IS・ALUTIAUSS〈インフィニット・ストラトス アルティウス〉 作:ZERO式
合宿2日目。
今日は午前中から夜まで丸1日ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。
特に専用機持ちは大量の装備が待っているので大変だ。
まぁオレは束に頼んでおいた新型アームズ以外は全部データ取ってあるんだけどね。
「ようやく全員集まったか……おい、遅刻者」
「は、はいっ」
これは意外だ。
なんと遅刻してきたのはあのラウラだった。
どうやら珍しく寝坊したようで、集合時間に遅れてやって来たのだ。
「そうだな、ISのコア・ネットワークについて説明してみろ」
「は、はい。ISのコアはそれぞれが相互情報交換のためのデータ通信ネットワークを持っています。これは、元々広大な宇宙空間における相互位置情報交換のために設けられたもので、現在はオープン・チャンネルとプライベート・チャンネルによる操縦者会話など通信に使われています……」
「うむ、そこまででいい。遅刻の件はこれで許してやろう」
そう言われてホッと胸をなで下ろすラウラ。
……まぁ、多分ドイツ教官時代に嫌というほど恐ろしさを味わったのだろう。
「今の続きを言え櫻井」
「えっ?は、はい。それ以外にも『非限定情報共有(シェアリング)』をコア同士が各自に行う事で、様々な情報を自己進化の糧として吸収しているという事が、近年の研究で明らかになりました。これらは制作者の篠ノ之博士が自己発達の一環として無制限展開を許可したため、現在も進化の途中であり、全容は掴めていない……はず」
「よし、よそ見をしていたのは勘弁してやろう」
うっ……。
ご、ごめんなさい……。
「織斑先生」
セシリアが挙手しながら千冬姉に尋ねる。
「あの~、篠ノ之さんは専用機を持っていないのでは?」
そう、今この場にいるのは全て専用機持ち……まぁ箒以外のいつものメンバーだ。
ちなみに、現在位置はIS試験用のビーチで、四方を切り立った崖に囲まれている。
ドーム状になっているので、なんか学園のアリーナを連想させる。
「あぁ、それは問題な──」
「ちーちゃ~~~~~~~ん!!!」
ずどどどど……!
こ、この声……ま、まさか!
「……束」
やっぱりあなたか束ー!!
「やぁやぁ!会いたかったよ、ちーちゃん!さぁ、ハグハグしよう!愛を確かめ──ぶへっ」
飛びかかってきた束を千冬姉は片手でつかむ、それも顔面。
うわぁ、おもいっきり指が食い込んでるよ。
「うるさいぞ、束」
「ぐぬぬぬ……相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」
そして、その拘束から抜け出すあんたもただ者じゃないよ。
よっ、と着地をした束は、岩影に隠れていた箒を見つける。
「やあ!」
「……ど、どうも」
「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかなぁ。おっきくなったね箒ちゃん、特におっぱいが」
がんっ!
箒の拳が束の頭にクリーンヒットする。
「殴りますよ」
「な、殴ってから言ったぁ……。し、しかも日本刀の鞘で叩いた!ひどい!箒ちゃんひどい!」
頭を押さえながら涙目になって訴える束。
まぁそれよりも束、オレは言いたい。
「「おい束、自己紹介くらいしろ(しなよ)」」
見事に千冬姉とハモった。
うむ、考える事は一緒のようで何よりだ。
「えー、めんどくさいななぁ。私が天才の束さんだよ、はろー 。終っわり~」
そう言ってくるりんと回ってみせる。
そしてやっと代表候補生メンバーはやっと今の現状を把握する。
まぁ仕方ないよな、だって目の前にいるのがISの開発者にして天才科学者・篠ノ之束だもん。
それも、現在重要人物として世界各国から絶賛手配中だしな。
「篠ノ之束って……」
「ISを開発した張本人」
ラウラとシャルロットがぽつりと呟く。
「そ、それで、頼んでおいたものは……?」
「同じく」
ん?
箒もなんか頼んでいたのか。
「うっふっふっ。それらはすでに準備済みだよ。さぁ、大空をご覧あれ!」
びしっと直上を指差す束。
すると……。
ズズーンッ!
「おぉ……!」
いきなりだった。
激しい衝撃を伴って、なにやら金属の塊が2つ砂浜に落下してきた。
銀色をしたそれは、次の瞬間正面らしき壁がばたりと倒れて中身をオレ達に見せる。
「じゃじゃーん!まずはおーくんのアルティウスの新型アームズこと『ドライブリッツ・アームズ』!機動・射撃・格闘に優れた万能型だよ!」
ドライブリッツと呼ばれたそれは、赤と黒の2色で塗られていて、ドライ(ドイツ語で3を表す)の名に相応しく洗練された形状の翼、折り畳まれている長大な2つのライフル、そして、巨大な刀……。
まさしくブリッツ(同じくドイツ語で稲妻)の如き力を持っていそうだ。
「おぉ……」
「あとはアルティウスにインプットするだけだから早く終わるよ~♪」
そう言って束はもう1つの機体の説明を始めた。
「次は箒ちゃんの専用機こと『紅椿』!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」
真紅の装甲に身を包んだその機体は、束の言葉に応えるかのように動作アームによって外へと出てくる。
てか……束、あんたさらりととんでもない事を言ったよな?
