IS・ALUTIAUSS〈インフィニット・ストラトス アルティウス〉   作:ZERO式

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第7話 水着はその人のセンスを表す

チュンチュン……。

 

「……んぁ……?」

 

窓の外で雀が目覚めを促すかのようにチュンチュンと鳴いており、カーテンの隙間からも朝日が優しくいい感じに差し込んでいる。

 

(もうちょっと……。あと10分だけ……)

 

この至福の時を味わうのはとても幸せだ。

うん、もうちょっとだけ寝ようではないか。

 

──ふにっ。

 

(……はて?)

 

ふにふに。

 

(なんだこの柔らかな感触は……。あ~……いいなこれ)

 

オレは8割頭が寝ている状態で、その布団の中にある柔らかい物体を触り続ける。

 

ふにふにふに。

 

「ん………」

 

…………ちょっと待てぃ。

確かに、人の声が聞こえたぞ。

間違いなく女の(てか、男だったら怖すぎるわ)。

オレはがばっ!と布団をめくる。

そこには……。

 

「ら、ら、ラウラぁ!?」

 

布団の中にいたのはドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。

先月転校してきていきなり一夏に宣戦布告。

しかし、色々あって……そう、色々あったのだよ。

しかし、問題はそれではないのだよワトソン君。

 

問題は、なぜ衣服を纏っていないのかという事だ。

つまり……はい……すっぽんぽんな訳です。

身に付けているのは左目の眼帯と待機状態のIS……右太ももの黒いレッグバンドのみ。

 

「ん……なんだ……?朝か……?」

 

「ど、ドアホー!隠せ!」

 

「おかしな事を言うなお前は。夫婦とは包み隠さぬものだと聞いたぞ」

 

「それはそうかもしれないが……って!違うわー!服を着ないか服を!!」

 

ラウラは一度目をこすると、それだけでいつもと同じ顔立ちになる。

うわぁ……全ての人間の至福のまどろみタイムを放棄したぞ。

 

「日本ではこういう起こし方が一般的だと聞いたぞ。将来結ばれる者同士の定番だとな」

 

「……お前に間違えた知識を吹き込んだ奴は誰だ?」

 

いくらなんでも間違い過ぎだ。

責任者、出てこいやぁ!

 

「しかし、効果はてきめんのようだ」

 

「は?」

 

「目は覚めただろ」

 

「当たり前だボケ」

 

これで目が覚めない奴はよほどの馬鹿野郎だろ。

いるなら見てみたい、ていうか連れて来い。

 

「しかし、朝食までにまだ時間があるな」

 

ベッドのシーツを身に纏うと、一度束ねた後ろ髪をふぁさっと散らす。

やべっ……銀色に輝いて綺麗なんですけど。

 

(しっかし……。変わったよなぁラウラは……)

 

あの爆弾発言(奇跡的に死ななかったが)以降、ちょくちょくこういう事をするんだよなぁ。

食事中に同席をするのは当たり前、この前は部屋でシャワーを浴びている時に現れた。

その前はトイレに行こうとした時……う~ん。

このままじゃもっとひどくなるんじゃないか?

 

「どうした?……あ、あまりそう見つめるな。……私とて恥じらいはある」

 

嘘をつくな嘘を。

だが、ラウラが頬をほんのり桜色に染めて視線を逸らしたのは正直、可愛いと思った。

 

「か、隠せと言ったくせに……ご執心なようではないか?」

 

「なっ…!?ど、ドアホー!そうじゃない!」

 

「で、では、み、見たいというのか?朝から大胆な奴だな、お前は……」

 

「待てぇぇい!!」

 

シーツをゆるめたラウラにオレは慌てて隠させようとするが、ひらりとかわされる。

そしてそのままベッドの上でどすんばたんと狭いながら大立ち回りをさせられてしまう。

 

「こ、このっ……!」

 

なんとかシーツの端を掴んでラウラの動きを取り押さえた……が、甘くなかった。

そのままオレが上になった体勢を逆手にとって足払いをされた。

あ……まずい……これ。

 

ズシーン!

