戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第五章/不協和音×BANGBANG GIRLの憂鬱⑤

 

 

『──クソがっ……!!何時までも逃げてんじゃねぇええええええええええッ!!!』

 

 

 苛立ちを孕んだ雄叫びと共に、疾走するイグニスイレイザーが炎を纏う巨大な右腕を振りかぶって突撃し、何度も何度もクロスに襲い掛かっていく。

 

 

 闇夜を切り裂くかのように、紅の炎が頭上、左右から立て続けに迫るが、クロスはスーツの上に伸びる全身のラインを通して四肢に蒼光を随時走らせ、瞬間的な身体強化を繰り返す事でイグニスイレイザーが繰り出す拳の一撃一撃を素早く飛び跳ねて回避していた。

 

 

 火の粉が舞い、打ち砕かれるアスファルトの地面の破片が飛び散る中、相手の一挙一動を注視して軽やかに宙を舞い攻撃を躱していくその様は、まるでかの武蔵坊弁慶と五条の大橋で立ち回る牛若丸の姿を彷彿とさせる身のこなしのようだ。

 

 

『チィ……!ちょこまかちょこまかとッ!猿かテメェはッ?!逃げ回ってばかりいないでちったぁ戦えやァッ!』

 

 

 地面に叩き付けた右腕を引き抜き、隠し切れない苛立ちを露わにイグニスイレイザーが堪らず叫ぶ。

 

 

 先程から怒涛の猛攻を仕掛けるも、対するクロスはイグニスイレイザーの攻撃を避けるばかりで一向に反撃に転じようとしない。

 

 

 まともに戦う事を放棄し、逃げの一手に徹しているようにしか見えないクロスにイグニスイレイザーもイライラが募る一方、イグニスイレイザーから離れた場所に着地したクロスはその心中、緊張で張り詰め余裕が一切ない状態にあった。

 

 

『(攻撃を避けても、拳が僅かに掠めただけで装甲の一部が簡単に削り落とされていく……前に戦った時は此処までではなかったのに、今度こそ本当に仕留めるに来るつもりか)』

 

 

 此処まで自分が避けてきた、イグニスイレイザーの破壊の痕跡を見遣る。其処には奴の凄まじい一撃の威力を物語るかのように小規模のクレーターが無数に作られているだけでなく、拳に纏う炎の高温のせいか、クレーターの中はあまりの高熱度で岩や瓦礫が溶解したマグマで煮え滾っている。

 

 

 前回戦った時とは比較にならない破壊力。人間態からイレイザーへと変貌していた際の圧倒的な破壊の様子や威圧感から薄々感じ取ってはいたが、やはり以前の戦いでは相当手加減されていたという事なのだろう。

 

 

 先程のクロスカウンターの時にも強烈な一撃を貰った際、胸のボディに瞬間強化を施して何とかダメージを軽減出来たが、そう何度も使える手ではなし、あんなのを一撃でもまともに喰らえばひとたまりもない。

 

 

『(響の力を此処で切るべきか?いや……)』

 

 

 ガングニールの力は現状、今の自分が持つ中で最高戦力だ。奴の力の上限が分からない今のタイミングで早々に切り札を切るのはあまりに早計が過ぎる。

 

 

 ならばやはり、今は別働隊の響達がイレイザーを撃退するまで時間を稼ぐ方が無難だ。本部からその報らせが届くまで持ち堪えるべく、身構えるクロスを見て何かを察したのか、イグニスイレイザーは軽く舌打ちして自らの胸に左手の爪を這わせていく。

 

 

『そうかよ、時間稼ぎのつもりって訳か。だがこっちもそんなもんに律儀に付き合う気はねえんだ。二人一気に釣り上げられなかったなら、テメェだけでも此処で仕留める……!』

 

 

―ガギギギギギギギギギィッ!!―

 

 

『……!何だ……?』

 

 

 そう言いながら、イグニスイレイザーはいきなり胸に這わせた爪を立てて自らの胸部を引っ掻き、胸に五本の爪痕を作っていく。

 

 

 そんな不可解な行動を取るイグニスイレイザーを見てクロスも怪訝な反応を浮かべる中、掻いた胸から無数の塵屑がこぼれ落ちて足元に転がっていき、イグニスイレイザーが合図を送るかのように左手で何かを掬い上げる動作を行う。

 

 

 瞬間、イグニスイレイザーの足元に転がる塵屑の一つ一つが大の人間サイズへ徐々に巨大化しながら人型に変化していき、灰色に近い白の体色の上に黒の線が全身に走る、無数の異形の怪物へと変貌していった。

 

 

『コォァアアアアアッ!!』

 

 

『シャァアアアアアッ!!』

 

 

『ッ!コイツらは……!』

 

 

