戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第六章/五等分のDestiny×紅弾の二重奏(デュエット)⑥(中)

 

 

「──ぜぇっ、ぜぇっ……!クッソッ……!街まであとどんくらい掛かるんだっ!森を抜けるより先にこっちの体力が持たねぇぞっ!?」

 

 

「仮にも男子なら弱音なんて吐かないで下さいっ!私だって二乃と四葉を抱えながらなんて相当キツいんですからっ!」

 

 

 クロスとクリスがイグニスイレイザー達を足止めしている隙に、攫われた中野四姉妹を救出して廃工場から何とか無事に脱出を果たした風太郎と五月。

 

 

 街を目指して森を抜けようと全力疾走しながら両肩に抱く一花と三玖を纏めて抱え直しながら思わず愚痴をこぼす風太郎を咎めつつも、二乃と四葉を抱える(というより半ば引きずっている形になってしまってる)五月の表情にも余裕がなく、額から絶え間なく汗が流れ出て疲労が滲み出ている。

 

 

 そんな彼女の様子を横目に風太郎も背後からイグニスイレイザー達が追って来ていないのを確かめると、五月の顔をもう一度見て苦笑いを浮かべた。

 

 

「しっかしっ、まさかお前らに散々振り回されてきた変装グッズがこんな形で役立つ日が来るだなんてな……!お前からの発案を聞いた時は正直感心したぜ……!」

 

 

「っ、雪音さんに制服をお貸しした時の事を思い出して、何となく思い付いたんです……!私と彼女なら背格好も近いし、上手くやれればもしかすると相手の裏をかけるんじゃないかと!」

 

 

 それはそれとしてこんな騙し討ちみたいなのは正直気も引けましたけれど!と、彼女持ち前の生真面目さ故の葛藤をこんな時になっても口にする五月の相変わらずさにまるで実家のような安心感を覚え、風太郎も苦笑いを深めながら此処に至る前の蓮夜達との作戦会議をふと思い返す。

 

 

 

 

 

-中野の提案を元に作戦を組んで、俺と、中野に変装したクリスが正面から奴らの根城に正面から突入する。二人が潜入するまで出来るだけ奴らの注目を集めるようにこちらも努力するつもりだが、もし仮に作戦が失敗した時には、俺たち二人で全力で暴れ回って奴らを引き付ける。その騒ぎに乗じて風太郎達は人質を救い出した後に脱出し、街まで全力で逃げてくれ―

 

 

―ふ、二人だけでって……それだとお二人も危険なんじゃ……―

 

 

―心配すんな。ノイズとは違うが、こっちも化け物退治の専門家だ。ちょっとやそっとでやられるようなタマなんてしてねぇよ―

 

 

―……正直、奴らに狙われているお前達を敵地に同行させる事に大手を振って賛同は出来ないが、戦力が少ない今の俺達だけじゃ奴らと戦いながら人質を救い出せる可能性が限りなく低いのもまた事実だ……だから……―

 

 

―それ以上言わなくたっていい。……俺達だって、アイツ等が攫われた時には何も出来なくて、今もお前達の力を頼りにするしかない自分達にいい加減嫌気がさしてたんだ……その挽回が出来るってんなら、願ったり叶ったりってなもんだ―

 

 

―上杉君……―

 

 

―……ありがとう……なら俺達も、全力でお前達を守ってみせる。必ずだ―

 

 

 

 

 

(──最初の頃は怪しさ満載で、とてもじゃないが信用出来ないって思っちゃいたが……とことん律儀な奴だよ、アイツ……!)

 

 

 夕暮れの商店街でのやり取りや、たまに飛び出すズレた発言、トラブルを起こしてはあたふたしていた今までの蓮夜の姿を思い出し、風太郎の顔に自然と笑みが浮かぶ。

 

 

 一花達が行方不明になってから余裕がなくなっていた自分の心を此処まで解きほぐしてくれたのは、偏に一花達を救う為、自分達の力になりたいと二つ返事で受け入れたアイツの底抜けたお人好しっぷりのおかげだ。

 

 

 ならば自分もそれに応えるしかない。あの二人が安心してイレイザー達と戦えるように安全な場所まで急ぐ風太郎は、視界の端に映った木々が拓けた場所を見付けて五月に呼び掛ける。

 

 

「こっちだ五月!こっからなら障害物も無しに先へ進める!」

 

