ダンジョンに智慧を求めるのは間違っているだろうか 作:冒涜アメンボ
Have mercy on the poor bastard...
ビアー・ファミリアによる『第三の瞳』信徒、
──『第三の瞳』とは何だ?知っていることをすべて話してくれ。さっきも言ったが、協力してくれるなら手荒なことはしないと約束しよう。
そんな紳士ぶらないでも、あんたらに隠し事なんてしないよ。怖いからさ。というか、どうせそっちの鏡、マジックミラーの向こうにあんたらの神様がいるんだろ?嘘なんか言っても仕方ないさ。で、俺らが何だって言われてもな。俺だって多くを知ってるわけじゃないよ。逆にあんたらは何を知っているんだ?知りたいことがあれば一個一個訊いてくれ。答えられるなら答えるし、知らないなら知らないって言うよ。
──君たちの集団の主神は誰だ?ギルドに届け出を出してないファミリアなのか?
いや、俺らには主神なんていないよ。だから
──君たちは宗教団体なのだろう?なのに他ファミリアの団員がいるのか?
え、そうだよ。どっかのファミリアの団員ってやつもちらほらいるよ。
──何故所属している?
そんなん俺に言われても知らないよ。自分の神様がいるのになんで『第三の瞳』に入ったかなんてさ。本人に訊いてくれよ。いや、そいつがどこの所属でどこに住んでいるかなんて知らないけどさ。でもほら、冒険者なんていつ死ぬかわからないだろ?だからこそ、何かに祈るっていうか、すがりたくなるんじゃないかな?主神なんて言ってもさ、実在こそしてるけど神の力は封印してるから眷族がダンジョンに潜ったらもう何もしてやれないだろ。ほら、あんたらのビアー様だって一緒にダンジョンに潜るわけにはいかないだろ。だからこそフィアナ様みたいな偶像にすがりたくなるんじゃないかなあ。まあ憶測なんだけどさ。
──そのフィアナ様だが、かつて
そうだよ。あんた、フィアナ様を知ってるのか。なら話が早い。そう、実在しないとされてる女神さまさ。俺たちはそのフィアナ様を崇めているのさ。いや、さっきは偶像と言ったけどさ、俺たちは本当にフィアナ様を信じているんだよ。
──何故、信じられる?地上に降りてきた神に該当する存在はいないし、彼らもフィアナなどという女神は知らないと言っているが。
そりゃ簡単さ。神様ですら知らない、本当に上位の、隠された神様だからさ。
──神々ですら知らない上位の存在を何故君たちが知り、信じることができる?
預言者様が言ったからさ。
──預言者様とはなんだ?君たちの指導者か?何者なんだ?
たしかに俺たちの指導者さ。でも何者かなんて知らない。俺もお会いしたことなんてないしさ。
──会ったこともない者の言葉を信じるのか。それは何故だ。
俺も最初から信じてたわけじゃないよ。俺も工場の同僚が『新自由主義会派』のシンパでさ、その付き合いで『第三の瞳』のミサに顔出しただけなんだ。晩飯奢ってくれるっていうから仕方なくさ。でも
──『新自由主義会派』とは神からの解放を謳う思想団体ではなかったのか。何故それが偶像崇拝の『第三の瞳』に関係がある?そしてミュステリウムとは何だ?預言者が信者たちに何かをしていたのか。
いっぺんに何個も訊かないでよ。俺も『新自由主義会派』と『第三の瞳』がどういう繋がりがなんて詳しくは知らないよ。ただそいつが『新自由主義会派』の集会に顔出したら、そこのえらい人が『第三の瞳』も勧めたらしいんだ。それ以上のことは知らないよ。
──『新自由主義会派』のえらい人というのは
さっきも言ったけど知らないって。っていうか『新自由主義会派』と
──それは、人の手で強制的にランクアップさせるということか?
俺はそういう理解をしているよ。
──それはどういう仕組みなのか?信徒のすべてがそのミュステリウムを授かっているのか?
どうやっているのかなんて知らないよ。それに信徒みんなってことはないさ。現に俺なんて普通のレベルゼロだろ?司祭様を通して
──そうか。では質問を変えよう。最近オラリオでは市民や冒険者の失踪が相次いでいる。失踪者の多くが多額の借金を負っており、そこを追跡したら彼らの債権を君ら『第三の瞳』の関係者が持っているパターンが多い。これについては何か知っているかね?
