ランダムマイルームはカオスな結果になるとあれほど……
■改めて見直して特に必要ないくだりがあったので削りました。
翌日、お昼近くになっても2人が来ないので不思議に思い、立香くんの部屋に訪ねようと扉を開けるとすぐ近くに見知らぬ男の子が立っていた。
「わっ……!あ、えっと、迷子……かな?」
「断じて迷子じゃない!見た目はガキだが中身は立派な成人男性だ。もっと態度を改めろ」
男の子から渋い声が出てきたのに唖然とする。
彼は「ノックする手間が省けたな」と言いながら、ずんずんと私の部屋の中に入っていった。
「おい、客人が来たんだ。茶ぐらいもてなせ」
「は、はい!」
「俺も本来なら長居する気はないが、マスターからの仕事の依頼でな。……まったく俺を過労で殺す気か?」
お茶を渡しながら彼をそっと見る。マスターと呼ぶのなら彼もきっとサーヴァントの1人なのだろう。なぜ私の部屋に来たのかは、先程彼が言っていた「仕事の依頼」の内容が関係しているとは思うけど……。
「まずは伝言からだ、『召喚に必要な呼符と石がなかったから今からかき集めて来る。午後までにはなんとかするから!』だとさ。ふん、ろくに貯蓄しないからそうなるんだ。まさに自業自得だな」
「アハハ……」
まさかの内容に思わず乾いた笑いが出てしまった。伝言の内容からマシュが立香くんにぷんすか怒っている姿が想像つく。ここは午後までにはなんとかするという言葉を信じよう。
「伝言ありがとうございます。……えっと」
「……アンデルセンだ」
「よろしくお願いします、アンデルセンさん」
「俺はよろしくするつもりはないがな。他の仕事が残っているからな、さっさと本題に入るぞ。俺はお前と仲良くお喋りをしに来たわけじゃない!」
「し、辛辣……」
見た目が幼いせいか、かなり心にくるものがある。
アンデルセンさんは一口お茶を飲んでから口を開く。
「今回はマスターからお前を思う存分に観察して感想をそのままお前に言って欲しいと言われてな。なんでもお前の召喚失敗の原因の解決への足がかりになるんじゃないか、だとさ」
「か、観察?」
「人間観察。まあ、作家の性分だ。細かいとこは置いとけ。自己分析を他人に押し付けるんだ。存分に見透かしてやるから覚悟しておけ」
「反論があったら言ってみろ、倍にして返してやる」と悪どい顔で言われたので、とりあえず口をつぐむ。アンデルセンさんは腕を組んで少し考える素振りを見せてから評し始めた。
「そうだな。とりあえず今回は失敗の原因となったものを中心に評価しよう。まずお前の性格か?それなら簡単、お前は脆弱で臆病、オマケに受動的!なんともじめじめとした性格ときた!常に誰かに手を引かれないと何も出来ないと言う子どもだな。今まで他人に反発した数を数えてみろ、下手すりゃ片手で足りるんじゃないか?」
初っぱなからとてつもなく辛辣な評価がきた。反論したい気持ちを押さえながら、思い出せる限りの今までで反発した数を数えてみると本当に片手で足りてしまって驚愕した。
「はははははは!いや、失敬。ホントに片手で足りた事に笑ってしまった。まあ、お前の純真さは本物だ。それ故に相反する真実と真実がぶつかる時、お前は押し潰される思いをする。せいぜい気を付けるんだな」
「……それは、忠告ですか?」
「逆にそれ以外の何に聞こえる?さて、自分でその性格を踏まえて召喚失敗した日を思い出してみろ。お前はあの時なんと思ったか」
「…………」
