前回の一話からして、お久しぶり、が合ってますかね。
ちょっと、いろいろありまして遅れてしまったあげく、前回に記そうとしたシエルの簡単な容姿説明を忘れてしまい・・・。
というわけで、ここに記しますね。
燃えるような赤髪に、琥珀色の瞳。
いつも呑気でのほほんとした感じで、なぜかアルティナがお気に入り
こんな感じですね。ものすごい簡素な仕上がりですが。
では、本編をどうぞです。
「この第II分校は捨石だ。本校に受け入れられない厄介者や曰く付きをまとめて使い潰すためのな」
厄介者に曰く付き、登校初日早々卑下されるなんて、
「おもしろい。やっぱり、無理して来た甲斐があるかな」
思わず笑みがこぼれる。グラウンドに集った皆がざわめく中、一人だけが楽しげにオーレリアの言葉に耳を傾ける。
「だが"常在戦場"という言葉がある。その気質を学ぶには絶好の場所と言えるだろう」
そこまで語ったオーレリアが一呼吸おき、
「自らを高める覚悟なき者は今、この場で去れ! 教練中に気を緩ませ、女神の元へ行きたくなければな」
有無を言わさぬ迫力でそう言葉を放つのだった。
決心によって口を閉ざす者、ただ迫力に押されて狼狽える者、皆それぞれに態度は違うものの彼女の言葉に逆らおうとする者は誰一人といない。皆の意を確認したオーレリアは右手を前に掲げ、
「フフーーならば、ようこそ《トールズ士官学院・第II分校》へ。『若者よ、世の礎たれーー』かのドライケルス帝の言葉をもって、諸君を歓迎させてもらおう!」
先ほどの分校長の言葉によって式が締めくくられると、ランドルフ教官やトワ教官の元に集った生徒たちが列をつくり、教官が先導するようにしてグラウンドを後にする。呼ばれずして放置された私たちを残して。
「って、なんか気迫に呑み込まれちゃったけど・・・」
放置組の一人、ピンクの髪色をした少女がため息まじりに言葉をもらす。
まあ、これが普通の反応だよね。アーたんは相変わらず無表情のままだけど。
「ああ・・・結局のところ僕たちはどうすれば」
彼女の言葉に呼応するように、側に立っていた蒼灰髪の少年が戸惑いの表情を見せる。
《VIII組・戦術科》に《IX組・主計科》ってことは、本校のクラス数から考えて。
「私たちは《VII組》ってところかな」
「そのとおり。そなたら4名は少数ではあるが一つのクラスに属してもらう。《VII組・特務科》ーーこの者、リィン・シュバルツァーが担任となるクラスにな」
最後のクラス発表から間もなく、私たちは菜園前の通路を経由して分校の片隅にある施設へと向かっていた。
「ほんとっ、最近建てられただけあって綺麗だね。あの滝の前の広場でお昼寝したら最高そう」
「風景がどうであれ、結局は寝るんですね」
「そのうち、アーたんにはお昼寝の極意を伝授してあげよう」
「いえ、遠慮しておきます」
私の誘いを即答で返したアルティナは、一瞬ではあるが前方を歩く私たちの教官に視線を向ける。それにつられて私も黒髪の教官を見つめ、
「あの人が私たちの教官かぁ・・・絶対に」
アーたんは渡さないよ。
心中で意思を固める。
「・・・なにか言いましたか?」
「え、ううん、なにも」
こちらを不思議そうに見つめるアルティナの問いかけに、虚を突かれた私は若干焦ったように彼女から視線を逸らす。私の仕草にさらに不思議そうな表情を浮かべるアルティナだったが、それ以上踏み込む様子もなく先に見える巨大な施設を見上げる。
「着いたぞ」
最前を歩いていた軍人教官の男性が到着を告げる。
「この場所は一体・・・そもそも学院の施設なのか?」
蒼灰髪の少年が怪訝な表情を浮かべながら前方の建物を見つめる。
「敷地内に立ってるあたり、そんなんじゃないかな」
と言ったものの、この風貌からして"立方体のなにか"とまでしか自分でも分からない。手の込んだそうな造りを見る限り、ただの施設ってわけではなさそうだけど。
