プリムラの花束を   作:雪苺

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基本的にサーヴァントはランダムマイルームで決めているのでたまにカオスな結果が出ます。





猫のご飯とお散歩計画

──結局、召喚は失敗に終わった。

 

あれから何度か挑戦はしたものの、結果は変わらなかった。マスター適性がなくなったのではと、検査をしたがマスター適性は以前と変わらない数値が出ていた。ドクターは「召喚の失敗の原因は分からないけどマスター適性がなくなったという、最悪の事態にならなくてよかった」と慰めてくれた。

 

 

 

翌日の朝。

召喚の失敗がよほどショックだったのか、眠りが浅くいつもの起床時間より大分早く起きてしまった。

 

特にする事もなく、ぼーっとしていたら扉からノックの音がした。相手は私がまだ寝ていると思ったのか小さめの声で「失礼します」と言って入って来た。相手はマシュだった。

 

「あ、起きてたんですね。おはようございます、栞さん」

「おはようございます、マシュ。こんな朝早くからどうしたんですか?」

 

マシュは言うべき言葉を探しているのか、口をもごもごさせていた。しばらくマシュを見守っていると、キリッとした顔で私の近くまで来て床に座り、頭頂部がキレイに見えるぐらいに頭を下げた。所謂土下座だった。

 

「先日の失言、申し訳ありませんでした!」

「……え!?マ、マシュ頭を上げてください!そんなに気にしないで!」

 

急いで床に膝をつき、マシュの頭を半ば無理矢理上げる。顔を見れば泣きそうな顔だった。

 

まさかマシュがここまで気に病んでいたとは思わなかった。だってマシュは何も悪くない。私がドクターから今のカルデアの状況を聞いたか知らなかったのだから。──ただタイミングが悪かっただけなのだ。

 

その旨を伝えるが、納得がいかないのかマシュが私の両肩をすがり付くように掴む。

 

「わたし、栞さんにどうしても謝りたくて……。なぜだか怖いんです。栞さんに嫌われるのが……。お願いです。嫌わないでください……」

「嫌いません。嫌いませんから。そんな事でマシュを嫌いになるわけないじゃないですか」

 

そう言いながら落ち着かせようとマシュの腕を擦る。少し落ち着いたのか、マシュはだんだん手の力を緩める。

 

何故彼女が私に嫌われる事をここまで恐れているのか分からない。私が眠っている間に何があったのだろうか。

なんとなくそれを今聞くのはいけない気がして、また機会に聞く事に決めた。

 

マシュも大分落ち着いたようで「重ね重ね迷惑をかけてすみません……」と恥ずかしそうに謝った。

ちなみに何故土下座をしたのか聞いたら、どうやら立香くんが原因だった。マシュが最上級の謝罪は何かと聞いたら「やっぱり土下座じゃないかな?」と言われたらしい。……まあ、立香くんもまさかマシュがそれを実行するとは考えないで答えたのだと思うけど。

 

マシュが時計を確認すると慌てたように立ち上がる。

 

「す、すみません。これからブリーフィングがあるので、そろそろ先輩を起こしてきます」

「いえ、忙しいのにわざわざありがとうございます」

 

部屋から出る前にもう一度こちらに振り向きペコリと頭を軽く下げてから、慌ただしく立香くんの部屋へと向かう姿を見送る。

 

……それにしてもマシュの私へのあの態度は少し疑問を覚える。彼女は私に対して執着を覚えるような要素はないはずだ。しばらく考えても答えなんて出るはずもなく。時計を見れば少し遅い朝ごはんの時間帯だった。

 

そろそろいい時間だしご飯でも食べに行こう。

マシュへの疑問は一旦置いておく事に決めた私は軽く身支度を整え食堂へと向かう。

 

食堂を覗くと英霊達が何人かいるみたいだ。販売機で適当な食券を買う。調理は料理が得意な英霊がしているらしく、それがまたとんでもなく美味しいとドクターから聞いていたので少し楽しみだ。

 

わくわくしながらカウンターに食券を置く、のとほぼ同時にモフモフとした猫の手のようなものが私の手を押さえる。押さえてくる相手を見ると猫?狐?耳のメイドさんがまじまじと私を見ている。……なんだか凄く既視感が。見覚えがあるというかつい最近まで一緒に過ごした関係だった相手に似ているような気がするというか。

 

「……おまえ、『ご主人様』か?」

「──え、あ……タ、タマモ……?」

 

「ご主人様」この言葉で思い出すのはあの月の出来事。何故忘れていたのだろう。私にとっては夢だったから?思い出したのもタマモに関する事だけだ。わからない……、わからないけどキャスターによく似た彼女の発言から、あの夢は現実だったのだと思えた。

キャスター本人ではないとわかっていても胸の昂りを抑えられそうにない。目の前の彼女は私の反応を見て「ふむふむ」と考える仕草を見せてから、押さえてた手を離し、食券を受け取る。

 

「注文でキャットのお得意のオムライスを頼むとはお目が高い!しばし席で待つがよい」

 