 

「わ、わかりましたっ……!」

 

 

 此処まで森の木々を避けながら悪路の斜面を下って先へ進んでた為に走りにくく、無駄に体力も浪費して限界が近かったが、拓けた場所へ出られれば少しはマシになれるかもしれない。

 

 

 そんな希望を胸に五月も二乃と四葉を抱え直して気合を入れ直し、先へ進もうとするが、何故か先行する風太郎が急に立ち止まり彼の背中に思いっきり頭をぶつけてしまった。

 

 

「あいったぁっ……!きゅ、急に何なんですか上杉君?!」

 

 

「…………嘘だろ、おいっ」

 

 

「……へ?」

 

 

 頭をぶつけて思わず怒鳴る五月だが、風太郎はそんな彼女の声が聞こえていないのか何故か真正面を向いたままその顔は悲痛に歪み、何やら予想外の事態を前に動揺する風太郎の視線の先を五月も目で追うと、彼女の顔も風太郎と同様に動揺と恐怖で歪んでしまう。何故なら……

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

『──オラァアアッ!どーしたァッ!さっきまでの威勢の良さはどこ行ったんだよぉっ?!』

 

 

『っ、ぐうっ……!!』

 

 

 場所は戻り、廃工場ではクロスがイグニスイレイザーの圧倒的なパワーに押されてしまい、凄まじい剛腕による一撃をどうにか左腕のドリルで相殺しようとするも力負けして吹き飛んでしまっていた。

 

 

 そのまま壁を勢いよく突き破りながら工場の外へと追いやられながらも、咄嗟に大地に突き立てたドリルと両足で地面を削りながら何とか踏み留まるクロスに、壁の穴の向こうから飛び出したイグニスイレイザーが拳を振りかざしながら飛び掛かり再び近接戦となるも、負傷した右腕をカバーしながらの戦いはやはり相当にキツいのか完全に劣勢に陥って苦戦を強いられてしまう。更に……

 

 

―ダンダンダンダンダンッ!!―

 

 

『──ハッ、どうした銃使いの装者ぁ!さっきから代わり映えしない戦い方ばかり、遂にネタ切れにでもなったってかっ?!』

 

 

「っ……んな訳ねぇーだろってっ!!」

 

 

 同じく戦いの流れから工場の外へと場所を移し、嘲笑するシャークイレイザーの気に入らない顔面に向けて強気な口調と共に問答無用で二丁拳銃を素早く連続で発砲するクリス。

 

 

 しかしそもそもクロスから受け取らなければならない『記号』を持たないクリスではイレイザーには傷一つ付けられず、シャークイレイザーは自身の肉体を貫通せず無常にも地面にバラけ落ちていく銃弾を見下ろし非情に嘲嗤ってみせた。

 

 

『はっはははははははっ!結局お前一人じゃ何も出来ないんだよっ!俺達に太刀打ちする術も無い、そんな無様を晒すしか出来ない癖によくも此処まで来られたもんだぁっ!』

 

 

「……そいつはどうだろうな?」

 

 

『……は?』

 

 

『『グルァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』』

 

 

 劣勢に立たされている筈なのに、額から汗を伝らせながらも何故か笑みを絶やさず挑発的な発言をするクリスにシャークイレイザーが訝しげな反応を浮かべる中、廃工場の中から無数のダスト達が飛び出してクリスへ再び襲い掛かった。

 

 

 しかしクリスも迫り来る無数のダスト達を前に慌てず、冷静且つ的確な動きで両手の二丁拳銃を乱れ打ち、ダスト達の頭や足を次々と撃ち抜いて動きを鈍らせていくが、やはりイレイザーと同じ性質を持つダスト達も撃ち抜かれた箇所から徐々に再生し絶え間なくクリスへと襲い掛かり、そんなクリスの奮闘にシャークイレイザーも馬鹿にするように笑いながら両腕から生えた刃にエネルギーを溜めていく。

 

 

『幾ら強がろうが結局は同じだ……!お前みたいな力のない奴が、俺に敵う訳がないだろォッ!!』

 

 

 右腕、左腕と続けざまに振るわれたシャークイレイザーの両腕の刃から水色の巨大な斬撃波が放たれ、クリスに襲い掛かる。

 

 