まぁ……束だもんな、うん。
「さぁ!箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズを始めよっか!私が補佐するからすぐに終わるよん♪」
「……それでは、頼みます」
「堅いよ~。実の姉妹なんだし、こうもっとキャッチー──」
「早く、始めましょう」
あ~あ~、とりつく島もないとはまさにこの事だな。
少しは柔らかく接してやれよ……。
「ん~。まぁ、そうだね。じゃあ始めよっか」
そう言って、リモコンのボタンを押す束。
すると、紅椿の装甲が割れて、操縦者を受け入れる状態に移る。
しかも自動的に膝を落として、乗り込みやすい姿勢にと変わった。
おぉ、気がきいてますな。
「箒ちゃんのデータはある程度先行して入れてあるから、あとは最新データに更新するだけだね。さて、ぴ、ぽ、ぱ♪」
コンソールを開いて指を滑らせる束。
さらに空中投影のディスプレイを6枚程呼び出すと、膨大なデータに目配りをしていく。
それと同時進行で、同じように6枚の空中投影のキーボードを叩いていった。
うん、これには感心するよ。
「近接戦闘を基礎に万能型に調整してあるから、すぐに馴染むと思うよ。あとは自動支援装備もつけておいたからね!お姉ちゃんが!」
「それは、どうも」
相変わらず箒の態度は素っ気ない。
そんなに嫌がらんでもいいじゃんよ?
まぁ……、束がISを発表した時に転校しなくてはならなくって嫌いになったのは分かるが……。
だが、もう何年も前なんだから、そろそろ許してやってもいいんじゃないのか?
「はい、フィッティング終了~。超速いね、さすが私」
無駄話をしながらも束は休む事なく指を動かし続ける。
それはキーボードを打つというよりも、ピアノを引いているような素早い動きで、数秒単位で切り替わっていく画面にも全部しっかりと目を通している。
はぁ……態度はふざけてるけど、やっぱりこいつはISを開発した超天才なんだよな。
そして、オレがそう考えている間に束も作業を終えて並んだディスプレイを閉じていく。
「あとは自動処理に任せておけばパーソナライズも終わるね。あ、いっくん、おーくん、白式とアルティウス見せて。束さんは興味津々なのだよ♪」
「え、あ、はい」
「分かった」
オレはアルティウスの待機状態である首にかけてある金色のペンダントを軽く握り締め、目を閉じて念じる。
これがオレの機体の呼び方だ。
(……纏え、アルティウス)
その念に応えるかのように強い光を放つアルティウス。
さらに、空中に光の粒子が発生し、それらが集まって輪の形になる。
そして、光の輪が全身に幾重にも重なって、やがて形を成していく。
オレの専用機『アルティウス』……あらゆる戦況に応じた専用武装『アームズパック』を駆使して戦うオレの相棒だ。
「データ見せてね~、うりゃ」
言うなり、白式とアルティウスの装甲にぶすりとコードを刺す束。
すると、さっきみたいにディスプレイが空中へと浮かび上がり、白式のデータを見て束が首を傾げる。
「ん~……。不思議なフラグメントマップを構築してるね、なんだろ~?見たことないパターンだよ。いっくんが男の子だからかな?」
ちなみに、フラグメントマップというのは各ISがパーソナライズによって独自に発展していくその筋道らしい。
まぁ人間だとDNAみたいなもんだ。
「束さん。その事なんだけど、どうして男のオレがISを使えるんですか?」
「右に同じく。普通はありえないんだろ?」
「ん?ん~……どうしてだろうね。天才の私にもさっぱりぱりだよ。ナノ単位まで分解すればわかる気がするんだけど、していい?」
ちょっと待てぇぇい!
その分解にはオレと一夏も含んでるだろが。
「「いい訳ないでしょ(だろうが)……」」
「にゃはは、そう言うと思ったよん。んー、まぁ、分かんないなら分かんないでいいけどね~。そもそもISって自己進化するように作ったし、こういう事もあるよ。あっはっはっ」
笑い事じゃないよ束。
まったく、何の解決にもならなかったわ。
「ちなみに、後付装備ができないのはなんでですか?」
「そりゃ、私がそう設定したからだよん」
「え……えぇっ!?白式って束さんが作ったんですか!?」
「なんだ、知らなかったのか一夏?」
「え?お前は知ってたのか?」
「もちのろん。オレのアルティウスも束お手製だしね」
「うむうむ、そーだよ。って言っても、白式はもともと欠陥機としてポイされてたから、それをもらって動くようにいじっただけだけどね~。でもそのおかげで第一形態から単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)が使えるでしょ?超便利、やったぜブイブイ~」
まったく……べらべらとよく喋るなぁ。
だが、この束……親しいオレ達以外にはかなり冷たい。
いわく『人間の区別がつかないね。分かるのは箒ちゃんとちーちゃんといっくんとおーくんくらいだね。あと、まぁ両親かねぇ。うふふ、もともと興味ないしね、他の人間なんて』らしい。
「それよりさぁ、いっくんとおーくんさー、白式とアルティウス改造してあげようか?」
「え、えーと……ちなみに、どんな改造ですか?」
「変なのは御免被る」
「うむ、執事の格好になるってどうかな。いっくんには前々から燕尾服が似合うと思っていたのだよ。おーくんはメイド服」
うん、とりあえず言いたい。
さっきの話聞いてたか?