そう言うとルンルンとしながら奥へと行ってしまった。仕方がないので言われた通り席に座って待つ事にする。少しすると前の席に誰かが座る。性別がどちらかよく分からない不思議な人が品定めをするようにこちらを見つめていた。

 

「ほぉ……、其方がもう1人のマスターか」

「……いちおう、そうなります。召喚は失敗に終わったのでマスターと名乗っていいか、わかりませんけど」

「ふむ、それは立香から聞いておるぞ。まあ、パッと見たところ召喚が失敗した原因はそなたの心の問題のようだがな」

「私の、心……?」

 

失敗の原因が私の心の問題とはどういう事なのだろうか。目の前の人は納得したような顔をしているが、私には全然わからない。

 

「あの、ところでお名前をお聞きしても?私は」

「雪白栞、であろう?」

 

名前を言い当てられた事に少し驚く。いったいどこで知ったのか。もしかしたら他の人から聞いただけなのかも知れないけれど。

 

「朕は始皇帝である。……まあ何だ、其方の疑問に答えるなら単純に立香から聞いただけだ。立香が初めて召喚したサーヴァントが何を隠そうこの朕でな、其方の次に何かと報告しに来るのだ」

 

そういえば記録で見たかもしれない。始皇帝……初めてが始皇帝……。やっぱり立香くんって凄い。立香くんからの報告なんて聞いたことないから何の事かはわからないけど、何で名前を知っていたのかはわかったので、これ以上聞くのはやめておこう。

 

「ところで其方はレイシフトの方は出来るのか?」

「えっと、数値に問題はなかったので、たぶん出来ます」

「そうかそうか!いや、朕も暇でな?そもそも其方に話し掛けたのは共にレイシフトして欲しいからなのだ。立香は今朝から倫敦(ロンドン)の特異点の修正に出向いた為、行けなくてな。出来るならサーヴァントをあと2人程誘いたいところだな……」

 

何故か私もレイシフトする事が決定されてしまった。……行くなんて言ってないのに。それに、たぶん出来ると言ったのであって、本当に出来るか分からないのに。始皇帝さんは意気揚々と計画を進めている。早く止めないと……。

 

「あの、私はレイシフトには行きません」

「ふむ、何故だ?これは其方にとっても悪い話ではなかろう」

「……どうしてですか?」

「そなたの心の問題を解決する為の一歩になるからだ」

 

…………。そんな事……、そんな事言われたら断れるわけがない。私は押し黙る事しか出来ない。

私の反応を肯定と見たのか、再度「あと2人だな」と辺りを見回す。

 

「オムライスお待ちどうさまだワン!」

 

ゴトンと目の前と()()()に美味しそうなオムライスが置かれる。2つある事に首を傾げていると、タマモキャットはオムライスを置いた私の隣の席へと座る。

 

「チーフより早めに仕事の休みをもらってきたのでな。これでご主人様とゆっくり話が出来るというコトだ」

「……タマモキャットか、悪くないな。おい、この後空いておるか。空いておろう。よし、そなたも参加だ」

「うん、何の話かサッパリなのだな」

 

強制参加させようとする始皇帝さんに若干呆れつつ、私は話が見えていないタマモキャットにレイシフトの話をする。

 

「ふむ、レイシフトか。それはご主人様も行くのか?」

「はい、私も行きますよ」

「……先程から栞を主と呼んでいるが其方のマスターは立香であろう?それとも栞に鞍替えしたのか?」

 

始皇帝さんの疑問は最もだ。タマモキャットの「ご主人」と「ご主人様」の違いが分かるのはこのカルデア内では私しかいないのだろうし。傍から聞いたらタマモキャットのマスターが私になったように思えるだろう。

 

「我を甘く見てもらっては困るワンッ!ご主人様は確かに大切な存在であるが、今はご主人一筋……。あくまでタマモキャットのマスターはご主人である。それはそれとしてもちろん我もご主人様についていくぞ!」

 

「ご主人様との散歩は初めてだから楽しみだ!」と元気よく言うタマモキャットに笑みが溢れる。例えマスターでなくても私を大切な存在だと言ってくれるのが凄く嬉しい。

 

「だが、報酬はいただこう」

「ふむ、申してみよ」

「ニンジン、それとオリジナルが来たら伝えるのだ……。ご主人様の初めてはオリジナルでも他のナインでもない、このタマモキャットだとな!!」

「ええ……」

 

よく分からない単語が飛び交っているけど、オリジナルとは恐らく玉藻の事だろう。他のナインは分からないので後で聞こう。

 

「オリジナルか他のナインが来たら伝えれば良いのだな。よかろう、それは栞の口から言わせよう。なんか面白そうだからな!」

「ええ、そんな……。わ、わかりました」

 

なんかもう断るのも面倒になってきた。玉藻には早く会いたいけど、そんなに早く会えるわけでもないし問題ないだろう。

……いつになったらタマモキャットと話が出来るのだろうか。楽しそうに計画を進める2人をよそ目にオムライスを口にする。

 

「……美味しい」

 

 




お散歩計画進行中です。
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