プリムラの花束を   作:雪苺

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書きたいところを書き殴った感が否めない。
タマモナインは全員実装されると希望を持ち続けます。


物語が進む傍らで

 

 

始皇帝さんの暴走は止まらず「あと1人いれば十二分なんだがなあ」と辺りを見渡しながら大きめの声で言った。キッチンにいた英霊が1人こちらに向かおうとしていたが、私の後ろに目を向けるとやれやれと言いながら、元いた場所に踵返していた。

 

「それならば余が行こう!」

 

後ろからの声に驚き振り向くと、薔薇のように可憐な少女が胸を張って立っていた。こちらの少女も見た事がある気がするのだが、玉藻のように思い出せない。たぶん、月関連ではあるとは思うけど。

 

「おお、其方は羅馬(ローマ)の皇帝ではないか。うむ、これで人数は揃ったな。では、管制室へと向かうか」

 

始皇帝さんはご機嫌な様子で管制室の方へと歩き始めた。タマモキャットは嬉しそうに笑いながら進んで行く。私も少し離れた位置から付いて行くように歩くとローマの皇帝さんが並ぶように歩き話し掛けてきた。

 

「貴様、名はなんと言うのだ?余はローマの第5代皇帝にしてオリンピアの華、ネロ・クラウディウスである。ここで皇帝は山程いるからな、特別にネロと呼んでもよいぞ」

 

ネロさんのどやっ!とした態度がとても可愛らしく見える。それだけ魅力的な人なのだと思う。

 

「雪白栞です。よろしくお願いします、ネロさん」

「うむ、よろしくな!──それはそうと、そなた余とどこかで会ったか?妙に既視感が……」

「私も会ったような気がするんですけど、思い出せなくて……」

「そうか……。まあ、思い出せないものは仕方あるまい!もしかしたらそのうち思い出すやもしれんしな!」

 

私が感じていた既視感はネロさんも感じていたようだ。会うとしたら月しか心当たりがないから、きっとそこで何かしらの形で会ったのだと思う。

 

そうこう話している内に管制室に着いてしまった。意気揚々に入る始皇帝さんに何人かのスタッフが少し驚いている。スタッフから知らされたのかドクターが慌てた様子で私の方に来た。

 

「栞ちゃん、どうしたんだい?こんな所まで……」

「あー、そのですね……」

 

レイシフトさせて欲しい話をドクターにすれば困ったというか焦っているというか、とにかく「まずい」という顔なのはわかった。

 

「その、確かに数値的に栞ちゃんのレイシフトは問題ないはずだけど、その……」

「ふむ、何故渋る?暇潰しが主な理由とは言え朕自ら物資調達(素材回収)に行くと言っているのだ。感涙に咽ぶ理由はあれど渋る理由はなかろう」

「いや、でもですねぇ……」

 

ドクターがやけに渋る様子に少し不思議に思う。ダメな理由があればはっきりと断る筈なのに、やけに煮え切らない態度をとるばかりだ。何か理由があるのだろうか。

 

始皇帝さんはその理由に思い至ったのか若干呆れた顔をした。

 

「……よもや立香に止められてるとか言うのではあるまいな?」

「うぐッ!……その通りです。現在サーヴァントと契約していない栞ちゃんを危険な目にあわせたくないから、何があってもレイシフトさせないでほしいと。それはもう言葉で言い表せない顔でね……」

 

「あれは怖かった……」と明後日の方向を見るドクターに立香くんがどんな顔をしていたのか気になった。だからといって見たいとは思わないけど。

 

「その、なんとかレイシフトさせてもらえませんか?物資調達は必要ですよね?私、少しでも皆さんのお役に立ちたいんです」

「ん、んー……。確かに物資調達は助かるんだよなぁ」

 

しばらく考えた後、ドクターは1人のスタッフに話しかける。

 

「ムニエルくん、今からもう1つのレイシフトに人数を割く事は出来るかい?」

「……まあ、リツカの方は今のところ安定してるので数人ぐらいなら」

「──よし!じゃあオルレアンに座標を合わせてくれ。レイシフトの準備をする」

 

