閃を狂わすは悪魔の遊戯盤   作:RedQueen

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どうもRedQueenです。
ようやく、2019年になったなと感じてきた今日この頃ですが……って、遅すぎますかね。もう、多忙に多忙で心身共に抜け殻状態です。そんな私のオアシスこそ、ゲームの中に広がる夢の世界だったのです。今思えば、いくらゲームに危機を救われたかわかりませんね。
ゲームについて語り出すと止まらなさそうなのでやめておきますが、いつか機会があれば……。
では、本編をどうぞ。あまり見直し機会を設けてなかったので、違和感を感じた場合はお知らせください。


虚しき英雄譚の序章 vol.3

立方体の建物は外見から察していたとおり、いかにも複雑そうな構造をしていた。前方へと抜ける道の先には昇降機らしき扉が見え、右端から階段を登った先にある一室では、先ほどの老人とあの金髪の少女がテストに関する会話をしている。

「それで、概要についてどこまで知っているんだ?」

建物の中央付近で立ち止まった私たちが内装を見回っていると、リィンがふとアルティナに声をかける。

「詳しくは何も。地上は一辺50アージュの立方体、地下は拡張中という事くらいです」

対するアルティナは無表情のままさらりと答える。

この施設のことを以前から・・・ていうか、それよりーー

「アーたんっ! もしかして二人って知り合いだったの⁉︎」

施設がどうこうより、彼らの関係のほうが最重要である。

私の驚きの表情に、なにか、と言わんばかりに首を傾げるアルティナだったが、項垂れる私を心配してか肩にそっと手をおき、

「何を思ってこうなったかは知りませんが、とにかく大丈夫ですので」

「うぅ、優しいね・・・アーたんは」

その一言でかろうじて気を取り直した私は改めてリィンに視線を向ける。

ライバルって思ってたけど、これは相当手強そうだね。でも、私も負けてられないよ。

リィンに向けて戦うぞと言わんばかりに睨みをきかせる。当のリィンは私の一転二転する行動に困惑していたが、元の顔つきに戻った私を見てホッと息をはく。

「ハハ・・・なにはともあれ、解決してよかった。だがもしまだ悩みがあるのなら、俺でよければいくらでも相談にのってやるからな」

相談にのるって、その悩みの根源はあなた本人なんだけど。

「あ、ありがとうごまいます、シュバルツァー教官」

複雑な気持ちなんだけど、ここは素直に謝っておこう。さっきの表情、教官としてやはり心配だったんだろうし。

「さて、"準備"が整うまでの間、互いに自己紹介をしておこう。申し訳ないが、到着したばかりで君たち3人のことは知らなくてね」

入学式当日に学院入りって、ほんと英雄は大忙しなことで。

「俺はーー」

「必要ないでしょ」

名乗ろうとしたリィンだったが、それを制止するように少女の声が遮った。

「《灰色の騎士》リィン・シュバルツァー。学生の身でありながら1年半前にあった内戦を終結させ、クロスベル戦役でも大活躍した若き英雄。帝国のみならずクロスベルでも知らない人はいないってほどの有名人じゃないですか」

淡々と語るピンク髪の少女だったが、リィンを見る目は憧れなどとは程遠い不満そうな感じだった。

「へえ、私たちと同じ頃でそんな破茶滅茶なことを・・・さすがですねシュバルツァー教官」

「そんなことはないさ。あの内戦もクロスベルでの戦いも数多くの人に支えられて成せたことだからな。俺一人が英雄視されるのは間違いなんだが」

謙遜するリィンの表情は一瞬だが少し寂しげな感じを漂わせた。それを感じ取ったアルティナがなにかを言おうとしたが、私と視線が合うと目線を逸らし口を閉ざした。

壮大な英雄譚に隠れる影あり、か。

「まあ、改めて紹介させてほしい。リィン・シュバルツァー。トールズ士官学院・本校出身だ。先月に卒業したばかりで、ここ第II分校の新米教官として本日赴任した。座学では歴史学を教えることになる」

「歴史学ですか。私歴史大好きなんですよ」

「そうなのか。ちなみにどんなところが好きなんだ?」

「まあ、歴史がどうこうというより、その事象の根源を知ることが一番ですね。以前の内戦だって四大名門の一角であるアルバレア公とカイエン公の暴走だと聞きましたが、単なる二君の暴走であれほどの事態が起こり得るのか不思議なんですよね。まるでそれが確実に起こるとされ、あらかじめに準備されていたと思えてしまうほどに」

「・・・な、なにを言って・・・」

「ふむ・・・」

私が語っているうち、少女と少年が不思議なものを見るような目でこちらを向いていた。リィンとアルティナもなにか考え込むような仕草が見えた。

「あはは、脱線しちゃってました。えっと、自己紹介でしたよね、私はシエル。シエル・コルテス」

紛らわすように笑いで誤魔化そうとする私は、次だよ、と少年に視線で合図を送る。私の仕草を察知した少年は咳払いをし、

「では、自分も。クルト・ヴァンダール、帝都ヘイムダル出身です」

軽く自己紹介を済ます。

ヴァンダールってあの・・・あれ、でもあの人とは似てないような。

「ヴァンダールってたしか皇帝を守護する立場にあった家系だよね」

「ああ、つい最近まで・・・だが」

私の指摘に答えたクルトはなにか思い込むような表情を見せる。

デリケートな内容だったかな。だって、もう守護できる立場じゃないからね。

「僕のことは置いといて、シュバルツァー教官に聞きたいことがあるのですが。その眼鏡が伊達でしたら、あまり似合ってないので外したほうがいいですよ」

「ぷっ・・・あはは・・・」

クルトの指摘に言葉を詰まらせたリィンを見て、ピンク髪の少女が笑いを堪えずにいる。

「まあ、それなりに需要はありそうですが」

「私はいい線いってると思うけどな。どこにでもコアなファンはいるもんだよ」

アルティナの微妙なフォローと、彼女に続くように私のフォロー(?)にリィンは面映ゆい表情を浮かべる。

 

