戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第七章/離Yy式・解答不能×切り離されたaヵ吊奇のウタ⑥(後)

 

―S.O.N.G.本部―

 

 

「──状況は?!一体どうなっている?!」

 

 

 同時刻。調神社付近の市街地にて起きた突然の異変はS.O.N.G.もいち早く察知し、絶え間なく鳴り響くアラーム音と共に本部内も騒然と化していた。

 

 

 状況の報告を求める弦十郎にオペレーターの友里と藤尭も手馴れた速さでパネルを操作し、迅速に状況を纏めて簡潔に報告していく。

 

 

「現在、D地区にて位相差障壁反応を多数検知!ノイズです!」

 

 

「更にノイズ反応と共に、イレイザーと類似した反応も多数確認……!ダストの大群も破壊活動を行っている模様です!」

 

 

「ノイズとダストで混成された軍勢か……!上級イレイザーとノイズイーターの反応は?!」

 

 

「レーダーの感度を最大に範囲を広げつつ探っていますが、今の所感知出来ていません……!」

 

 

「前回と同様、何処かに姿をくらましているのか……ともかく今は現場に一般市民の避難を優先させろ!調神社にいる二課装者達への連絡は?!」

 

 

「既に位置情報を送信した後、現場へ急行しています!」

 

 

「ならばこちらは引き続き、上級イレイザーとノイズイーターの捜索を続けろ!このタイミングで仕掛けてきた奴らの狙いが読めない以上、奴らの足影を掴むまで気を緩めるな!」

 

 

「「了解!」」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―市街地・D地区―

 

 

『ヴェエェアアアアアアッ!!』

 

 

「な、何だこのバケモンっ?!う、うわぁああああっ?!」

 

 

 ノイズとダストの大群が突如出現したD地区。街のあちこちから火の手が上がり、爆発音と人々の悲鳴が絶え間なく響き渡るその光景は正に阿鼻叫喚と呼ぶ他ない惨状に陥っていた。

 

 

 突然の混乱に巻き込まれた住民達も何が起きているのか事態が飲み込めぬままとにかく火の手から逃れるように建物の外に出て逃げ惑う中、夜闇の向こうから不意に飛び出したダストの群れに襲われていき、乱雑に地面に殴り付けられてそのまま馬乗りに首を締められ、呼吸もままならず窒息し掛けた、その時……

 

 

「──だぁありゃああっ!!」

 

 

『……ヴァ?―ドグォオオオオッ!―グォオオオオッ?!』

 

 

「ッ!ァッ……ゲホッ、ゲホッ!ゲホッ!っ……な、なん、だ……?」

 

 

 横合いから不意に飛び出してきた何者かの鋭い膝蹴りが住民の上に跨るダストの頭に炸裂し、ダストをそのまま横殴りに吹っ飛ばして木っ端微塵に爆散させたのである。

 

 

 いきなりの展開にダストに襲われていた住民も何事かとおっかなびっくりした様子で目の前に視線を戻すと、其処にはギアを身に纏って現場に駆け付けた響の後ろ姿があった。

 

 

「間に合った……!大丈夫ですか?!」

 

 

「ぇ、あ……あんたは……?」

 

 

『『ルゥウガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!』』

 

 

 振り返る響の格好を見て呆気に取られた表情で戸惑う住民の反応も他所に、他のダスト達が新たに現れた脅威対象の響に目掛けて次々に迫り襲い掛かる。

 

 

 しかし、響の背後から無数の銃弾が飛来してダスト達の頭を正確無比に次々撃ち貫いて撃破していき、突然の発砲音に近くで尻もちを着いていた住民も「ひいい?!」と驚きながら情けない格好で足をもつれさせて逃げ出す中、響の元に同じくギアを纏ったクリスが両手のリボルバーの弾をリロードしながら駆け寄っていく。

 

 

「クリスちゃん!」

 

 

「先行し過ぎだ、バカ!例の上級イレイザーが何処にいるかもまだ分かってねぇんだ、単独で突っ込むのは控えろ!」

 

 

「ご、ごめんっ。でも今は一人でも早く助け出さないと……!」

 

 

『『──ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!』』

 

 

 一人で先走り過ぎた事を軽く頭を下げながら謝罪する響だが、そんな二人のやり取りを遮るように奇声を発しながら新たに闇の向こうから大量のダストに加え、建物の上からノイズの大群が一斉に落下して二人へと襲い掛かっていく。