レイシフトの許可が下りた事にホッとする。私の問題が解決する糸口があるならどうしても行きたかったから本当によかった。

 

「……いいかい?立香くんには絶対内緒だからね?本当にこの件は黙っててね!?」

「ドクター、わかりましたって」

 

ドクターの念の押しように苦笑しながらコフィンに入る。初めてのレイシフトに酷く緊張する、適性の数値に問題ないとはいえ、もし失敗したらという不安がない訳じゃない。1度深呼吸をして、目を閉じて心を落ち着かせる。スタッフの人達を信じる事しか今は出来ないけど、きっと大丈夫。

 

スタッフの声が聞こえる。

 

 

「────レイシフト開始します!」

 

 

 

**************

 

 

 

どこまでも広がる草原、青空は────残念ながら例の光帯で澄んだ空とは表現が出来ない。魔術師として落ちこぼれである私でもあの光帯の異常なまでの魔力量を感じる事が出来る。……もしかしたら私みたいなレベルの魔術師だからこの程度の感想で済んでるのかもしれない。上位の魔術師なら絶望に値する何かを感じていたのではなかろうか。

 

景色を見て現実逃避していたけど、そろそろ現実を見なければいけない。暇潰し兼物資調達の方は今どうしているかと言うと……。

 

「はっはっはっ!平伏すが良いぞ」

 

殴ッ血KILL (ブッちぎる)!!」

 

「余は楽しい!」

 

もはやただの蹂躙だと思う。

 

 

 

現在は戦闘も一段落した為、昼食を兼ねた休憩中である。朝も食べたけれど、タマモキャットのオムライスはやっぱり美味しい。

戦闘の感想としては、こう、何というか──個性の殴り合いだったというか、個性の闇鍋パーティーだったというか。とにかく凄まじかったとしか言えない。

ゲームでいうならラスボスに勝てるぐらい高レベルの勇者が始まりの町でひたすらスライムを倒し続けるような光景だった。

……なんだか自分が戦ったわけでもないのに凄く疲れた気がする。

 

「まともに指示する暇がなかった……」

「む、そうでもなかったぞ?確かに集団戦の指示はまだ拙いが個々の戦いにおいては初心者にしてはなかなかであった。まともな指示を期待してなかっただけに朕も驚いたぞ」

 

それは月でのアリーナ攻略の経験を思い出したからなのだと思う。あちらでは主に個人戦しかしてこなかったので、集団戦とか慣れてないのだ。

それにまともに指示出来なかったのは本当なのだ。だって戦闘開始早々に宝具を使いまくり、集めたクリティカルスターでトドメを刺すだけの流れ作業とも言える戦いにどう指示しろと言うのか。

 

「……これ、いつ切り上げるんですか?」

「そうさな、夕餉には帰るか」

「今お昼過ぎたばかりだがらまだまだじゃないですか……」

 

終わりが見えない事に軽く絶望してしまった。

立香くんもいつもこんな感じなのかな。世界を救う為の特異点修復の他にこんな重労働なんて……。彼はいつか過労で倒れてしまうのでは……。

 

「其方の心配には及ばぬ。何故なら、今回其方がこういった戦闘に慣れていけば立香と其方で負担を半分に出来るのだからな」

 

「はっはっはっ、せいぜい励むが良い!」と激励の言葉を言い渡し、私の傍から離れていった。

始皇帝さんは暇潰しとか言っていたけど、立香くんの負担を減らす為に私を戦闘に慣れさせようとしてくれたのかな。立香くんは大切にされてるなぁ……。

 

「ご主人様、今いいか?」

「いいですよ。キャットとは色々話したかったので」

「うむ、アタシもだ!」

 

ニコッと元気に笑うタマモキャットが可愛くてなんだかほわっとする。食堂の件でタマモキャットにはずっと聞きたい事があるのだ。何故なら私には「オリジナル」も「タマモナイン」もさっぱり分からないからだ。いや、オリジナルはなんとなく察せるけど、1番はタマモナインというちょっと耳を疑う単語が出来上がった経緯が聞きたい。

 

「……その、タマモナインってどういう経緯で出来たんですか?」

「うん……ある日オリジナルが『やだ、私ったらちょっと霊基(ウェイト)が増えちゃったかもー★』というなんとも頭の悪い理由だな!」

 

思わず頭を抱える。なんて頭の痛い理由。あの巫女狐はそんな軽いノリで分離したのですか、そうですか……。いやまあ、らしいと言えばらしいけども。……らしいけども!でもやっぱりこう、やっちゃいけない事ってあると思うんです!