 

「ぐへぇ……」

 

「お前はもう少し組技の訓練をすべきだな」

 

くそぉ……あの夜はオレが勝っていたのに……。

やっぱ軍隊にいる現役には勝てないか。

そしてあれは偶然だったのね。

 

「し、しかし、そうだな……。ね、寝技の訓練をしたいというなら、私が相手になってやろう……」

 

ちょっと待てぇぇい。

何故頬を赤らめる必要が──あ。

 

「ば、馬鹿!女がそういう事を口にするなー!」

 

「ほう。お前の口から言いたいのだな?よ、よかろう」

 

「違ぁう!っていうか!お前は先月オレにあんな事をしたのに、反省点なしか!?」

 

「あんな事、とは?」

 

「えっ!?そ、それは……その……き、キスだよ……」

 

あの時の事を思い出すと、全身が真っ赤になって熱くなる。

その後の地獄は思い出したくないから割愛する。

ともかく、オレはラウラに唇を奪われた。

しかもしかもでございますよ……?

 

「は、初めてだったんだぞ……」

 

本当でございます。

あのいきなりがオレのファースト・キス。

あぁ……恥ずかしい……。

 

「そうか」

 

「そうかって……」

 

「わ、私も……初めてだったぞ。うむ……嬉しくは、あるな」

 

うぐっ!

そ、そんな急に頬を染めて爆弾発言をするな……。

聞いてるこっちが恥ずかしいわ。

 

「……………」

 

「……………」

 

あ~……なんだこの空気は。

非常に気まずいぞこの野郎。

 

「あ~……とにかくだ。まずは着替えて飯を食べに行こう」

 

じゃなきゃオレの頭は爆発しそうだ。

恥ずかしさと気まずさでな。

 

「うむ……それもそうだな。では部屋に戻るとしよう」

 

そう言ってラウラは脱ぎ捨ててあった制服を着ると、こちらを見てくる。

 

「な、なんだ?」

 

「む、迎えに来るから部屋で待っていろ……」

 

頬を染めてラウラは言うと、そのまま部屋から出ていった。

 

「むぅ……。あまりの変わり要に戸惑ってしまうぞ」

 

 

◇◆◇◆

 

 

あれからオレは、言う通りに部屋で待っていて迎えに来たラウラと一緒に食堂へと向かった。

ちなみに、一夏や箒も一緒に食堂へ入ってきたので4人仲良く(?)座って食べている。

 

オレの左隣がラウラ、右隣が一夏、一夏の正面に箒が座っている。

メニューはオレが卵焼き定食、ラウラはパンとコーンスープ、それにチキンサラダ。

一夏は納豆と焼き魚の定食、箒は煮魚とほうれん草のおひたしだ。

うむうむ、どれもこれも美味そうだ。

 

「なんだ?欲しいのか?」

 

オレの視線に気がついたラウラが「わけてやろう」と言って自分の口にパンを持っていく。

……ちょっと待てぇぇい!!

 

「ん……どうした?かじっても構わんぞ?」

 

「ば、バカ!そんな食べ方できるかー!それじゃまるっきりキス──」

 

ガンッ!

 

箒がテーブルを叩いたんだZE☆

 

「ほ、箒さん……」

 

「食事中の時くらいは落ち着いたらどうだ……?」

 

「ひぃ……!」

 

「ま、まぁ落ち着けよ箒、な?」

 

すかさず一夏が箒を宥める。

 

「ふむ……嫉妬か?」

 

「なっ!?」

 

な、何を言っているんだねラウラさん!!

 

「自分ができないものだから、羨ましいと」

 

「だ、だ、誰ができないものか!い、一夏!」

 

「は、はい!」

 

ずずずっと味噌汁を口に含んだ箒が身を乗り出して一夏を睨む。

……馬鹿かお前は。

 

「……!……!!」

 

はやくしろ、との催促。

目は口ほどものを言うとはまさにこの事だな。

……仕方ない、助けてやろう。

 

「ちなみにこれは一夏が言っていたことだがな」

 

オレは卵焼きを頬張り、しっかりと飲み込んでから言葉を続ける。

 

「一夏はおしとやかな女が好きだそうだ」

 

「「!?」」

 

箒だけでなく一夏もオレの顔を見る。

オレは構わずに卵焼きを頬張り、味噌汁を味わう。

うん、良いおだしと味噌だ。

 

箒はごくんと口の中の味噌汁を飲み込むと、ゆっくりと席について静かな表情でパクパクと朝食を食べていく。

うむ、効果は抜群のようだ。

 

(た、助かった桜萪!)