 しかし、それを目にしたクリスは瞬時にダストの一体の頭の上に手を乗せながらそのまま踏み台にするように軽々と飛び越えて背後へと回り込み、ダストを盾にしてシャークイレイザーの放った斬撃波を凌ぎ、ダストを爆散させたのであった。

 

 

『ウガァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?』

 

 

『ッ?!な、何っ?!』

 

 

「ハッ……!あたし自身にお前等を倒す力がなくたってやりようは幾らでもあんだよ!此処まで潜ってきた修羅場の違い、嘗めんな!」

 

 

『ッ……!貴ッ様ァああっ!!』

 

 

 まるで先程の意趣返しのように鼻で笑って馬鹿にするクリスの言葉に簡単に激昴し、両腕から生えた刃を振り翳しながら馬鹿正直に正面から迫るシャークイレイザーを見てクリスはほくそ笑む。

 

 

 クロスからの『記号』がなければイレイザーやダストを傷付けられない事は、今までの戦いで散々思い知った。しかしだからと言って戦いようがない訳ではない。

 

 

 イレイザーとダストは同じ性質を持つ者同士。であれば、もし仮に互いの攻撃で傷付け合わせればダメージも通るのではないだろうか。

 

 

 実践も実例もなかった為にその方法を思い付いても実戦で試す他なかったのだが、予想通りイレイザーの攻撃でダストは傷付き倒す事が出来た。

 

 

 それが分かりさえすれば、後は同士討ちを狙った立ち回りで敵を翻弄してやればいいだけの話だと、クリスはシャークイレイザーの斬撃に近接銃撃で応戦しながら、敵の攻撃が繰り出される度に近くのダスト達を盾代わりにする事で防ぎつつ反撃し、それを繰り返し続ける事で少しずつながらもダストの数を徐々に減らし始めていた。

 

 

『……ッ!アイツ、完全に向こうのペースに呑まれてるじゃねーか……!』

 

 

『……どうやらまた人選に恵まれなかったようだな。前回の響に関する記憶の改竄の時といい、お前は人を従えるに足る器ではないんじゃないのか?』

 

 

『……言ってくれるじゃねぇかよ』

 

 

 それに関しては本人も自覚している部分があるのか、イグニスイレイザーはクロスの煽りにしか聞こえない台詞に憤るどころか冷静にそう返し、無言のままクロスのドリルで傷付けられた右肩の傷を片手で軽く払った。

 

 

『しかし、テメェも難儀な性格をしてるもんだ。記憶を失って知らねぇ世界に一人放り出されて、自分の事もなんにも分かっちゃいねぇ癖にまた他所の世界に跳ばされてまでテメェの事は後回しに、他人の為に身を削って戦う……そーゆー所も、何一つ変わってなくて鼻につくぜ』

 

 

『嫌味のつもりなのかどうかは知らないが、其処まで不快感を感じはしないから褒め言葉として受け取っておこう。……それにしても、随分と余裕を残してるじゃないか。囚われてた人質に逃げられ、今もこうして俺達の足止めを食らってる。そちらに残された時間を考えれば、もう少し焦りを見せても可笑しくはないんじゃないのか?』

 

 

 適当な会話で時間を稼ぎつつ、イグニスイレイザーと一定の距離を保ちながら四肢の調子を確かめる。

 

 

 右腕は未だに重度の怪我により不調。

 

 

 両足はパワージャッキでキック力と共に耐久力を補強し、先程からイグニスイレイザーの拳と打ち合ってる左腕もドリル型のナックルを纏っている事で多少の痺れはありつつも、戦闘続行に支障はない。

 

 

 これならまだ、風太郎と五月が人質を連れて街まで逃げ切る時間を稼げる。

 

 

 それまでは何としてでもコイツ等を此処で足止めしてみせると、改めてそう気を引き締め直すと共にイグニスイレイザーと対峙しながらドリルナックルを纏う左腕を構え直すクロスだが、そんなクロスとは対照的に、イグニスイレイザーの方は何故だかまだ何処か余裕のある佇まいでヤレヤレと首を軽く横に振った。

 

 

『確かに、テメェらが替え玉を使ってこっちの裏をかいてくるなんて予想出来なかった。それに関しちゃ、まぁ、こっち側の想像力が足りてなかったってのはあるかもな』

 

 

『…………?』

 

 

 そんなイグニスイレイザーの反応に、クロスは仮面の下で怪訝に眉をしかめる。

 