 

 

「クソッ、またぞろ雁首揃えやがって……!ともかく雑魚共はあたしが片付ける!お前はその間に逃げ遅れた民間人を見付けて安全なとこまで避難させろ!」

 

 

「っ!分かった!」

 

 

 今はとにかく民間人の救出と敵勢力の迅速な撃退が優先だ。

 

 

 手短に作戦方針を伝えると共に、クリスは両手のリボルバーを発砲して襲い来るダストとノイズを次々に撃ち貫いていき、響はクリスが拓いた道筋を一息で駆け抜けて右拳を振り上げながら異形の群れの中へ勇ましく突貫していくのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

―ズガガガガガガガガガァッ!!―

 

 

「はァああああああッ!!」

 

 

 同じ頃、D地区南西エリアでは響達と二手に別れ、ダストとノイズの軍勢を相手に奮闘するクロスと切歌の姿があった。

 

 

 クロスは初手からタイプイチイバルに姿を変えて胸部のアーマーを左右に開き、胸に内蔵されたガトリング砲を乱射しながら更に両手に構える大型ビームガトリング砲でダストとノイズの群れを横薙ぎに一掃していき、切歌はクロスが撃ち漏らした残敵をイガリマの刃を大振りに振るって纏めて薙ぎ払い、ノイズ達は撃破、ダスト達は後方へと派手に吹っ飛ばしていく。

 

 

 しかし、吹き飛ばされた敵勢と入れ替わるように後方から更にダストとノイズが大量に押し寄せ、切歌はノイズを数体纏めて切り裂きながらその光景を前に堪らず叫んでしまう。

 

 

「ぬぁああああっ!しつこいっ!ほんっとにキリがないデスよコイツ等ぁ!」

 

 

『大元のイレイザー達を何とかしない限り、どうにもならないかっ……司令部!上級イレイザーと例のノイズ喰らいの居場所はまだ掴めないか?!』

 

 

『現在捜索中です!ただ広範囲にレーダーを広げても、僅かな反応すら探知出来ず……!』

 

 

『(……奴らの居所が分からなければこちらから追跡する事は出来ない……せめてあの上級イレイザーの気配だけでも追えれば……)』

 

 

 しかしそれでも奴の事だ。こちらが自分達の気配を探れる事を分かっている筈だし、未だにダスト以外の気配を感じ取れない所からして、カメレオンイレイザーは例の透過能力で、クレンはイレイザーの気配が薄れる人間態のまま何処かに身を潜めこの惨状を静観しているに違いない。

 

 

『(奴があのアスカと違って完全に裏で手を引くタイプなら、そう簡単に自分達から姿を曝すような真似はしないハズ……。そうなると、奴らが出張ってくるタイミングは恐らく──)』

 

 

「──蓮夜さんっ!上デスっ!」

 

 

『!』

 

 

 思考を駆け巡らせながら襲い来るダスト達を大型ビームガトリング砲で掃討するクロスの頭上から、数体のノイズが一斉に不意を突いて飛び掛かった。

 

 

 切歌の声で我に返ったクロスはそれに気付くと共に、すぐさま腰部のリアアーマーを噴射しながら前方へと軽やかにバク転し、ノイズ達の不意打ちを避けながら瞬時にビームピストルに切り替えた二丁銃でノイズ達の急所を正確に狙い撃ち、霧散して消え去るノイズ達を確認して切歌の方に振り向き軽く頷いた。

 

 

『すまない、考えに集中し過ぎてたようだ。助かった』

 

 

「それは大丈夫デスけど、でもやっぱり二人だけじゃ相当キツいデスよこの状況……!やっぱり、神社に残ってる調にも救援に来てもらった方が──!」

 

 

『……いや。奴らの狙いが仮に俺の予想通りなら、宮司さんの傍に調は付き添わせておくべきだ』

 

 

「……?それはどういう……?」

 

 

『ガァアアアアアアアアッ!!』

 

 

 顔を俯かせて意味深な発言を漏らすクロスに怪訝な顔で小首を傾げる切歌だが、そんな彼女の背後からダストが両腕を伸ばして襲い掛かる。

 

 

 しかし即座に反応して放ったクロスの銃撃が切歌の顔の横を通り抜けてダストの頭部を撃ち抜き、クロスのいきなりの発砲に驚いた切歌も背後で倒れるダストの方に慌てて振り返る中、火の海に包まれる街の奥から更に無数のダストとノイズが押し寄せて来ていた。