 

(貸し1つな~)

 

(うっ……)

 

互いにアイコンタクトで会話が成り立つ。

いや~一夏は分かりやすいから便利だ。

 

「わああっ!ち、遅刻……遅刻するっ……!」

 

おやおや~?

なんと珍しい、シャルロットがばたばたと忙しそうに食堂に駆け込んで来たではないか。

そしてそのままの勢いで余っている定食の1つを手に取った。

 

「「よ、シャルロット」」

 

また一夏とハモった。

 

「あっ、一夏に桜萪。お、おはよう」

 

一夏は手招きをしてシャルロットを呼び寄せる。

それにしても、シャルロットがこんな遅くに食堂に来るとは珍しい。

 

「どうしたんだ?いつも時間にしっかりしてるシャルロットがこんなに遅いなんてさ。……寝坊か?」

 

「う、うん、ちょっと……。その、寝坊……」

 

「ほぉ、シャルロットでも寝坊するのか」

 

「ま、まぁね……。二度寝しちゃったから」

 

まぁあのまどろみタイムからの二度寝は格別だからな~。

 

「なぁシャルロット」

 

さっきから疑問に思っていたんだが。

 

「なんかオレの事を避けてないか?」

 

どうやら一夏本人も気がついたらしい。

 

「そ、そんな事は、ないよ?うん、ないよ?」

 

な~んか誤魔化しているかんじだな。

まぁあんまり問い詰めるのは好きではないからやめよう。

 

「い、一夏?ずっと僕の方を見てるけど……寝癖でもついてる?」

 

こら一夏。

何女の子をずっと見ているのだ。

 

「いや、ないぞ?ただほら、先月はずっと男子の制服だったから、改めて女子の格好をしているシャルロットは新鮮だなぁ、と」

 

「あぁ……。それは同感だ」

 

「し、新鮮?」

 

「「おう、可愛いと思うぞ」」

 

また一夏と以下同文。

 

「「いてぇっ!」」

 

そして同時に叫び声をあげる。

オレは頬をつねられ、一夏は足にかかと落としだ。

 

「人におしとやかな女がいいと言っておいて、お前はずいぶん軽薄な事だな」

 

「お前は私の嫁だろう。私の事も褒めるがいい」

 

え~なにこの状況……って!

だからオレは嫁じゃねぇよ!

 

キーンコーンカーンコーン

 

ありゃ予鈴……では教室までダッシュ!

一夏を置いてきぼりで。

 

「お、置いてくな!今日は確か千冬姉……じゃない、織斑先生のSHRだぞ!」

 

「私はまだ死にたくない」

 

「右に同じく」

 

「長生きしたいからな」

 

「ごめんね、一夏」

 

ラウラ、箒、オレ、シャルロットの順である。

ちなみにその後だが、一夏はシャルロットが専用機である『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』の部分展開によってかなりのスピードで教室に入った……が、そこには鬼がいたのだ。

織斑先生……もとい、千冬姉が本鈴が鳴っていないのに教室にいたのだ。

それから2人して説教+出席簿アタック。

オレとラウラと箒は、2人が怒られている後ろを難なくすり抜けて着席。

怒られずにすんだZE☆

 

「あぁ、それと……」

 

ん?天下の千冬姉から話があるみたいだな。

 

「来週からはじまる校外特別実習期間だが、全員忘れ物などするなよ。3日間だが学園を離れる事になるからな。自由時間では羽目を外しすぎないように」

 

そう、7月頭の校外特別実習……すなわち、臨海学校なのだ。

3日間の日程のうち、初日は丸々自由時間。

もちろん、そこは海……なので先週からずっと女子達のテンションが高いのだ。

いやはや……。

補足するがオレはまだ水着は買っていない。

オレの手足の一部は鋼鉄の義手義足だから何より目立つ。

IS装備の時は、ISスーツとアーマーで隠れるので問題はないのだが……。

まぁ以前に数名の女子に見られた事があったが、その時はなにやら「かっこいいー!」という事で終わった。

しかし、今回は海……ずっと義手義足を太陽の下に出しているのは自殺行為だ。

決まっている、装甲が太陽の光と気温によってかなり熱くなるからだ。

さ~て…どうしたものかなぁ?

