もし一輝が出会った人物がサムライ・リョーマではなく気高き碧い猛獣だったら 作:〇坊主
『さぁさぁ待ちに待ったこの試合!開始前だというのにも関わらず、会場は満席御礼の状態です!それもそのはず!今回の試合は我が破軍学園においてもトップクラスの実力者同士の戦い!彼等がここで出会わなければ、両者とも確実に七星剣武祭の切符を手にしている事でしょう!』
会場は早朝最初の試合だというのにも関わらず、席は全て埋まっていた。
座れない者は階段や最上階で立ち見をする方法で試合映像をその目に収めようとするものが多い。
すでにどちらが勝つかの予想をし合いながら試合開始を待ち望んでいる生徒が大多数だろう。
それも当然だ。
素早く最前列の席を確保した一輝達にとってもこの試合は重要なものだった。
「クラウド先輩と生徒会長のトウカ先輩の試合…いよいよね。イッキ」
「そうだねステラ。生徒会長に蔵人、どちらもまだ選抜戦で一度も本気を見せていない二人。どちらが勝っても、強敵だ」
『前回の七星剣武祭出場はしませんでしたが、前選抜戦と今選抜戦で未だ負けなし!他校の実力者ですら歯牙にもかけない実力は健在!周り全てが俺の獲物だと言わんばかりの剣気からは想像もつかないほど的確にその刃を振るってきました!』
実況者の言葉に宿る熱が強くなっていく。
一輝が言葉に出したことは事実だ。
だからこそ。
それが一般生徒でもわかっているからこそ、彼等は待ち望んでいる。二人の英傑の本気を液晶を挟んだ映像ではなく、
『今まで手を抜いていたのか?否!!本人に勝ち残る意思がなかったのか!?断じて否!!
破軍学園で多くの生徒はいれど、彼の実力を出すまでに至らなかったその事実ッ!!
その事実に、彼は、
だからこそ、実況者である
『だがそれも今日までであると!!』
マイクを強く握りしめ、実況者は会場へ向かって叫ぶ。
それに伴って歓声が一層高まるのは彼に敗れた者達の怨嗟のためか。
それともこれから起こる一大決戦に対しての期待の表れか。
『多くの剣士が彼に挑み、そして敗れていきました。
内に秘めたその確かな実力で、多くの刃を喰らってきたその男についた異名は《
その実力を!この試合で見せずしていつ見せるのか!
Cランク騎士・倉敷蔵人選手入場ッッ!!』
会場のボルテージが跳ね上がっていくなかで悠然と歩みを進める。
隠しているつもりではなかった。
だがこれから戦う相手に見せないつもりもなかった。
だから実況に告げた。
これは《雷切》に対する自分なりの宣戦布告だ。
普段の彼女からすればこれがどう転ぶかわからないが、蔵人は確信していた。
《
『対する赤コーナー選手入場ッッ!!』
《最後の侍》の縁者と知って驚く者。知ったが故に歓声をあげる者。知らずに状況が読めてない者。
それらすべてを置いて、実況は進む。
『破軍学園における対戦成績全勝!唯一敗れたのは前年度七星剣武祭優勝者!
だがしかし!その試合ですら、彼女の本質を見せることがありませんでした!!』
蔵人が中央で立ち止まったと同時。
開かれた扉から現れる一人の剣士。
『
二つ名を冠する
本戦でも猛威を奮ってきたその卓越した剣技で、
静かに、されど力強く歩くその姿は己の剣を一切疑わない姿。
普段身に付けている眼鏡を外し、戦闘態勢へとすでに移行している彼女は笑みを絶やさない。
今不意打ちを仕掛けたとしても、今の彼女であれば難なく対処して手痛い傷を負わせてくるだろう。
『異論を唱える者は誰もいない
その研ぎ澄まされし刃は、降りかかる剣戟に対してどのような結果を魅せてくれるのか!
破軍学園最強。雷すらも切り伏せるその剣技!今ここで見せてくれ!!
