もし一輝が出会った人物がサムライ・リョーマではなく気高き碧い猛獣だったら 作:〇坊主
予想以上の評価に動揺したので初投稿です。
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報告したのに変わっていないといった文章はあえてそのように表現しておりますのでご了承くださいませ。
黒鉄一輝の朝は早い。
朝五時には必ず起床し、鍛錬の準備を行う。
軽めの朝食を摂取した後で、広大な敷地を有する破軍学園の少し西。朝は絶対と言っていいほど人が居ない公園で一輝は普段通りの鍛錬を行うのだ。
それは規則正しい生活をしているというのもあるが、なによりも己が行う鍛錬が自己分析しても他人から見て不審者でしかないからだ。
まず己の四肢に重りをつける。尚、一輝は常にこの重りを装着して日々を過ごしているのだが、これに関しては普通だろう。日常生活でも実際に行う人は多くいるはずだ。
だが、その肝心の重さが世間一般の比ではなかった。
「~~~ッッッぐぉぉぉおお゛おぁぁほぉぁぁあ゛あ゛あ゛!!」
「ちょっ!?ス、ステラ!?女性が発しちゃ駄目な声と表情になってるよ!?」
ステラから、放送NGレベルの声が発せられている。
表情とて、今の彼女を見た誰もが一国のお姫様だとは想像もつかないだろう。良くてもお笑い芸人だと思われるほどの顔芸だ。
両手両足に付けた重りが明らかな原因だった。
腕は何とか上げられはするがプルプルと震え、足に至っては拘束されているのではないかと思ってしまうほど動いていない。
心配する一輝を他所に、ステラはそんな重りをつけても楽々と動いている一輝を見て、対抗心を沸き立てる。
(―――負けて、られないんだからァッ!!!)
羞恥心をかなぐり捨ててステラが重りと格闘しているのも理由があった。と言っても彼女自身の我が儘を通した結果がこれなのだが。
ルームメイトとして同じ部屋で共に暮らすことを承認したステラは次の日から一輝の日課である鍛錬に同行するようになる。
そこで着替える一輝の鍛え上げられた肉体に見惚れていたのだが、一輝の手足に付けられたウォーマーに気づいたのがきっかけだった。話を聞けば単純で、中に重りが入っているという。
ステラ自身も戦闘態勢になれば魔力を全身に回して身体能力を向上させて戦うので、一輝が持つ重りも悠々と持ち上げられていただろう。だが、これをあえて魔力を使用せずに、日常生活の一部として慣らすという考えに自分も一緒にやると宣言。早く追いつきたい一心で一輝の制止を振り切り、一輝の重りを手に取ったのだが。
『――――!!???ふぉぁぁああいだぁぁああああぁぁぁい!??!』
あまりの重さに持てず、そのまま左手が地面に直下で落ちていく。
地面に叩き落とされただけでなく、プラスして重さをダイレクトに喰らったことでその日人生で初めてと言ってもいい悲鳴をあげた。その日も緊急で医者にかかることになったのだが、理由が理由のために呆れられたのは記憶に新しい。
ちなみに一日目はそれで鍛錬時間が終了した。
二日目は何とかつけられはしたものの、一切動けなかった。
そして三日目になるのだが、自力で持ち上げるにまで至ったことに一輝は素直に感心する。
変な声を発していることは彼女の尊厳にも関わることなので静かに記憶から忘却し、ステラが半分の重さとは言えど耐えられている事実のみを受け入れたのだ。
魔力を使用しないで動けているのは十年に一度と言われるほどの魔力の才能を持ちながらも、頼り切ることはせずに己を鍛え続けているなによりの証拠だった。
(やはりすごいなステラは…)
ステラが軋むロボットのように一歩、また一歩と動き始めるなかで、一輝は逆立ちで公園の外周を30周ほど駆け抜けていた。その尋常ではない速度で外周を駆け抜けていく様はまさに変態である。
全力疾走に緩急をつけて心肺機能に意図的に高負荷をかけるのはもちろんのこと、今のように逆立ちでシャトルランのように急加速急停止を繰り返す。
それが終われば木々に括り付けていたロープつき丸太をブランコの如く勢いをつけて複数動かし、目隠しのまま全て迎撃する。
それが終われば通常の素振りと片足立ちからの独り稽古。
その後に通常の筋力トレーニングを加えて2時間で全てを終わらせる。
そんな暮らしを一輝は毎日続けていたのだ。
一輝が目標数を終わらせて公園のベンチに戻ってくれば、ステラも目標として引いていた白線まで進み切っており、全身から汗を噴き立たせていた。