 

◇◆◇◆

 

 

その夜。

 

「……で?なんでお前がいる?」

 

はい、現在当たり前のようにオレのベッドでラウラがくつろいでいます。

しかも手にはドーナツ、紅茶。

お主、どこからそれ持ってきた?

 

「む……おかしな事を言う。夫婦とは常に寝食を共にすると聞いたぞ」

 

そりゃね。

けどなラウラ、オレ達は夫婦じゃないの。

 

「結婚していないのに夫婦なんて言うか」

 

オレは腰に手を当ててため息をつく。

 

「……………」

 

すると、ジー……とラウラがオレを見てくるではないか。

 

「な、なんだよ?」

 

「お前のその左腕……」

 

「えっ?あ、あぁ……これね。間近で見るのはこれが最初か?」

 

「うむ」

 

そう言うとラウラは、ペタペタとオレの義手を触ってきた。

 

「綺麗なものだな。……重くはないのか?」

 

「重量は普通の生身の腕より、若干重いくらいだ。他の義手に比べたら軽いよ」

 

まぁ束特製の義手と義足だからな~。

 

「右足も義足みたいだな」

 

「なんで分かった?」

 

「歩くときに左右で足の音が違う」

 

「ひぇ~……。ご名答だよ」

 

オレはスウェットのズボンを捲り、義足を見せる。

 

「なるほど……。強度はどうなっているんだ?」

 

「一般的な義手義足よりは格段に上だ。刀の斬撃でも耐えるしな」

 

実際に箒で実証済みである。

 

「ふむ。これでは海は無理ではないのか?」

 

「ん?なんでそう思う?」

 

「機械に塩水はきつかろう。すぐに錆びるしな」

 

「あぁ、それなら問題はない。特殊合金製だから錆びにくいしな」

 

だが……分かっていても海に入るのはなぁ。

……そういえば。

 

「ラウラは水着はどうするんだ?」

 

まさか学校の……水着か?

 

「学園のスクール水着に決まっている。新たに買う必要も無いしな」

 

当たってしまった自分が憎い。

まぁあの絶滅危惧種のスクール水着だ。

マニアなら喜ぶだろう。

だが、海にまで行ってスク水というのもどうかと思うぞ……。

 

「はぁ……。今度の土日に行くかぁ」

 

「な、なに?」

 

「だから……オレの水着とお前の水着だよ」

 

オレの発言にラウラは目をぱちくりとさせきょとんとする。

 

「何を言っている、私は学園ので充分だと──」

 

「オレと出掛けるのは嫌か?」

 

えぇい、こうなったら強行手段だ。

さすがにスク水はまずいからな。

笑われる種にもなりうる。

 

「い、嫌ではい!む、むしろ……嬉しい……というか……」

 

どうやら効果は抜群のようだ。

 

「よしっ、んじゃ今週の土曜に買いに行こう」

 

 

◇◆◇◆

 

 

そして時はあっという間に経過して土曜日。

 

「うむうむ、快晴だ~」

 

実に買い物日和な日だね。

嬉しくて歩くスピードが自然と上がってしまう。

 

「おい桜萪。先に行くな」

 

テクテクとラウラが後ろから歩いてくる。

 

「おぉ、悪い悪い。てか、ラウラはおしゃれしないのか?」

 

今のラウラの格好は、IS学園のカスタム制服──簡単に言えばいつも通りの服装だ。

ちょっとはおしゃれしようぜ?

 

「服などこれだけでも充分だ」

 

いや~……さすがに制服はまずいんじゃないですかね~?

