戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第二章/邂逅×存在を赦されない存在⑤

 

―S.O.N.G.本部―

 

 

 あれから数十分後。苦戦を強いられながらも何とかバットイレイザーを撃破し、助力を借りた蓮夜とも別れて一先ずS.O.N.G.の本部に戻った響達。その後、戦闘で負った傷を治療し終えた後に発令所に集められた四人は、弦十郎の口から先の戦闘でのブリーフィングに加え、撤退指示を無視して戦闘を続行した件についてもしっかりとお灸を据えられる羽目になった。

 

 

「──うう……司令のお説教、長過ぎてもうへとへとデスよ~……」

 

 

「まぁ、先に命令破ったのはこっちだから文句言える立場じゃないがな……アイツが駆け付けた後も成り行きとは言え、結局そのまま戦い続けちまったし……」

 

 

「…………」

 

 

 やれやれ、とクリスは両手を後頭部に回して疲れたように溜め息を吐き、弦十郎の説教を終えて家に帰ろうと艦内の通路を歩く一行。

 

 

 そんな中、クリスと切歌の後ろを歩く響はボーッとした様子で何処か覇気がなく、隣を歩いていた調はそれに気付いて不思議そうに響の顔を覗き込んでいく。

 

 

「響さん……?どうかしましたか?」

 

 

「……え?な、何が?別に何でもないよ、うん!」

 

 

 調に顔を覗き込まれて漸く我に返ったのか、慌てて両手を振りながら笑って誤魔化そうとする響。しかし、普段の響を見慣れている三人からしてみれば明らかに無理して笑顔を作っているのが見て取れて分かり、クリスは肩を竦めて溜め息を吐きながら響にジト目を向けていく。

 

 

「お前、もしかしなくてもまだアイツのこと気にしてんだろ?」

 

 

「へ?え、えーっとー……」

 

 

「やっぱりな……。ったく、あたしが言うのもなんだが、いつまでも考え込んでたってしょうがねぇだろ?いい加減切り替えねぇと、そんなんじゃまた帰ってからあの子に心配されんぞ」

 

 

 恐らく今も響の帰りを待っているであろう、彼女のルームメイトである未来の事をチラつかせて忠告するクリス。本人もそれを自覚しているのか、未来の事を持ち出された響は「うっ……」と言葉を詰まらせながら頬を掻き、目を泳がせていく。

 

 

「そ、それは分かってるんだけど……でも、私達がこうしてる間にも蓮夜さんは一人でイレイザーや事件の黒幕の事を今も追ってるのかなって、一度考えたら色々気になりだしちゃって、つい……」

 

 

「それこそお前が気にしたってだろ……まぁ、住むとこも無けりゃ飯もままならないって話聞いた後じゃ、不安になんのも分からなくもないけどよ」

 

 

 そんな生活をしていて本当にイレイザー達の目的を止められるのだろうかと、若干呆れた様子のクリスの言葉に切歌も顎に人差し指を当てながら考える素振りを見せる。

 

 

「そういえば蓮夜さんって、普段何処で寝泊まりしてるんデスかね?こっちに身寄りはないって言ってたデスけど……」

 

 

「うーん……多分安い所の宿を使ってるか、ネットカフェ……もしかして、野宿……?」

 

 

「……何か急に不安になってきたな……アイツ、イレイザーをどうにかする前に自分が先に野垂れ死んだりとかしないだろうなっ?」

 

 

「そ、それは流石にっ……」

 

 

 ない、と言い切りたい所だが、如何せん彼の私生活を知らないが為に響も断言が出来ず言い淀んでしまい、また別の意味で一同が蓮夜への不安と心配を覚える中、其処へ……

 

 

「──皆さぁーん!ちょっと待って下さい!」

 

 

「……え?」

 

 

 発令所の方から、何やら慌ただしい様子でエルフナインがやって来た。不意に呼び止められた響達が足を止めて振り返ると、一同に追い付いたエルフナインは胸を抑えて呼吸を整えていく。

 

 

「良かった、皆さんが帰る前に間に合ってっ……」

 

 

「エルフナインちゃん?」

 

 

「どうしたんデスか、そんなに慌てて?」

 

 

 一体何事?、とエルフナインのただならぬ様子に響達が頭上に疑問符を浮かべると、呼吸を整え幾許か落ち着きを取り戻したエルフナインは手に持っていたタブレットの画面を響達に見せていく。

 

 

「実は、今さっきS.O.N.G.宛に匿名でメールが届いたんですっ。文脈から推測するに、恐らく例のマスクドライダー……黒月蓮夜さんからの」

 

 

「え?」

 

 

「蓮夜さんから?!」

 

 

 噂をすれば何とやら。一同が話題にしていた件の蓮夜からのメールが届いたと聞かされた響達は目を剥いて驚きを露わにし、エルフナインの下に集まってタブレットの画面を覗き込んでいく。其処には……

 

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

 

「──蓮夜さんからの協力の依頼?」

 

 

 立花響と小日向未来がルームシェアする学生寮の一室。

 

 