 

「……ご主人様はタマモナインが出来た事に不満があるのか?」

「あ、いえ……別にそこまでは…………」

「ならば安心するのだ。何故ならキャットが他のナインは殺すからな!最終的にキャット1人が残るぞ!」

「それもそれでどうなんですかねぇ!」

 

もっと穏便に済む方法がよかった。

……まあ、タマモナイン誕生の理由が知れてよかったと思おう。オリジナルである玉藻に聞いたらたぶんだけど、ちょっといい感じに言って誤魔化す気がするから。代償で頭が痛くなったけど。

 

「栞、キャット!そろそろ素材回収再開するぞ!」

「あ、はい!すぐ行きます!」

「戦闘再開だな。むっふっふ~玉藻地獄の見放題であるぞ?」

 

いつの間にか休憩の時間が終わっていたのか、ネロさんが呼びに来てくれた。タマモキャットは元気よく、1人で敵が現れやすい所まで走って行った。慌てて追いかけようとしたら、後ろからくいっと服の裾を引っ張られた。今この場に居るのは私とネロさんなので、誰が引っ張ったのかはすぐにわかった。ただ何故そういった行動をするのか分からず一瞬思考が停止してしまった。

 

「……ネロさん、どうかしましたか?」

「その、だな……。余は褒められれば褒められるだけ伸びるタイプなのだ」

「はい」

「いつもは戦闘が終わるとすぐにマスターが褒めてくれる」

「……はい」

「──つまりだなっ!栞も余を褒めるのだ!余に優しくしろ!頭を撫でるのだ!もっと構うのだ~!」

 

不満の爆発しているネロさんが頭をぐいぐい押し付けながら訴えてくる。

えっと、つまり頭を撫でて褒めろという事なのだろうか?皇帝に対する態度ではない気がするけど、本人の希望だし……。

私は恐る恐るネロさんの頭に手を置き、ぎこちなく撫でていく。皇帝にこんな事するのに緊張しないわけがない。けど、撫でられるネロさんの気持ち良さそうに目を細める顔がなんだか可愛くてなかなか止める事も出来ない。さすがに始皇帝さんとキャットをこれ以上待たせるわけにもいかないので、撫で続けたい気持ちを抑えて撫でるのをやめた。

ネロさんはまた少しむすっとしている。まだ撫で足りないのだろうか。

 

「……栞、褒め言葉がないぞ」

「あっ……!えっと、ネロさんの戦う姿は薔薇みたいに華やかでとても素敵です」

「うむうむ、そうであろう!芸術のように美しく!薔薇のように華やかで!炎のように激しい!余の戦いっぷりをその目に焼きつくすのだ!!」

 

「その為にも早く向かわねば!」とネロさんは私の手を引き走り出す。サーヴァントだからもっと早く行けるだろうに、私が転ばないようにとゆっくり走ってくれる気遣いに嬉しく思う。

 

──こうやってサーヴァント達と過ごす日々も悪くないのかもしれない。

 

暖かな想いを感じながら、私は戦うことへの勇気が少し湧いたような気がしたのだ。

 

まあ、そんな思いも第二次宝具合戦で少し考え直したくなるのだけど。私はため息を吐きながらサポートに専念するのであった。

 

 




ネロちゃまかわいいよネロちゃま

バレンタインの話が書きたいから4章を早足に終わらせにいってしまいそうで少し焦ってます。

バレンタインが終わったら冷静になってちょこちょこ手直しするとは思います。
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