ちなみにオレは、ジーンズに黒いTシャツ、十字架のペンダントをしている。

 

「まぁ……ちょっと色々と見て回るか」

 

「うむ」

 

「さて、どのから回ろう──」

 

「そこのあなた」

 

「ん?」

 

ラウラと一緒に水着売場にいたらどこからかオレを呼ぶ声がした。

 

「男のあなたに言ってるのよ。そこの水着、片付けておいて」

 

おー、久しぶりに男として見られたぞ──って、ちゃうちゃう。

今の世の中はISの普及で女尊男卑の風潮だ。

なので、街を歩いているだけで見ず知らずの女から命令されるのは当たり前。

まったく嫌な世の中になっちまったよな。

 

「だが断る。見ず知らずの奴に命令される筋合いはな~い。という訳で、自分で片付けやがれぃ」

 

自分で出した物くらい自分で片付けろ馬鹿野郎。

いくら女尊男卑の風潮だからって、偉そうにえばってんなよ。

 

だがオレの態度が気に入らなかったのか、女は機嫌を悪くし、こちらを睨む。

 

「ふぅん、そういう事言うの。自分の立場が分かってないみたいね」

 

おっとまずいな。

今の世の中、一部の女性は男を奴隷としか見ていない。

なので自分の意志に反したら、痴漢とか殴ったなどの嘘を言って警察や警備員に捕まった男のその様子を見て嘲笑う。

いやー、マジで勘弁してほしわ。

……あれ?

オレまさにそのピンチじゃね!?

 

「待て」

 

誰かと思いきや、止めに入ったのは隣にいたラウラだった。

 

「私はドイツの代表候補生だ。その私の嫁にありもしない罪を擦り付ける気か?命が惜しいならとっとと失せろ」

 

あぁ、そういえばラウラって代表候補生兼IS特殊部隊隊長だったもんな。

確か部隊名は……『シュヴァルツェ・ハーゼ』 通称『黒ウサギ隊』だったかな?

 

「は?何言ってるの?私の言うこと聞かないアンタの男が悪いんでしょ?躾くらいしときなさいよ」

 

ピキッ。

 

……なんか嫌な音がしたぞ?

そう、まるで池に張った氷が割るようなそんな男が。

 

「……ほう?」

 

隣を見るとラウラが無表情で女を睨んでいた。

そしてラウラは静かに何かを取り出して目の前の女にそれを見せた。

 

「……!?そ、その……え……と……」

 

なんだ?

いきなり女の態度が変わったぞ。

何かを見せたんだ?

 

「……目障りだ。失せろ……」

 

「は、はいぃぃ!」

 

ラウラの殺気と氷のように冷たい眼差しに怯えた女は、水着を持って慌てて逃げて行ってしまった。

 

「ら、ラウラ?何をしたんだ?」

 

「……何、別に特別な物ではない。本当ならあの女、万死に値してもおかしくはないんだがな。桜萪がいなければ半殺しに──ゴホンゴホン」

 

なにさらっと恐ろしい事言ってるのアナタ!!

 

「お前は私が守ってやる……」

 

そう言ったラウラの頬は、ほんのりと赤くなっていた。

 

「ま、まぁ……ありがとな。おかげで助かった」

 

「ふ、ふん……」

 

顔を赤くしながらラウラはそのままスタスタと水着コーナーの方へと歩いて行って見えなくなってしまった。

 

「仕方ねぇな……。オレも水着見るか」

 

オレはちょうど近くにあった男性水着のコーナーへと向かい、品定めを始める。

 

「ふーん……色々あるなぁ」

 

様々なガラの水着が選り取りみどり。

形も様々でトランクスタイプや競泳タイプ、はたまたブーメランまである。

 

「ブーメランを穿く奴はかなりの度胸があるんだな……。うーむ、トランクスにするのは決めたけど色はどうしよう?」

 

赤or青。

はたまたブーメラン?

えぇい!

それは形状だ馬鹿者!

 

「そういえば……ラウラは結局スク水なのか?」

 

せっかくの海なんだから水着くらいおしゃれすればいいのにな。

いや~実に惜しいな。

 

「普通にラウラは可愛いし──って、何を言っているんだオレは」

 

確かに可愛い方の部類だろう。

顔も悪くない、小柄だがスタイルもいい──って!

変態かオレは!

