何故かどんどん長くなって、書いてる本人が一番焦りました。なんとか詰め込んだ感。
できたらCCCも書きたいな(願望)
とりあえず4章書いてから考えます。
ハクノくんと会話を終えてから、マイルームに戻った。
扉を閉めたのとほぼ同時に、それまで霊体化していたキャスターが姿を見せた。ここまではいつも通り。
けど私が普段座っている場所に座ると、いつもは少し離れた場所に座る事が多いのに、今日は私の隣にピッタリと引っ付く形で座っている。横目で見ると心なしかそわそわして落ち着きがないように思う。
キャスターがこうなったのには、実は心当たりがあったりする。
「ねえ、キャスター」
「は、はい。如何しましたか、ご主人様」
「キャスター、ハクノくんがタイプじゃないですか?話してる時ずっとキラキラした雰囲気を感じましたよ」
冷や汗を流しながら、分かりやすく動揺するキャスターに食堂でハクノくんと話してる時に感じてた事を話す。案の定冷や汗の量が増えた。キャスターが観念したのか若干誤魔化すように笑う。
「……てへ、バレてました?」
「もう、ばっちりと」
キャスターは感情を簡単に表面に出すタイプじゃないのに、私でも分かるぐらいなのだからそれはもう分かりやすいレベルだと思う。
もしかしたらハクノくんは前にキャスターから聞いた「イケタマ」と言うやつなのかもしれない。
「キャスターはハクノくんのサーヴァントがよかったですか?」
「まさか!確かにハクノさんは好みドストライクのイケタマの持ち主です。きっとどこかで私がハクノさんを旦那様としてゲットしてる世界もあるでしょう。ですが、少なくとも
心外だと言わんばかりに訴えるキャスターを見て、私は深く反省する。少し不安になったからってあんな酷い事を聞くのはあんまりだ。
「ごめんなさい、キャスター。私、キャスターがハクノくんと一緒にいたいんじゃないかって不安になって……。だからって、あんな事を聞くのは酷いですよね」
キャスターはうなだれる私をじっと見てから、何かを決心したかのように私の両手を握る。
「──玉藻の前です」
……………………。
…………へ!?
「そ、それって……」
「ええ、お察しの通り、私の真名でございます」
そんなさらっと!まさか、真名を今教えてもらえるとは思わなかったから、酷く混乱している。
本当にどうして!今!?
「あと本当は自分語りは好きではないですけど、真名だけだと誤解されちゃいますし、ついでなので~」と、キャスターの生前の話──いつも軽い態度の彼女のものと思えない、哀しくも愛しい。人間に憧れた、夢見る少女の話をしてくれた。
だから待って。情報量が多いんです……。
混乱する私をいつもみたいに朗らかに笑いながら続ける。
「私も本当はもう少し後で、もっとカッコいいタイミングで名乗る予定だったんですよ?でもご主人様の信頼を勝ち取るには、これが一番手っ取り早いっていうか?ぶっちゃけ、ご主人様いつ目覚めるか分からないから、そんな悠長に構えてる暇ないなっていうか?」
「は、はい」
「まあ、要はご主人様が安心するなら私の真名をかけて宣言するのがいいと思ったのです!」
真名を教えるタイミングがなかっただけで、隠し続ける理由はなかったですしね!と、満面の笑みでぶっちゃけるキャスターに、私はただ困惑する。真名ってそういうものだっけ?
