戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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番外編④
メモリア04/漆黒の戦姫×通りすがりの──


 

 

───嘗て、霧の都としてその名が悪い意味で有名だったロンドン。

 

 

 今では最高水準の世界都市として、芸術、商業、教育、娯楽、ファッション、金融、ヘルスケア、メディア、専門サービス、調査開発、観光、交通といった広範囲にわたる分野において強い影響力があり、「世界一革新的な都市」と呼ばれることもある(ネット調べ

 

 

───しかし、そんな革新的とも呼ばれた都市の影でも、暗躍を目論む"闇"とは存在する。

 

 

 犯罪やマフィア?いや、確かにそれらも驚異ではあるのだが、それはまだ警察の手による収まる範囲で大した事ではない。

 

 

 "我々"が一番に驚異としているのは、このロンドンに潜む更に危険な闇……一介の錬金術師の手により、アルカ・ノイズの製造技術がブラックマーケットで横流しされている事である──。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

「──ハァッ、ハァッ、ハァッ……!!くそぅ!何故だ!どうしてこの場所が嗅ぎ付けられたんだぁ?!」

 

 

 ロンドンの地下鉄、それも今や電車が通る事もなく使われる事もなくなった廃駅の線路の上を、必死の形相で逃げるように駆ける妖しげな風貌の男の姿があった。

 

 

 如何にも妖しい黒いローブを纏い、頭に被ったフードで顔を隠すその男の正体は錬金術師。

 

 

 最近、アルカ・ノイズの製造技術を内戦国の武力組織などに横流しをし、大金を稼いでいる犯罪者だ。

 

 

 そんな錬金術師を追う二つの影が、背後から猛スピードで迫りくる姿があった。

 

 

 一人は青い長髪を和風テイストな髪飾りでサイドテールに纏めているのが特徴的で、全身には青と白が特徴的なアンダースーツの上にコレまた同様に青の装甲を身に纏い、その手には刃が光り輝く刀が握られている。

 

 

 そしてもう一人は、ピンクの髪色のロングヘアーが特徴的で、全身には白銀をメインとしつつ、赤と青が散りばめられたカラーリングのアンダースーツと装甲を纏っているが、何より目を引くのはその左腕の銀色の篭手だろう。

 

 

 彼女達の名は、"風鳴翼"と"マリア・カデンツァヴナ・イヴ"。

 

 

 世界的に有名なアーティストにして、今現在は全国ツアーで世界を回っている多忙の身の筈なのだが、彼女達はそれ以外にもとある任務を任されている身でもある。

 

 

『ロンドンを拠点に、内戦国や裏組織にアルカ・ノイズの製造技術を流している錬金術師を捕らえ、これ以上の技術流通を何としても阻止すること』

 

 

 表向きには有名アーティストとして活動しつつ、その裏では翼のマネージャーにしてS.O.N.G.調査部に所属する敏腕エージェント、"緒川慎次"の調査によって錬金術師のアジトを見事に突き止め、今現在その錬金術師のアジトを強襲して奴を捕縛しようと、錆鉄臭い廃駅の中で年甲斐もなく鬼ごっこを繰り広げている最中にあるという訳だ。

 

 

「っ、思っていたより逃げ脚が速いわね……!ギアの脚力でも中々追い付けないなんて相当よ!」

 

 

「恐らく、身体能力を強化する術か何かでも用いているのだろう……!マリア!私が奴の退路を断つ!奴が足を止めた隙に即座に拘束を!」

 

 

「えぇ、任せたわ!」

 

 

 マリアが答えるより先に、既に翼は脚部のブレードを展開してスラスターを噴かし、ホバリングの要領で急加速して壁へと移動しながら錬金術師の目の前にまで一瞬で走り抜けて、逃亡者の前に立ち塞がった。

 

 

「なっ……!く、くそっ!」

 

 

 目の前の退路を翼に塞がれて錬金術師が思わず足を止めた瞬間、彼の背後から銀色の刃がまるで蛇のように伸びて体中に巻き付き、そのまま拘束していった。

 

