やぁメディア、調子はどうだい?・・・・・・なんだよぅ、人の顔を見るなりあの黒光りするおぞましい虫を見たような顔をして。あんまりだろー?「どうしたんですか」だって?いやお前、出会った姪っ子に挨拶くらいしてもいいだろうさ。ところで、今は暇かい?実はマスターに「映画に行こう」と誘われててね。なんでもレイシフトで現代の街まで行くとかなんとか。なんだっけ、ボヘミア、ボヘミアン・・・・・・まぁそんな感じの映画をね。ミュージカルらしいから音楽家でも誘えばいいのに、マスターってば私しか誘ってないらしい。全く、映画とかはみんなで見た方が面白いのに!だから今、一緒に行くサーヴァントを探しているのさ。そんなわけだからメディア、暇だったら来ないか?その後ショッピングしようとかも言ってたし、可愛らしい服なんか買えばいいんじゃないか。・・・・・・うん?どうしたんだ?私はそんな哀れまれるようなことを言った覚えはないけど・・・・・・「マスター・・・・・・」?マスターに何か用があったのかい?・・・・・・おい、メディア?「私は用事があるので」?そうか、じゃあ仕方ないな。他に暇そうなやつに心当たりはある?「二人きりでいったらどうですか」 馬鹿お前、そんなのマスターがつまんないに決まってるだろ?そりゃ私だってマスターと二人きりだなんて万々歳だけど、マスターだってみんなでわちゃわちゃしたい年頃だろうにさ。そうだ、あの作家たちなんてどうだと思う?私たちにはないプロからの視点で映画を見れると思うんだけど・・・・・・え?あの二人はやめとけ?絶対?ううん、お前がそこまで言うならそうしておくよ。それじゃあ、私は他のサーヴァントたちに声をかけてくるから。
「・・・・・・マスターもハッキリ言えばいいのに」
あ、マシュじゃないか。いい所に。今は暇かい?いや、実はマスターに映画に行こうと誘われていてね。もしも暇なら一緒に行かないかと・・・・・・え?二人きりで?はは、さっきメディアにも言われたよ。でも、マスターくらいの歳ならみんなでワイワイしたいだろう?・・・・・・なんだよ、マシュまでそんな微妙な顔してさ。私はなにかおかしなことを言っているかい?「・・・・・・先輩、ファイトです」?どうして今マスターが頑張るんだ?「と、とりあえず、私はこの後用事がありますので!」そうか、わかったよ。みんな忙しいんだなぁ。と、そろそろ時間だ。マスターには悪いけど、二人きりで行くしかないかな。まぁ、私としては嬉しいけどね、なーんて。それじゃ!
「・・・・・・本当に、頑張ってくださいね。先輩」
すまないね、マスター。メディアとマシュにも声をかけてみたんだが、用事があると断られてしまったよ。だから私と二人で映画を見に行くことになるね。なんなら日をずらしてもいいけど・・・・・・あぁ、君は今日しか空いていないんだね。それじゃあ目一杯楽しもうじゃないか!まずは映画を見るだろ?それから買い物をして・・・・・・ディナーも向こうで食べるのか?エミヤには伝えてあるよね?うんうん、ならいいんだ。ところで、お金は大丈夫なのかい?申し訳ないけど私は現代のお金を一銭も・・・・・・え?君の給与から?そ、そんな、悪いって。「こういう時は男が払うべき」?う、ううん、でもなぁ・・・・・・「むしろ払わせて欲しい」?「日頃のお礼」?そ、そこまで言われたら断れないじゃないか・・・・・・今度、キュケオーンを作ってあげるよ。
それじゃ、早速行こうか!楽しみだね、マスター!
すごくいい映画だったね、マスター。・・・・・・ご、ごめん、ちょっと涙が止まらなくて・・・・・・うう、良かったぁ・・・・・・。私はあぁいうのに弱いんだ・・・・・・。
・・・・・・と、ところでさ?上映中、君が飲んでたコーラって、もしかして・・・・・・い、いや?気づいてないならいいんだ、うん。・・・・・・あれ、絶対私の・・・・・・か、間接キス・・・・・・うぅ、同じの頼むんじゃなかった・・・・・・恥ずかしすぎる・・・・・・。
え、えへへ。どうだい、マスター。似合ってるかな?そ、そうか!それは良かったよ。こんな可愛らしい服、私には似合わないと思うからね・・・・・・「そんなことない」「キルケーはすごく可愛い」て、照れるなぁ。お世辞でも嬉しいよ、マスター。「お世辞じゃない」「本当に一番可愛い」・・・・・・あ、あうあうあ・・・・・・や、やめてくれ、見ないで・・・・・・わ、私の顔がすごく赤いと思うから・・・・・・君はよくそんな恥ずかしいセリフを言えるね・・・・・・すごく嬉しいけどさ。と、ところでっ、君は何も買わないのかい?今なら私が選んであげるよ?「それじゃあ頼もうかな」はは、大船に乗った気持ちでいてよ!なんたって大魔女なんだからね!