知らないよ。そもそもそんな借金持ちと関わりがあることすら知らないよ。最近は俺たちを人さらい扱いする報道も多くて正直困ってるんだ。根も葉も無い噂を広める連中をなんとかしてくれよ。風評被害もいいとこだ。ああ、あと……
マジックミラー越しにビアー・ファミリア団長のメイ・トヒースと女神ビアーは
「駄目だねえ、これは。こいつも嘘を吐いてない。他にひっとらえた連中の知っていることと大差ないねえ」
「クソ鬱陶しい。時間の無駄だな」
メイは何本目になるかも判らない煙草をもみ消した。クリスタルの灰皿は既に底が見えないほど煙草で埋まっている。
「鍵はミュステリウムとやらを受けた信者と司祭級の幹部だねえ。預言者とやらに会っているのはそいつらくらいだろうけど……」
女神ビアーが煙草を咥え、メイはそれに火を点けた。次いで自分も煙草を咥え吸い点けた。
「まったく、眷族の暴力にモノを言わせてふんぞり返っていられるかと思ってたのに最近は大忙しだねえ。毎日毎日聴取の付き合いだ。お気に入りの眷族を侍らせて好き勝手ふらついているロキやフレイヤが羨ましいよ」
「主神に労働を強いる不甲斐ない眷族ですいませんね。折角司祭をひっ捕らえたのにいきなり死んじまったからな。あれが痛かった」
「奥歯に毒を仕込んでる*1なんてねえ。どっかの国の暗殺教団顔負けの機密保持っぷりじゃないか。鍵を握ってるやつを捕まえても、捕まえた端から血反吐ぶちまけて死なれちゃあたまったもんじゃないよ」
先の尋問でも出ていたが、最近は都市内での失踪が多く、ギルドが気を揉んでいる。ろくに税金も払えないような債務者ばかりだったので今まで放置されていたが、
ビアー・ファミリアは失踪者の金の流れから『第三の瞳』という新興宗教団体との繋がりを発見し彼らをマークすることにした。捕まえた信者の証言からイツァムナー・ファミリアの幹部が先導していた思想団体との関連が判り、今回の失踪にも
しかしどうにも核心に迫れる証言は無い。先のワンストーのような流されて参加した莫迦もいれば敬虔な信徒もいた。だが捕まえられる三下が教団について持っている知識は似たり寄ったりなのが現状だ。
メイは違う着眼点からのアプローチが必要ではないかと考え始めていた。
「ったく、何が悲しくてこんな真面目に働く羽目になってんのやら。頭数の多いガネーシャ・ファミリアが人海戦術で
「……でも気になるねえ」
「なにが?」
「ミュステリウムを授かった信徒はどこにいるのかってことさ」
「ああ……」
ビアーが口にしたことはメイも気になっていた点だった。
少なくない信者が
この教団は上級冒険者に相当するであろう身体能力を持った信者を何人か囲っている。それらをどこに隠しているのか。
その手合いとやり合った時の為にヘファイトス・ファミリアに武具の都合を頼んだが、いかんせん『第三の瞳』の戦力は未知数である。レベル6のメイとやり合えるような化け物クラスはそうそういないだろうが……
「今度緊急の神会があるから、ガネーシャや他の神にもネタくれるように言っとくよ」
「たのんますよ」
ギルドにはガネーシャ・ファミリアと協力しろと言われているし、言われずとも自分たちだけで面倒を被るつもりもない。しかし美味しいところを持っていかれたら面目も立たない。
「チッ」
捜査の進まない苛立ちをぶつけるように、煙草を灰皿に強く押し付ける。
クリスタルの灰皿には、駆けだしの冒険者では一日ダンジョンに潜っても買えない程の煙草の山ができていた。
さ~て、次回のミコラさんは~?
こんにちは、ヘルゼーエンです。
夜には鈴虫なんかが鳴いていますが、日中はまだまだ暑いですね。
みなさんはどうお過ごしですか?
俺は最近めっきり出番が減りましたが、自分が矢面に立ってヘイトを集めるようなマネはごめんだから丁度いいですね。
むしろジュラやヴァレッタにはもっと悪目立ちしてくれよなって感じです。
自分こそ闇派閥代表だ!みたいなツラをしてるんだから格好いいとこみせてほしいですね。
さて次回は、『リュー・リオン、イルタにときめく』『人さらいは重労働』『虐殺』の三本です。
次回もまた読んでくださいね~
ジャン、ケン、ポン!(先触れ)
Ah hah hah hah ha!