 

……妙だ。最初の騙し討ちの際にはあからさまに動揺していた筈なのに、風太郎と五月が人質を連れて森へ逃げてから焦る所か今では泰然とした様子を浮かべている。

 

 

 今のあちら側が立たされている状況に似つかわしくない、予想に反するその反応にクロスも内心言い知れぬ違和感を抱く中、其処へクリスが盾にしたダストの爆発の巻き添えを喰らって吹っ飛ばされたシャークイレイザーが地面を転がり、イグニスイレイザーの下へと倒れ込んだ。

 

 

『ガァアアアアアッ!!ぐっ、クッソッ……!あのガキィッ!』

 

 

『テメーもテメーで何遍同じ手食らわされてんだよ。いい加減学習したらどーなんだ』

 

 

 もちっと冷静になれよと、頭に血が上るシャークイレイザーをイグニスイレイザーが宥める。その姿を見て尚更訝しげに目を細めるクロスの隣に、二体のイレイザーに二丁拳銃を突き付けながらクリスが並び立った。

 

 

「こっちの雑魚共はそれなりに片付いた!思ってたほど大した数でもなかったし、案外やれない事もなかったな」

 

 

『………………』

 

 

「……?どうした?」

 

 

 ダストを倒せる攻略法を掴んでから余裕を取り戻したクリスとは対照に、クロスは何処か重い空気を漂わせながら顔を俯かせている。

 

 

 そんなクロスの様子にクリスも異変を察して小首を傾げると、クロスは無言のまま顔を上げてイグニスイレイザーを見据え、猜疑心を露わに告げる。

 

 

『お前……一体何を隠してる……?』

 

 

「……は……?」

 

 

 クロスの不意の発言に、彼の隣に立つクリスが思わず呆気に取られた声を上げる。しかしその問いを受けた当の本人であるイグニスイレイザーは、わざとらしく首を傾げた。

 

 

『急に何の話だよ?』

 

 

『惚けるな。お前とは既に何度も戦って、お前自身の人となりもそれなりに理解して来てるつもりだ。……今のお前が今までのお前らしからぬと、多少の違和感に気付ける程度にはな』

 

 

『…………』

 

 

『よくよく考えればこの状況も可笑しなモノだ……風太郎達にまんまと逃げられたにも関わらず、其処にいるイレイザーどころかダストの一匹すらも追っ手として差し向けようとしない……あの二人に、何をする気だっ』

 

 

 微かな焦り、怒気を込めて問い詰めるクロス。そんなクロスの様子からクリスも何かを察して思わずイグニスイレイザーを見れば、イグニスイレイザーは暫しの無言の後、深々と溜め息を吐き出しながら己の身体を指をなぞった。

 

 

『前にもチョロっと話した筈だよなぁ?俺たち上級イレイザーは、際限なく屑共のダスト達を生み出せる。文字通り、この身から幾らでもだ。んで、お前らがわざわざこっちの要求を呑むにしろ、ただで素直に応える訳がねぇだろうってのは大体予想が付いてたし、まんまと人質に逃げられちまうかもしんねぇなーって最悪の事態も予想はしててな……だからまぁ、此処まで話せばちったぁ察せるもんもあるんじゃねーのか?』

 

 

『?…………っ?!まさかっ!』

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

「──う、上杉君っ……!」

 

 

「くっ……!!」

 

 

 大木を背に、救い出した四人を纏めて抱き締めて泣きそうな顔と声音の五月に呼び掛けられ、震える足を堪えてその辺で適当に拾った木刀程の大きさの木の棒を竹刀のように構え、彼女達を守るように立ち塞がる風太郎は僅かな恐怖が滲んだ瞳で目の前の光景を睨み付ける。其処には……

 

 

 

 

 

『──ァァァァアアアアアアアアアアアアッッ……!!!!』

 

 

『ォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ……!!!!』

 

 

『コォアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ……!!!!』

 

 

 

 

 

──障害物も何も無い、拓けた場所にて風太郎達が近道として此処を通ると先読みしていたかのように待ち構えていた無数のダスト達が、まるでゾンビのような呻き声と鈍重な動きで彼らに迫る絶望的な光景が広がっていた。

 

 

 その総数はざっと数えただけでも、軽く"100"を超えているように見えた。

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

「───それじゃあ、初めからこっちは囮で……本命はあたし等から引き離した後だったって事かよっ?!」

 