Bランク騎士・
二人は直径百メートルのリング中央で20メートルほどの間合いを開けて向かい合う。
刀華はすでに霊装《
あとは蔵人が霊装を出せば試合開始の合図が鳴る。
「…この戦いどう見るー?」
「戦績だけで判断することは難しいだろう。会長はともかく、《剣士殺し》も本気を見せていない」
「そうですね。我らが生徒会長であればいつも通り切り伏せるでしょうが、
刀華を後ろから見守るのは彼女が所属する生徒会の面々。
《
《
《
そして《
いずれも破軍学園の序列トップを独占する者達だ。
戦うことがない泡沫以外は前七星剣武祭に出場する実力者であり、多少の見方は違えども生徒会長が勝利をするだろうとの予測で一致していた。
「負けちゃったアタシがいうのもあれだけどね。副会長はどう思うのかな?」
「考えるまでもないさ。刀華が勝つ」
彼の中にあるのは確信。
幼き頃からの付き合いである泡沫には、今の彼女が何を考えているのかわかる。
「彼には申し訳ないけど、刀華が勝つ。なにせ、彼女には背負っているものの重さが違うんだからね」
普段とは違い、真剣に試合を観る泡沫はそう断言するのだ。
「感謝を。倉敷くん」
「あん?」
「今回の選抜戦において、私は貴方達の試合は目に入れています。《狩人》戦だけではない。兎丸さんを破った貴方の試合もしかと拝見させてもらいました。そしてずっと思っていた。貴方達と戦いたいと!」
バチバチと刀華の身体から雷が鳴り始める。
早く斬り合おうと言いたげな彼女の姿勢を見て、蔵人は軽く笑った。
「ンなもんこっちも同じだ《雷切》」
蔵人が持つ野太刀霊装《大蛇丸》を右手に出し、肩に担いだ。
「ここでテメェを喰らってやるよ!!」
跳躍し、霊装を振るう。
刀華はそれを待っていたように逆袈裟切りで応戦した。
剛腕一閃。
まずは小手調べと言わんばかりの蔵人の斬撃は爆ぜるが如く刀華に襲い掛かったが、即座に居合斬りで防がれたためにそのまま返された反動を利用して後ろへと飛ぶ。
試合開始の合図すら待たない不意打ちの一撃は彼女にとっては対処が容易なものだったようだ。
『ちょちょちょ!?タンマ!タンマですよ!試合開始の合図はまだ出していません!!』
『無駄無駄。やめといたがいいよ。今のは合図が遅くなったのが悪い。ああなれば審判がどう判断しようが止まらない。さっさと合図出して観戦してたがいいと思うよー』
『えっ!?え、ぁあああもうわかりました!試合開始してます!!』
解説役として呼ばれている寧音は反則など無意味と切り捨てて司会を進めるように促した。
ある程度の力量を持った剣客なら彼女の言い分もわかる。
最大にまで高められた剣気を前にして、他人の合図など待っていられないのだ。
「―――――ッ!」
「っ―――!!」
一手、二手、三手――
蔵人の高められた反射神経が、刀華の研ぎ澄まされた感覚が、相手の斬撃を往なし、そして反撃する。
ガガガガガと霊装同士が打ちあい、僅かながらに火花を散らす。
動体視力に優れた者でなければ、彼等の周りに只々連続して火花が生まれているようにしか見えないだろう。
『すごい!すごいです!!連撃連撃連撃連撃ィ!!試合が始まって1分も満たないこの瞬間!両者の間に火花が散る!あまりの速さに正直私は目で追えません!!』
『いやぁ正直本当にやるね。《雷切》は当然だけど、《剣士殺し》がここまで食らいつくとは思わなんだ』
これまでの試合とは明らかに異質。
文字通りの次元が違う戦いに、寧音の軽い態度が鳴りを潜めて真面目に観戦をしていた。
「これがトウカ先輩の、《雷切》の実力…」
何度も練習試合を重ねているステラもハイレベルな戦いを食い入るように見つめている。
刀華会長自身隠していないため解説するが、すでに彼女は
その名は《
相手の脳内の電気信号を読み取ることで行動を先読みする技。
相手の行動を行なおうとする動作を読み取り、即座に対処する技量の高さが無敗を誇る理由。
普通であれば、数手は疎か一手目で見切られて試合が終わる。
だが彼女の対戦相手はすでに十を超える数を打ち合っていた。
それは彼の技量の高さが《雷切》を上回っているのか?そう決めつけるのは否。
(…蔵人くん。貴方は…)
鍔迫り合いを解除して互いに一旦距離を取る。
圧倒的な技量差があるわけではない。
速さにおいては己が有利。
しかし現に蔵人は刀華相手に互角に斬り結んでいた。
その要因に気づく。
「…驚きました。蔵人くん。貴方…反射神経が常人の比ではありませんね?」
「ハハッ。気づいたか?」
「《
「ハハハハハッ!!正解だ!オレの
蔵人がステラを幾多も降してきた理由。
如何に裏を掻こうとも、如何に威力が高かろうと、彼の前にはすべての行動が止まって見える。
技ですらない、天に愛された基礎能力。
それが《剣士殺し》たる根底の力。
「喰らわせてもらうぜ《雷切》。テメェのその剣をなァ!!」
蔵人が駆ける。
上段から落とされるノコギリ刃が刀華を斬り裂きにかかる。
その行動をすでに読んでいた刀華は居合からの逆袈裟斬りで対応する。
初撃と同じシチュエーション。
振られた野太刀の剣筋も、動作も、そして技を振った直前の彼の真正面から叩き潰す、その考えすらも。
それを察している刀華も同じように刀を返す。己の雷を刀に乗せて。
(これで終わりです)
人前ではまだ未使用の技術。
師匠に習ったその技は殺傷能力を数段跳ね上げる。
例え
名を
雷刀が天へと振り上げられる。
試合が開始されておよそ三分。
初めて血飛沫が宙に舞う。
『 …………な、ななな… 』
静まり返った会場に、司会の声が大きく響く。
《雷切》と《剣士殺し》。破軍学園でも
一息つく間もない戦いを行ってきた。
ついに事態が動く。
『なんということでしょう!ついに、互角の戦いを繰り広げていた両者ですが、ついに状況が動き出しました!!』
司会を務める
しかし、それがもたらした結果はわかる。
『剣客同士の瞬きすら許さぬ高速の攻防!その鋭い一撃が、ついに相手を捉えて刃を通したぁ!!
《雷切》と《剣士殺し》、最初に優位をその手に収めたのは――――』
どれだけ信じがたくても、どれだけわかりきった結果であっても、彼女は大きく声を張り上げてマイクへと言葉を叩き込む。
『――《
観客席から映るモノも、映像に映るモノもそれが事実だと告げている。
中央には得物を肩に乗せて嗤う者と、戦意を有しながらも右腹部を押さえる者。
それは客観的に見て、どちらに形勢が動いているのかを示すには十分すぎる証拠であった。
碧い猛獣のライバルはいる?
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登場してほしい
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設定だけ。登場はいらない
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むしろ別のキャラ出して
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混ざりすぎるの嫌だから不要
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ちくわ大明神