「ユウナ・クロフォード。クロスベル警察学校の出身です。正直、よろしくしたくないけど……そうも行かないのでよろしく」

自己紹介というのにどこか不満に満ちた雰囲気を感じさせる少女、ユウナ。

さっきの言動と、教官に対する態度。クロスベル出身だからこそ……いや、他の原因があるかな。

「刺々しいねぇ、ユーたん」

「そんなことは…てっ、ユーたんってなによ⁉︎」

「ユーたんはユーたんだよ。可愛いじゃん」

「か、可愛い……?」

私の真剣な眼差しに戸惑いの表情を露わにしつつ、『可愛くない』と内心で確信するユウナ。隣に立つアルティナはやれやれといった様子で軽くため息をつく。

「はあ……最後は私ですね。アルティナ・オライオン。帝国軍情報局の所属でした」

紹介の最後にあった異質な単語に、クルトとユウナが二人してキョトンとした顔になる。

それもそうだよね。こんな幼げな少女が、帝国の影に潜む厄介な組織にいた事を聞けば。

しかし、私にとってみればただ単純な考えが浮かんでくる。

「影があるって萌えるよね、アーたん」

「どうしてそういう思考になるのですか」

アルティナの呆れるような視線がジトーッと刺さってくる。

「まあ、ここに入学した時点で所属を外れた事になっていますので、どうかお気になさらず」

と言うアルティナ。ユウナとクルトはなにか言いたげにお互いを見合っていたが、次の瞬間に室内に別の声が木霊する。

『お、お待たせしました! アインヘル訓練要塞、LV0セッティング完了です!』

"準備"の完了を告げる少女の声に続き老人の声が聞こえてくる。

『自己紹介とやらは済んだようだな。なら早速、テストを開始させてもらうとしよう。LV0のスタート地点はB1、地上に辿り着けばクリアとする』

『は、博士……? その赤いレバーって……あ、あの博士!』

アナウンスの最中、少女がなにやら焦るように博士に言いかけている。向こうの状況がわからずにいる私たちは聞こえてくる声にただ耳をすますだけしかできないのだったが、リィンが唐突に険しい顔つきになり、

「みんな、足元に気をつけろ!」

警告するように言い終わると同時に、皆が立っていた場所の床が落とし穴のように傾いたのだ。突然のことで反応が遅れたユウナとクルトはなすすべもなく体勢を崩してしまい、そのまま滑るようにして穴の中に吸い込まれていった。

「いやはや、びっくりだね。まさか落とし穴とは」

落とし穴と化した床の端、ワイヤーのようなもので元の床に掴まった私は落ちていく二人を眺めていた。私だけでなく受け身をとったリィンや、突如として現れた黒い物体に掴まったアルティナも二人して無事そのものだった。

「その物体、ずっとアーたんと一緒だよね。憑かれてるかと思ったけど、それがアーたんの武装なんだね。情報局といい、ホント私を飽きさせないなぁ」

「そういうシエルさんもやはり尋常ではないようですね。この落とし穴に関してもある程度予測できていたのでは」

「まあね。教官も気配かなにかを察したんですか」

「ああ。しかし、アルティナはともかく君はこの状況下に慣れているように見えるんだが」

「……勘が鋭いことで。でも教官、誰しも秘密はあるものですよ」

冷たく、これまでの気楽さを微塵も感じさせない声音で答えたシエルはワイヤーの接着部分を切り離すと、急な坂を勢いよく駆け下っていく。

「リィン教官、お願いがあります」

残された中、アルティナが口を開く。

「なんだ?」

「彼女のことは私に任せてください。おそらく、いえ……彼女の"影"に心当たりがありますので」

「……ああ、わかった。彼女のこと、俺もある程度気にかけておくがよろしく頼む」

頷いたアルティナはそのままゆっくりとした速度で穴の奥へと姿を消していき、リィンもまた体勢を直し滑り落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 




シエル「う、うぅ……」
アルティナ「シエルさん、起きてください」
シエル「アーたん? これは、夢?」
アルティナ「残念ながら夢などではありません。紛れもなく現実です」
シエル「……こ、ここは、地下道?」
アルティナ「ええ。どうやら、帝都地下道の一角のようです」
シエル「で、でも、私たちさっきまで寮にいたよね。そこで二人で話してて、私が双六を……双六⁉︎」
アルティナ「はい。おろさく、この異常な現象はあの双六が関与している可能性が高いと思われます。双六から声が聞こえた後すぐに、巨大な腕が現れたのを見にしていますから」
シエル「巨大な腕……たしかに、私たちはそれにあっという間に掴まれて、そして」
アルティナ「次の瞬間には、この地下道にいた…と」
シエル「あのメガネ、厄介物を押し付けてきたな」
アルティナ「前から気になっていたのですが、そのメガネとはまさか、"痩せ狼"のことですか?」
シエル「そうだよ」
アルティナ「そのように平然と頷かれるのも困るのですが、どうしてシエルさんと"痩せ狼"がお土産を貰い受けるほどの関係に?」
シエル「もしかしてアーたん、妬いてる?」
アルティナ「違います。絶対に違いますから」
シエル「あいつとの関係か……話すと長いけど、聞きたい?」
アルティナ「もちろ……こほん、参考程度に聞いておくのもいいでしょう」

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