 

 クロスとイグニスイレイザーのやり取りから敵側の本命の策を今になって漸く理解し、クリスが焦りを露わに悲痛な面持ちでクロスの顔を見上げるが、彼女と同様に敵の真の狙いを早くに気付く事が出来なかったクロスは何も言い返せずただ無言で顔を俯かせる事しか出来ない中、イグニスイレイザーはそんな二人(特にクリスの)を取り乱しように悦に浸ったような笑みを浮かべた。

 

 

『お前らが来る前に森中に屑を相当ばら蒔いて、既に逃げ場は何処にもねぇ筈だ。後は屑共が奴らを始末し、物語を改竄してから俺らのホームグラウンドになったこの物語の中でテメェ等を完全に始末してやる……それまでの間は、俺達が適当に遊んでやるよォッ!!』

 

 

『クッ……!!』

 

 

 抜かったと、クロスは再び襲い掛かる二体のイレイザーの攻撃をクリスと共に迎撃して捌きながら思わず舌打ちしてしまう。

 

 

 連中を足止めしていたと思いきや、逆に最初の演技に騙されてこちらが足止めされていた。

 

 

 このままでは風太郎達の身が危ない。焦燥感に駆られながらも必死に思考を駆け巡らませ、何が一番この状況で最善な方法かを必死に考えた末、クロスはイグニスイレイザーを蹴り飛ばしながらクリスに切羽詰まった声で呼び掛けた。

 

 

『クリスっ!!俺が何とかコイツ等をこの場で足止めするっ!!お前はその隙に風太郎達の助けに向かってくれっ!!』

 

 

「ッ?!けど、それだとお前が……!」

 

 

『今風太郎達を助けられるのは俺達しかいないっ!!何より此処で彼等が殺されてこの物語が改竄されれば、本当に俺達の勝ち筋がなくなってしまうっ!!迷ってる時間はないんだっ、頼むっ!!』

 

 

「っ、けどよっ……!!」

 

 

『そう簡単にいくと思ってんのか?おいっ!』

 

 

 今のクロスが怪我のせいで不調であるのを誰よりも理解しているが為に、彼を一人置き去りにする事に躊躇してしまうクリスだが、そんな二人のやり取りを黙って聞いていたイグニスイレイザーが大声でシャークイレイザーに呼び掛ける。

 

 

 次の瞬間、その一声だけで彼が言わんとしている事を察したシャークイレイザーはクロスからの頼みに戸惑って動きが鈍るクリスを両足で蹴り飛ばしながらその勢いで後方へと跳んでクルリと宙で回転し、そのまま地面の中へと吸い込まれるように沈んで姿を消してしまった。

 

 

「ッ?!消えやがった?!何処に……!」

 

 

『屑共だけに任せても、何があるか分かったもんじゃねぇからなぁ。……念には念を、ってヤツだ』

 

 

『風太郎達のところかっ……!!クリスッ!!』

 

 

「〜〜〜〜ッ……!!!!」

 

 

 緊迫したクロスの声に、クリスも迷う素振りを見せる。しかしそれも一瞬で振り払い、二人に背を向けて森の中へ一気に駆け出した。

 

 

「お前も身の危険を感じたらすぐに逃げろよッ?!絶対に無茶すんなッ!!」

 

 

『オイオイ……んな簡単に行かせる訳ねぇだろうがァああッ!!』

 

 

『Final Code x……clear!』

 

 

『それはこちらの台詞だァッ!!』

 

 

 背中を向けて走り出すクリスを行かせまいとして、業火をその身に纏い、信じられない速さで飛び出したイグニスイレイザーがクリスの背中に巨大な右腕を伸ばすが、EXCEED DRIVEを発動したクロスが超強化された速さで追い付くと共に横からその巨腕を蹴り上げて阻止する。

 

 

 そしてそのまま後方へと一度下がったイグニスイレイザーは全身から噴き出す炎の勢いを更に増しながら紅の閃光と化して動き出し、クロスも部分展開された装甲の隙間から橙色の輝きを放ちながら凄まじい速さで駆け出して橙色の閃光と化し、二つの閃光は耳を劈くような炸裂音と衝撃波を何度も発生させながら宙を舞い、常人の目では捉え切れない程のスピードで何度も激しくぶつかり合っていくのだった。

 

 

 

 

 


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