もし一輝が出会った人物がサムライ・リョーマではなく気高き碧い猛獣だったら 作:〇坊主
巷でインフルエンザが流行ってきたので初投稿です。
「…っっ!わかったわ。だったら!!」
蹴り飛ばされたステラは一輝の宣言を聞いて大剣を天に掲げると彼女の剣に宿っている炎が彼女に呼応し、その光度と温度を一気に跳ね上げ生きているかのようにその姿を滾らせる。
光の柱の如き炎は天井に触れるや否や一瞬で溶かしつくした。
これがステラ・ヴァーミリオンという強者。《紅蓮の皇女》が持つ最強の
太陽が放つ光の如き煌きと、大気中の塵すらも燃え尽きる極大の極光。
まさに必殺技と言っても過言ではない超大技だ。
「最大の敬意を以て、アンタを完膚なきまで倒してあげるわ!!」
この技を出した時点で求めるのは剣技での決着ではない。
剣技、そして体技共に先ほどの蹴りで己の完敗だと認める材料になるには十分すぎた。
故に剣客としてではなく、
「《
触れるもの全てを焼き切りるように、光の剣から光が溢れる。
初撃のように受けきることは決して許さないその熱量が一輝の視界を埋め尽くし、炎がまるで津波を連想させるかのような範囲で襲い掛かってきた。
「―――ありがとうございます。ステラさん」
無機物を瞬時に溶かす熱量に観客たちが慌てて逃げ出すなかで、眼前に迫る敗北を前に一輝の口から出た言葉は恐怖でも、敗北を認める宣言でもない。感謝の言葉だった。
彼女が放つ技は紛れもなく今の彼女が放つことが出来る最強の技。それを使うことを選択してくれたことへの感謝だ。
超えるチャンスを与えてくれたのだ。だからこそ、今全力で越えるべき価値がある。
「妹にもなんども言われたよ。『お兄ちゃんは魔導騎士以外ならなんでもなれるのだから、そちらを目指したほうがいい』とね。確かにそうかもしれない。でも僕は諦める気はない。だって―――自分を信じれない者には、努力する価値なんてないんだから」
すでに絶縁レベルにまで達している黒鉄家との因縁。一輝が
全国の英傑が集う祭典で、魔力をほとんど持たないFランクたる一輝が優勝するのがどれだけ険しいことなのか?それは実際に出て、戦ってみないとわからない。
だが、何よりも。一輝には周りから無謀だと言われようとも、決して歩みを止めないと決めている。それは一輝は自分の可能性を信じている何よりの証拠だからだ。
「僕が僕を貫くために、これまで培ってきた僕の全てを、今ここで示し!」
故に一輝はここで奥の手を切ることになんら躊躇いはなかった。
――――
「僕の最強を以て、君の最強を打ち破る!!!」
――――
今こそ、自分の“忍道”を貫き守り通す時!!
「おぉぉおおオオォォオオオオオ!!!」
瞬間、一輝の身体から光が生まれる。
それは焔のように溢れんばかりの輝きが。
自分と同じ火属性の能力なのか。ステラはその疑問をすぐに切って捨てた。
すぐにわかったからだ。あれは可視化できるまでに高まった『魔力の塊』であると。
(魔力が増大してる!!?)
魔力とは生まれた瞬間から総量が決まっている。生まれつきだからランク分けがされるのであり、羨望の的になりやすい。
そんな魔導騎士が台頭してきてからというもの、後天的に魔力量が上がるなど、聞いたこともない!
(でもそれは関係ない!彼の力が魔力を底上げする能力であったとしても、この熱量には敵わない!!)
ステラが技を発動するために距離をとったことで、双方の間合いは60メートル以上。
であれば、リーチが長い
一輝の様子が尋常ではないことは目に見えて明らかであっても、己の切り札を切っている時点で後戻りなどできはしない。だが、ステラの脳内では、この技を以てしても、一輝を倒す映像がイメージできなかった。
「っッ!!でも!ここで勝つのはアタシよ!!」
自分の思考に恐怖を覚えながらも、己を奮起させるために高らかに声を挙げる。
例えどのような行動をしてこようとも、先に焼き尽くしてしまえばなんら問題になりはしない!
ステラはそのまま光の剣を振り下ろし―――――
―――――光の剣が両断された。
「…………え?」
―――今、何をされた?