「ハァッ、ハァッ……ッ?!な、何だよ、あの気持ち悪ぃ奴らは?!」

 

 

 謎の塵屑から生まれた無数の異形達が、まるで産声を上げるかのように耳障りな奇声を一斉に放つ。そんな不気味な異形達を前にクロスは目を見開き、二人を追ってクロスの背後からその場に駆け付けたクリスも謎の異形達を見て戸惑いを浮かべる中、イグニスイレイザーは自らの周りで蠢く異形達を顎で指して告げた。

 

 

『上級イレイザーの事を思い出してんなら、コイツらの事も当然知ってんだろ?俺ら上級だけが、この身から際限なく生み出せる屑共……ダストをよ』

 

 

『ッ……上級イレイザーの、分身体……!』

 

 

「分身だと?!」

 

 

 そんなものまで生み出せるのかと、クロスを威嚇するように奇声を発する異形達……上級イレイザーだけがその身から生み出せる分身体、ダストの正体をクロスの口から聞かされたクリスが上げる驚愕の声も他所に、イグニスイレイザーは指を軽く振るってダスト達に指示を出す。

 

 

『奴を逃がすな、行け!』

 

 

『ゥウウアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 

『チッ……!』

 

 

 イグニスイレイザーの号令と共に、まるでゾンビのように腕を大きく振りかぶりながら一斉にダスト達がクロスへと迫る。それを見たクリスはすぐさま両手に握るクロスボウを乱射して迎撃に出るが、光の矢に撃ち抜かれたダスト達は頭や腕などの欠損した部分が独りでに修復されていき、そのまま何事もなかったかのように構わずクロスへと襲い掛かった。

 

 

「なっ、再生しやがった?!」

 

 

『無駄だ。俺の塵屑とは言え、そいつらにもイレイザーの特性が備わってる。『記号』の力を持たないお前じゃ倒せねぇよ』

 

 

「……ッ!!」

 

 

『クッ……下がれイチイバル!此処は俺が―ドゴォオオオオッ!!―ぐぅうっ?!』

 

 

『人の心配なんかしてる場合かァッ?!』

 

 

 押し寄せるダスト達の攻撃を捌きながらクリスを下がらせようと呼び掛けるクロスに、イグニスイレイザーが死角から巨腕を振るって容赦なく殴り掛かる。拳が当たる寸前に反射的に身を翻し直撃こそ免れたが、それでも凄まじい威力を誇る拳が掠めただけで身体がぐらつき、其処へダスト達が一斉に飛び掛かって身体に組み付かれてしまう。

 

 

『ぐっ……!このっ──!!』

 

 

 正面から低く腰にしがみつくダストの背中に鋭い肘打ちを叩き付けて沈め、左足に組み付く別のダストを強引に振り払う。しかし、ダスト達の相手に気を取られるあまりイグニスイレイザーが続けて放った拳に反応が遅れて回避が間に合わず、咄嗟にスーツ上のラインを通して両腕に蒼光を走らせ、瞬間強化を施した蒼色に輝く両腕で防御態勢を取るが、その上から打ち込まれた一撃に耐え切れず盛大に殴り飛ばされてしまった。

 

 

『グァアウゥッ!!』

 

 

「おいっ!クソッ!」

 

 

 ミシィイッ!!と、両腕から骨が軋むような嫌な音を立てながら吹っ飛ばされて受け身も取れず、地面に叩き付けられるクロスを見て慌てて助けに入ろうとするクリスだが、障害となるダスト達を排除しようとクロスボウを幾ら撃ち込んでも、僅かに身体をぐらつかせるだけでやはり攻撃が通じている気配が薄い。

 

 

 チッ!と舌打ちし、それならばと動きが鈍いダスト達の足を狙って撃ち抜き、地面に転ばせていく。

 

 

 撃たれた足はやはり欠損した部分から忽ち再生されてしまうようだが、一度転がしてしまえば飛び越えて先へ進む事は容易になる。クリスはその隙に何としてでも先へ進もうと両手のクロスボウを発砲させながらクロスの下まで突き進んでいくが、倒れたダストの一体にその足を掴まれ、更に一瞬だけ動きを止めた隙に他のダスト達もワラワラとクリスに群がり組み付いていってしまう。

 

 

「は、放せっ!このっ……!づああぁっ!!」

 

 

『……端っこでちょこちょこと鬱陶しい……目障りだから動けない程度に痛め付けろ。殺しさえしなきゃ、手足の骨の1、2本はへし折っても平気だろ』

 

 

『ッ!止めろォッ!!』

 

 

 臆面もなく残酷な指示を下すイグニスイレイザーに対してクロスが止めに入ろうと飛び掛かるが、イグニスイレイザーはそんなクロスに見向きもせず、虫でも払うかのような簡易な動作からの横蹴りを突き刺し蹴り飛ばしてしまう。

