戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第四章/蘇る聖拳×束ねられた絆

 

 

イレイザー達が仕掛けた罠により絶体絶命の窮地に陥ったクロスと響。

 

 

イグニスイレイザーの圧倒的な戦闘力の前にクロスが手も足も出せず一方的に嬲られる中、響も突如現れたフロッグイレイザーの襲撃に遭い必死に街中を逃げ回っていた。

 

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!!何でっ、どうしてイレイザーが私をっ……?!」

 

 

イレイザーの改竄の影響を受けてシンフォギアも使えない自分が何故狙われているのか。困惑を隠し切れぬままとにかくがむしゃらで走り続ける響だが、フロッグイレイザーは驚異的な跳躍力で高層ビルの壁を素早く飛び跳ねながらそんな響に一気に追い付いてしまい、そのままビルの壁を蹴り上げ響へと飛び掛かった。

 

 

『死ねェェえええええええええええええッッ!!!』

 

 

「ッ?!うわっ、あっ!」

 

 

凶悪な異形の手を振りかざして背後から襲い掛かるフロッグイレイザーを見て響は慌てて走るスピードを速めようとするが、足の爪先を地面に引っ掛けて前のめりにバランスを崩してしまい、転ける響の頭の上をフロッグイレイザーの手が紙一重で通過して隣のビルの壁を木端微塵に粉砕していった。

 

 

そして粉塵が周囲一帯に立ち込める中、響は地面を転がりながらも何とかフロッグイレイザーから離れると、尻もちを付いたまま赤い眼をギロリッとこちらに向けるフロッグイレイザーを見上げ、戸惑い気味に口を開いた。

 

 

「あ、貴方は一体っ……どうして私を襲うの?!」

 

 

『……どう、して……?決まってるだろ……そんなのっ……!』

 

 

「えっ?」

 

 

疑問を投げ掛ける響の問いに対し、フロッグイレイザーはそう言いながらワナワナと身体を震わせて拳を強く握り締めていき、響を睨み付けて声を大に荒々しく叫び出す。

 

 

『俺はっ、俺はあの日に全てを失ったっ!!家族を全員っ、何かもっ!!なのに何故っ、何故お前はのうのうと生きて幸せそうに笑っているんだっ?!妻とあの子はあのライブ会場で死んだのにっ、何故お前だけが助かってぇええええええッッ!!!!』

 

 

「ッ!ライブ……会場……?」

 

 

ありったけの憎悪が込められた支離滅裂な雄叫びを上げるフロッグイレイザーのその言葉に、響は目を見開き、同時に何かを察したかのように息を拒んだ。

 

 

あのライブ会場……数年前に自身が巻き込まれて死の淵をさ迷ったあの事件の事を指し、ただ一人あの事件から生き延びた自分の事を憎んでいるという事は、その口振りからして恐らくこのイレイザーの元となった人間はあの事件で家族を失った遺族。

 

 

加えてこのタイミングで自分を襲ってきたという事は、つまり……

 

 

「もしかして……貴方が未来や、皆を……私が憎くてっ……?」

 

 

『許せないっ……!許さないっ、許されないっ!!俺は全てを失ったのにっ、あの子達は帰って来なかったのにっ……!!何故お前ばかりが幸福なんだっ?!どうしてこんな世界になってもお前に手を差し伸べる人間が現れるっ?!そんな不平等がまかり通ってなるものかァァああああああッッ!!!!』

 

 

「っ、くっ!」

 

 

皆の中から自分に関する記憶が消えたのはこのイレイザーによる仕業なのか。戸惑いを帯びた声音で響が問い質そうとするも、フロッグイレイザーはやはり依然として錯乱し話が通じず、響に問答無用で再び襲い掛かって来た。

 

 

それを見て会話は不可能だと悟った響は咄嗟に真横に飛び退き再び全速力で逃げ出していくが、フロッグイレイザーはそんな響に目掛けて口から連続で水弾を乱射する。

 

 

壁に着弾して飛び散る水しぶきを見て響も慌てて鞄で頭を庇いながら路地の裏へと逃げ込むが、フロッグイレイザーもそれを追って素早く路地の裏へと飛び込み、逃げる響の背中に向かって口から水弾を放ち追撃を続けていくのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「──それで、そのシーンでの主人公サイドの逆転っぷりが凄いのよ。今までの伏線を一気に回収してのあの攻勢っぷりがまた気持ちがいいの何のってー!……ふぁああ」

 

 