 

 

『とにかく、今は民間人の救助と避難が先決だ。奴らの進行を此処で食い止めるぞ……!』

 

 

「ぇ、あ、りょ、了解デス!」

 

 

 先程のクロスの言葉の意図は気にはなるが、今は彼の言う通り一刻も早くダストとノイズを殲滅せねばならない。

 

 

 両手の銃をボウガンに切り替えながら先陣切ってダスト達へと突っ込んでいくクロスの後に続きながら疑問の解消は後回しだと思考を切り替え、切歌はノイズの群れへと勢いよく飛び掛かりながら大鎌を大きく振りかぶっていった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―調神社―

 

 

 その一方、宮司の護衛の為に神社でと待機を命じられた調は社の外に出て、遠くに見える燃え盛る街の光景を見て複雑な表情を浮かべていた。

 

 

(切ちゃん……蓮夜さん……みんな……っ……やっぱり、私もっ……)

 

 

 遠くから今も聞こえてくる爆発音、街の人達が襲われる悲鳴が離れたこの場所にまで微かに届く。

 

 

 皆が今も街を守る為に必死に戦っているというのに、自分だけが此処に残って何も出来ていない事がいたたまれず、調は首から下げたシュルシャガナのギアのペンダントを握り締めて迷う素振りを見せた後、やはり自分も民間人の救援に向かうべきだと考えて神社から飛び出そうとするが……

 

 

「──調……!いけません!」

 

 

「……っ?!宮司、さん……?」

 

 

 パシッ!と、後ろから不意に手を引かれて驚きと共に振り返ると、其処には家の中に残してきた筈の宮司がいつの間にか駆け付け、額に汗を滲ませながら調の手を掴んで引き止める姿があった。

 

 

「姿が見えないから焦って探し回りましたが、こんな所にいたとはっ……。今は外は危険です。黒月さん達も仰っていた通り、今は下手に動かず家の中へ……」

 

 

「それは……分かってる、けど……でもっ、危険な目に遭っているのは皆も同じなんです……!街の人達も、切ちゃん達も!なのに、戦う力があるのに何もせずにいるなんて、私には……!」

 

 

「……調……」

 

 

 胸のペンダントを握り締めたまま、何かを訴え掛けるように叫ぶ調の必死な様子を見て一瞬驚きから目を見開く宮司だが、その後、何処か複雑な面持ちで口を閉ざしながら視線をさ迷わせると、目を伏せながら静かに俯いてしまう。

 

 

「確かに、誰かを守る為に戦う事を厭わない貴方のその心意気はとても立派な物です……そんな貴方を心から誇りに思いますし、本当なら私も、貴方の背中を押して上げるべきなのだと分かっております……分かって、は……いるのですが……」

 

 

「……宮司、さん……?」

 

 

 そう語る宮司の肩が、心做しか微かに震えているように見える。それに気付いた調が怪訝な表情で宮司の顔を見上げると、宮司は瞼を開け、普段の飄々とした姿からは想像も出来ない、弱々しい表情で口を開いた。

 

 

「それでも、やはり恐ろしいと感じてしまう自分の心を誤魔化せないのです……このまま貴方を危険な場所に行かせて、もしもまた……またあの二人のように、貴方までも失ってしまったらと考えたら……私……私はっ……」

 

 

「……っ……」

 

 

 ジワリッと、宮司の目尻に微かに浮かぶソレに気付く。

 

 

 自分の知る宮司とは違う、本当に己の孫娘を心の底から心配する彼の姿に調も胸の奥が締め付けられるような痛みに苛まれて悲痛な顔を浮かべ、宮司はそんな調の両手を手に徐に取り、まるで彼女に頼み込むように頭を深く下げた。

 

 

「身勝手と、情けのない我儘であるとも自覚しています……ですがそれでも、どうか……どうかお願いです、調……私の目の届かぬ所で、危ない目に遭うような事だけは、どうか……お願いしますっ……」

 

 

「………わ………私、は…………」

 

 

 痛いほど手を強く握られ、嗚咽の混じった声で懇願する宮司の姿に戸惑い、返す言葉が咄嗟に出て来ない。それでも何かを言わねばならないと、告げるべき言葉も頭の中で纏まらぬまま喉を震わせて口を開こうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

───何かを突き刺すような嫌な音と共に、宮司の肩を背後から長い舌のような物が貫いたのは……。

 