「いいです」
「拒否」
「いいです!おぉ、許可が下りたよ!じゃあ早速白式を──」
「だあっ!わざと間違えないでください!ノーです、ノー!ノーサンキュー!!」
「む!じゃあ私はノーザンライツだ!」
うん、ノーしかあってない……くだらんな。
「じゃあじゃあ、女の子の姿になるってどうかな!おーくんが!」
……待てぇぇい!
「やめんか!てか、なんだそれ!」
「ん?最近読んだ漫画にそういうのがあってねー。大丈夫、おーくんはもともと女の子っぽいからいけるよ!」
「漫画の話をオレで試すな!」
「ちぇ~。おーくんのいけず~」
そう言って束は口をとがらす。
はぁ、疲れた……。
「あー……ごほんごほん」
するとそこへ箒がわざとらしく咳払いをして話に入る。
「こっちはまだ終わらないのですか?」
「んー?もう終わるよー。はい、3分経った~。あ、今の時間でカップラーメンができてたね~惜しいな~、うん」
別に惜しくないだろ。
てか、最近は3分じゃないやつもあるんだぞ束?
「んじゃ、試運転も兼ねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ」
「えぇ……それでは試してみます」
箒がまぶたを閉じて意識を集中させると、次の瞬間に紅椿はもの凄い速度で飛翔した。
「わっ!?」
その急加速の余波で発生した衝撃波に砂が舞い上がる。
それからハイパーセンサーで箒の姿を追うと、200m程上空で滑空していた。
「どうどう?箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」
「え、えぇ、まぁ……」
束もIS装備してんのか?
オープン・チャンネルでの会話がこちらにも聞こえてくるな。
「じゃあ刀使ってみてよー。右のが『雨月』、左のが『空裂』ね 武器の特性のデータ送るよん」
そう言って空中ディスプレイに指を躍らせる束。
武器のデータを受け取った箒は、スラーッと2本同時に刀を抜き取る。
おぉ、さすがだなあの身のこなしは。
ずっと剣道やってることある。
「親切丁寧な束おねーちゃんの解説つき~♪雨月は対単一仕様の武装で打突に合わせて刃部分からエネルギー刃を放出、連続して敵を蜂の巣にする武器だよ~。射程距離は、まぁアサルトライフルくらいだね。スナイパーライフルの間合いでは届かないけど、紅椿の機動性なら大丈夫~」
束の解説に合わせてかどうかは分からないけど、箒が試しとばかりに突きを放つと同時に、周囲の空間に赤色のレーザー光がいくつもの球体として現れ、そして光の弾丸となって漂っていた雲を穴だらけにした。
「次は空裂ねー。こっちは対集団仕様の武器だよん。斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーをぶつけるんだよ~。降った範囲に自動で展開するから超便利。そいじゃこれ撃ち落としてみてね、ほーいっと」
言うなり、束はいきなり16連装ミサイルポッドを呼び出し、次の瞬間一斉射撃を行った。
「「箒!」」
「……やれる!この紅椿なら!」
その言葉通り、右脇下に構えた空裂を一回転するように振るう箒。
またあの赤いレーザー光が今度は束の言った通り帯状になって広がり、16発のミサイルを全弾撃墜した。
「すげぇ……」
一夏を含めその場にいた人はその圧倒的なスペックに驚愕し、そして、魅了され、言葉を失っていたそんな光景を、束は満足そうに眺めて頷いた。
「「……………」」
だが、オレと千冬姉はそんな束を厳しく見つめていた。
(束──いや、束姉……何か引っかかるな。なんだろう、この胸騒ぎは)
「たっ、大変です!お、おお、織斑先生!」
すると山田先生がこちらに向かって大慌てで走ってきた。
「どうした?」
「こ、こっ、これをっ!」
山田先生から小型端末を渡され、その画面を見て千冬姉の表情が曇る。
「特命任務レベルA、現時刻より対策をはじめられたし……」
「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働をしていた──」
「……分かった、それ以上は生徒の前では言うな。全員注目!」
そう山田先生に告げると、千冬姉はパンパンと手を叩いてオレ達を見る。
「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止だ 専用機持ちは私に着いてこい。織斑、櫻井、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰!……それと、篠ノ之も来い」
「はい!」
妙に気合いの入った返事をしたのは、一夏の隣に降りてきた箒だった。
あぁ、そっか……箒も専用機持ちになったんだな。
(けど……こいつ大丈夫かな……?)