 

 

 その間にもダスト達は地面に押さえ付けるクリスのギアに四方から手を伸ばしてバラバラに引き剥がそうとし、必死に抵抗し続けるクリスのギアを掴んで徐々に亀裂を入れていく中、受け身を取って態勢を整え、腹部を抑えながらどうにか身を起こしたクロスはその光景を目にしすぐさま左腰のカードホルダーからタイプガングニールのカードを取り出す。

 

 

『(もう出し惜しみをしてる場合じゃない……!向こうが数で攻めてくるなら、こっちは質で迎え撃つ!)』

 

 

 それが今のこの状況下の最適解と信じ、クロスはバックルから立ち上げたスロットに素早くカードを装填し、掌でスロットをバックルへ押し戻した。

 

 

『Code Gungnir……clear!』

 

 

 鳴り響く電子音声と共に、クロスの装甲がパージして新たに生成された橙色のアーマーと仮面が身に纏われていき、最後に肩甲骨部から二翼の橙色に輝く光のマフラーを出現させてタイプガングニールに姿を変える。

 

 

 そしてクロスは瞬時に両腕のナックルを分離させ、純白の烈槍と漆黒の烈槍に変形させながら二振りの槍を手の中で勢いよく回転させていき、そのまま二振りの槍を投擲して自身の周囲、そしてクリスに群がるダスト達を切り裂いて消滅させていったのだった。

 

 

「ッ……!あれは……」

 

 

『なっ……チッ、それが例の新しい力って奴か!』

 

 

『はぁあああああああああああああッッ!!』

 

 

 ダスト達をほんの数秒足らずで全滅させたタイプガングニールの力の一端に驚嘆するイグニスイレイザーに目掛け、クロスはブーメランのように回転しながら戻ってきた二本の烈槍を再びナックルとして両腕に纏いながら突貫し、拳を飛ばして殴り掛かった。

 

 

 それを見てイグニスイレイザーも咄嗟に身を逸らしてクロスの拳を躱し、拳を固く握り締めた右腕の巨腕で反撃して殴り返そうとするが、クロスは素早く身を屈めながらイグニスイレイザーの巨腕を受け流し、そのまま流れるような滑らかな動きでパワージャッキを稼働させた右脚による強烈な上段回し蹴りをイグニスイレイザーの顔面に叩き込んでいった。

 

 

『ぐううっ?!クッ……テ、メェエエエエエエッ!!』

 

 

 パワージャッキで威力を強化した技が効いているのか、顔面を蹴り飛ばされたイグニスイレイザーの頬に微かに傷痕が残っている。

 

 

 これなら行ける。内心そう確信したクロスが攻撃の手を休めずに回し蹴りの勢いを殺さずその場で回転し、軸足を入れ替えてからの上段後ろ回し蹴りを再度仕掛けるも、イグニスイレイザーは素早く態勢を低くして蹴りを躱しながらクロスの腹に目掛けて左拳を振り上げる。

 

 

 それを見たクロスも負けじと瞬時に腹部を両手で庇って相手の拳を受け止めると、そのまま拳を払うように上へ押し上げながら両腕を後ろに引き、地を強くえぐるように踏み込み、イグニスイレイザーの胸に押し当てた両手の掌から相手の内部にエネルギーを流し込み、直後、イグニスイレイザーの身体の内側から橙色のエネルギーが爆発して盛大に吹き飛ばしていった。

 

 

『ガァアウウッ?!グッ……!(ちゅ、中国武術だとっ……?コイツっ、オリジナルのバトルスタイルまで会得してんのかっ?!』

 

 

『(響の戦い方を見て学んだ技が通用する……!これなら奴にも……!)』

 

 

 奴の持ち前の防御力には関係ない、内側からダメージを与えられる発勁を叩き込まれて苦しげに呻くイグニスイレイザーを見て僅かな勝機を見出し、クロスは即座に左腰のホルダーから新たに取り出したカードをバックルから立ち上げたスロットに装填し、掌で素早く押し戻した。

 

 

『Final Code x……clear!』

 

 

 再び鳴り響く電子音声と共にクロスの全身の装甲が部分展開されていき、最後に仮面のクラッシャーが開かれて内部装甲が橙色に発光していく。

 

 

 EXCEED DRIVE。他の形態とは違ってタイプガングニールだけが持つ、必殺技発動時にのみ発動するフルパワー形態だ。

 

 

 全てのリミッターを一時的に解除する事で元々のあらゆるスペックが数倍にまで上昇されたクロスは、勢いを付けてイグニスイレイザーへと飛び掛かりながら素早く突き出した右脚に橙色の雷光を纏い、渾身の飛び蹴りを放った。

