戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第三章/改竄×断ち切られた繋がり①

 

 

「──そうか、やはり先日の戦闘で現れたアルカ・ノイズの出処は未だ分からず終いか……」

 

 

「はい。現段階での調査の結果では、恐らく錬金術師が何かしらの目的でばら蒔いた可能性が高いと思われますが……それにしたって、何故何もない街中に何の前触れもなく……」

 

 

S.O.N.G.の本部である潜水艦が停る埠頭の敷地内。艦の停泊中は表向きではダミーカンパニーの名前で港を使用しており、その間に多数の整備員やスタッフが潜水艦の補給と整備の為に今も忙しなく動き回っている。

 

 

そんな中、敷地内を共に歩く弦十郎とエルフナインは艦に向かう道すがら、先日の戦闘で起こったバットイレイザーの事件……否、"アルカ・ノイズの出現"について話し合いを行っており、エルフナインの見解を一通り聞いた弦十郎は「ふむ……」と顎に手を添え何やら考え込んだ後、エルフナインの顔を見つめ小さく頷いた。

 

 

「何れにせよ、アルカ・ノイズを発生させた犯人の正体と目的が読めない以上、まだ気を抜く訳にはいかなそうだ。警戒態勢を怠らず何が起きてもいいように備えておかなくてはな」

 

 

「そうですね。僕も調査報告書を見直して、気になる点が他にないか洗い出しておきます。クリスさん達にも朝方に連絡して本部に集まってもらえるようにお願いしていますから、其処で今後の事も──」

 

 

「──違うんですっ!お願いだから話を聞いて下さいっ!」

 

 

「だから、関係者以外の立ち入りは許可出来ないんですって!」

 

 

「……うん?」

 

 

アルカ・ノイズの謎の発生と今後の対策について弦十郎達が話し合いを進める中、遠くから何やら揉める声が聞こえ振り向く。すると其処には、出入り口のゲートにてリディアンの制服を着た女子生徒が二人の警備員に取り押さえられる姿があり、騒ぎが気になった弦十郎は警備員達の下に近付いていく。

 

 

「どうした、何かあったのか?」

 

 

「あ、司令……!実はこの娘が無断で敷地内に侵入しようとしてたので引き止めようとしたのですが、強引に中へ入ろうとして……」

 

 

「ッ……!師匠っ!」

 

 

「……?師匠?」

 

 

「司令?何かありましたか?」

 

 

警備員達に取り押さえられる女子生徒……響が弦十郎の顔を見て安堵の吐息を吐くも、弦十郎は彼女が口にした師匠という呼び方に訝しげに小首を傾げてしまい、更に其処へ弦十郎を追ってきたエルフナインを見て響の表情が柔らかくなる。

 

 

「エルフナインちゃんも!良かったっ、二人が来てくれて……!」

 

 

「え?どうして僕の名前を?」

 

 

「その制服はリディアンの……という事は、もしやクリス君達の友人か何かか?」

 

 

「え……ま、まさか、二人まで私の事をっ……?」

 

 

学校でのクリス達と同様、自分の顔を見て初対面の人間に出会ったような反応を見せる弦十郎とエルフナインを見てショックを隠せない響だが、其処でハッと何かを思い出したように自分の首元に手を伸した。

 

 

「そうだ……!コレ!私の事を覚えてなくても、コレさえ見てくれれば……え……?」

 

 

そう言って、響は首に掛けたギアのペンダントを弦十郎達に見せようとするが……伸ばした手は何故か空を切り、思わず首元に目を向けると、其処には朝に忘れず身に付けていた筈のギアのペンダントがいつの間にか何処かへと消えてしまっていたのだ。

 

 

「な、何でっ?!私、ちゃんとガ……ガ、ン……あ、あれっ……?」

 

 

驚愕と共に制服のポケットも慌てて漁り、ペンダントを探しながら自分のギアの名を弦十郎達に告げようとするも、何故かその名前を思い出す事が出来ない。

 

 

……いや、それどころかそのペンダントが一体何だったか、そもそもそれが何の為のモノだったか……。

 

 

今の今まで覚えていた筈の事が突然思い出せなくなり、響は戸惑いを露わに更に混乱してしまうが、弦十郎達はそんな響の様子を見ても意味が分からないと頭上に疑問符を浮かべるばかりだった。

 

 

「よく分からんが……此処は関係ない人間が立ち入るには些か危険な場所だ。それに君、その制服を着ているという事はリディアンの生徒だろう?この時間帯ならそろそろ授業が始まってる頃だが、学校はどうしたんだ?サボリはいかんぞぉ、サボリは」

 

 

「いや司令っ、それより一般人がこの場所へ立ち入った事を問題視すべきでは……」

 

 

「なに、別に不味いモノを見られたって訳でもないんだ。俺達がこの場で注意して、この娘が外で口外しなければさほど問題にはならんだろう。そういう訳だから女子生徒君、敷地内に勝手に入った事は俺達も大目に見るから、君も此処での事は無闇に人に話さないでいてくれると助かるんだが……」

 

 

「…………」

 

 

勝手に侵入した件を目を瞑る代わりに此処での事を他言無用にして欲しいと穏便に頼む弦十郎だが、そんな弦十郎の言葉が聞こえている様子もなく響は表情を隠すように前髪で顔を隠して俯いており、ただ無言のままゆっくりと頭を下げていく。

 

 

「すみません、でした……私の勘違いだったみたいです……それじゃ……」

 