 

「……ッ!!?ぐ、宮司、さ──?」

 

 

「…………ぁ…………か、はっ…………!!?」

 

 

 ブシャアァッ!と、長い舌が容赦なく引き抜かれた宮司の肩の傷口から鮮血が勢いよく飛び散る。

 

 

 その凄惨な光景を目の当たりにした調は目を見開き、宮司本人も自分の身に何が起きたのか理解が追い付かないまま凄まじい激痛のあまりまともに立つ事もままならず、前のめりに倒れそうになったその身体を調が慌てて抱き留めた。

 

 

「宮司さんっっ!!!な、んで……何が……!?」

 

 

『──ゲヒヒッ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ』

 

 

「?!」

 

 

 宮司の身体を横たわらせ、血が流れる肩の傷口を必死に抑え出血を止めようと試みる調の耳に、不気味な笑い声が届く。

 

 

 その聞き覚えのある、耳障りな笑い声に釣られて顔を上げると、其処にはいつの間に侵入していたのか、昼間に姿を消して以降足取りすら掴めなかったカメレオンイレイザーが拝殿の柱にしがみつき、宮司の肩を貫いた長い舌を縮めて口の中に収めていく姿があった。

 

 

「ノイズ、イーターっ……?!」

 

 

『ィヒヒヒヒヒヒヒッ、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!』

 

 

 突然現れたカメレオンイレイザーの襲来に調が目を剥いて驚愕してしまう中、カメレオンイレイザーは理性の欠片すら感じさせない狂気の笑い声を上げながら宮司の血が粘り付いた口元を拭って柱から飛び降り、着地と共に徐に腰を落とした直後、そのまま勢いよく地を蹴って調と宮司に向かって飛び掛かり、鋭角な爪牙が妖しく輝く右腕を振りかざした。

 

 

 超人的な速さで迫るカメレオンイレイザーを前に調もギアを纏うのは間に合わないと判断し、半ば反射的に宮司の身体の上に覆いかぶさり身を呈して彼だけでも守ろうとした、その時……

 

 

 

 

 

 

 上空から六基のリフレクタービットが猛スピードで飛来し、その内の三基が調と宮司の前で陣形を組む。

 

 

 直後、三基のビットは瞬時に障壁を展開して二人を切り刻もうとしたカメレオンイレイザーの一撃を凌いだだけでなく、そのまま反発エネルギーの衝撃波でカメレオンイレイザーを派手に弾き飛ばしていったのだった。

 

 

『ゲェヤァアアッ?!』

 

 

「…………え…………?これって……?」

 

 

 突然の思わぬ横槍にカメレオンイレイザーも吹っ飛ばされながらも何とか空中で態勢を整えながら不格好に着地し、調も目の前に漂うリアクタービットを見て戸惑う中、残り三基のリフレクタービットが障壁を展開するビット達に遅れて加わり、陣形を組み替えていく。

 

 

 すると、六基のリフレクタービットは扉の形をした赤い光のゲートを形成し、その奥から赤い装甲のライダー……クロスが勢いよく飛び出しながら両手のビームガンを間髪入れず発砲し、カメレオンイレイザーに無数の光弾を浴びせて再び吹っ飛ばしていった。

 

 

『ギャアァアアアアッ?!』

 

 

「ッ?!れ、蓮夜さん……!」

 

 

『遅れてすまない……!状況は……っ……思ったより芳しくないかっ……』

 

 

 調の腕の中で、肩の傷口から夥しい量の血を流す宮司を見て苦い表情を浮かべるクロス。

 

 

 と其処へ、クロスが通ってきた赤い光のゲートの奥からまたも誰かが頭から転がるように飛び出し、新たに現れた人物……切歌は地面にぶつけてしまった頭を抑えながらふらふらと起き上がる。

 

 

「あいたたたっ……!れ、蓮夜さん、急にどうしたんデスか、変な光の中に飛び込んで……って、はえ?な、何でアタシ達、いつの間に神社に……?」

 

 

「切ちゃん!」

 

 

「へ?調……って、ぐ、宮司さん?!どうしたデスかその怪我っ?!」

 

 

 いきなり街の中から調神社に跳ばされて辺りを見回し困惑していた切歌だが、調の声で振り返り、彼女の腕に抱かれる負傷した宮司を目にした途端、驚愕のあまり思わず手にしている大鎌を手放してしまいながら慌てて二人の元に駆け寄る。