 

 

『ぜぇええああああああああああああああッッ!!!!』

 

 

『チィッ!そんなもんでぇッ!!』

 

 

 先程の発勁のような内部攻撃ならともかく、真正面からの攻撃なら自分の防御力を突破出来る筈もない。新たな力を過信して悪手を踏んだなと内心ほくそ笑み、イグニスイレイザーは敢えて回避行動を取らず、クロスの技を正面から打ち破る気概で右腕の巨腕を盾にして待ち構え、雷光を撒き散らしながら迫るクロスの渾身のライダーキックを真っ向から受け止めた。が……

 

 

―……ジャキィッ!!―

 

 

『……?!な──?―ドゴォオオオオンッ!!―ウォオオオオオオッ?!』

 

 

 クロスの強烈な一撃を巨腕で受け止めた瞬間、クロスの右脚のパワージャッキが不意に稼働を始め、イグニスイレイザーの右腕をいきなり弾き飛ばしたのだ。

 

 

 それによりイグニスイレイザーは右腕を大きく反ってガードと体勢を同時に崩されただけでなく、クロスは右腕を弾かれた際のイグニスイレイザーのパワーと勢いを利用して上空へと空高く舞い上がる。

 

 

 同時に右脚に纏う雷光を右腕の拳に向けて伝わらせ、ハンマーパーツを起動させた橙色の雷光を纏う右腕を振りかざしながらイグニスイレイザーへと急降下していき、無防備のその顔面に全力の鉄拳を叩き込み、殴り飛ばしていった。

 

 

『ヅァアアァッ?!グッ、ッ……ハッ、やってくれるじゃねえかぁっ……!その姿ならちったぁ愉しませてくれるって訳かぁ?えぇッ?!』

 

 

『……お前を愉しませるつもりは毛頭ない。此処で決着を付けさせてもらうッ!』

 

 

 ふらつきながらも殴り付けられた頬を軽く拭うイグニスイレイザーの挑発を聞き流し、クロスは両拳を構え直して再度イグニスイレイザーへと挑み掛かった。

 

 

 切り札を切ってしまったからには、此処で奴を逃す訳にはいかない。次にまた戦う時に同じ力や技が通用する保証がない以上、勝負は此処で、この熱が冷めない内に付けるしかない。

 

 

 互いに鋭く振り抜く拳の応酬が無数の火花と衝撃波を撒き散らし、クロスとイグニスイレイザーは一進一退の拳戟を繰り広げていく。

 

 

──そんな二人の激戦を離れた場所から見つめ、クリスは地べたに座り込んだまま無意識に拳を強く握り締めていた。

 

 

(くそっ……クッソッ……何をやってんだあたしはっ……!結局なんにも出来てねえじゃねぇかっ……!アイツの力に頼りっぱなしで、助けられてばかりでっ……何にもっ……!)

 

 

 『記号』の力を持たない今の自分では、あの紅の魔人どころか塵屑と呼ばれた先程の怪物達にも太刀打ち出来ない。

 

 

 なのにそんな自分とは対照的に、クロスは最初に対峙した際には本能的な危機を感じ、遥か格上の相手と思われたイグニスイレイザーとも真っ向から戦えている。

 

 

 その事実が更に自分を惨めにさせ、とてつもない無力感がのしかかり、クリスは俯く顔を徐に上げてイグニスイレイザーの背中を鋭い目付きで睨み付けていく。

 

 

『そらそらどーしたァッ?!こっちはまだまだギアが上がるぞッ!それとももう付いて来れねぇかあッ?!』

 

 

『チッ!(奴の力が徐々に増してる……!これ以上パワーを上げられたら流石に厳しくなるか……!』

 

 

 一方で、徐々に拳戟の応酬に激しさを増していく二人の戦いも激化するにつれ、戦況は次第にイグニスイレイザー側に傾きつつあった。

 

 

 タイプガングニールのおかげで力の差をある程度埋める事が出来たとは言えど、元々自分に合わせて加減していたイグニスイレイザーがその実力を解放していけば、折角狭まった力の差は再び開かれてしまう事になる。

 

 

 このままではいずれ追い込まれる。奴が全力を出してそうなる前に早々に決着を付けるべく、互いにクロスカウンターを打ち込んで距離を離したクロスは再びハンマーパーツを起動させた両腕を引き締め、一撃必殺の構えを取る。

 

 

 一方でイグニスイレイザーもそんなクロスの構えを見て何かを悟ったのか、渦状に舞う紅蓮の炎を巨腕に収束しながら拳を握り締め、今までとは明らかに毛色の違う膨大な力をその身に宿していく。

 

 