幼いころから有り余る魔力に身を焦がしながらも、血の滲む努力の末に習得した《
溢れんばかりの太陽の熱量がステラに触れようとする全てを焼き払ってきた。
放てば必ず勝利する。文字通りの必殺技。そのステラが誇る最強技が瞬きの間もなく消滅した。
目を見開きながら驚愕するあまり、ステラの思考が止まる。
それはコンマ単位での思考停止であったとしても、今の一輝に対してはあまりにも致命的。
瞬きの間もなく、手を伸ばせば届きそうな距離で、一輝はすでに攻撃動作に入っていた。
「――絶剣」
阻むものをすべて一刀両断する上段の型。
その姿を見たステラは瞬時に理解した。これは確実に食らうと。
であれば、どうにかして一矢報いねばならない。
(―――綺麗―…)
だが冷静な思考を押しのけて、ステラは魅入ってしまっていた。
それは美しいものを見つけてしまったものが抱く感情‐一目惚れ‐だった。
そんな感情を抱いてしまうこと自体がおかしなことだ。つい先ほどまでどうやって倒すかを頭の中でシュミレートし、それを実行していたのだ。実際はその通りにはいかなかったが、攻撃を受けようとしている以上は余計なことを考えている場合ではない。
しかし、戦いには似つかない感情を抱いてしまうほどに―――
「《一刀修羅》」
―――彼が振り下ろした一閃がとても美しく見えたのだ。
――――
「……………ん……ここ、は……」
ステラが目を覚まして最初に見た光景は見慣れない天井だった。
天井に備え付けられている照明のじんわりとした明るさが、
「目が覚めたか。ヴァーミリオン」
ステラが横たわるベットの側で煙草をふかしていたこの破軍学園の理事長 黒乃がステラの覚醒に気づいて声をかけた。
数秒何故自分がここで寝ているのかを考え、先ほどまで決闘をしていたことを思い出す。それを考えればこの場所は病室なのだろう。
そうステラは判断を下し、そんな病室で悠々と一般学生にとって害のあるものを吸うなと思いもした。が、それよりも先に出てきた言葉は自分が考えていたものと全く異なっていた。
「……なんで、アタシは生きているの…?」
「――……忘れたか?あれは殺傷能力を無くした《幻想形態》での決闘だ。故に斬られたとしても死にはせん。最も、奴の剣気を初見で、それもあそこまで間近で受ければそんな感想にもなるだろうさ。それを示すようにヴァーミリオン。お前は丸一日寝ていたのだぞ?」
ステラの言葉に若干の苦笑を浮かばせながら、黒乃が事の経緯を説明する。
それを聞いて漸く頭の整理が追いついてきた。
本来であれば殺傷能力のない《幻想形態》で斬られたとしても、外傷は一切残らずに極度の疲労が発生する。
故に再生医療機材であるIPS
例え外傷がなくとも、精神が死ねばそれは人としてまともな行いをすることが不可能になる。
現に本来であれば二時間ほどで起きても良かったはずなのに、10倍以上の時間をかけていたという結果が彼らを不安にさせていたのだろう。心なしかステラが目を覚ましたことで遠くで様子を見ていた医者が胸をなでおろしている。
「…負けたのね…アタシ。それも何一つ勝てなかった…」
「まぁ、そう悲観するなヴァーミリオン。あいつは私と打ち合えるだけでなく、ハンデ戦で実際に勝ってる男だ。現状でお前が敵う相手のレベルではないさ」
「…元世界ランキング三位《
自分が戦っていた相手のバグっぷりに引きながらも、それならば納得だとステラは思った。
たった2分で相手の動きを完全に把握する動きだけでなく、ステラの
不可能とされていた自分の限界を超えた魔力量を増やす男だ。
それを知ってると納得してしまう自分がいた。
「――理事長先生。アイツは――」
だがそれで興味が消えるわけではない。
本来の所持量を遥かに超える魔力を強引に生み出すあの方法が、
ステラが至ったその考えを読み取ったのか、黒乃は言葉を挟む。
「心配する必要はない。アイツは先ほど治療を終えてすでに自室へ戻っている。外傷で言えばお前よりもずっと重症だが、命に関わるレベルではないよ」
「そうですか…ありがとうございます。理事長先生」
黒乃の言葉を聞いて少し安心した。
「……ほんとうなら、もっと聞きたいことがありました。でも、すいません。また眠くなってきたので、もう少しここに居させていただいてもいいでしょうか?」
安心したことで、少し気が緩む。
でもそれはいけない。まだ、してはいけない。
「―――わかった。好きなだけいるといい。手荷物はそこの机に置いてる。気が晴れたら、戻るがいいさ。」
