車内で他の生徒達が制服に着替えているのを目にして、ハンナとエイミーも慌てて新しい制服に着替え始めた。エイミーが自分の鞄から、ハンナと同じような制服を出すのを見てハンナは安心した。
「そろそろ着くのでしょうか」
エイミーが不安そうに呟く。やがて列車は速度を徐々に落としていき、無事に駅へ到着した。
「イッチ年生はこっち!」
プラットホームに下りると、大きな声が聞こえそちらに目を向ける。そこには信じられないくらい大きな男性が一年生の誘導をしていた。
「エイミー、あそこだわ。行きましょう!」
ハンナとエイミーは二人で走って大男の元へ向かった。大男の周りにはハンナと同じ1年生らしき生徒達が不安そうにザワザワしていた。
大男についていくと、大きな湖の畔にでた。その湖の向こう側に信じられないくらい素敵な光景が見えた。
「うわぁ……」
ハンナは思わず声を漏らす。壮大な美しい城が星空のもと、光り輝いていた。
「大きいですねぇ」
エイミーも思わずといった感じで呟くのが聞こえた。
そこからは小舟に乗って湖を進む。ハンナはエイミーと、知らない男の子二人の四人で小舟に乗り込んだ。ハンナは小舟に乗る間もホグワーツ城から目を離せずうっとりと見つめていたが、エイミーは進んでいく湖の中をなぜだかじっと見つめていた。
ようやく小舟が岸に着いた。巨大な扉が1年生を迎える。その扉の向こうには、緑色のローブを着た厳格そうな女性が待っていた。どうやらホグワーツの教師でマクゴナガル先生というらしい。マクゴナガル先生から祝辞や寮の説明を聞く間も、エイミーは何を考えているのかぼんやりとしていた。
マクゴナガルが準備のため一旦部屋を出ていく。生徒達は不安そうに顔を見合わせながらザワザワしていた。ハンナも組分けに何をするのが分からず、不安で心がいっぱいになった。そばでぼんやりしているエイミーに話しかけようとした瞬間、後ろの壁から突然ゴーストが出現したため、驚いて一瞬組分けのことが頭から離れた。ゴースト達は1年生を微笑ましげに見つめ、何事か話したあと消えていった。
「ホグワーツってすごいんですねぇ」
エイミーがニコニコしながらそう言ったとき、マクゴナガルが戻ってきた。マクゴナガルの案内で大広間に入ると、まず目に入ったのは四つのテーブルと上級生達。空中には何本もの蝋燭が浮かんでおり、上座には教師達が座って1年生を待っていた。
やがてマクゴナガルがボロボロの帽子を準備する。帽子が突然歌い出したため、ハンナは驚いて息をのんだ。帽子の歌によると、どうやら組み分けの儀式は帽子を頭に被るだけらしい。思ったよりも簡単な方法だったので、ハンナは安心した。
「ハッフルパフ!」
ハンナは自分の頭の上で帽子が叫ぶのを聞いて、胸を撫で下ろした。拍手が聞こえ、ハンナは帽子を脱ぐと歓声を上げているテーブルに向かっていった。
「ようこそ、ハッフルパフへ!」
上級生達が笑顔でハンナを歓迎する。ハンナもいろんな生徒と握手をしながら勧められた席に座った。
ハンナの後もどんどん組み分けは進んでいった。ハンナはまだ名前を呼ばれないエイミーを心配そうに見つめた。列車の中で話しただけだが、なんとなくどの寮もエイミーにピッタリとは思えなかった。そして、とうとうエイミーの順番が来た。
「ポピンズ・アメリア!」
エイミーはふらふらと歩いて、椅子に座った。帽子をゆっくりと被る。ハンナも身を乗り出してその姿を見つめた。
1分――――3分――――5分。かなりの時間がたったがまだ帽子は何も叫ばない。他の生徒達もザワザワし始めた。教師も不思議そうにエイミーを見つめる。エイミーは誰よりも長い間帽子を被っていた。
「組み分け困難者だ……。最長記録じゃないか?」
誰かが囁くのが聞こえて、ハンナは心配でたまらなかった。大丈夫だろうか?
10分近く経ったところで、帽子はようやく口(?)を開いた。
「グリフィン……いややっぱりレイブン……むしろスリザ……ええい、もう、ハッフルパフ!」
なんだか優柔不断な言葉を帽子は放ったが、最後の言葉にハッフルパフは歓声を上げた。エイミーはニッコリ笑うとハッフルパフの席にやって来た。
「エイミー、一緒でよかった!よろしくね」
ハンナも笑顔でエイミーを迎え入れ、隣の席へ誘った。
「ずいぶん長くかかってたわね?」
「はい。帽子さんはずいぶん悩んでいました」
ハンナが帽子に何を言われたのか聞こうとしたとき、エイミーの次の生徒の名前が呼ばれたため、思わず視線をそちらへ向けた。
「ポッター・ハリー!」
生徒達が顔を見合わせ、ヒソヒソと話し始める。ハンナも思わず背筋を伸ばし、帽子を被る少年を見つめた。
「あの方は……?」
エイミーが不思議そうにハンナに聞いてきたが、ハンナが答える前に帽子が
「グリフィンドール!」
と高らかに叫んだため、グリフィンドールの席から大歓声が上がった。ハッフルパフの席では上級生が少し残念そうにしていた。
「有名な方なのですか?」
エイミーがこっそりとハンナに聞いてきたため、ハンナも小さく頷いた。
「生き残った男の子よ」
「生き残った……?」
エイミーがもっと詳しく聞きたそうにしていたが、その時ちょうど組み分けが終了し、校長先生が立ち上がったため口を閉じた。校長先生は短い挨拶を終えて、すぐに歓迎パーティーが始まった。
歓迎パーティーは楽しかった。料理は美味しいし、他の1年生や上級生達ともたくさん言葉を交わした。とても温かい雰囲気に、ハンナはハッフルパフに入ることができて心から嬉しいと感じた。一方、エイミーも他の生徒達から話しかけられて、ニコニコと言葉を返していた。エイミーはかなり不思議な子だったから、ハンナは心配していたが、ハッフルパフの生徒はほとんど優しく穏やかな人が多いため、エイミーも無事に受け入れられたようで安心した。
その後は校長先生からの注意事項を聞き、校歌を歌ったあと、歓迎パーティーはお開きとなった。
ハッフルパフの寮は厨房の近くにあるらしい。厨房の廊下右手の陰にある樽の山が入り口になっていて、二つ目の列の真ん中の樽の底を2回程叩くと、寮への扉が現れた。
ハッフルパフの談話室は黄色と黒を基調とした温かな部屋だった。監督生から寮の説明や注意などを聞いたあとは、1年生はそれぞれ与えられた部屋へ向かった。ハンナとエイミーは同じ部屋だった。部屋には既に荷物が届いている。二人は挨拶もそこそこにベッドにもぐり込んだ。