 

 

◇◆◇◆

 

 

「むぅ……」

 

桜萪と別れたラウラは1人顔を赤くさせながらツカツカと歩いていた。

 

(来てみたはいいが……。別に買う必要もないな)

 

そう思いながら、ラウラはまだ少し火照った顔で陳列されている水着を眺める。

 

(……しまった。桜萪を置いてきてしまった)

 

ラウラは先程の場所に引き返したが、そこに桜萪の姿は無かった。

 

「む……どこへ行ったんだ?あぁ……あいつも水着を見に行ったのだな」

 

そう思ったラウラは、テクテクと男性水着コーナーに行く。

だが、次の瞬間その若干火照った肌がボッと真っ赤に染まった。

 

「──ラウラは可愛いし」

 

はっきりと聞こえた。

今の声、間違いなく桜萪だ。

ちょうど見つけて後ろから声をかけようてしたところへと不意打ちである。

 

「……………」

 

突然の言葉に顔は熱を放って紅潮し、心臓はバクバクと高鳴っている。

事実、可愛いと生まれてから一度も言われた事がないラウラは当然の事ながら取り乱していた。

 

(か、か、可愛い……?私が、可愛い……可愛い……)

 

ラウラはとっさに物陰に隠れて、ISのプライベート・チャンネルをある場所へと開くのだった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「──お?一夏とシャルロットじゃん」

 

オレは先程、ラウラと一緒にいた場所に一夏とシャルロットが一緒に買い物をしているのを発見して手を振る。

 

「え?あぁ、桜萪」

 

「桜萪も水着を?」

 

「あぁ。ところで2人とも、ラウラを見かけなかったか?」

 

「ラウラ?いや、見てないぞ?オレとシャルは今来たばかりだし……」

 

……ん?

今シャルロットの事をシャルって……。

 

「僕も同じだよ」

 

「そっかぁ。てか、一夏よ……シャルロットの呼び方なんだが」

 

「え?あぁこれはだな、前に『3人の時はシャルロットって呼んで』って言っただろ?それで、てっきりオレはまだしばらく男のフリをするのかと思っていたんだが、翌朝あっさり女子に戻っていただろ?」

 

「あぁ……確かに」

 

「だから、せっかくの呼び名が普通になっちゃったから何か別な呼び名でもという事で、シャルって呼ぶ事にしたんだ」

 

「なるほどね~、良かったなシャルロット」

 

「えっ!?う、うん!かなり嬉しいよ!」

 

……キュピーン!

このシャルロットの反応……もしや……?

 

「そっか。うむうむ、んじゃ引き続き2人で楽しみなよ?邪魔をしちゃシャルロットに悪いからな」

 

オレはニヤリと笑って2人を見てからラウラを探しに歩き出した。

 

「へっ?ち、ちちちょっと桜萪!」

 

後ろでシャルロットが慌てている気がしたがあえて気にしない。

せっかくの一夏とのデートだもんな。

お邪魔をしちゃ悪いし。

あとは……オレはシャルとは呼ばずにこれからもシャルロットと呼ぶ事にしよう。

大好きな一夏からつけてもらった呼び名だしな……オレが呼んでもねぇ?

 

「桜萪!」

 

引き続きラウラを探していると、誰かに名前を呼ばれたので、後ろを振り向いてみた。

 

「おぉラウラ。探したぞ」

 

「探したのは私だ馬鹿者」

 

オイオイ、逆に怒られたぞ。

悪いのはオレか?

まぁ確かに、勝手に水着コーナーに行って自分の水着を買ったが……。

 

「す、すまん……」

 

「ふん……わ、分かればいいのだ……」

 

怒ったかと思ったら次は頬を染めて恥ずかしそうにした。

う~ん……感情の起伏が激しい奴だ。

 

「ど、どうしたんだ?」

 

「……………」

 

あれ、反応がない。

どうしたというのだろう。

 

「お~いラウラ?」

 

オレはそのままラウラの顔をのぞき込んでみた。

 

「!? な、なんっ……なんだ!?えぇい!離れろ馬鹿者!」

 

「ぬぉっ!すまん」

 

 

それからラウラはずっとこの調子で、学園に戻ってからもその態度は変わらなかった。

はてさて……何があったのやら。




さぁ、ラウラがデレはじめますwwww
次回はいよいよオーシャンズ・イレヴンです。
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