立方体の施設の在り方について思考を巡らせていると、軍人教官がこちらに振り向く。
「現在、戦術科と主計科はそれぞれ入学オリエンテーションを行なっているが。VII組・特務科には入学時の実力テストとしてこの小要塞を攻略してもらう」
その唐突な発言の内容に生徒はもちろんのこと、担当教官であるリィンでさえ動揺を隠せないでいる。
あの教官の反応、彼も知らされてなかったんだ。でもどうして入学テストのことを把握していないのかな。単なる情報の流れミスか、もしくは彼に知らせていてはまずいものなのか。
「攻略ってことは、この施設の中はダンジョンってことですか?」
私の質問に、軍人教官ではなく彼の隣にいた白髪の老人が答える。
「ああ」
「じゃあ、実力テストの過程として"私たちを阻害する存在"がいるということですよね」
「阻害する、存在・・・?」
ピンク髪の少女が不思議そうに顔を傾ける。
「もちろんそういった存在は配備されている。なにせ、実験用の特殊訓練施設なのだからな。内部は導力機構による可変式で難易度設定も思いのままーー存在にしては魔獣などが放たれている」
魔獣という言葉に、ピンク髪の少女と少年が驚いた様相を見せる。
対する私は無意識に、笑みを浮かべていた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 黙って付いてきたら勝手なことをペラペラと・・・こんなクラスに所属するなんて一言も聞いていませんよ!」
うーん、クラス分けってのは私たちが関与できることじゃないけど、魔獣が関わってくるなら話は別か。一般のクラスで魔獣を相手にする学院なんてないだろうし。
「適性と選抜の結果だ、クロフォード候補生。不満ならば荷物をまとめて軍警学校に戻っても構わんが?」
彼女の不満まじりの発言に、軍人教官は表情一つ変えず厳しげな言葉を発した。少女はまだ言い残したことがあるといった感じだが、ただ悔しがるようにその場に立ち尽くす。
「ここの教官は結構厳しめだね。普段からそんな感じで疲れないのかなー」
「なにが言いたい、コルテス候補生?」
「いえいえ、ただの独り言ですから気にしないでください」
睨みつけるような視線を避けるため、アルティナの背後へとさっと隠れる。
うーん、やっぱ苦手だ。この人。
盾にされ明らかに不満の表情を見せるアルティナに、ごめんと小さな声で謝る。そんな私たちをよそに、老人となにやら話ごとをしていたリィンがこちらへと振り返る。軍人教官と私たちの異様な雰囲気に困惑ぎみな表情を浮かべるリィン。
「どうしたんですか、ミハイル教官」
「なんでもない。ただの教官と生徒のスキンシップだ」
ミハイルと呼ばれた教官の返答にいまだはっきりとしないリィンだったが、
「ええい、いつまで無駄話をしている。さっさとテストを始めるぞ」
退屈そうにこちらの会話を聞いていた老人が、急かすように言ってきた。慌ただしく物事が動く中、皆決心したように建物の中へと歩み始める。
シエル「ではでは、私から始めさせてもらうね」
アルティナ「どうぞ。見る限り先攻後攻に意味はなそうですし」
シエル「では1ターン目っと。よいしょっ・・・」
アルティナ「3、ですね。悪くもなく良しでもなく」
シエル「た、ただ数が多いからいいってもんじゃないんだよ、アーたん。その数でとまったマスのお題こそが勝負の分かれ目なんだから」
アルティナ「それで、どういったものなんですか?」
シエル「え、えっと、はい?」
アルティナ「そんな素っ頓狂な声を上げてどうしたんですか?」
シエル「お題が意味不明なんだけど」
アルティナ「・・・? これは、一体」
"帝都地下道に潜む魔獣を討伐せよ"
シエル「え、な、なに、双六から声が⁉︎」
アルティナ「気をつけてください。高エネルギー反応を確認! 来ます!」
シエル「な、なにこいつはっ! きょ、巨大な腕⁉︎」
アルティナ「シエルさんっ、待っ・・・!」