戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第一章/戦姫達の物語×忘却の仮面ライダー

 

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……!!」

 

 

──深い霧に覆われた深夜の海沿いの公園。昼間には大勢の人達が家族や友人、恋人との一時を楽しむ人気スポットとしてそれなりに有名なこの場所も、夜の闇に包まれる今はその見る影もない。

 

 

街灯の光が点滅し、公園内は不気味な静寂に包まれ、時間帯的にも当然の事ながら人気などありはしない。

 

 

そんな公園の中を、一人の女性が息を切らしながら必死の形相で何かから逃げるように走る姿があった。

 

 

髪や服が乱れるのも構わず、形振り構わずに逃げ続ける彼女の顔に宿るのは"恐怖"の感情のみ。

 

 

まるで悪鬼にでも追われているかのような様子で後ろを気にするように何度も背後を振り返り、公園の中を逃げ回った先で彼女が滑り込んだのは石造りのベンチの裏。

 

 

息切れした酸素を取り戻すかのように胸を抑え何度も深呼吸を繰り返すと、女性は恐る恐る石造りのベンチの穴の隙間から周囲を見回し、誰も追ってきていない事を確認して漸く安堵の溜め息を漏らした。

 

 

「はぁっ……はぁっ……何だったの……一体、"アレ"はっ……」

 

 

呼吸を整えて幾許かの落ち着きを取り戻しても、女性の内を占める疑問や混乱までもが消えてなくなった訳ではない。

 

 

──"アレ"はなんだ?何故自分が追われていた?

 

 

誰かが応えてくれる筈もない疑問を心の内で何度問うても、やはり返ってくるものは何もない。

 

 

思い出すだけでも心の底から震え上がる。しかし最早自分にはどうする事も出来ないのなら忘れてしまった方が楽になれるか、それも無理なら今から警察署にでも駆け込んで相談するしかないと未だ心に根付く恐怖を振り払うようにそう考え、女性は持参のバッグを乱雑に漁り、飲み残しの水で乾いた喉を潤そうと震える手でキャップを開けようとし、

 

 

 

 

 

──ペットボトルの中で揺れる水越しに、血のように赤い瞳を輝かせて自分の顔を覗き込む"悪鬼"の顔を見た。

 

 

「ッ!?い、いやぁあああああああああああっっ!!?」

 

 

『アヒッ、ヒッ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァッ!!!』

 

 

開きかけのペットボトルの水を投げ出し、耳をつんざくような悲鳴を上げる女性。その声を聞いた悪鬼はまるで歓喜するかのように、狂った嗤い声と共に女性へと迫る。

 

 

恐怖で泣き叫び、腰が抜けたのか女性が身を起こす事もままならないまま地を這いずるように無様に逃げるしか出来ない中、悪鬼はそんな姿をも愉しむかのように不気味に嗤いながら口から夥しい量の涎を垂らし、その両手から生える凶悪な爪で女性の四肢を引き裂こうと勢いよく駆け寄り爪を振り上げ、そして……

 

 

 

 

「…………ぅっ…………っ…………え…………?」

 

 

 

 

……一瞬の後にはズタズタに引き裂かれていたであろう筈の女性の身に、いつまで経っても痛みが降り掛かる事はなかった。

 

 

最早此処までなのかと、絶望のあまり涙で濡れた目で痛みからも目を逸らそうとした女性は不思議に思い、恐る恐る背後に振り返ると、其処には……

 

 

 

 

 

 

『……ギ、ガッ……ギギギッ、ギギィッ……?!』

 

 

『……………………』

 

 

 

 

 

 

──彼女から少し離れた場所に、二つの影が蠢く姿があった。

 

 

一つは女性を襲おうとしていた筈が、何故かいつの間にか遠くに倒れて痛みに身悶える悪鬼の影。

 

 

そしてもう一つは、女性に背を向け、僅かに見える横顔から赤い瞳を輝かせているのが分かる特徴的なシルエットの影。

 

 

何が起きているのか分からぬまま女性が呆然と座り込む中、赤い瞳を持つ影は徐に身を起こす悪鬼を観察するように見つめ、ポツリと呟いた。

 

 

『既に正気はない、か……あのノイズとか言う化け物を際限なく喰らい続けて、果てに狂ったか……』

 

 

『ギギギギギィッ……!!!シャアァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

 

何処か哀れむようにも聞こえる赤い瞳の影の声も掻き消す程の雄叫びを上げ、自分の愉しみを邪魔した赤い瞳の影に怒りをぶつけるかのように襲い掛かる悪鬼。

 

 

だが、がむしゃらに両手の爪を振るうだけの悪鬼の荒削りな攻撃を赤い瞳の影は最小限の動きだけで軽々と回避し、同時に鋭い二の打ちのボディーブローを胴体へとカウンターで叩き込んで後退りさせ、最後に流麗なミドルキックを打ち込み悪鬼の身体を宙に浮かせ吹っ飛ばしていった。

 

 

『アグゥッ?!ギッ、ギギッ、ギギィッ……!』

 

 

『……これで、終わりだ』

 

 

受け身すらも取れず、地面に思い切り叩き付けられて悶え苦しむ悪鬼を見据えそう呟くと、赤い瞳の影は左腰に備え付けられているカードケースからカードを一枚取り出し、腰に巻かれているベルトのバックルから上部に露出してるスロットにカードを装填してバックルに戻すように掌で押し込んだ。

 

 

『Final Code x……clear!』

 

 

バックルから鳴り響く電子音声と共に、赤い瞳の影が右足を悪鬼に向けて突き出した。直後、足の裏から放たれた蒼い光が悪鬼に直撃すると共に捕縛し、自分の全身を駆け巡る蒼い光を見て悪鬼が戸惑う中、赤い瞳の影は地面を軽く蹴り上げて跳躍すると共に空中で跳び蹴りの態勢を取り……

 

 

『──ハアッ!』

 

 

『イッ、ギッ……ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!?』

 

 

空中に浮いた赤い瞳の影の全身が蒼く発光し、直後にその身を蒼い閃光と化した跳び蹴りが悪鬼の身体を貫いたのだった。そして閃光から元の姿に戻った赤い瞳の影が悪鬼の背後に現れたと共に、悪鬼は断末魔の悲鳴を上げながら爆散し完全に消滅していった。

 

 

「ッ……な、なんなの……?」

 

 

その一連の流れを目にし、爆発の勢いから思わず顔を逸らしていた女性は呆然と赤い瞳の影を見つめていく。

 

 

……雲の隙間から差す月の光に照らされて輝く、蒼い仮面と黒のアンダースーツの上に纏われる蒼い装甲。

 

 

全身の至る所にXの意匠が施されるその姿を目に焼き付け、女性の脳裏にふと数週間前からネットで話題になっているとある都市伝説が過ぎった。

 

 

闇に潜む怪物から人知れず人々を守る、謎のヒーロー。

 

 

顔を隠す仮面を纏って怪物を倒し、バイクを駆って颯のように立ち去るその姿から人々が名付けた、その名は確か──

 

 

「──仮面……ライダー……?」

 

 

『…………』

 

 

月が照らす光の中で赤い瞳を輝かせる影……仮面ライダーを女性が呆然と見つめる中、仮面ライダーはそんな女性を一瞬一瞥するだけで特に何も語ろうとせず、そのまま背を向け何処かへと歩き去っていったのだった。

 

 

 

 

 


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