キャスターはおもむろにこほん、としてまるで演説するような口調で話し出す。
「ではでは改めまして、私、玉藻の前の名にかけて生涯ご主人様の側にいる事を誓います。……ちょっとプロポーズっぽいですねえ」
デレッと、締まらない顔で言うものだから、だんだん笑いが込み上げてくる。
そうだ、キャスターはこういう子だ。
「ふふ、ありがとうキャスター。私、もうキャスターをどんな形でも疑ったりしません」
「ええ……。それは有難いですけど、自分で言うのも何ですけど、あの玉藻の前ですよ?信じきっちゃっていいんですか~?」
ニマニマとしてちょっと意地悪そうに言うけれど、きっとそれは私が何て返すか分かっているからだと思う。
「はい!どんな事があっても私はキャスターを、玉藻の前を信じます!」
なので飛びっきり笑顔も添える事にした。
少しでも私の気持ちが伝わればいい。
「~~っ!もう、もうご主人様好き!あと、どうせならタマモちゃんって呼んでください!なんならアッツイ抱擁付きで!誓いのヴェーゼでも可!ご褒美くださーい!」
「え……、えっと、タマモちゃん?」
流石にヴェーゼは出来ないので、抱擁をする。
「やだ、私のマスター素直すぎ!?」と興奮しながらも、むぎゅうっと抱きしめ返してくれた。
ちなみにこの日は抱きしめたまま寝オチした。
次の日、キャスターは明後日の方を向きながら「生殺しは酷いです……」と言っていた。
*************
4回戦を終えた直後からだろうか、やけに眠くなるようになった。おまけに夢も見るようになった。見覚えのない男の子が、私に色々と話しかけてくれる夢だ。
……話の内容までは覚えていないけれど。
あれは恐らく……。
5回戦のアリーナ攻略の最中のとある日。
図書室に次の対戦相手の情報のヒントがないか調べる為に向かうと、少し前の方に見知った後ろ姿が見えた。
「こんにちは、ハクノくん」
「こんにちは。栞も図書室で調べものか?」
「はい、ちょっと気になる事があったので。ハクノくんもですか?」
「まあ……。時間潰しの意味合いの方が多いけど」
時間潰し……?
どういう事かと考えるとタマモちゃんから「ハクノさんからサーヴァントの気配がしませんね」と念話がきた。
あまり大きい声で尋ねる内容ではないので、小声で問いかける。
「ハクノくん、今サーヴァントを連れていないんですか……?」
「……そうなんだ。ちょっとトラブルがあって……。今は治してもらっている最中で、その時間潰しなんだ」
小声で話す私につられるようにハクノくんも小声でコソコソと返してくれた。
なるほど。サーヴァントのトラブルは確かに大変だ。
でも、治してもらっているという事は大丈夫なのだろうと安心する。
「治るならよかったです。あ、引き止めてしまってごめんなさい。図書室に入りましょうか」
「いや、全然大丈夫だ。また後で話そう」
図書室では調べる内容が違うので、自然と別れる形になった。
調べものを終え、図書室を出る頃には、ハクノくんも「治ったと連絡がきた!」と、急いで出ていった。
個人的に応援している身としては、ハクノくんのサーヴァントが無事で本当によかったと思う。
…………?
今、視界がぶれたような気がした。
眠いのだろうかと、目を擦ろうとした次の瞬間、
「……っ!ご主人さ──」
私は意識を失った。
*************
目を覚ますと、膝枕をされてるのか私を心配そうに見下ろすキャスターと目が合った。
起き上がりながら辺りを見回す、どうやらここはマイルームのようだ。キャスターがここまで運んでくれたのだろう。
キャスターには謝らなければならないと、向かい合うように座り直す。
「……ごめんなさい」
私の謝る姿を見て、キャスターは仕方がないなあとでも言うような顔をする。
「ご主人様、私に話してない事があるのではないですか?」
「…………。最近、正確には4回戦を終えてからです。────夢を見るようになりました」
「……夢、ですか」
キャスターが一瞬寂しげな顔をしたのを私は見逃さなかった。
本来、ムーンセルでは夢を見ない。夢の中で夢は見ないからだ。もしかしたら例外はあるかもしれないけれど……。私の場合は恐らく、元の体に戻る前兆のようなものなのだろう。