オレは疑問に思いながらも、千冬姉の後を皆と一緒についていった。
「で、では私は……って、あれ?この方は誰ですか?」
山田先生も千冬姉と一緒に行こうとした時に、初めて束に気づいた。
「……篠ノ之束だ」
「……篠ノ之束って……ええぇっ!?」
まぁ……信じられないかもしれないが山田先生、嘘ではありません。
◇◆◇◆
「では、現状を説明する」
旅館の一番奥に設けられた宴会用の大座敷・風花の間では、オレ達専用機持ち全員と教師陣が集められた。
照明を落とした薄暗い室内に、ぼうっと大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。
「2時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第3世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル』が、制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」
(マジかよ……よりにもよって軍用ISって……)
一夏以外の専用機持ちは皆厳しい顔つきになっている。
オレと一夏と箒とは違い、正式な国家代表候補生なのだから、こういった事態に対しての訓練も受けているのは間違いない。
特に、ラウラの眼差しは真剣そのものだ。
「その後、衛星による追跡の結果、シルバリオ・ゴスペル……以後、福音と称すが、奴はここから2㎞先の空域を通過する事が分かった。時間にして50分後……学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処する事となった」
淡々と続ける千冬姉。
その次の言葉はやはり予想した通りだった。
「教員は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」
ふむ……やっぱりですか。
予想が当たったけどあまり嬉しくないね。
「それでは、作戦会議を始める。意見があるものは挙手するように」
「はい」
早速手を挙げたのはセシリアだった。
「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
「分かった。ただし、これらは2ヶ国の最重要軍事機密だ。けして口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも2年の監視がつけられる」
「了解しました」
セシリアをはじめ、代表候補生の面々とオレ、教師陣は開示されたデータを元に相談を始める。
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……わたくしのISと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」
「攻撃と機動性の両方を特化した機体みたいね、厄介だわ。しかも、スペック上ではあたしの甲龍を上回ってるから、向こうの方が有利……」
「この特殊武装が曲者って感じはするね。ちょうど本国からリヴァイヴ用の防御パッケージが来てるけど、連続しての防御は難しい気がするよ」
「オレも同意見だ。ディフェンスやシールドソードビットでも、長時間は耐久限度を超えてしまうかもしれないな」
「しかも、このデータでは格闘性能が未知数……持っているスキルも分からん。偵察は行えないのですか?」
セシリア、鈴、シャルロット、オレ、ラウラは色々と意見を交わしている。
一夏と箒は口を出せないみたいだ。
「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。最高速度は時速2450kを超えるとある。アプローチは1回が限界だろう」
「1回きりのチャンスか。……ならやっぱり一撃必殺の攻撃力を持った機体でやるしかないか……」
オレの言葉に全員が一夏を見る。
「え……?」
「一夏、あんたが零落白夜で落とすのよ」
「それしかありませんわね。ただ、問題は……」
「どうやって一夏をそこまで運ぶか、だね。エネルギーは全部攻撃に使わないと難しいだろうから、移動をどうするか」
「しかも、目標に追い付ける速度が出せるISでなければいけないな。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!お、オレが行くのか!?」
「「「「「当然」」」」」
5人の声が見事に重なった!
「織斑、これは訓練ではない……実戦だ。もし覚悟がないなら、無理強いはしない」
千冬姉にそう言われた一夏は先程のオロオロとした表情が消えて、覚悟を決めた顔になった。
「やります。オレが、やってみせます」
「よし、それでは作戦の具体的な内容に入る。現在、この専用機持ちの中で最高速度が出せる機体はどれだ?」
「「はい」」
オレの他に挙手したのはまたしてもセシリアだった。
「それなら、わたくしのブルー・ティアーズが。ちょうどイギリスから強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』が送られてきてますし、超高感度ハイパーセンサーもついています」
全てのISにはこの『パッケージ』と呼ばれる換装装備を持っている。
パッケージとは単純な武器だけでなく、追加アーマーや増設スラスターなど装備一式を指し、その種類は豊富で多岐にわたる。
これらを装備する事で機体の性能を大幅に変更し、様々な作戦が遂行可能になるというものだ。
そのパッケージをより高性能化させて開発されたのが、束お手製のアルティウス専用戦術パッケージ『アームズパック』だ。
「オルコット、超音速下での戦闘訓練時間は?」
「20時間です」
「ふむ……櫻井は?」
「セシリアと同じ強襲用高機動アームズ『スピード』があります。それと、新型のドライブリッツも……。訓練時間はスピードだけで約10時間あるかないかですけど」
「ふむ……ならオルコットが適任──」
だな、と言おうてした千冬姉を、いきなり底抜けに明るい声が遮る。
「待った待ーった!その作戦はちょっと待ったなんだよ~!」
しかも、声の発生源はどこかというと──おいおい。
まさかの天井にいましたよ。
それも天井から束の首が逆さに生えていた。
「……山田先生、室外への強制退去を」
「えっ!?わ、分かりました!あの、篠ノ之博士、とりあえず降りてきてください──」
「とうっ☆」
くるりんと空中で一回転して着地。
おぉう、軽業師ですかあなたは。
「ちーちゃん、ちーちゃん、もっといい作戦が私の頭の中にナウ・プリンティング~!」
「出ていけ」
頭を押さえながらため息をつく千冬姉。
山田先生は千冬姉に言われた通り、束を室外に連れていこうとするが、するりとかわされてしまう。
「聞いて聞いて!ここは断・然!紅椿の出番なんだよっ!」
「なに?」
「紅椿のスペックデータ見てみて!パッケージなんかなくても超高速機動ができるんだよ!」
束の言葉に応えるように、数枚のディスプレイが千冬さんを囲むようにして現れる。
「紅椿の展開装甲を調整して、ほいほいほいっと。ホラ!これでもうスピードはばっちりだよ!」
展開装甲……?
初めて聞くぞ束よ。
オレも含めた全員が疑問に思っている中、束さんはメインディスプレイを乗っ取ったらしく、先程まで福音のスペックデータが写っていた画面は今はもう紅椿のスペックデータへと切り替わっている。
「説明しましょ~そうしましょ~!展開装甲というのはだね、この天才束さんが作った第四世代型ISの装備なんだな~」
……はぁ!?