 恐らく向こうも勝負を決めるつもりなのだろう。奴が身に纏う気配の変化からそれを察し、ならばこちらも今ある全力で迎え撃つだけだとクロスが身構えると同時に、イグニスイレイザーが真正面から突っ込んで来る。

 

 

 業火を纏う巨腕の拳を振りかざす魔人の姿を睨み据えながら、クロスも右拳を振り抜き、相打ちも覚悟に全力でそれを迎撃しようとした、その時……

 

 

―MEGA DETH PARTY―

 

 

 

『……ッ!?』

 

 

 二人の必殺を込めた技がぶつかり合う寸前、イグニスイレイザーの真横から突如無数の小型ミサイルが飛来し、直後に凄まじい爆発音が連続で響き渡った。

 

 

 ドォゴゴゴゴゴゴゴゴォオンッッ!!!と、鼓膜を裂くような轟音を轟かせながら立て続けに打ち込まれる小型ミサイルがイグニスイレイザーの身体を焼き尽くし、爆炎と黒煙がその姿を覆って視認出来なくしていく。

 

 

 吹き荒れる爆風が辺り一帯に広がり、イグニスイレイザーの間近にいたクロスも両腕で顔を庇いながら爆発の衝撃に押し出されて後退りしていき、それでもどうにかそれ以上吹き飛ばされないようにその場に踏み止まりながら今のミサイル群が放たれてきた方へと振り返ると、其処にはミサイルを放ったと思われる空の射出器を露わにした腰部アーマーを展開し、その背にはもう二基、巨大な大型ミサイルを背負うクリスの姿が見えた。

 

 

『イチイバル……?!』

 

 

(このまま何も出来ずに終われるか……!アイツの力なんか無くたってっ、やりようは幾らでもあるっ!)

 

 

 役立たずのままで終わる気なんてない。ダメージを与えられないのならせめて、奴の目を引き付ける囮になってでも役目を全うしてやる。灰暗い感情に押されるまま背中に積む大型ミサイルを展開し、イグニスイレイザーを包み込む黒煙に向けてクリスがミサイルの照準を合わせていくが、その時、煙の中で何かが妖しく蠢いた。

 

 

『ッ!イチイバル!ま──!』

 

 

「喰らいやがれぇええええええええええッ!!」

 

 

 異変に気付いたクロスの制止の声が届くより前に、二基の大型ミサイルがクリスの背から発射されてしまう。猛スピードで二発のロケット弾が空を駆け、二人が瞬きをした次の瞬間には黒煙の中で沈黙するイグニスイレイザーに直撃し、新たな熱と煙と突風が纏めて二人の元に吹き付けられると思われたが、しかし……

 

 

 

 

 ッッッッッ!!!!!と、煙と音を一瞬で掻き消す程の速さで飛び出したイグニスイレイザーが二基の大型ミサイルの間を擦り抜け、大人の身長ほどもある巨腕を振りかざしながらクリスの目前に一瞬で肉薄した。

 

 

「なっ──」

 

 

『失せろ。目障りだっ』

 

 

 ドゴォォオオォォッッ!!!!と、横殴りに振るわれた巨腕の裏拳がクリスの全身を容赦なく叩き付けた。

 

 

 バキィッ!と、何かが割れたような不穏な音が耳に届くが、それが自分の骨が折れた音なのか、はたまた反射的に庇った両腕で相手の攻撃を受け止めた際にギアが破損した音なのかも検討も付かない。

 

 

 ただ殴り飛ばされた自分の身体が面白いほど簡単に宙を舞っている事だけは分かり、地面に勢いよく打ち付けられた身体がゴロゴロと何度も地面を転がっていき、勢いが徐々に弱って漸く止まったかと思えば、胸の内から込み上げてくる急な吐き気を抑え切れず、口から吐き出した塊が地面に撒き散らされ、赤く染め上げてしまう。

 

 

『イチイバルッ!!』

 

 

 悲痛な叫びと共にクロスが慌ててクリスの下へ飛び出す。しかし、イグニスイレイザーに向けて放たれた二基の大型ミサイルが何もない地面に落ちて着弾し、凄まじい爆発が背後からクロスを攫って吹き飛ばした。

 

 

 嵐のように吹き荒ぶ衝撃波が周辺の公園の木々を根元から引きちぎれそうなほど激しく揺らし、アスファルトの地面に無数の亀裂が走り、巨大な地割れを引き起こしていく。

 

 

 暗転する意識の中、クリスは僅かに力が入る両手で地面を這うように掴み、ギアを含めた全体重を掛けてどうにか衝撃波に攫われないよう必死に耐える。

 

 

 遅れてやってきた身体の激痛が響いて身を起こす事もままならない今それしか出来ないクリスのそんな姿を見つめ、イグニスイレイザーは嵐の中でも何事も無いように悠々と佇み、その右手に炎を灯した。