「はァッ――!はァッー…っ!!やって…やったわぁあ!!」
「お疲れ様。ステラ」
たった数十メートルであったとしても、目標を達成できたステラは声を張り上げる。
滝のように流れる汗を拭く余裕すらないほど疲れ切っているというのに大した根性だ。
渡した飲料を一気飲みするステラから目を外して遠くにある学園を見る。
一輝の視界には木々に隠れてしまっているおかげか学園の上部しか確認できないが、下部では始業式を彩る装飾が飾り付けられていることだろう。
(これからが、僕にとって本当の勝負だな)
少し乱れた呼吸を整えながら一輝は思う。
去年の一年間は学ぶチャンスすら受けられないまま生徒として過ごした。
最も一輝はそれで出来た時間でより己を強化していったので、むしろ貴重な時間を得れたのではないかと前向きに考えているのでこれと言った感情はないが、今年は違う。
新宮寺 黒乃が現在の理事長に就任したことで学園の方針が一新された。
ステータスに関係なく、意欲ある者だけが参加する七星剣武祭への『選抜戦』。
ここで勝ち抜くことが出来なければ、一輝の求める道は未来永劫訪れない。
ルームメイトであるステラだけではない。
学園最強と呼ばれる生徒会長や、それに近しい実力を持った
「――なんだか楽しそうね。イッキ」
「そう見える?まぁ事実なんだけどね。戦いたい相手もいるし」
「イッキが戦いたいって言うレベルの生徒が他にもいるのね。……ひょっとして女の人じゃないでしょうね?」
(なんか殺気を感じるんだけど…)
「いや女の子じゃないよ」
苦笑しながら一輝は答える。
その答えに満足したのか殺気をなくしたステラは帰りましょうと言うと先に進み始め、その姿を見て内心安堵した。
一輝は嘘はついていない。
確かに戦いたい友人は男だ。
一輝自身も彼の実力に舌を巻いたほどの彼が今日までの間、何もせずに学園生活を謳歌するはずがない。
その彼の成長を楽しみにしているのだ。
なら何を安堵しているのかと言われれば実はもう一人、一輝が会いたい人がいるのだ。そしてその人物は女性であった。
と言っても恋人なんていう甘い関係ではなく、師匠同士の交流によって生まれた程度の出会いであり、今から
剣士としての実力も相応の持ち主。彼女の
そんな彼女の話題を一輝の口から出すようなヘマはしない。
一輝は鈍い所はあるが、鈍感ではない。
男としての尊厳を有しているし、雄としての直感もある。故に彼女のことは語らなかった。口に出してしまったら明らかに不機嫌になることを直感で察した一輝の見事なファインプレーと言えるだろう。
しかし、一輝は気づけなかった。
ステラ・ヴァーミリオンは一輝に対してすでに尊敬にも近しい感情を持っており、なんだかんだで独占欲が強い。故に彼女の話を聞いている聞いていないに関らず、実際に出会ってしまえば多少なりの嫉妬の炎を吐き出してしまう歳相応の少女であったということに。
――――
その後、始業式を無事に終えた一輝たちは配属された教室で担任
細かい説明を省けば、内容はこうだ。
―――最後まで勝ち抜け。
それが
毎年全国ネットで七星剣武祭が放送されていることでわかるように、この大会に出場できること自体すごいことだ。全国に顔を売るという意味でも七星剣武祭以上の催しはないだろう。
顔が売れるということは
だが生徒全員が《七星剣王》を目指しているのかと言われれば否であり、本気でなろうとする生徒のほうが少数であるのが現状だ。
考えてみれば当然の話だ。
《七星剣王》になるのが
故に折木先生も最初に強制ではないことを告げていた。
人生とは人それぞれであり、どのような道を進んでいくのかは自分が決めるべきだと。だがそのうえで彼女自身は生徒達に率先して参加をしてほしい、自分の可能性に挑んでほしいとエールを送っていたことで入学したばかりで浮ついていた生徒達も彼女を教師であると認めたことだろう。
「おブファ――ッッ!!」
「「「ゆ、ユリちゃぁぁぁぁぁあん!?!?」」」
最後の〆で見事なまでの吐血をしなければ、であるが。
結局初日のホームルームはお開きとなり、
話題のAランク《紅蓮の皇女》とFランクの黒鉄一輝の試合動画が拡散されていたことで、ちやほやされる一輝を妬んだ生徒たちを互いに無傷で一蹴するなどのハプニングもあったが始業式から5日が経ち、新入生の初めての休日が訪れていた。
皇族として箱入り娘でもあったステラは日本の庶民的文化に大変興味を示し、それにより休日は普段の鍛錬を終えた後に映画を見に行く約束を一輝に取り付けた。
