プリムラの花束を   作:雪苺

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ぐだお視点です。
ぐだおの名前は「藤丸立香」です。
注意!
・ぐだおがちょっと歪んでるかも。
・イベントネタがチラッと出てますが季節感ガン無視してます。
・文の構成がお察し状態。





幕間~藤丸立香のささやかな願い~

 

「この子が雪白栞さん……」

「はい、彼女が栞さんです」

 

あの爆発から比較的離れた場所にいたから、奇跡的に助かった女の子。

それでも爆風によって壁に打ち付けられ、頭を強く打ったらしく、昏睡状態のまま起きる兆しは今のところないそうだ。

 

マシュは俺の隣から栞さんを見つめて、当時の状況をポツポツと話してくれた。

 

「……何故、彼女が比較的離れた場所にいたかは、詳しくはわかっていません。ただ、中央管制室から出る直前に、所長と何か話してたみたいです」

「じゃあ、偶然でも所長が栞さんを助けたんだね」

「そうですね……」

 

俺は栞さんに強い関心を寄せている。その理由は所長が関わっていた。

──救いたかったけど、救えなかった。

──手を伸ばしても届かなかった。

俺達は所長がカルデアスに身を沈める姿をただ見る事しか出来なかった。

 

だからだろうか、それが偶然の結果だと分かっていながら所長が救った彼女を守りたいと思っている。けど、それは彼女からしたらいい迷惑なんだろうなあ……。

 

とりあえず、栞さんがどんな人なのか知ることから始めよう。マシュなら何か知ってるかもしれない。

 

「ねえ、マシュ。栞さんってどんな人?」

 

マシュは栞さんを見つめるのを止め、俺の方へと顔を向ける。

 

「あまり栞さんと話す機会はありませんでしたが、困ったように笑う顔が印象的な人です。魔術師としてかなり未熟だと、頑張って勉強している姿もよく見ました」

 

一拍置いて、何故俺がそんな質問をしたのか察してくれているみたいでマシュは少し微笑んで、俺が今一番求めている言葉をくれる。

 

「栞さんは優しい方なので、きっと先輩ともすぐに仲良くなれます」

「なら、嬉しいなあ……」

 

マシュの笑みにつられて、俺もへらりと笑う。

 

早く起きないかなあ……。

 

 

 

****************

 

 

 

栞さんと初めて会った日から1ヶ月経つけど、まだ目覚める兆しがない。

 

それでも彼女が起きると信じて、俺は戦い続けている。最近はどんな小さな特異点でも、修復を終えたらここに来る事が習慣になりつつある。

 

果てしない目標よりも、こうして目に見える目標の方が俺にはいい。栞さんを利用しているようで悪いけど、「世界を救え」よりも「栞さんに報告する為に問題を解決する」の方が個人的に精神的負担が全然違うのだ。

 

まあ、レイシフト中はそんな事考えてる余裕は全然ないのだけど。けど、カルデアに戻るとどうしても色々考えてしまうのだ。このグランドオーダーがどれだけ果てしないものなのか。自分の背中にどれだけ重いものが乗っているのか。

 

所長も冬木で、マスター候補達を凍結保存をすると決めた時に「それだけの死を背負えない」と言っていた。あの時は特に何かを感じる事はなかったけれど、今ならなんとなく分かる気がする。

 

今日も栞さんが眠る部屋に行き、ベッドの横にある椅子に腰を掛ける。

 

栞さんは穏やかに眠っている。自然と笑みが出た。

 

「栞さん、ただいま。今日も俺、頑張ったよ。今回は月見団子を取り戻す為にバタバタしちゃってさ。……ははっ、改めてきっかけを思い出すと笑えるなあ」

 

その時行った特異点の事、今日のご飯も美味しかったとかくだらない話を一方的に報告する。

きっと彼女には届いていない、それでも俺は話すのを止めない。──こうやって、いつも気持ちの整理をしているから。

 

栞さんの顔を覗き込む。いつもと変わらず、穏やかに眠っている。たまに死んでしまっているのではと、心配になる。呼吸で微かに動くのを確認して、もう1度座り直す。

 

「……ねえ、栞さん早く起きて?俺を褒めて?きっと俺は貴女から褒められたいんだ。スタッフでも俺のサーヴァントでもない、俺と同じマスターである貴女に……」

 

消えてしまいそうな程小さな声で、俺は栞さんにささやかな願いを呟く。

 

これは紛れもなく俺の本心だ。マシュもスタッフの人達もサーヴァント達も俺をどんな形であれ、褒めてくれる。時には厳しく、時には優しく、全て俺を思っての言葉だとすぐに分かる。

 

けど、それじゃあダメなんだ。

俺は他のマスター候補の人達からカルデアへの誇りを、人理修復への想いを奪いつくし、踏みにじったのではないかと不安で不安で堪らないのだ。

 

その不安は夢として現れていた。炎に包まれた空間、赤く輝き続けるカルデアス、顔の見えない俺と同じ服を着たマスター候補達。俺に指をさして言うのだ。「お前には無理だ」「なんでお前が生き残った」「お前ではなくこちらの誰かなら確実に世界を救えるのに」。きっとこの言葉は、俺自身が心のどこかで思っている事だ。だからこんなにも心が痛いし苦しい。

 

俺は許しが欲しいのだ。他のマスター候補の誰でもいいから。「お前はよく頑張っている」とその一言でいいのだ。目覚める可能性が高い栞さんにしか、この願いを叶えられない。

 

だから、早く起きて……早く。

 

 

 

*****************

 

 

栞さんと初めて会ってから3ヶ月が経った。

 

栞さんはまだ、起きない。けど、ドクターは「着実に回復に向かっているから、もしかしたらそろそろ起きるかもしれないね」と、俺を安心させるように言った。

 

そろそろ起きるかもと言われると、そわそわする。

今は第4特異点を探し出す為にスタッフの人達は交代しながら頑張っている。俺も次の特異点に向けて種火を集めたりするべきなのだろうけど。マシュから「先輩はいつも頑張り過ぎなので、今日はお休みです!」と軽く怒られて、急遽休みになったのだ。

 

本を読んだりとか、色々一通りの方法で暇を潰そうとしたけど、早々にやる事がなくなり。何も考えずに廊下を歩いていたら、いつもの癖で栞さんの部屋の前まで来てしまっていた。

 

今日は特にどこにも行ってないし、ただ俺の暇潰しの過ごし方を報告するのもなんだかなあ……と思いながら、部屋のドアを開ける。

 

栞さんは相変わらず穏やかに眠っていた。

いつものように椅子に腰を掛けて、いつものように報告を済ます。そして、いつものように特に必要のない生存確認の為に顔を覗き込むと。

 

──瞼がピクリと動いた。

 

いつもと違う出来事に硬直する。

栞さんの目が徐々に開くと、俺と目が合った。

 

「…………だれ?」

 

掠れたその声を聞いた瞬間、俺は喜びでどうにかなるのではというぐらいに気持ちを高ぶらせながら、ドクターの元へと走り出す。

 

「ドクター、栞さんが起きた!!」

 

 

────やっと、褒めてもらえる!

 

 




立香がちょっと情緒不安定ですが、この後普通に友愛を築いてくれますよ。
表向きの性格はゲーム本編でのままです。

立香の不安については察しのいいサーヴァントは気づいていますが、自分の口から話してくれるのを待っている状態です。

自分が把握する意味合いを兼ねて、また人物紹介か何か書きたいです。
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