 

 

『しつこく邪魔立てするってんならこっちだって容赦はしねえぞ。フィクション如きが頭に乗ればどうなるか、その身をもって教えてやる……!』

 

 

「ぐっ……ごふっ、ぁ……っ……」

 

 

 物語の重要なキャラクターに危害を加えるリスクを重視して命までは取らないと決めていたが、こうも何度も水を刺されてはいい加減我慢も限界というモノ。そんなにも死に急いでるなら望み通りの死の恐怖を植え付けてやるべく、イグニスイレイザーの右手に宿る炎が更に激しく燃え盛り業火と化す。

 

 

 その熱は離れた場所に倒れるクリスの肌にも吹き付け、本能的な危険を感じ取り身体を起こそうとするも、体の芯が「動くな」と痛烈な刺激を全身に流し起き上がる事を拒否する。

 

 

(ク、ソッ……ちっくしょうっ……!こんな、寝てる場合じゃねえってのにっ……!起きろ、起きろ……!起きろよ!こんなとこで終われない……!あたしには、まだっ……!)

 

 

 早く動け、早く、早く、早く。

 

 

 必死に自分の身体に命じる。危機はすぐ其処まで迫ってる。だのに、身体が別の何かに支配されてしまってるかのように自由が利かない。

 

 

 早くしろ、早く、早く、早く!

 

 

 此処で立たねば本当に取り返しが付かなくなる、何も果たせぬまま終わる!

 

 

 ぼやけた視界のまま深く息を吸う。小指が僅かにピクリと引き攣った。その感触を頼りに震える手で先程よりも強く地面を掴む。

 

 

 熱が更に強まる気配がする。

 

 

 それに誘われるように地面を掴んだ手を支えに震える身体を無理矢理に起こし、明滅する視界が遅れて漸く戻った視線の先に、自分を遥かに上回る直径10メートルの炎の塊が目と鼻の先にまで迫っているのが見えた。

 

 

(…………くっそっ…………なんだ結局、あたしは…………何処までも中途半端なっ…………)

 

 

 死の予感が明確な確信に変わる。

 

 

 足は動かない。腕もこれ以上は動かせず、鉛のように重い。

 

 

 駄目だ、無理だ。今の自分にアレは避けられない。

 

 

 唯一の防御策のリフレクターを使う余力もまだ戻らない。このままでは死ぬ。間違いなく。

 

 

 呼吸が不規則に乱れる。無意識に噛み締めた唇から暖かく濡れた感触が伝う。

 

 

 力を持たないなりに己の役目を全うしようとして空回り、並のノイズイーターすらも倒せない身で無謀にも上級のイレイザーに挑んで、挙げ句に迎えるのがこんな無様極まりない結末なのか。

 

 

 瞼に熱い何かが込み上げて来るのは、目の前の敵に一矢報る事も叶わない悔しさからか、それとも無力な自分を恥じてのものか。

 

 

 そんな感傷ごと焼き尽くさんとばかりに押し寄せる炎の塊を前に、クリスはいよいよまともに直視出来ず俯く。

 

 

 ヘッドギアの通信機から一瞬、砂嵐に混じって自分の名を叫ぶ声が聞こえた気がした。果たしてそれは幻聴だったか否か、最期にそんなどうでもいい疑問を抱く自分に呆れて自嘲気味に笑い、目を瞑った。そして……

 

 

 

 

 

『Final Code x……clear!』

 

 

 

 

 

──無機質な電子音声と共にクリスの目の前に飛び出したクロスが全力の拳を振り抜き、彼女を飲み込もうとした炎の塊を真っ向から受け止めたのであった。

 

 

『ギ、ぐ、ァあっ……ぁぁあああああああああああああああああああああァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!』

 

 

「……な……」

 

 

 絶叫にも似た悲痛な咆哮と共に突き出す、橙色に輝く雷光を身に纏ったクロスの右拳が火の塊を防ぎ止める。その雄叫びを聞いて恐る恐る目を開き、炎の塊の前に立ち塞がるその姿を目にしたクリスが息を呑む気配をクロスも背中越しに感じ取るが、背後にいる彼女を省みる余裕がない。

 

 

 拳で受け止めた炎の塊の勢いが止まらず、押し返される。それでも地を深く抉るように両足で踏み込み、パワージャッキも稼働させて必死に持ち堪えようとするが、それでもまだ押し返される。やはり咄嗟に技を切ったせいで、炎の塊を押し返すだけの力の溜めが圧倒的に足りていないのだ。

 

 

 このままでは押し返し切れず、二人諸共火達磨になって灰になるしかない。

 

 