 

 

 クロスはその様子を横目に、正面を見据えてよろよろと胸を抑えて起き上がるカメレオンイレイザーに向けて再び銃口を突き付けた。

 

 

『街を襲ったのは何か別の狙いがあったからか、或いは俺達を此処から引き離すのが目的なのか……どちらの可能性も捨て切れず迷いはしたが、万が一に備えてコイツらを神社に残しておいたのが功を奏したようだな……』

 

 

 クロスがそう言うと、赤い光のゲートを形成していた六基のリフレクタービットが陣形を解き、クロスの周りに浮遊しながら変形して射撃形態となり、迎撃態勢を取る。

 

 

 そしてカメレオンイレイザーは獣のような唸り声を上げながら妖しく輝く赤い眼光でそんなクロスを睨み付けるが、クロスは表情一つ変えず、淡々とした声音でカメレオンイレイザーに言葉を投げ掛けた。

 

 

『問い掛けは無意味だと思うが、一応聞いておく。お前を裏で操ってるあのクレンとかいうイレイザーの目的なんだ?何が狙いでこの人の記憶に改竄を施した?』

 

 

『ギギッ、ギギギギギギギギギギギギィッッ……!!!!』

 

 

『……やはりまともに会話が成立する筈もないか……なら仕方がない。今此処で始末を付けて、このタチの悪い悪夢(ユメ)を終わらさせてもらう……!』

 

 

 これまでのノイズイーターのように、既に意思疎通は無理と即断したクロスは銃を発砲してカメレオンイレイザーに攻撃を仕掛けるが、カメレオンイレイザーは俊敏な動きで真横へと飛び退きながら光弾を回避すると共にそのまま走り出した勢いで跳躍し、神社の塀の向こうへと飛び越えて逃走を図る。

 

 

 しかしそうはさせまいと、クロスも即座に両手の銃を連結、変形させて新たな武器を手にする。

 

 

 それはまるで、仮面ライダー鎧武の武装の一つであるソニックアローを彷彿とさせる外見をした赤い弓となり、手の中で起用に回転させた弓を構えてカメレオンイレイザーの背中に照準を狙い定めながら弦を引き絞り、弦を離した瞬間、赤い光の矢が闇夜を切り裂きながら放たれて宙で三本の矢に分身し、カメレオンイレイザーの背中に全て突き刺さって塀の向こうの森の奥へと堕としていった。

 

 

『ゲギャアアアァッ…………?!』

 

 

「や、やったデスか?!」

 

 

『まだだ……!切歌はこのまま援護を頼む!此処で奴を追い込むぞ!調は本部に連絡して宮司さんの傷の手当ての要請を!』

 

 

「!任せるデス!」

 

 

「切ちゃん……!」

 

 

「大丈夫デスよ調!あんな奴、すぐにやっつけて全部元に戻してくるデス!だから安心して待ってて欲しいデス!」

 

 

 漸く姿を現したカメレオンイレイザーをみすみす逃す訳にはいかない。

 

 

 此処で完全に決着を着けるべく、クロスは赤い弓を手にしたままカメレオンイレイザーを追って塀を軽々と飛び越え、切歌も不安げな様子の調を安心させるようにいつもの朗らかな笑顔と共にガッツポーズを取ると、地面に落とした大鎌を拾い上げながらクロスの後を追い、塀を飛び越えて森の奥への姿を消していった。

 

 

「切ちゃん……蓮夜さん……っ……私も、今は出来る事をっ……!」

 

 

 二人の事は気掛かりだが、今は一刻も早い宮司の治療が先決だ。

 

 

 自分が着ている寝巻きの袖を肩口まで破った布を宮司の傷口にキツく巻き付けて何とか応急処置は済ませたが、高齢の宮司にこれだけの負傷が何処まで耐えられるか分からない。

 

 

 急ぎ懐から取り出した通信機を手に取り、本部に連絡しようと通信を繋ごうとする調だが、その時……

 

 

「──大丈夫だよ。そのおじいさんには今此処で退場されたら困るから、絶対に死なせたりしないよ」

 

 

「……え……?」

 

 

 不意に、調達の背後から飄々とした声が聞こえてきた。その声に釣られて振り返ると、其処に姿があったのは……

 

 

「やー、やっぱり油断ならないなー、今の蓮夜君。ちゃんとこっちの狙いも考慮してすぐに戻って来られる仕込みをしとくなんてさー。タイミングミスったら危うく鉢合わせになるとこだったよ、あっぶねー♪」