第四世代型だとぉ!?
「はーい、ここで心優しい束さんの解説開始~。いっくんとおーくんのためにね。へへん、嬉しいかい?まず、第一世代型というのは『ISの完成』を目標とした機体だね。次が、『後付武装による多様化』……これが第二世代型 そして第三世代型が『操縦者のイメージ・インターフェイスを利用した特殊兵器の実装』空間圧作用兵器にBT兵器、あとはAICとか色々だね」
ここで束さんは水を飲んで喉を潤す。
どこからだしたその水は……。
「……で、第四世代型というのが『パッケージ換装を必要としない万能機』という、現在絶賛机上の空論中のもの。はい、いっくんとおーくん理解できました?先生は優秀な子が大好きです」
「は、はぁ……。え、いや、えーと……?」
「頭の回転が……追い付かん」
ちょっと待てぇぇい!
今って確か、各国がやっと第三世代型を形にしてきたって段階……。
それがなんで、一気に飛躍して第四世代型!?
「ちっちっちっ。束さんはそんじゃそこらの天才じゃないんだよ。これくらいは3時のおやつ前なのさ!」
……例えが中途半端だなオイ。
「具体的には白式の『雪片弐型』とアルティウスに使用されてます。試しに私が突っ込んだ~」
「「「「え!?」」」」
この言葉には、さすがにオレや一夏以外の専用機持ちも驚いていた。
白式の零落白夜の時に開く雪片弐型の機構がまさにそれだったとは……。
しかも、言葉通りなら白式もアルティウスも第四世代型──って、オイ!
「雪片弐型はともかく、何でアルティウスにも!?てか、展開装甲とやらが発動したところ見てないぞ!」
「そりゃこの束さんがアルティウスの展開装甲システムは封印してたからねー」
「は?」
これにはさすがに間の抜けた声が出てしまった。
「アルティウスには右腕と脚部に試験的に展開装甲を搭載したんだけど、最初のおーくんの操縦技術では扱いが難しいって数値に出てね~。だから一時的に展開装甲のシステムを封印して、代わりにと開発したのがアームズなんだよ。それで色々と改善していくうちに、うまくいったのでなんとなんと紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてありまーす。システム最大稼働時にはスペックデータはさらに倍プッシュ~☆」
「ち、ちょっと、ちょっと待てって!全身?全身が雪片弐型やアルティウスと同じって……」
「うん、無茶苦茶強いね。一言でいうと最強だね」
さらっと恐ろしい事言うなー!
「ちなみに、紅椿の展開装甲はより発展したタイプだから、攻撃・防御・機動と用途に応じて切り替えが可能。もちろんアルティウスも紅椿よりは劣るけど一緒だしね~。これぞ第四世代型の目標である即時万能対応機ってやつだね。にゃはは~、私が早速作ってしまったよ。ぶいぶぃ」
しーん……。
場の一同は静まり返って言葉もない。
「はにゃ?あり?何で皆お通夜みたいな顔になってるの?誰か死んだ?変なの~」
変なの~、じゃないよ束……。
各国が多額の資金、膨大な時間、優秀な人材の全てを注ぎ込んで競っている第三世代型ISの開発。
それが、無意味だというんだぞ……こんな、こんな馬鹿な話はない。
「……束、言ったはずだぞ。やりすぎるな、と」
「そうだっけ?えへへ、ついつい熱中しちゃったんだよ~」
千冬姉に言われてやっと、束はオレ達が黙り込んでいる理由を理解したみたいだ。
ホントにこの天才は……。
「あ、でもほら、紅椿はまだ完全体じゃないし、そんな顔しないでよ、いっくん、おーくん。いっくんとおーくんが暗いと束さんはイタズラしたくなっちゃうよん」
いや……ウインクされてもな……困るんですが。
「まー、あれだね。今の話は紅椿のスペックをフルに引き出したら、って話だからね。でもまぁ、今回の作戦をこなすくらいは夕食前だよ!」
……つっこむ気力もないな。
残念ながら今のテンションでは。
「それにしてもアレだね~。海で暴走っていうと、10年前の白騎士事件を思い出すね~」
ニコニコとした顔で話す束の横では千冬姉が『しまった』という顔をしていた。
『白騎士事件』……。
恐らくこの名前を知らない人間は世界にいないだろう。
10年前束が発表したISは、当初その成果を認められなかった。
『現行兵器全てを凌駕する』という束の言葉を、誰も信じてはいなかったのだ。
それは同時に……そう信じる訳にはいかなかったという事でもある。
「いやー、世界があんなに馬鹿だとは思わなかったね。うふふ、私の才能を信じないくせに神様を信じてるなんてね、偶像崇拝もいいところだよ。束さんは実像なのにね」
IS発表から1ヶ月後、その事件は起きた。
いや……それは事件というにはあまりにも異常、これ以上ない程に緊急な事態だったのだ。
日本を攻撃可能な各国のミサイル2341発……それらが一斉にハッキングされ、制御不能に陥り……発射された。
誰もが混乱と絶望の真っ只中にあった時……現れたのだ。
白銀のISを纏った1人の女性が。