「成る程、そのアニメに熱中し過ぎてまた寝不足って訳ね……。弓美らしいと言えばらしいけど」

 

 

「ですがあまり夜更かしするのは感心致しませんわよ?寝不足はお肌の天敵と言いますから」

 

 

「…………」

 

 

同じ頃、下校時刻となり学院を終えたリディアンの生徒達が帰路に付く中、未来も友人の生徒達に遊びに誘われ共に下校していた。しかし、その表情は何処か優れてなく暗い顔を俯かせており、彼女に話を振ろうとした友人の生徒もその様子に気付き小首を傾げた。

 

 

「ヒナ?何か元気ないよ?どうかした?」

 

 

「……え?あ、ううん。ただ少し、気になる事があるって言うか……」

 

 

「気になること?」

 

 

?と、要領を得ない未来の発言に友人達も頭の上に疑問符を並べると、未来は視線を足元に向けたまま鞄を持つ手を落ち着きなく動かしながら言葉を続けていく。

 

 

「何ていうか、その……私たちって、本当に『こんな』だったかなって……何か、大事な事を忘れてるっていうか……足りない、っていうか……」

 

 

「?忘れてるって……別に何時も通りじゃない?特に可笑しなとこはないと思うけど」

 

 

「そうですわね……放課後は何時もこの四人で下校してましたし、可笑しな点はないと思いますが……」

 

 

この普段通りに思える日常に違和感がある。何処か落ち着かない様子でそう語る未来の言葉に友人達は互いに顔を見合わせて怪訝な表情を浮かべ、そんな友人達の反応を見て未来は釈然としないのか暗い顔のまま俯いてしまう。

 

 

「ヒナ、もしかしてどっか具合悪い?何か顔色もあんまよくないし……今日は先に帰って休んだ方が良いんじゃない?」

 

 

「……そう、かな……そうなのかも……ごめん、折角誘ってくれたのに……」

 

 

「良いって良いって、体調が悪いならあたし等の事なんかより自分のこと優先しないと。遊びに行くのはまた今度でも出来るしね」

 

 

「そうですよ。今はご自身のお体を労わって上げてください、小日向さん」

 

 

「うん……ありがとう、皆……」

 

 

自分を気遣って優しい言葉を掛けてくれる友人達の厚意に感謝し、三人と別れて先に寮へと戻る事にした未来。

 

 

そしてひとり帰路に付く並木通りの照明灯の光が点灯し始める中、下校する他の生徒達とすれ違う際に二人の女子生徒が談笑しながら一緒に帰る姿を何故か自然と目で追い掛けていき、同時に鈍い痛みが胸に走って締め付けていく。

 

 

(まただ……何なんだろう、これ……あの子達みたいな人達の姿を見ると、無性に胸が痛くなる……)

 

 

恐らく親友同士なのか、仲つむまじく笑い合うあの少女達の姿を見ているだけで理由の分からない痛みが胸に飛来し、何か大事な物が欠けたような喪失感を覚える。

 

 

そんな身に覚えのない感覚に戸惑いを隠せない未来だが、その事に対して何故か不快感は感じない。

 

 

寧ろ、その感情を覚えるのが当然で、自分は今こんな事をしている場合ではないのだという謎の焦燥感に駆られる。

 

 

一体この感情は何なのか……。言葉にし難いが故に答えも出せずより一層悩んでしまうが、やはり友人達が言うように今日の自分は疲れているのだろうか。

 

 

(やっぱり皆の言う通り体調が悪いのかな……今日はもう早く帰って休んだ方がいいのかも……)

 

 

どれだけ考えてもこのモヤモヤとした感情の正体が分からず終いで気疲れしてしまい、友人達に言われた通り今日は早めに休もうと溜め息をこぼし寮に向かう足取りを速めていくが、その時、ドォオンッ!!と何かが破裂するような音が何処からか鳴り響いた。

 

 

「っ?!え?な、何っ?」

 

 

突然の大きな音に思わず肩をビクッと震わせて未来が辺りを見回す。すると、遠方に見える建物の向こう側からいきなり水弾が勢いよく打ち上がって空で破裂し、水しぶきが雨のように街へ降り注ぐ光景が視界に映った。

 

 

「あれって……?」

 

 

空に打ち上がった謎の水弾を目撃して驚きで目を丸くし、呆然と立ち尽くしてしまう未来。だが、次第にその表情が険しくなっていき、それと共に何故か彼処に行かなくてはならないという衝動に駆られ、気付けばまるで何かに弾かれたように走り出していたのだった。

 

 

 

 

 


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