あの時、私は怖いと思った。カルデアの現状と記録を見て、私ではとてもじゃないけど戦えないと。不安と恐怖がいっぱいで……、でも、立香くんが頑張っているのに私だけ嫌だなんて言えないと思って、それで……。結局私は──
「──戦いたくない。そう強く思いました」
「だろうな。ここの英霊召喚システムはお互いの同意があって初めて成り立つ。失敗の原因なんざ、お前の拒否が原因だろ」
英霊召喚にお互いの同意が必要だなんて知らなかった……。そして確かに始皇帝さんが言うように私の心が原因だった。私が怖さのあまり拒否したのだから。一部とはいえ、月の聖杯戦争を思い出した今はもうそんなに怖いとは思わないけれど。あの時は本当に怖くて仕方がなかったのだ。
「ここまでは依頼されていた分のお前への評価だ。どうだ、答えが見つかって納得したか?」
「……はい」
「ふん、まあ、この事はあの日関わっていた奴には俺から伝えておこう」
アンデルセンさんはそう言うと椅子から立ち上がり、部屋から出て行った。時計を見れば、もうお昼だった。ご飯食べて、立香くん達を待たないと……。
…………。
****************
「おや?栞ちゃんが来るとは珍しいね。ようこそ、ダ・ヴィンチちゃんの素敵なショップへ!……なんてね。そこの椅子に座ってて。お茶を入れよう」
「あ、いえ、エミヤさんがお茶のポット入れてくれたので大丈夫、です」
私は手に持つバスケットを少し掲げて見せる。中にはエミヤさんから特別に作っていただいたサンドイッチ等気軽に食べられる物が入っている。ダヴィンチちゃんと一緒に食べれるように多めに作ったと聞いている。
「なるほどね。じゃあ、バスケットが置けるようにちょっと机の上を片付けちゃおうかな」
ダヴィンチちゃんは机の上の未完成の発明品や設計図を隅の方に置き、バスケットがちょうど置ける広さを確保してくれた。
「さあ、どうぞ」
「ありがとうございます。────。あの、アンデルセンさんからは……」
「ああ、聞いているとも。想定していた通りだったから私には答え合わせしているような話だったけどね」
私はバスケットを広げる手を止めて、ダヴィンチちゃんの顔を見た。ダヴィンチちゃんは少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「……気づいてたんですね」
「わりとすぐにね。君は目覚めてからすぐにカルデアの現状を知り、時間を置かずにそのまま召喚に挑ませたんだ。想定出来ない方が難しいさ。その事についてはロマニも酷く反省していたよ」
ドクターは優しい人だから今もきっと気にしているだろう事は私でも想像がつく。もう、気にしなくていいのにな。
それはそれとして、ダヴィンチちゃんは最初の方で失敗の原因が何か気づいていたのに、どうして教えてくれなかったのだろう?
それを聞けばダヴィンチちゃんはなんとも困ったような顔になった。
「んーまあ、伝えようとは思ったけど止められたんだよね。──あの天子に」
「始皇帝さんが?」
いったいいつの間に……。
「『原因はあの娘自身が気づかねば意味がない。なぁに、朕に策がある。すべては天子たる朕に委ねよ』ってね。いやぁ、まさか早々に召喚失敗するくらい戦いが怖いと思っている子をレイシフトさせに行くとは思わなかったけどね」
確かに始皇帝さんは初めて会った時から原因が何か知っている素振りをしていたけれど……。いくら立香くんから聞いているとは言え、私の事を理解し過ぎていないだろか?
