒は目付きを鋭くしながら口を開く。

 

「何を言う!剣の道は──」

 

「一夏さん!昨日の無反動旋回のおさらいをしましょう」

 

剣について熱く語ろうとした箒をセシリアは華麗にスルー。箒なんかに構っているよりも、一刻も早く一夏と訓練をしたいらしい。

 

「だから無視するな!聞け!一夏!ついでに桜萪!」

 

「オレはついでかよ!?」

 

箒よ、それはなんかとてつもなく悲しいぞ。

すると、今まで閉まっていたドアがプシュッ空気音を出して開いた。

「一夏っ!」

 

おやこの声は……。

 

「鈴……!?」

 

あれま。セカンドも交えて女同士のバトル開始か?飛び火だけはごめん被りたい。

 

「鈴……お前、オレの事を避けてたんじゃ──うわっ!」

 

「貴様……どうやってここに来た!」

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止ですわよ!帰ってください!」

 

一夏を渡さんとしようという行動からなのか、箒とセシリアは一夏の前に立って鈴音を威嚇する。

 

「関係者?はんっ」

 

だが2人に対して鈴音は怖じ気付くどころか余裕の表情を浮かべている。

 

「あたしは一夏の関係者よ。だから問題ナシね!」

 

ドドォォォン!

 

「な……何ですって!?」

 

さらにドドォォォン!

 

「とにかく!今はあたしが主役なんだから、脇役はすっ込んでてよ」

 

「脇役……!」

 

「ですってぇ!?」

 

うわぁ。ますますヒートアップしちまったよ……。喧嘩はしてもいいから、せめてISアリーナでしてくれ。

 

「……で?一夏、反省した?」

 

「は?」

 

「だ・か・ら!怒らせて申し訳ないとか!仲直りしようとか……。色々あるでしょうが!」

 

ほんのりと頬を赤くしながら鈴音は一夏へ言い寄る。頬が赤いのは怒りからなのか照れなのかと言えば、状況的に前者だろう。

 

「いや……。そう言われてもな……。お前、ずっとオレを避けてただろ?こっちは何が何やらさっぱり……」

 

「じゃあ何?女の子が放っておいてって言ったら何もせすがに放っておくの?」

 

「そりゃ普通そっとしとくだろ。それが何か変か?」

 

あっけらかんと言う一夏。その返答に対して鈴音は肩をプルプルと震わせながらキッと一夏を睨んで怒鳴った。

「あんたねぇ……いいから謝りなさいよ!!」

 

ついにキレました。一夏も不服だったのかここぞとばかりに言い返した。

 

「何でだよ!ちゃんと約束覚えてたじゃねぇかよ!」

 

ちなみにこの約束というのは、後で箒からこっそり聞いた。なんでも鈴音が料理できるようになったら、毎日酢豚を奢るとか食べさせてあげるとか。その話をしていた箒の表情が印象的だったな。なんかこう、明らかに一夏へ怒りを含んでたし。

 

「まだそんな事を言ってんの!?約束の意味が違うのよ!意味が!!」

 

顔を真っ赤にしながら怒り狂う鈴音。うーん、なんかまずくないこの展開?

 

「意味ってなんだよ!オレが悪いなら理由を説明してくれよ!」

 

「説明したくないからこうして来てんのよ!気づきなさいよ!」

 

互いの意見をぶつけながら言い争う2人だが、なんかオレと箒とセシリア、蚊帳の外だな……。

 

「もう、あったまきた……。どうあっても謝る気はないのね?」

 

「当然だ!自分が納得できないまま謝るつもりはない!!」

 

「はぁ……。んじゃこういうのはどうだ2人とも」

 

もうこれ以上見てられん。それに、さっさとオレも訓練したいし。オレは一夏の右側に立って提案を持ち掛けた。

 

「来週のクラス対抗戦で負けた方が勝った方の言うことを何でも1つだけ聞く……。これなら文句ねぇだろ?」

 

「そ、そうね……」

 

お、納得してくれたかな?

 

「勿論、あたしが勝ったら一夏に謝ってもらうわ!」

 

「おういいぜ!オレが勝ったら理由を説明してもらうからな!」

 

「え……。あ……。だから理由は……その……」

 

すると、先程とは明らかに違う反応を見せた鈴音。なぜそこでたじろぐ?

 

「そんなに屈辱的な理由なのか?やめるならやめてもいいぞ」

 

「バ……一夏っ!」

 

カチン。

 

あ、遅かったか……。

 

「誰がやめるか!!あんたこそ謝る練習しておきなさいよ!!」

 

先程よりも怒りを爆発させながら鈴音は一夏へ声を荒げた。あ~あ……。オレもう知らねぇ。

 

「なんでだよ馬鹿!」

 

「馬鹿とは何よ!この朴念仁!間抜け!アホ野郎!馬鹿はアンタよ!!」

 

「うるさい貧乳!!!」

 

シーンと静まる室内。たった今まで声を荒げていた鈴音は俯きながら、右手の拳をギュッと握りしめた。

 

「一夏……。今のはいけなかったな」

 

ドガアァァァァァン!!

 

刹那、爆発音と、その衝撃で部屋全体がかすかに揺れた。見ると、鈴音の右腕はISの腕部装甲を纏っていた。

 

「言ったわね……」

 

顔を上げた鈴音の顔を見て一夏はハッとする。キッと一夏を睨むその瞳に涙をためていたからだ。

 

「言ってはならない事を言ったわね?」

 

「ゴメン!今のはオレが悪──」

 

「今の『は』!?いつもよ!!アンタが悪いのよ全部!!」

 

部分展開した右腕を解除しながらくるりと一夏に背を向ける。

 

「手加減してあげるつもりだったけど、やめたわ……。全力で叩きのめす!」

 

そう言い残して鈴音は鋭い視線を一夏へ送って、部屋から出て行ってしまった。

 

「鈴……」

 

まったく、売り言葉に買い言葉とはよく言ったものだ。たが人のコンプレックスを言うのは、いくらなんでもダメだよな。

 

「特殊合金製の地面に穴が……」

 

「パワータイプのISだな……。それも一夏と同じ近接格闘型のな」

 

 

結局、一夏は負けても勝っても鈴音に謝らなきゃいけなくなってしまったってことだ。まったく……どうなることやら。




鈴の涙、というか女の子の涙を見ると誰だって見たくないよね。

さあ、次からはようやく桜萪くんが活躍します。
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