顔は初期バイザー型ハイパーセンサーで隠れていて不明。
しかし、なんと言えばいいだろう……あまりにもヒーローマンガのような展開で、それを見ていた人間全員が唖然とした。
「ぶった斬ったんだよねぇ、ミサイルの約半数1221発を。あれはかっこよかったな~うんうん」
女性が手にしていたのは、剣としかいいようのない武器。
それをまさか超音速で飛翔する人間が振るい、近代兵器のミサイルを撃墜したのだから無茶苦茶だ。
さらに、距離的に離れているものに関しては、当時試作型だった大型荷電粒子砲をいきなり空中に召喚して撃ち落とした。
超音速による格闘能力……大質量の物質を粒子から構成する能力……さらにビーム兵器の実用化……。
これらのどれをとっても、匹敵する現行兵器は存在しなかった。
しかし、世界はその突然の驚異にして脅威に対して愚鈍ではなかった。
日本周辺各国は直ぐ様国際条約を無視して現地へと偵察機をスクランブルさせた。
彼らの任務は『目標の分析・可能であれば捕獲・無理ならば……撃滅』。
当時、最新鋭だった機体や武器も数多く投入されたらしい。
だが、全く歯が立たなかった。
「バルカンだろうがミサイルだろうが、ISの装甲に傷1つつかないよん。エネルギーシールドもあるしね」
まず、戦闘機というのは急速な旋回を行えない。
乗っている人間が急激なGについてこれないからだ。
しかし、ISは違う……。
保護システムによって守られた操縦者はいかなる機動においてもブラックアウトする事もなければ、呼吸困難に陥る事もない。
ハイパーセンサーから送られてくる情報によって、コンピュータよりも早く思考と判断を行い、実行へと移せるしね。
各国の戦闘機を撃墜しながらも、けして人命を奪う事なく戦う白騎士……それはもはや絶望的なまでの戦力差の証明でしかなかった……。
つまり、『相手を生かしたまま無力化する程の余裕がある』……と。
それでも躍起になって部隊を投入する各国だったが、白騎士は日没とともに忽然と姿を消した。
それはまるで、出現したときのVTRを巻き戻しにしたかのような、突然の消失……まるで幻でもあったかのように白騎士はかき消えた。
レーダーでも捉えられず、目視でも確認できない、完璧なステルス能力。
そう……世界は負けたのだ。
たった1機でミサイル2341発、戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻、監視衛星8基を撃破あるいは無力化した『究極の機動兵器』としてISは一夜にして世界中の人々が知るところとなった。
『ISを倒せるのはISだけである』という篠ノ之束と、その事実を、敗北者たる世界は無抵抗に受け入れた……いや、受け入れざるを、得なかった。
(けど……10年たった今でも白騎士の正体は分かっていない。でも束は知っているはず……けど、他人には一切の興味を示さないこの人が渡すとすれば……千冬姉)
しかし、千冬。が現役時代に使っていたISは、白騎士とは全然形も名前も違う。
なら、白騎士のISはどこに行ったんだ?
あれは歴史上初のIS実戦機な訳だから、今もどこかの研究室で日夜データ取りにでも使われているのかな?。
まぁ……オレには関係ないから別にいいけどさ……。
◇◆◇◆
──時刻は11時30分。
作戦は箒の紅椿が一夏の白式を乗せて一気に福音に接近、撃破するという事でオレは2人のサポートとして参加する。
作戦開始直前、砂浜でオレと一夏と箒は距離を置いて並んで立ち、一度目を合わせて頷いた。
「来い、白式」
「行くぞ、紅椿」
「纏え、アルティウス」
全身がぱぁっと光に包まれ、ISアーマーが構成される。
それと同時にPICによる浮遊感、パワーアシストによる力の充満感とで全身の感覚が変化する。
「じゃあ、箒、桜萪。よろしく頼む」
「本来なら女の上に男が乗るなど私のプライドが許さないが、今回だけは特別だぞ」
「一夏は福音を撃破する事だけ考えていればいいさ。サポートは任せろ」
作戦の性質上、移動の全てを箒に任せるので、つまり一夏が箒の背中に乗っかる形になるのだ。
それを最初に聞いた箒は早速嫌そうな顔をして文句を言っていたのだが、今は妙に機嫌がいい。
(箒……大丈夫なのか?)
箒の紅椿は、使い始めてからまだ1日も経っていない。
いくら束がパーソナライズとフィッティングをしたとしても、操縦者の方はそうもいかない。
(……ちゃんとサポートしなくちゃな)
「それにしても、たまたま私達がいたことが幸いしたな。私と一夏と桜萪が力を合わせればできない事などない。そうだろう?」
「あぁ、そうだな。でも箒、先生達も言っていたけど……」
「無論、分かっているさ。ふふ、どうした?怖いのか?」
「そうじゃねぇって。あのな、箒……」
「ははっ、心配するな。お前はちゃんと私が運んでやる。大船に乗ったつもりでいればいいさ」
「………………」
(大船に乗ったつもりで……ねぇ。専用機が手に入って嬉しいのは分かるけど、浮かれすぎじゃないか……?)