 

 

「ッ?!貴方は……上級イレイザーの……!!?」

 

 

 神社の入口の向こうから、石段を上がって姿を現したのは青髪の青年……今回の騒動を引き起こした元凶の片割れであるクレンだったのだ。

 

 

 いきなり現れたクレンの襲来に調も驚きのあまり一瞬硬直してしまうが、そんな彼女の反応も他所に軽やかな足取りで近付いてくるクレンを見て我に返り、宮司を守るように立ち塞がりながら胸元のギアを握り締め聖詠を口にしようとするも、そんな彼女の警戒心強めな態度を見てクレンは苦笑いと共に両手を前に「待って待って」と横に振った。

 

 

「そんなに怖い顔しないでよー。こっちは別に、君と戦う為でも、其処のおじいさんの命を狙いに来たって訳じゃないんだからさー」

 

 

「っ……!何を……!此処までの騒動を引き起こしておいて、そんな言葉──!」

 

 

「信じらんない?ま、それもそうだよねぇ。……じゃあ、こうしたらちょっとは信じてもらえるかな?」

 

 

 不敵な笑みと共に、軽く掲げた右手の指を軽く鳴らすクレン。次の瞬間、調の傍らに倒れる宮司の身体にデジタルノイズのような乱れが生じた。

 

 

「?!宮司さんっ!貴方、何を……!」

 

 

「慌てない慌てない。ほら、その人の傷診てみなよ。もう完全に治ってるでしょ?」

 

 

「……え……」

 

 

 あっけらかんとした口調でそう言いながら指を指すクレンの言葉に、一瞬理解が追い付かず間の抜けた返事を返してしまう。

 

 

 彼に言われた通り宮司に目を見やれば、デジタルノイズのような乱れはいつの間にか収まり、先程まで痛みで苦しそうにしていた宮司の顔も穏やかな顔付きで規則正しい寝息を立てている。

 

 

 恐る恐る手を伸ばして彼の肩に巻き付けていた血が染み込んだ布をゆっくりと剥がすと、カメレオンイレイザーの舌で貫かれた筈の宮司の肩の傷はなく、跡すら残っていなかった。

 

 

「どう……して……?」

 

 

「んー。まぁ、イレイザーの改竄能力の応用って奴?上級ともなればこれぐらいの芸当は簡単に出来るよ。といっても、流石に本来の歴史(モノガタリ)に関わるような重症とか治したりなんかしたらこの世界にバレて……」

 

 

「違う!そうじゃなくてっ……貴方達の狙いは宮司さんだった筈なのに、どうしてこの人を助けるようなこと……?!」

 

 

 理解が出来ないと、調は動揺と混乱が入り交じった顔で叫ぶ。

 

 

 イレイザー達にとってそう易々と使えない改竄の力を宮司に用いた所からして、彼等の狙いは宮司にある筈だと自分達はそう思い込んでいた。

 

 

 蓮夜の説明からして、この世界にとってさほど重要な人間ではない宮司の命を奪う事に彼らにとって躊躇する理由はない筈なのに、どうしてわざわざ自分の味方が傷付けた宮司を助けるような真似をするのか。

 

 

 目的が読めない。何を考えているのか理解が出来ない。

 

 

 飄々とした態度を崩そうともしないクレンが自分と同じ人間の姿をしているのにまるで全く別の生き物にすら見えて、ある種の不気味さと言い知れぬ恐怖を感じてしまう調の疑問に対し、クレンはやはりあっけらかんとした調子で掴み所のない笑みを浮かべ……

 

 

「確かに、最初に此処を襲った時の狙いはそのおじいさんに改竄を掛ける事が目的だった。でも、別にそのおじいさん自体に用があったって訳じゃない。僕の目的は、そのおじいさんには初めからないんだよ」

 

 

「っ……だったら、どうしてこんなこと……!」

 

 

「決まってるじゃないか。……君とこうして話す機会を設ける為だよ、月読調ちゃん」

 

 

「…………え…………?」

 

 

 今まで飄々としていたクレンの表情と声音が、視線が不意に冷たい物に切り替わる。

 

 

 そんな言葉と共に彼の冷たい眼差しを向けられた瞬間、調は言葉を詰まらせ、冷ややかな汗が自分でも気付かぬ内に額から流れ出ていた。

 

 

 

 

 

 

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