 どうする、どうすればせめて被害を最小に抑えられる?限界が間近にまで近付いている事を知らせるかのように、焦げ臭い匂いと共に黒い煙が噴き出す自身の右腕のナックルと正面の炎の塊を交互に見ながら必死に頭の中で思索を繰り返し、考えた末、クロスは炎の塊の中に自らの右腕を躊躇なく捩じ込んだ。

 

 

「ッ?!お、いっ……なに、をっ……?!」

 

 

 ジュウウウゥゥッ!!と、肉が焼ける不快な音がクリスの耳に届く。

 

 

 とても正気の沙汰とは思えないその行動を見てクリスも思わず身を乗り出すが、クロスは構わず凄まじい激痛が走る右腕を左手で抑えながら唇を強く噛み締めて耐え、EXCEED DRIVEの発動によって部分展開された全身の装甲の隙間から外へと放出される過剰エネルギーを外部へ逃がさぬように操り、炎の塊の中に挿し込んだままの右腕に一転集中で注ぎ込んでいく。

 

 

 莫大なエネルギーが集まるにつれ、炎の塊の高熱度で徐々に溶解されていくクロスの右腕が激しく発光していき、それに伴い炎の塊全体が内側から徐々に橙色に染め上げられて閃光を放つ。

 

 

──直後、限界値を超えたエネルギーの吸収に耐え切れずにオーバーロードを起こしたクロスの右腕のナックルが暴発し、溢れ出た膨大な量のエネルギーが炎の塊を内側から飲み込み、木っ端微塵に霧散させていったのだった。しかし……

 

 

『ぐっ──ァアアあああッッッ!!!』

 

 

 ビシャアアッ!と、右腕から飛び散った夥しい量の鮮血で地面を汚しながら、クロスは白煙が立ち上る右腕を抑えて膝を突き、そのまま崩れ落ちるように倒れ込んでしまった。

 

 

「お、おいっ……?!」

 

 

 倒れたクロスを見て、漸く身を起こせる程度にまで身体が回復したクリスが覚束無い足取りでクロスの下に慌てて駆け寄り、その身体に触れようと手を伸ばし掛け、彼の右腕を見てぎょっとなる。

 

 

 あの高熱度の炎の塊の中に捩じ込んだ事で皮膚が焼き爛れた重度の火傷、加えて右腕に纏っていたナックルを暴発させたせいで肉がズタズタに裂け、骨が微かに見えるほどの無数の傷口からとめどなく血液が溢れ出ている。

 

 

 これではまともに腕を振るう事が出来ない。素人の目から見ても一目でそれが分かり、鼻先を掠める人の肉が焼き焦げた悪臭と鉄錆の匂いにクリスの顔からも血の気が引いていく中、イグニスイレイザーはそんなクロスの姿を見て肩透かしを食らったかのように鼻を軽く鳴らした。

 

 

『阿呆が、大局を見誤ったな。そんなガキ、見捨てておけばまだ勝機を掴めた可能性もあっただろうによ。その甘さがテメェの限界だ、黒月蓮夜』

 

 

 ゆらりと掲げられたイグニスイレイザーの右手から紅の炎が再び灯り、直後に業火と化して右腕全体を包み込むように走り、覆い尽くしていく。闇を照らすその炎を目にしたクリスは咄嗟に倒れるクロスの前に出るが、まともに動かせない身体を無理に引きずり、唇の端から血を伝わせるその姿はイグニスイレイザーからして見ればあまりにか弱く、貧弱なモノにしか映らない。

 

 

『退いてろ。テメェにはムカ付かされたが、一番の邪魔者を消せるチャンスを作ってくれた点に関しては感謝してやってもいい。大人しくソイツを引き渡せば、お前だけでも見逃してやるよ』

 

 

「ふざけんなっ……!お前の指図に大人しく従うワケねえだろっ!」

 

 

『……これが本当に最後通告だ。とっとと其処を退けろ。さもなきゃ──』

 

 

「くどいっ!」

 

 

 何度言われようとも答えは変わらないと、クリスはその手に握り締めたクロスボウの銃口を突き付けるが、イグニスイレイザーは何も答えない。ただその身から漂う空気が静かに一変し、確かな殺気を孕んで周囲一帯の空間を支配するように徐々に大きく膨れ上がり、とてつもない威圧感となってクリスの身にのしかかっていく。

 

 

『警告はした。それでも引かねぇってんなら容赦はナシだ……諸共に灰に還れ……!!』

 

 

「くっ……!!」

 

 

 掌を上に右腕を頭上に掲げ、その手から放出した炎が先程よりも巨大な炎の塊を形作り、風船のように更に大きく膨れ上がっていく。

 

 