一夏もどうやらすっきりしていないみたいだが、そのまま箒の操る紅椿の背中へと乗った。
『織斑、櫻井、篠ノ之、聞こえるか?』
ISのオープン・チャンネルから千冬姉の声が聞こえて、オレ達は頷いて返事をする。
『今回の作戦の要は一撃必殺だ。短時間での決着を心がけろ』
「「了解」」
「織斑先生、私は状況に応じて桜萪と一緒に一夏のサポートをすればよろしいですか?」
『そうだな。だが、無理はするな。お前は紅椿を使い始めてから実戦経験は皆無だ。当然、何かしらの問題が出るとも限らない』
「分かりました。できる範囲で支援をします」
箒のそれは一見落ち着いた返事のようだが、やはり口調は喜色に弾んでいてどこか浮わついた印象を受ける。
『……織斑、櫻井』
「は、はい」
「……箒の事ですか?」
今しがたまで使っていたオープン・チャンネルではなく、プライベート・チャンネルで千冬姉の声が届く。
オレは恐らく箒の事だと思い、すぐに回線を切り替えて返事をした。
どうやら一夏とも同様の回線が開かれているらしい。
『そうだ、どうも篠ノ之は浮かれているな。あんな状態では何かを仕損じるやもしれん。いざとなったらお前らでサポートしてやれ』
「分かりました。ちゃんと意識しておきます」
「了解です」
『頼むぞ』
それからまた千冬さんの声がオープンに切り替わり、号令する。
『では、はじめ!』
……作戦開始だ!
箒は一夏を背に乗せたまま、一気に上空300mまで飛翔した。
オレも遅れまいとドライブリッツのウイングスラスターの出力を上げて2人の隣に並ぶ。
「暫時衛星リンク確率……情報照合完了」
「目標の現在位置を確認……一夏、一気に行くぞ!」
「お、おう!」
箒はそう言うと紅椿を加速させる。
すると、脚部及び背部装甲がその名にふさわしくガシャッと開き、そこから強力なエネルギーを噴出させる。
(これが紅椿の展開装甲……ならオレも負けられないな)
直ぐ様アルティウスの脚部の展開装甲を展開させ、その強力なエネルギーとドライブリッツのウイングスラスターの出力も相まって、すぐに紅椿に追い付く。
右腕と両足の展開装甲はドライブリッツのインストールの時に、改めて束に再調整してもらって使えるようにしてもらった。
「見えたぞ一夏!」
「!!」
「あれが……」
ハイパーセンサーの視覚情報が自分の感覚のように目標を映し出す。
『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』か……。
その名に恥じない程、全身が銀色をしている。
そして、何より異質なのが、頭部から生えた一対の巨大な翼だ。
本体同様に銀色に輝くそれは、資料によると大型スラスター兼広域射撃武器だそうだ。
(資料にあった多方向同時射撃って……ふむ、気になるな)
だが生憎考えている暇はない。
オレはドライブリッツの射撃武器であるツインプラズマレールガン『プラズマノヴァ』を展開する。
一夏も箒に乗りながら雪片弐型を握りしめた。
「加速するぞ!目標に接触するのは10秒後だ 一夏、集中しろ!」
「あぁ!」
「一発で決める!」
スラスターと展開装甲の出力を上げるオレと箒。
その速度は凄まじく、高速で飛翔する福音との距離をぐんぐん縮めていく。
(5、4、3、2……1!)
「うおぉぉっ!」
一夏は零落白夜を発動すると、それと同時に瞬時加速を行って間合いを一気に詰める
(よし!)
光の刃が福音に触れる、その瞬間──。
「「なっ!?」」
なんと福音は、最高速度のままこちらに反転、後退の姿となって身構えた。
「ちっ!やらせるかよ!」
オレは福音が攻撃する前にとプラズマノヴァを撃つが、福音はまさかの行動に出た。
「敵機確認 迎撃モードへ移行 『銀の鐘(シルバー・ベル)』、稼働開始」
「なっ!?」
オープン・チャンネルから聞こえたのは抑揚のない機械音声……だが、そこには明らかに『敵意』を感じて、オレはぞくっとする。
(……まずい!)
