もし一輝が出会った人物がサムライ・リョーマではなく気高き碧い猛獣だったら 作:〇坊主
お久しぶりです。
あまりにも久々すぎて自分もどこまでしたいのかわからなくなってたので、ここの時点での原作との相違点をのっけておきます。
参考までに。
~原作と違うとこ~
・一輝君がすでに強化済み。愛情を注いでくれる師匠が存在するため、黒鉄家から認められることにそこまで固執していない。
・原作よりも早く家を出たことで珠雫の性格矯正イベントなし。この意味はわかるね?
・貪狼学園に居るはずの『剣士殺し』が破軍へ。綾辻家の問題はすでに解決済み&強化済み
・おや?『雷切』の様子が…?
「……ここは、保健室……?」
「っ!!一輝!気づいたのね!?よかった…」
「ステ…―――?」
気怠さを残しながらも目覚めた一輝を待っていたのは自分の顔を包み込むとても柔らかい感触だった。
安心する柔らかさと鼻腔へと届く良い香りが一輝の脳内を溶かしていく。全ての事象を置き去りにしてでもそれを感じていたいと思う、男としての
この世界の真理とも言えそうなこの感触。これを言葉にすれば、なんというのだろうか……―――バブみを感じる。その言葉が近いか?
もっとこの心地よさを感じていたい。うまく回らない頭でそう思いながら離すまいと一輝も両腕を回して抱きしめた。
可愛らしい声が一輝の頭上で聞こえるが、今の一輝にとって大事なことではない。
「…ここに住みたい」
「ひゃい!?」
脳が溶かされてしまったせいなのか、思ったことがそのまま言葉として口から出てしまった。だがそれは重要なことではないだろう。
顔に触れる柔らかい感触が一体何なのか。一輝はあまりの心地よさに二度寝をしてしまいそうになるが、動きたがらない頭を回転させて考える。自分は一体何をしていたのかを。
《狩人》との試合を終わらせた後、八門遁甲の副作用によって全身出血をしながら一輝はその場で倒れた。なんとか意識を試合終了まで残していたから、審判が黒鉄一輝という名を勝者として挙げていたのを聞き取ることが出来た。だから初戦敗退といったことはないだろう。その後はおそらく理事長が一輝をIPS再生槽へとすぐさまぶち込み、素早く処置したというところか。
それによって疲労は残っているものの、傷は完治。本日目覚め、付きっきりで見守っていたステラが当然ながら一番最初に気づいた。そして現在に至る、と……――――-!?!?!???
「す、ススススススステラぁぁああ!?」
「きゃああぁああ!?ど、どうしたの!?何かあったのイッキ!?」
自分が一体何をしていたのかを理解したと同時に理性が雪崩の如く押し入り、あらゆる感情を吹き飛ばした。
柔らかく感じていたのはステラが誇る双丘だ。自分が目覚めたことで喜びのあまりに抱き着いてきたのだろう。そこまではいい。男女の関係であっても自然だろう。
だがその後自分は何をした?何を言った!?
「す、すみませんでしたァァアア!!」
ここに住みたいとはなんだ!?完全なセクハラ発言ではないか!!
確かに住みたくなるほどの心地よさだったがってそこは重要で大事だが今はそこではない!!一国の皇女様に対してなんてことを言ってしまったのだ!?