 本部から戻った響は、彼女の帰りを待っていた未来に早速エルフナインに見せてもらった蓮夜からのメールの内容を知らせ、それを聞いて怪訝な口調で返す未来に対し響は何処か浮かれた様子で頷き返した。

 

 

「そっ。『前回に続いてまたイレイザーが街を襲ったのは自分のせいだから、その責任を取りたい』って、イレイザーを探す為にS.O.N.G.の力を借りたいって要請が来たんだって。……まぁ、表立って一緒に動くのはお互いに危険だから、情報でのやり取りが主になるのは変わらないんだけど……」

 

 

「そうなんだ……あれ?でも蓮夜さん、S.O.N.G.に連絡する方法って知ってたの?」

 

 

「あ、うん。それもさっきエルフナインちゃんから聞いたんだけど、実は昼間に私達と話して別れた後、お店の近くで見張りをしてた諜報部の人を通して、情報交換の為の連絡手段を渡してたんだって。まぁ、最初は私達の時みたいに断られそうになったらしいけど──」

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

『───はっきり言えば、君の持つシンフォギアに匹敵する力は我々は勿論、政府にとっても無視出来ない超技術だ。もし仮に政府側に君の存在が露見され捕縛するように命令されれば、こちらも場合によっては、それに従わざるを得なくなるやもしれん』

 

 

『……まあ、そうだろうな……だが、イレイザーを止める為にも俺は戦い続けなければならない……申し訳ないが、もし仮にそうなった時には俺も、貴方達と……』

 

 

『勘違いしないでくれ。響君達を……いや、それ以前から人々を影で守り続けてくれた君の事を、我々も本当は信用したいと思っている。だからそうなった際には、君へこちらから情報を伝える為、何らかの方法で連絡手段を取れるようにしておきたい。君に渡す通信機は、暗号文でやり取りが出来る仕様になっている。これなら我々と密に情報交換も可能だ。ついでに限度額内なら公共交通機関が利用出来るし、自販機にも使える。便利だぞ?』

 

 

『……何故、其処まで俺の事を……?俺はこの世界の人間ではない余所者で……』

 

 

『そうかもしれん。だが、そんな君に助けられた人間が多くいるのもまた事実だ。我々も含めてな。その見返りを受けるぐらい、君は許されてもいい筈だ』

 

 

『…………』

 

 

『君が響君達に話した事情も理解出来る。その考えを否定するつもりも、無理強いをしてまで協力を乞うつもりもない。イレイザーへの対策も無しに、彼女達を危険な目に遭わせるような真似は出来ないのは我々も同意見だからな。……それでも本音を言えば、何時か、君と共に戦える日が訪れる事を俺も望んでいるよ』

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

「──って、そんなやり取りがあったみたい」

 

 

「流石……相変わらず抜け目ないね……」

 

 

 しっかり蓮夜と連絡が出来るように密かに手を回していた弦十郎達の手際の良さに感心を覚える未来。響も苦笑いを浮かべて頷くと、彼女が容れてくれたココアのカップを両手で包みながら話を続けていく。

 

 

「でも、こうして向こうから連絡してくれたって事は、これでちょっとは蓮夜さんと手を取り合える未来に一歩近づけたって事なのかなって。そう考えたら、いつか一緒に戦えるようになれるのも夢じゃないのかな……」

 

 

 誰かを守る為に戦う者同士、きっと手を取り合って分かり合えると思っていた自分の考えは甘かったのか?

 

 

 一度はそう考えてしまう事もあったが、こうして蓮夜が自ら協力を申し出てくれたのは、もしかしたら今日の戦いを通して彼の心を動かすきっかけとなる何かを示す事が出来たからなのか……。

 

 

 確かな理由は分からないが、それでもコレが自分が望んだ未来に一歩近付ける前進になるかもしれないと前向きに捉える響の横顔を見つめ、未来は瞳を伏せながら穏やかに微笑んだ。

 

 

「そうかもね……私も、響達と蓮夜さんがそうなれるように応援してる。だから響も、この機会をちゃんと次に繋げられるように頑張らないと、ね?」

 

 

「うん、未来が応援してくれるなら百人力だよ~!」

 

 

 やっぱり未来は私の陽だまりだと、自分の背中を後押ししてくれる彼女に元気良く抱き着く響に、未来もハイハイと受け流しつつも満更でもない様子で微笑む。

 

 

 そしてその後、二人は夕食を終えて明日の学校の準備を済ませた後、共に寝台に就き、響は隣で眠る未来の顔を見て笑みを浮かべながら見慣れた天井を見つめていく。

 

 

(未来も応援してくれるって言ってくれてるんだ……何時までも悩んでいるより、未来が言ってたように、このチャンスを次に繋げられるように頑張らないと……)

 

 

 親友が背中を押してくれてるのだから、何時までも気落ちしている訳にはいかない。気持ちを改め、決意を新たに響は目を伏せて眠りに付いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

──直後に自身と未来の間に走った、デジタルノイズのような謎の現象に気付かぬまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「……ん……んん……」

 

 

──翌日の朝。カーテンの隙間から射し込む陽の光に当てられ、響は僅かに眩しそうに顔を歪めながらも徐に目を開き、若干気だるげにベッドから上半身を起こしていく。

 