一輝自身も男である。
抜群のプロポーションを誇り、そのうえでブンブンと尻尾を振る姿が幻視できそうなくらいの笑顔で映画を見る約束を提案されれば即座に了承するのが男としての義務であると理解していた。
破軍学園の近くには全国展開をしている大型のショッピングモールが存在する。
一輝達の目的である映画上映会場は最上階である4階に存在するのだが、すぐに向かうようなことはしない。
映画を観ようにも上演時間の都合上、空白の時間帯が存在する。であればその時間を用いてステラの好奇心を満たしながらフードコートで時間を潰すほうが効率的というものだ。
「…っとと、もうこんな時間か。そろそろ
「えっ、もうそんな時間なのね。イッキとの会話が嬉しくて話し込んじゃった」
(………それは僕もだよ)
事前に調べていた評判だと噂のクレープ屋でステラの満面の笑みを頂いた後、他愛もない話をしていると程よい時間になっていた。
ステラの本心を内心で喜びながら二人は目的地へと向かう。その際に顔が赤くなっていることに気づいた一輝はステラに気づかれない様に少し歩調を早めて顔を見られない様にしたのは内緒だ。
「そういえばどんな映画があるのかしら?アタシ映画を見るのが初めてだから楽しみ!」
「僕もなんだかんだで映画を見る機会は少なかったからなぁ」
自分の生徒手帳でシネマランドのHPへアクセスし、上映している映画を確認する。
『私は妹に恋をした。※R-15』
『男達の失楽園 ※R-18』
『ガンジー 怒りの解脱』etc...
映画を調べているのに、最初に出てきたタイトルが上記である。猛烈にツッコミを入れたくなった。
「なんかタイトルですごく気になるものがあるんだけど…」
「なんかすんごいカオスね、これ…。なによ『許すことは強さの証と言ったな。あれは嘘だ』って」
「…これは最後の候補にしようか」
「…そうね」
ガンジーであろう筋肉ムキムキマッチョマンが重火器を構えている広告を見て意見が一致した。
興味はある。しかし混ざりすぎである。これはひどい。
「でもなんでR-15は兎も角、昼の時間にR-18の映画を公開してるのよ…」
「さ、さぁ?それは流石にわからないよ。でも結構恋愛ものが多そうだね」
「そうね。最初のガンジーも気になるけど…あっ、ねぇイッキ。これとかいいんじゃない?」
「ん?どれかな……」
一輝はこの時、どんな顔をすればいいのかわからなかった。
ステラが興味を示した映画はアクション物。
内容は教師として細々と暮らしていた男が強盗の場面に出くわしてしまう。通報されるのを恐れ、口封じにかかった強盗団を撃退するところから始まり、強盗団に指示を送っていたマフィアに目をつけられたことで命を狙われる。主人公は平穏な人生のために、マフィアを撃退しに向かう―――そんな内容だ。
何も変なことはない。
一輝が反応したのは中身ではなく、主演をはる俳優が原因であった。
(……師匠。俳優業をされてたんですね)
見間違えでは断じてない。
むしろ彼を見間違えるほうが難しいと言っても過言ではないだろう。
一輝が幼いころに出会い、そして稽古を日々つけてくれた人生の師匠。全身緑タイツのオカッパ頭という、傍から見れば変態的な外見。
一輝が一人立ちするまでの間、一輝の身柄を保護して見守っていてくれた恩人が、一輝の記憶通りの衣装で見事なまでにセンターを飾っていた。
タイトルの名前は―――『燃えろ!青春!!“四”』
ナンバリングから察するに、結構な人気を誇るシリーズらしい。
ステラも興味を惹かれていたため、一輝も見ることにした。
見事なアクションと内容の面白さに魅入ってしまい、後日シリーズをレンタルで借りて休日を潰すことになることは今の二人が知る由もない。
碧い猛獣のライバルはいる?
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登場してほしい
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設定だけ。登場はいらない
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むしろ別のキャラ出して
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混ざりすぎるの嫌だから不要
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ちくわ大明神