己の失態を瞬時に理解してしまった一輝は掛布団を吹き飛ばしてステラへ向かって土下座を敢行する。
姫を抱きしめて胸に顔をうずめた後のセクハラ発言など、即首をはねられる案件である。それは何とか避けねばならない。
「い、イッキ?」
「あらあら。黒鉄君もしっかりとした男性だね」
慌てながら謝罪する姿に困惑するステラとそれを見て一安心する絢瀬。
絢瀬の表情も普段の凛々しい表情ではなく、子供を微笑ましく見守る母親のような表情をしていた。
「~~!?あ、
「大丈夫。黒鉄君がステラさんのことが大好きなことは前に聞いたからわかってるよ。ボクは黒鉄君が同性愛者だったんじゃないかって心配していたんだけど、それも違ったようで安心したしね」
「えっ、僕ってそんな疑惑持たれてたんですか?」
「うん。だって黒鉄君はそんな反応をボクには全くしなかったんだもの。明確な言葉にしてなかったボクも悪いのは自覚しているんだけどね。ボクも君に好意を持って接していたんだよ?」
「......えっ」
綾瀬の言葉に本日2度目の驚愕をする一輝。
彼女が嘘をつくとは考えられないので、紛れもなく事実なのだろう。だがそうであるのなら、一輝は自分を慕ってくれている女性を悲しませたことになるのだ。
その現実を知って青ざめる一輝の顔を見て、体調が悪化したのではないかと涙目になるステラ。その二人を微笑ましく見つめる絢瀬はしばらくその空間を楽しんでいた。
――――
そんな出来事もあったものの、なんやかんやあってステラが試合中に一輝に対して考えてしまったものに関する謝罪を一輝に涙ながらに伝え、一輝はそれを受諾。はっきりと互いが相手に抱いている想いを告げたことでいい感じの空気になっていた。
いたのだが…
「ちっと見ねぇ間に鈍ったかテメェ…?」
そんなものは俺には関係ないとでも言う様に二人の間に言葉が割って入ってくる。
二人が意識を向ければ相変わらずの髑髏を模した服を身に付けてこちらを睨んでいた。
破軍学園に所属する3年生でCランクに位置する魔導騎士であり、この学園でもトップクラスに位置する実力者だ。回想は省略するが、過去に一輝と対立した上で敗北を喫したことで破軍学園と同じ
あれから2年と少し経っているが絢瀬とは良い関係を築いているようで、綾辻一刀流の道場に通っていることは絢瀬からの連絡で知った。彼は一輝にリベンジすべく『
破軍学園に入る前から交流を持った数少ない悪友とも呼べる男だ。
一輝自身己の鍛錬不足を痛感していたが、追撃を加える言葉が投げかけられる。
良い感じの空間になっていたのにも関わらずそれを引き裂かれたことで、風船を彷彿とさせるほどに頬を膨らましたステラが土足で踏み入ってきた男を睨んだのだが、そんな視線を意にも介さずに一輝の元へと進んでいく。
「っっ~~~~ッッ!!??!!」
「ちょ、ちょっと落ち着こうステラさん。もう蔵人!少しくらい空気を読んであげなよ!」
そんな姿でも可愛らしく、魅了させる美貌を持つのがずるいと思いながらも絢瀬がステラを宥めながら蔵人に抗議しているが彼にとってはどうでもよさそうだ。
下手をすれば失血死しかねなかった大怪我から意識を取り戻したことに対しては何も触れず、一輝に対して棘のある言葉を用いてくることに対して、彼らしいなどと思いながら一輝はその言葉を肯定した。
「それに関しては肯定も否定もしないよ蔵人。実戦で緊張して判断が鈍ったなんて言い訳は自分が未熟な証拠だから。でも、だからこそ僕はまだまだ強くなれる確信をあの試合で持てた。」
「…ケッ。持ち前のポジティブは健在ってか。」
「当然。それが僕の生き方だから。蔵人も聞いたよ、僕にリベンジするために綾辻海斗さんに弟子入りしたんだって?」
「――ッ!?て、てめぇなんで知って…お前かァ!?絢瀬ェ!!」
「ふふっ。隠さなくたっていいじゃない蔵人。戦ったらすぐに黒鉄君にバレるんだから問題ないでしょう?」
「…………な、なぁ絢瀬。お前ひょっとして今朝のことまだ怒ってんのか?」
「一体何の話をしているのかな蔵人?予定時間に起きれなかった僕に対して何のアクションも起こさずに君が講義を受けに行ったことなんて気にする訳がないじゃないか」
(気にしてるな)
(気にしてるわね…)
どうやら絢瀬は寝坊したというのに蔵人に起こしてもらえず、授業を結果的にサボってしまったことにお
すこし知りたくなった一輝とステラであったが、絢瀬の笑顔が怖くて追求は止めた。触らぬ神に祟りなしである。二人は賢いのだ。
「そ、それにしても海斗さんはよく許可してくれたね。蔵人に対する第一印象は最悪だったと思うんだけど」
「あぁ、それはね。アレから少しした後に蔵人から言い出したんだ。あの時のことは今でもよく覚えてるよ。本当に驚いたよ。父さんと修行をしていたら突然やってきて土下座したんだもの」
「へぇー…。見た目はやんきーって感じなのにしっかりとしてるのね先輩は」
「……ケッ。別にいいだろあの時のことはよ」
本当に変わった。