ぐりん、といきなり福音が体を一回転させ、零落白夜の刃と、プラズマノヴァのビームをわずか数ミリの精度で回避する。
それはPICを標準搭載しているISであっても、かなり難度の高い操縦だ。
「ちっ!あの翼が急加速をしているのかよ……!?」
高出力のマルチスラスターというのは他にも多く存在する……だが、ここまで精密な急加速というのは今まで見たことがない。
「『重要軍事機密』か……箒!一夏の援護を!」
「任せろ!」
オレはプラズマノヴァを撃ちながら箒と共に一夏を援護するが、福音はオレ達の攻撃をひらりと紙一重の回避をする。
「くっ!この……!」
一夏は零落白夜の残り時間が迫っている事もあって大振りの一太刀を浴びせようとしたが、福音はその隙を見逃さなかった。
「まずい!!」
銀色の翼……スラスターでもあるそれの、装甲の一部がまるで翼を広げるかのように開く。
「これは……砲口……!」
次の瞬間、福音の翼から無数の光の弾丸が撃ち出された。
「ぐぁっ!?」
弾丸は、高密度に圧縮されたエネルギーみたいで、ちょうど羽の形をしている。
それがISアーマーに突き刺さったかと思うと、次の瞬間には一斉に爆発した。
「ちっ……!厄介だなコレ。それに、連射速度がやばい!」
狙いはそれほど高くはないが、なにせあの破壊力だ。
わずかでも触れれば、そこを爆発でえぐられる。
「箒、オレは遠距離から正面を攻める!一夏と一緒に左右から攻めろ!」
「了解した!一夏、私は左を!」
「分かった、頼む!」
オレ達は複雑な回避運動を行いながらも連射の手を休めない福音へと、3面攻撃を仕掛ける。
けれど、オレ達の攻撃はことごとく回避されかすりもしない。
とにかく福音は回避に特化した動きで、同時に反撃までしてくる。
「くそっ!あのスラスター、奇抜な外見とは裏腹に実用レベルが異常に高すぎる!」
「桜萪、一夏!私が動きを止める!!」
「分かった!」
「援護する!」
オレはドライブリッツからシールドソードビットにシフトし、全ビットを射出して箒の援護をする。
箒は二刀流で突撃と斬撃を繰り出す。
しかも、腕部展開装甲が開きそこから発生したエネルギー刃が攻撃に合わせて自動で射出し、福音を狙う。
(すげぇな。……こっちもこっちでバケモンだ……)
さらに箒は機動力と展開装甲による自在の方向転換、急加速を使って福音との間合いを詰めていく。
さすがの福音もこの猛攻には、防御を使い始めた。
「うおぉぉぉっ!」
オレは再びドライブリッツをセットすると、バスターソード型近接ブレード『イフリート』を展開して斬りかかろうとする
「La…………♪」
甲高いマシンボイス……その刹那、ウイングスラスターの砲門が全て開いた。
その数なんと36……しかも全方位に向けての一斉射撃だ。
「やるな……だが、やらせは──」
ドゴンッ!!
しかし、オレは運悪く光の弾丸が直撃してしまい、ISアーマーの一部とイフリート、プラズマノヴァをあの爆発で失ってしまった。
しかもシールドエネルギーも残り73となってしまい、高出力武器を使用できなくなった。
(マジかよ!?いくらなんでもエネルギーが減るの速すぎるぞ? まさか……!)
オレはそこで気づいた。
この戦いでオレはドライブリッツのウイングスラスターだけでなく、脚部の展開装甲も推進力として使っていた。
よって、普段のアームズを使っている時よりもシールドエネルギーの減りが極端過ぎるくらいに激しいから、あっという間に無くなってしまったのだ。
「オレとしたことが……!2人は!?」
オレが体勢を立て直すと、そこには福音の弾丸から零落白夜で何かを守っている一夏がいた。
「な、何を……!あれは……船!?でも先生達がここらの海上は封鎖したはずなのに──ああくそっ!密漁船かよ!」
キュゥゥゥン……。
一夏の手の中で雪片弐型の光の刃が消えて展開装甲が閉じる……エネルギー切れだった。
最大にして唯一のチャンスを失い……作戦は事実上失敗した。
「馬鹿者!犯罪者などをかばって……そんなやつらは──」
箒は一夏の行動と作戦失敗に対して激しく激怒していた。
「箒!!」
そんな箒を一夏は一喝した。
「っ!?」
「箒、そんな……そんな寂しい事言うな、言うなよ。力を手にしたら、弱い奴の事が見えなくなるなんて……どうしたんだよ、箒。らしくない、全然らしくないぜ」
「わ、私、は……」
明らかな動揺をその顔に浮かべた箒は、それを隠すかのように手で覆う。
その時に落とした刀が空中で光の粒子へと消えたのを見て、オレは背筋がぞくりとした。
(今のは……具現維持限界……!まずい!!!)
具現維持限界(リミット・ダウン)……つまりそれは、エネルギー切れという事……そして今は、IS学園のアリーナでの模擬戦闘でも訓練でもない。
……『実戦』なのだ。
「箒ぃぃぃっ!!」
一夏は雪片弐型を捨てると、恐らく最後と思われるエネルギー全てを使っての瞬時加速をして一直線に箒へと向かう。
(くっ!シールドビット!)
オレは緊急展開でシールドソードビットをセットして射出するが、福音は箒に照準を絞って一斉射撃モードへ入っていた。
エネルギー切れのISアーマーは恐らく脆い。
それは第4世代型でも変わりはないはず……。
絶対防御分のエネルギーはあったとしても、あの連射攻撃を一度に受けたらひとたまりもない。
(くそっ、間に合ってくれ!)
しかし、シールドソードビットは間に合わず光の弾丸は箒の盾となった一夏に全弾直撃した。
「ぐあぁぁぁぁっ!!」
箒をかばうように抱き締めた瞬間に、あの爆発光弾が一斉に一夏の背中に降り注ぐ。
シールドエネルギーで相殺し切れないほどの衝撃が何十発と続き、白式のアーマーは破壊され、一夏の肌は熱波で焼けていった。
「一夏ぁぁぁぁっ!」
オレはスピードにセットすると、気を失って海面へと落ちていく一夏をキャッチして箒の隣に向かう。
「箒、撤退だ!」
「一夏っ、一夏っ、一夏ぁぁっ!!」
「くっ!」
オレは箒の腕を掴むと、スピードのウイングスラスターの出力を上げてその場から撤退した。
その惨めな姿を福音は静かに見据えていた。
作戦は……失敗したのだ。
さて、やって参りました、イベントである銀の福音戦が。
またまた新たなアームズも出てきたけど結果は惨敗、封印を解いた展開装甲も使えこなせず……
ここからの反撃が期待されますねー。