 ギアの防護フィールドで保護されてる筈の肌にジリジリと焼けるような痛みが吹き付けるのを感じながら、クリスは腕を十字に組んで部分展開したアーマーからエネルギーリフレクターを散布して障壁を張ろうと試みるも、イグニスイレイザーは構わず巨大な炎の塊を掲げたまま大きく腕を振りかぶり、二人に投げ放とうとした、その時……

 

 

―……アスカ。アスカ、聞こえてるかい?―

 

 

『……ッ!クレン……?』

 

 

 炎の塊を投げ放つ寸前、不意に頭の中にクレンからの念話が届いた。突然の横槍にイグニスイレイザーも思わず動きを止めて怪訝な反応を示し、炎の塊を掲げたままクレンの念話に応えていく。

 

 

『(急に何の用だ?こっちは今立て込んでて……つかお前、さっき別の仕事があるとかで別れたばっかだろ?何でまた連絡なんか……)』

 

 

―その僕が出張らなきゃいけないぐらいのっぴきならない状況って事だよ。それより、今は急いで例のイレイザーの彼を回収して戻ってきて欲しい。一刻も早く、だ―

 

 

『(はあ?いきなり何言ってんだ、こっちも立て込んでるって言っただろ!今漸くあの野郎の息の根を止められそうなんだ……!この機会を逃す訳には行かねぇ!)』

 

 

 クレンの指示を振り払い、何がなんでも此処でクロスを仕留めるという意志を曲げようとしないイグニスイレイザー。その頑なっぷりにクレンも溜め息を吐くと、一拍置いて真剣味を帯びた口調となり、

 

 

―……"覚醒"したんだよ、彼が。ノイズ喰らいのイレイザーの中で初めて、他とは違って暴走を乗り越えてね―

 

 

『……なっ……』

 

 

──シープイレイザーが覚醒した。クレンの口からそう聞かされ、驚きのあまり息を拒んだイグニスイレイザーの手から炎の塊が消滅していく。

 

 

『まさかっ、マジかよ……!アイツが初めての成功体になったってのか?!』

 

 

―そういうこと。ただ状況はあんまり宜しくなくてね。彼は戦い慣れしていないようで押され気味だ。このままじゃせっかくの成功体一号が装者達に倒され兼ねない。だから近くにいる君に彼の回収を頼みたいって訳さ。もしクロスに拘るあまり彼を失って貴重なデータの一つも取れなかったとなれば、デュレンも今度ばかりは小言一つで済ませてはくれないかもだし……ね?―

 

 

『……チッ……!』

 

 

「……何だアイツ……急にどうしたんだ……?」

 

 

 撃てばそれだけで終わっていた筈の攻撃を中断し、一人で何もない空に向かって喋っているようにしか見えないイグニスイレイザーを見て困惑を露わにするクリスだが、イグニスイレイザーはそんなクリスを一瞥しながら舌打ちし、掌を上に突き出した左手から半透明の本を取り出していく。

 

 

『予定変更だ。テメェ等の始末は後で付けてやる……邪魔の入らない、此処とは違う所でな』

 

 

「……何?」

 

 

 クリスが訝しげに眉を顰める。だがイグニスイレイザーは何も答えぬまま半透明の本を開き、パラパラと独りでに頁が開かれる本から無数のデータ状の光の文字が浮き出てクリスとクロスの下へ飛来し、二人を囲むように周囲をグルグルと回り始めていく。

 

 

「な、何だ?!くっ……!」

 

 

 周りを囲む光の文字に向けてすぐさま銃撃するも、銃弾は光の文字をすり抜けて直撃せず、手応えすらない。その間にも無数の光の文字は徐々に回転の速度を速めながら黄金色に発光し始めていき、眩い光が二人の姿を掻き消していく。そして、

 

 

「ぐ、ぁっ……!身体がっ、吸い、こまれっ……?!なんだよコレっ……!!う、うぁああああああああああああああああああッッ!!!?」

 

 

 誤って直視すれば肉眼が焼かれ兼ねないほど眩い光に包まれたクリスの叫び声が木霊し、直後、一際大きく光が発光したと同時にクリスとクロスの姿が一瞬で何処かへと消え去ってしまった。そして無数の光の文字は独りでに半透明の本の頁へと戻っていき、最後の一文字を収めたのを確認したイグニスイレイザーは雑っ気に本を閉じる。

 

 

『束の間の異世界旅行を楽しみな。次に会った時こそ、テメェの本当の最後だ……黒月蓮夜』

 

 

 吐き捨てるように呟き、イグニスイレイザーは街の方を見遣る。未だ戦闘は続いているのか、街の方から僅かながら爆発の光が見える。その光を頼りに方角を定め、イグニスイレイザーは全身から紅の炎を放出して身体能力を向上させ、地面に炎を撒き散らしながら並外れた跳躍力で街の方へと飛び出していったのだった。

 

 

 

 

 


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