一輝は恥ずかしそうに顔を逸らす蔵人を見てそう思った。
彼と初めて出会ったときは師匠と共に綾辻一刀流の道場を訪れた時であったが、彼が道場破りを行っていたのだ。
冷静に相手を見据える絢瀬の父親である綾辻海斗と獲物を狙う様に獰猛な笑みを浮かべる倉敷蔵人の二人の姿は対極的であった。そのまま見ていれば二人とも剣客として仕合を行っていただろう。
『その勝負ちょっと待ったァ!!』
そんな緊迫した雰囲気の道場に己の師匠がズカズカと入りこんで審判を務めたのは今でも記憶に新しい。
一輝も蔵人と戦ったのは完全に巻き込まれた形ではあったが、彼のような剣士もいるのだと勉強になったと前向きに考えるようになっていた。
一輝と蔵人の対戦結果は言わなくとも、彼の道場への弟子入りがそれを示している。彼にとっても良い経験になっているのは確実だ。
むき出しの刀身の如き剣気を放っていた男が、今では落ち着いた清流の如き剣気を身に付けているのはこの二年間で一番変化を感じるところ。通常時の態度は絵に書いたような不良であるが、あんななりでも破軍学園に入学してから授業を無断欠席したことがない真面目である。
念のために伝えておくが、これは一輝の師匠の熱血教育のおかげではなく、綾辻海斗の教えを真面目に受けると決めた彼なりのケジメであった。
「へぇー…人は見かけによらないとはよく言ったものね」
「蔵人はあんな見た目でも講義にはしっかりと出てるのは僕でも最初は驚いたものさ。でも一輝君の扱いを知ったことで先生たちに対して本気で怒って殴りこみをかけようとしたときは、流石の父さんでも止めるのに苦労していたよ。2年前ですでに父さんと互角に打ち合っていたからね」
「…確か『
「その通りさ。僕の父さんは剣士として最高峰の実力者であり、僕の誇りだからね」
えっへん。と自慢げに胸を張る絢瀬。
自慢の父親を褒められて嬉しそうにする彼女も破軍学園においてトップクラスに優秀な剣士であるのだが、彼女よりも上位に君臨する存在が異次元過ぎているのが現状である。
破軍学園最強と冠せられる前七星剣武祭
出場を辞退していたことで評価は受けていないが、3年間負けなし。『
実力者を真正面から打ち倒したダークホース、選抜戦優勝候補筆頭。『
それに加えて今年からAランク騎士『紅蓮の皇女』のステラやまだ出会ってはないが『
絢瀬は自分の実力を過信も慢心もしているつもりはない。
だが客観的に考えてみて、自分が彼らの領域に達するのはもう少し時間がかかりそうだと決定づけた。決して悲観的になっているのではない。むしろ圧倒的な実力差を知りながらもめげずに自分が信じる剣を振り続ける覚悟をすでに決めている時点で絢瀬も将来有望な一株である。
「オイ。さっきまで十分寝てたんだ、もう動けんだろ。
「いいね。僕も蔵人がどこまで強くなったのか知りたくなってたんだ。場所はどうする?第3訓練場を理事長先生に貸し切ってもらおうか?」
「わかってンじゃねぇか」
「ちょちょちょっ!?さっきの流れからどうしてそうなったのイッキ!貴方はそんな戦闘狂だったかしら!?」
「そ、そうだよ蔵人!時間だって夕方になるんだから、明日でも問題ないよ!課題だってあったでしょ!」
「ンなもんメシ食ってる間に済ませたに決まってんだろうが」
「んなっ!?は、早すぎる…!!」
蔵人の才能の無駄遣いに驚愕する絢瀬を他所に、獰猛でありながらも嬉しそうに笑みを浮かべた蔵人は高笑いする。
すでにステラの異議なんてものは彼の耳には入っていない。
彼からしてみれば黒鉄>>>>>>>越えられない壁>>ステラのレベルで優先順位がつけられていた。
「クク、ハッハッハァ!!待ちに待ったぜこの時をよぉ!走るぜ黒鉄ぇ!!」
「当然!負けないよ蔵人!」
「ちょっ…待ってよイッキ~!!」
「はぁ…。あとで確実に理事長からどやされるな。……まぁ仕方ないか。蔵人があんなに嬉しそうにするのを見たら、止められる訳がないよね」
全速前進で部屋から出ていく二人を慌てて追いかけるステラ。
それを見ながらやれやれと追いかける絢瀬も歓喜の感情を浮かべていた。
尚、30秒後に見舞いに来ようとしていた理事長 真宮寺黒乃が、近所迷惑だと駆け抜けていた二人に拳を落とすのはまた別のお話。
碧い猛獣のライバルはいる?
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登場してほしい
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設定だけ。登場はいらない
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むしろ別のキャラ出して
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混ざりすぎるの嫌だから不要
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ちくわ大明神