黒乃はそういうと共にいた医者を連れて病室から出て行った。
ドアが閉められ、ステラ以外に誰もいなくなった病室はやけに静かに感じた。
彼女はステラの心境を理解したのだろう。
最後の言葉はそれを察した言葉だった。この病室周辺から人払いを行ったことで、今のステラは文字通りの一人ぼっちだ。
「………っっ、ぅ…ぐすっ…」
誰もいないことに安心したからなのか、先ほどの試合を反芻しながらステラの
最初は気のせいかと思った。
だが、一滴、二滴、三滴と、シーツの上を転がり落ち、そのたびに白色を少しずつ暗く彩らせている。気のせいではなかった。
「ぅぅ…ぅぅうう、ぁっ…」
はしたないと思いながらも己の口から出てくる嗚咽は無くならない。
抑えようにもそれを上回る勢いで溢れ出てくる感情をステラは抑えきれなくなっていた。
「ぁぁぁぁあああああぁぁぁッッツ―――!!」
負けたことに対する絶望なんかでは断じてない。
文字通りの正々堂々とした決闘での決着だ。
ではなぜ自分はこんなに情けなく泣き叫んでいるのだろうか。
それはわかっている。
黒鉄一輝という男に、完敗したことが悔しいのだ。
天武の才に恵まれようとも、努力を怠ったことは一度たりともなかった。
自分を煽てることしかしない自国での環境ではこれ以上の成長は望めないと自らの意思で判断し、破軍学園に入学を決めた。
しかし例え
驕っていたわけではない。事実、彼女を越える可能性がある生徒は破軍学園全体でも五本指で数えられるほど少数だろう。それは揺ぎ無いものだった。
しかしそんな考えと、その事実は完膚なきまでに壊された。
剣技で負け、体技でも負け。
敗北したことに対してステラに非があったわけではない。答えは単純だ。
黒鉄一輝が鍛え上げてきた努力が、ステラ・ヴァーミリオンが培ってきた努力を遥かに上回っていただけの話なのだ。
誰もいないのをいいことに、どれだけ泣き叫んだことだろうか。
あまりの悔しさに涙が溢れ続け、そしてそれをせき止めようと壁になった掛け布団は絞れば水が出てくるのではないかと思ってしまうほどに湿っていた。声も荒げて叫んでいたためか、心なしか喉も痛い。
だがこれまでため込んでいた感情を一気に吐き出したことで、大分落ち着くことが出来ていたステラはこれ以上居続けるのは流石に迷惑になるだろうと判断する。
布団を剥げば、外傷がないので当然と言えば当然であるが、自分が着ていた制服が目に映った。おかげで着替える時間を省くことができた。
で、あれば後は泣いた後の自分の顔をどうにかしなくてはならないと向かった洗面台で、ステラは改めて自分を見つめる。
「……ふふっ、ひどい顔してるわね、アタシ」
自分の想像よりもひどい顔つきであったがその表情は暗いという表現は不適切だ。むしろ口から出た言葉とは真逆で清々しく、負けたというのに誇らしい表情に思えた。
先ほどまで泣くほどに悔しかったというのに、来日してたった数日で本国に居た自分よりも眼に光が宿っていることが少しだけ可笑しかったのだ。
「イッキ。――クロガネ イッキ。」
自分を負かした青年の名を呟く。
思いもよらない出会いと、そして敗北であった。
だがそれがどうした?日本という未知の世界に入りこんだのだ。自分の予期しない出来事などこれから数多に受けることだろう。むしろこんなに早く、全力で挑める相手を見つけることが出来たことは幸運だと思うべきだ。
机に置かれてたリボンを手に取り、手慣れた手つきで髪を結んだ後に3回ほど水で顔を洗う。
濡れた顔を拭き切った後に鏡に映った自分の姿を見て、異常がないことを確認したステラはそのまま病室を後にする。
「絶対に追いついてやるんだから」
外に出ると心地良い風がステラを歓迎する。
これからの学園生活は良いモノになりそうだ―――。
碧い猛獣のライバルはいる?
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登場してほしい
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設定だけ。登場はいらない
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むしろ別のキャラ出して
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混ざりすぎるの嫌だから不要
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ちくわ大明神