 

「お、おい」

 

 

そう言いながら踵を返し、響はまるで幽霊のように覚束無い足取りで来た道を引き返していく。その様子を見て流石に心配になり思わず引き止めようとする弦十郎の声も聞こえていないのか、響は一度も振り返る事なくその場を後にしていき、そんな響の背中を見送りながら弦十郎も何処か腑に落ちない様子で頭を搔いてしまうのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「……つまり、立花響に関する物語を書き換えた、と?」

 

 

とある市内に存在するバーの席。酒気の仄かな匂いが店内に漂う中、店のカウンター席でグラスに入った酒を傾けながらデュレンがアスカに投げ掛けたのは、今の響の身に起きている現状……彼女自身やその周囲の人間の記憶が改変されている件についてであり、それに対しアスカもグラスの酒を揺らしながら淡々と答えていく。

 

 

「アイツはクロスの周りをうろちょろしてやがったからな、あのまま奴に付いて回られてたらマジで装者達と手を組み兼ねない……そうなる前に手を打っておいたのさ」

 

 

「……成る程……だが立花響はこの物語における主人公だ。そんな重要なキーパーソンに手を出すのなら、一言相談を寄越せ……今のところ問題はないようだが、貴様が下手な手を打っていればどうなっていた事か……」

 

 

「わーってるよっ、だから念の為に保険も用意して今回の改竄に及んだって何度も言ってんだろっ。毎度毎度小言が多いんだよ、お前はっ」

 

 

釘を刺すように横目で睨み付けてくるデュレンに対し鬱陶しげに手を振り、アスカは酒が入ったグラスを一気に飲み干していく。そしてデュレンもそんなアスカを見て軽く鼻を鳴らしながら自身も酒を口にしていくと、二人の背後から青髪の青年が現れて飄々とした笑みで声を掛けた。

 

 

「あーらら、真っ昼間から酒浸りなんて悪いなぁ。酒臭い男はモテないよー?」

 

 

「クレンか……」

 

 

「うーるせーよっ。こっちは一働きしてきた後なんだ、ちっとの酒ぐらい味わわせろっ」

 

 

「カリカリしてるねぇ。ま、君とデュレンが二人で飲んでて場の空気が和む訳もないか」

 

 

ケラケラと笑いながらそんなアスカの隣の席に徐に座り、青髪の青年……クレンはバーテンダーに軽い飲み物を注文すると、デュレンがグラスを置きながらクレンに向けて口を開く。

 

 

「それで、立花響の今の様子はどうなっている?」

 

 

「ちゃんと改竄の影響はあるようだよ。彼女の周りの人間と、立花響との関係性は完全にリセットされている。ただ、彼女自身はまだ改竄前の記憶が残ってるようだ……やっぱり僕達の知らない所で彼と交流があったのか、改竄の進行は他よりもだいぶ遅れているみたいだね」

 

 

「そら見ろよ、あのままあのガキを放置してたら奴以外にも厄介な敵が増えてたって事だろう?早い内に対処してて正解だった訳だ」

 

 

「俺が問題視してるのは貴様の独断行動についてだ。幾ら結果がマシだろうと、その過程で足が付けば今までの蓄積とこれからの動向すら無意味になり兼ねないと何度も……」

 

 

「あーっ、もういい分かったってっ!俺が悪うござんしたよっ!」

 

 

再び始まろうとしたデュレンの小言を遮るようにわざとらしく声を大きめにそう叫ぶと、アスカはグラスを置いて席から立ち上がり店の入り口に向けて歩き出していく。

 

 

「ったく……ただまぁ、此処まで分かりやすい異変は奴も既に勘付いてる筈だ……そろそろ次の手の準備を始めとくとするか」

 

 

「働き者だねぇ。まあ今回は君が主導の改竄だし、僕達は適当に酒のつまみにでもさせて楽しませてもらうよ」

 

 

「チッ、自分は無関係だからって余裕かましやがって……ところでデュレン。もし仮に奴と戦う事になったら、別にやっちまっても構わねぇんだよなぁ?」

 

 

「……貴様の勝手にすればいい。わざわざ俺の許しを得る必要もないだろう」

 

 

「そーかよ……なら後から文句つけて来ても俺は知らねぇからな」

 

 

今の内に忠告しなかった事を咎めるなよと、アスカはそのまま二人に背を向けて店を出ていく。そしてそんなアスカを見送ったクレンは注文して出てきた飲み物のグラスを手に取ると、デュレンを横目に口を開いていく。

 

 

「いいのかい?彼は現状で唯一イレイザーを追い詰められる相手だ。前回僕が教えた、ノイズ喰らいのイレイザーの進化の条件が君の予想通りだとしたら……」

 

 

「……確かに奴を利用する手もあるが、それは同時に俺達の計画が破綻する危険性をも抱えねばならない事になる。わざわざそんなリスクのある手段に拘るよりも、もっと手堅い方法で研究を進める方がより効率的だろう」

 

 

そう言いながらデュレンは脇に置いてあるタブレットを手にし、画面に触れる。直後、タブレットの画面にノイズが走って幾つかの映像が表示されていくのを見て、デュレンは僅かに目を細めていく。

 

 

「この戦姫達の物語に拘らずとも、研究と実験を進めるだけなら他の物語でもこなせる……それまで奴らには、この物語の中で好きなだけ英雄気分を堪能させておけばいい……」

 

 

 

 

 


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