ま、マママママスター!ほほ、本当にここで晩御飯を食べるのかい・・・・・・!?だだ、だってさ、こんな高級そうな三つ星ホテルみたいなところで!?大丈夫かな、私の格好変じゃないかな!?髪型は?顔は?「いつも通り可愛いよ」ぴゃあぁ!!ふ、不意打ちはやめてくれってば!
マスター、どうしてこんなに店が予約できたんだい!?言っちゃなんだが君みたいな一般人がとれるような店じゃないと思うぞ・・・・・・!?「古代王や巌窟王のおかげ」?これだから権力と財力の使い方がわかってるやつは!!一般人はいつも振り回される!「大丈夫?」だだ、だいしょうぶに決まってるだろ!大魔女だぞ!
ガチガチに固まりながら食事をする彼女を見て、俺の頬はすぐに緩んだ。俺だってこんな所は初めてで、正直すぐにでも逃げ出したい。だけど、今日はキルケーとの初デート。相手がデートと思ってくれてるかどうかは別だけれど・・・・・・それでも、俺にとっては記念すべき第一歩だ。何とかここまで来ることが出来て本当に良かった。助言をくれたエミヤとかメイヴには感謝しきれない。
「ねえマスター、どうしたんだい?」
「ううん、なんでもないよキルケー」
「・・・・・・ぇへ」
あぁ、可愛い。俺が名前を呼ぶ度に、彼女はふにゃりと笑う。慌てて繕って、隠してるつもりなのだろうか。そこもまた愛おしい。
「あ、ねえマスター!外を見てご覧よ!」
ドーン、と季節外れの花火が上がる。綺麗だね、とはしゃぐキルケーはとても楽しそうで。キルケーの方が綺麗だよ、なんて歯の浮くようなセリフがスラリと出てきた。
彼女は顔を真っ赤に染めて、からかわないでくれ、と俯いた。サラリとした髪の隙間から少しとがった耳が除く。耳まで真っ赤になるんだなぁ、とぼんやりとしたことを考えた。
からかってない、と否定したい。この気持ちは本物なのだと伝えたい。
だから、今しかないと思った。
「キルケー」
「うん?」
「これを、君に、あげたい」
俺は聖杯を取り出した。
ダ・ヴィンチちゃんから貰った、強化用の聖杯。「君の好きなサーヴァントに捧げればいい」なんて、見透かしたような笑みで。一緒に貰った指輪は、まだ渡す気にはならない。流石に早すぎるよ、と思う。
「・・・・・・ふぇ?」
「キルケー。俺と、これからもずっと、ずーっと一緒にいてください」
「・・・・・・へぁ」
熟れたトマトみたいな色になった彼女は、次第にポロポロと涙を零し始めた。慌ててハンカチを差し出せば、彼女は嗚咽混じりに話し出す。
「ほ、ほんとうに、わた、わたしにゃんかで、い、いいのかい?」
「君がいいんだ」
「だ、だって、わたし、は、いつも空回って、セイレムのとき、だって、君を、君を騙して、危険な、目に」
「だけど俺は助かった。それに、君にはいつも助けられてる」
「ほ、ほんとに?ほんとうにかい?とりけしはきかないんだぞ?」
「君が好きなんだよ、キルケー」
彼女は細い腕を伸ばして、俺から聖杯を受け取った。両手で、壊れ物のように優しく抱きしめている。
潤んだ瞳は宝石のようだ。エメラルドとはこんなものなのだろうか。前にイシュタルが眺めていたのを見たことがあるが、キルケーの瞳の方があれよりもキラキラと輝いている。
「私も」
「うん」
「私も、君が、大好きです」
花が咲くように、外の花火なんかより断然綺麗に、彼女は微笑んで。
「──もう、君を一人にはさせないよ。この魔女キルケーが着いているんだからね。ふふ」
あまり怪文書ぽくはない、かも?
おばさま可愛いよね。もっと勝利してもいいと思います。