キャスターも同じ考えなのだろう。
「……ご主人様、おめでとうございます。やっと帰れますよ!今までの頑張りが報われますね!」
明るく祝福してる姿を見て、何とも言えない気持ちになる。だってそれが空元気だと分かっているから。
確かに喜ぶべきなのだろう。元々の目的はそれなのだから。けれど、もう純粋に喜ぶ事が出来ない。
私はキャスターと離れるのが堪らなく寂しくて、悲しい。
「……ご主人様、そんなに悲しまないでください。ご主人様が無事に帰る事が私の願いでもあります。ほら、そちらにも召喚システムがあるのなら、私がご主人様に召喚してもらえるワンチャンあるじゃないですか。そしたらほぼ無期限ラブラブ夫婦生活到来ですよ?あれ、それ最高じゃね?」
ああ、確かにそうだ。あっちにも召喚する術はある。私にさせてもらえるかは分からない。けど、どうにかして必ずキャスターを召喚しよう。こんな私にずっと寄り添って、戦ってくれた彼女を。
「……キャスター。私、絶対キャスターを召喚してみせます。絶対、絶対に迎えに行くから……」
「はい、むしろ私が迎えに行く勢いで行きますとも!……なので、今は帰ってしまうその時まで、どうかタマモを貴方のお側に」
*************
5回戦を終えた次の日。
私はあれから、眠る頻度が多くなった。今回の5回戦だって下手したら参加出来ないのではないかと不安になるぐらいに。……もう、限界なのだろう。
ふらふらしながら歩くが、遂には壁に凭れて座り込む。
キャスターが霊体化をといて、支えるように座る。
「……栞?」
前の方から声がする。
緩やかに顔を上げると、ハクノくんとサーヴァントが驚いたようにこちらを見ていた。
一瞬間を置くと、急いでこちらに駆け寄って来てくれた。
「栞!大丈夫か?どこか体調が……っ!透けてる……?」
「これは一体どういう事だ!説明せよっ!」
二人が混乱しながらも、心配してくれるのがよく分かる。──本当に優しい人達だなあ。
「……初めて会った時、私には目的があるって話しましたよね?」
「あ、ああ。……今の状況が、その目的に関係しているのか?」
「はい、私、ずっと元の場所に帰りたかったんです。ここじゃない、私の本当の居場所に」
「帰りたい?」
ハクノくんは困惑した顔をする。それもそうだろうと思う。ここに来る人の殆どは自ら望んで来た人ばかりなのだから。
私は辿々しく、自分の経緯を話す。その間にも、私の体はどんどん透けていく。ああ……、もう時間がない。
「ハクノくん、手を……」
手を伸ばせば、ハクノくんは慌てて握ってくれた。
「私、ハクノくんに会えてよかったです。気軽に話が出来る人、本当にいなかったから……。楽しかったです」
「俺も、楽しかった」
「ふふ、ありがとうございます。……出来る事なら貴方と友達になりたかった」
本当にそれだけが心残りだ。勇気を出して言えばよかった。
キャスターの方を向く。彼女の泣きそうな顔に申し訳なさを感じる。けど、私が今言うべき言葉は謝罪ではない。
「キャスター、今まで、本当にありがとう。約束……必ず守ります」
「はい、はい!ずっと、お待ちしております」
泣きそうになりながらも笑ってくれるキャスターに、私も笑い返す。
もう時間切れだ。瞼が重い。
私はそっと、目を閉じる。
こうして私の月の夢は覚めるのであった。
手を握りしめる。そこにはもう、栞の手はないから、自分の手をただ握りしめるだけの結果になった。
「俺は、もう友達だと思っていたよ……」
自分に優勝して欲しいと応援してくれた少女は、もうどこにもいない。
「ハクノさん」
栞のサーヴァントが話しかける。マスターを無くした彼女も、また消えていこうとしている。それを止めるコトは出来ないし、彼女もそれを望まないだろう。
「どうか、お気をつけて。ご主人様は貴方を心の底から応援していました。私も、応援しております」
「……ありがとう」
そうして彼女は、太陽のように朗らかに笑って消えた。
「奏者……」
「……行こう、セイバー。2人の想いを無駄にしちゃいけない」
「うむ、それでこそ我が奏者だ!」と、華やかな笑顔を見せてくれるセイバーを横目に歩いていく。
──こうして、人知れず一組のマスターとサーヴァントは消えたのであった。