「──理解し過ぎているって思っているだろ?」
「……っ!顔に出てました?」
「いいや、私も同じ事を思っていたからさ。どうもあの皇帝はカルデアの数人を深く理解している。最初は千里眼持ちかと思ったけど、そうではないみたいだし……。現状不明のままかな」
「今は敵じゃないだけ有難いよ」とおどけるように話すダヴィンチちゃんにその通りだなと頷く。
例え始皇帝さんの素性が分からなくてもあの人が立香くんを想って一緒に戦ってくれていると分かっているだけで十分だと私は思う。
「話は変わりますけど、ダヴィンチちゃんにもうひとつ聞きたいことが」
「ロンドンの話だろう?それについては残念だけど、今は話さないよ」
立香くんに聞くならダヴィンチちゃんあたりにと言われたのもあって聞いたのに断れてしまった。
「ああ、別に意地悪で話さないわけじゃないんだ。そこは勘違いしないでくれたまえ。単純に
「……召喚前だからですか?」
「その通り。まあ、今の栞ちゃんならたぶん問題ないかもだけど……。不安材料は少ない方がいいからね」
「……分かりました」
前科があるから仕方がない。さすがに私も同じことの繰り返しは嫌だ。また召喚が終わってから話を聞きに行こう。
「ダヴィンチちゃーん!栞いますかー!?」
「いるよー!」
いきなり立香くんの元気な声が聞こえて私はビクリと驚いた。ダヴィンチちゃんはさして驚きもせず、普通に返事を返していた。立香くんは返事を聞くやいなや慌ただしく部屋に入ってきた。
「栞待たせてごめんね!今からならいつでもオッケーだから早速行こう!」
「あ、はい!……今度からは節約しなきゃダメですよ?」
「…………善処します」
今の間と目を逸らす姿になんとなく、またやらかすんだろうなと確信した。誤魔化すように立香くんは私の手を握り「ダヴィンチちゃん、またあとで!」と早足で召喚部屋に向かい始めた。今回はダヴィンチちゃんは来ないのかと振り返って見れば、ダヴィンチちゃんは「感想、楽しみにしているよ!」とだけ笑って私達を見送った。
召喚部屋に入るとマシュとドクターがいた。ドクターは私の姿を見ると駆け寄って来て、思いっきり頭を下げてきた。
「栞ちゃん、ほんっとぉ~にすまない!」
「ド、ドクター頭を上げてください!私全然気にしてませんからっ!」
なんだかマシュの時を思い出すけど、マシュは土下座だったので今の状況はまだ幾分かマシなのかもしれない。いや、よくはないけども。
ドクターは頭を上げると申し訳なさそうな顔をしていた。
「いいや、医療に携わっている者として非常に情けないかぎりだよ……。目覚めて間もなくカルデアの現状とかこれからの戦いの途方なさとか聞いたらメンタルに支障がきているに決まっているじゃないか。はぁ……」
「ドクター……」
「それに、ボクは多大な勘違いをしていたんだ。立香くんのなんだかんだで、すぐに順応して立ち向かえる姿を無意識に栞ちゃんにもそれを要求してしまった。ボクの思い込みをキミに勝手に押し付けたんだ。……すまない」
……正直、ここまで気にしているとは思わなかった。もしかしたら何年かの付き合いがあったからこそ、余計に気にしてくれていたのかもしれない。
「……ドクター、私はあの日失敗して良かったのだと思います。何も知らないままやってた方が後から後悔していたかも知れませんし。……それに大切な記憶を思い出せましたし」
「大切な記憶?」
「今は……内緒です。だから、もういいんですよ」
渋々だが納得してくれたドクターは召喚の準備をしてくれた。
「此方の準備は出来たよ。……栞ちゃん、覚悟はいいかい?」
「……はい」
もしかしたら玉藻に会えるかもしれないと、期待している自分がいる。彼女は応えてくれるだろうか。
私はあの時のように装置に石を3つ置き、魔力を流していく。サークルは問題なく起動した。
あの時と違い、青い光の輪がいくつも回って虹色の光が輝き出す。あの時の比ではない眩しさに思わず目を閉じる。しばらくして光が収まった頃、あまりの静かさにまたあの時と同じではないかと不安に思い目を開けるかどうか迷っていると
────知らない声が聞こえた。
「……おや、お前か。死の氷雪に君臨する我が身を呼んだのは。私は神霊スカサハ=スカディ。北欧の古き神々の花嫁にして、かつて女王でもあった。……今からお前のサーヴァントとなる者だ」
岩窟王イベを挟もうとしてぐだが倒れるの3日、4日らへんじゃん!と気づき書き直して気づけば今日ですよ。
更新早くするとは何なのか……
とりあえず今回で栞の召喚が解禁されたのでバレンタインの話が書けるな!と一人で安堵してます。できたら14日までにもう1話ぐらい投稿出来ればいいんですけど、無理でしょうなと謎の確信をしています。