 

「んー……よく寝たぁ~……未来~、起きてるぅー……?」

 

 

 腕を上に大きく伸びをし、隣に眠る未来に目を向けて声を掛ける響。だが……

 

 

「……あれ、未来……?」

 

 

 呼び掛ける声に応える返事はなく、響が目を落とした隣には、いつの間にか未来の姿はなくなっていた。

 

 

 頭上に疑問符を浮かべて辺りを見回し、もしや自分が寝てる間に二段ベッドの下の方に移ったのかと思い下のベッドを覗き込んでみても、其処にも誰もおらず空っぽだった。

 

 

「あれぇー……?未来ー?」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「──おっかしいなぁー……今日は一緒に登校しようって昨日言ってたのに……」

 

 

 響達が通うリディアンに向かう朝の通学路。他の生徒達が学院に向かう姿がチラホラ見られる中、彼女達に混じって一人学校に向かう響は訝しげに首を捻っていた。

 

 

 あの後、もしや先に起きてるのではないかと思い部屋中を隈無く探し回ってみたものの、未来の姿は何処にも無く、彼女の通学用のカバンも部屋にはなかった。

 

 

 だとすれば、やはり先に部屋を出て学校に向かったのかと思われるが……

 

 

(何か予定があったのかな?日直とか……いや、でも今日は未来の当番じゃないし……あれ?)

 

 

 未来が先に出ていった理由を考えて響が頭を悩ませる中、その時、前を歩く登校中の生徒達の中に見覚えのある後ろ姿を見付け、足の爪先を立てて背伸びをし人混みの向こうを覗き見る。其処には……

 

 

「──あっははっ。えー、ほんとに~?」

 

 

「あ……未来!」

 

 

 人混みの向こうに、他の生徒達と楽しげに会話をしながら歩く女子生徒……朝には部屋に姿のなかった未来の姿があった

 

 

 彼女の姿を見付けた響はぱあっと明るい笑顔を浮かべると共に一目散に走り出し、生徒達の間をすり抜け未来の下へと駆け寄っていく。

 

 

「未来ー!おーい、待ってよ未来ー!!」

 

 

「……え?」

 

 

 大声で呼び止められ、一緒に登校していたらしき他の女子生徒達と共に足を止めて振り返る未来に追い付き、響は手を膝に付き呼吸を整えながら顔を上げる。

 

 

「もぉー、酷いよ未来っー。何も言わずに先に行っちゃうなんてさっー。一緒に学校に行こうって昨日約束してたでしょっ?」

 

 

「…………」

 

 

「先に出るならせめて一声くらい掛けてくれても…………?未来?」

 

 

 一緒に登校すると約束してた筈だったのに、置き去りにされてしまった事に対し愚痴をこぼす響だが、目の前に立つ未来の様子が何処か可笑しい。

 

 

 何故か戸惑いを露わにした瞳で響を見つめ、周りの生徒達と何度も顔を見合わせている。

 

 

 そんな彼女の様子を見て響も訝しげに眉を顰める中、未来は響に向き直って恐る恐る口を開き、

 

 

「えっ、と……ごめんなさい……確か、"立花さん"だよね?何の話をしてるのかさっぱり分からないんだけど……私に、何か用事?」

 

 

「…………え…………?」

 

 

……まるで赤の他人に向けるような他所他所しい眼差しと共に、困惑を露わにした表情でそう口にした親友である筈の彼女の思わぬ言葉に響は目を剥いて絶句し、呆然と立ち尽くしてしまうのであった──。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「──!何だ……?」

 

 

 同時刻。クレープ屋のバイトで店で作業を行っていた蓮夜は、クレープに使う材料の準備中に何かを感じ取ったかのように顔を上げ、怪訝な表情で周りを見渡していた。

 

 

(今の、感覚は……まさか……?)

 

 

 突然感知した不可解な感覚と、それに呼応するかのように胸でざわつく嫌な予感。

 

 

 理由は分からないが、此処で無視すれば『取り返しのつかない何かに繋がる』という確かな確信が胸中を過ぎり、蓮夜は僅かに思考する素振りを見せた後、何かを決意した表情で顔を上げながらエプロンを外し、店長の下へと急いで走り出していくのだった。

 

 

 

 

 

 

第二章/邂逅×存在を赦されない存在 E■■

 

 

 

 

 

 

 

 

『ERROR.』

 

 

『LOADING....』

 

 

 

 

 

 

 

 

第二章/かⅲ逅×存在を♯¥$@

 

 

 

 

 

 

 

 

『ERROR.』

 

 

『LOADING....』

 

 

 

 

 

 

 

 

だ▲二§/*@こ☆?ẅ♪♭※Σゝ●⊿

 

 

 

 

 

 

 

 

『ERROR.』

 

 

『LOADING....』

 

 

 

 

 

 

 

 

『ERROR.』

 

 

『ERROR.』

 

 

『ERROR.』

 

 

『ERROR.』

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■/■■×■■■■■■■■■■ END

 

 

 

 

 


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