 

「ぐぁああああっ?!な、んだ、これぇ?!」

 

 

「お生憎様ね。こっちは散々貴方の事を探し回ったの。此処まで苦労させられて、今更のこのこ逃がす訳がないでしょう?」

 

 

 溜め息混じりにそう返すのは、錬金術師を拘束する蛇腹剣の刃を伸ばすマリアだ。

 

 

 そして件の錬金術師の確保を見届け、翼は自身のヘッドギアからある人物……地上で待機してもらっている緒川に通信を繋いだ。

 

 

「緒川さん、通信は届いていますか?こちら天羽々斬、例の錬金術師の拘束が無事完了しました」

 

 

『──はい、聴こえています。お見事でしたよ、お二人共。流石の手際の良さ。いつもながら感心せざるを得ないですね』

 

 

「いえ、任務はまだ完全には完了した訳ではありません。この錬金術師が、闇組織や内戦国に密売していたというアルカ・ノイズの製造器具。そちらも押収しなければ、まだこの事件は解決したとは言い難い」

 

 

「翼の言う通りね。……それで?貴方の大事な商品は何処に隠してあるのかしら?さっき強襲したアジトに向かえば、其処に全部出揃っているの?」

 

 

「くっ……っ……た、頼む……」

 

 

「「…………?」」

 

 

 アルカ・ノイズを製造してた技術やその為の器具を何処へ隠しているのか。緒川との通信を切って改めて問い詰める翼とマリアに返ってきたのは、何かに怯えた様子の錬金術師の懇願だった。

 

 

「頼むっっ!!どうかっ、どうかこのまま見逃してくれっっ!!お願いだっっ!!」

 

 

「……急に何を言い出すかと思えば……この期に及んで情にでも訴え掛けるつもり?随分と呆れたものね」

 

 

「貴様が横流しした技術で生み出されたアルカ・ノイズ達によって、一体どれほどの罪なき人々の命が失われたと思っている?そんな貴様の訴えに、今更私達が心揺れ動かされるとでも思ったのか?それこそ舐められたものだ」

 

 

「違うっ!!そんなんじゃないっ!!このまま捕まれば、奴等に用済みにされて消されちまうっ!!お、俺の命は、アイツらに握ら、れ…………がっ……ぁ……ァああああっっ?!!」

 

 

 必死に何かを訴え掛けるように廃駅中に響き渡る程の大声で叫び続けていた錬金術師だが、その時、不意に錬金術師が声を詰まらせ、更にその全身が突然ガクガクと震え出し始めながら天を仰いでいく。

 

 

「?何だ……?」

 

 

「な、何?何か様子が……?」

 

 

「ぅ……ァ……ァァあ………ァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!?」

 

 

―ボォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!―

 

 

「「なっ……!!?」」

 

 

 錬金術師の明らかに異常な様子に翼が一歩踏み出そうとした瞬間、天を仰いで震える錬金術師の目がギョロっ!と白目を向いた瞬間、その全身から黒い炎が突如噴き出したのである。

 

 

 いきなりの異常事態に翼もマリアも驚愕のあまり固まってしまうが、錬金術師の身を焼く黒炎がマリアの蛇腹剣の刃を伝って彼女の手元にまで迫り、それを見たマリアも慌てて蛇腹剣を手離す。

 

 

 地面に落ちたマリアの蛇腹剣、そして錬金術師は黒炎によって瞬く間もなく焼却され、灰すら残さずに完全に消滅してしまったのであった。

 

 

「……な、何だったの……今のはっ……?」

 

 

「っ……身体から突然、炎が噴き出しただと……?一体何故──っ?」

 

 

 一体全体、自分達の目の前で何が起きたというのか。あまりに急展開過ぎる錬金術師の突然の怪死に、翼とマリアも理解も状況も飲み込めずただただ困惑するしかない中、ふと視線を逸らした翼の瞳が、薄暗いトンネルの向こうに潜む"ナニか"を偶然にも見付けた。それは……

 

 

 

 

 

「─────」

 

 

 

 

 

──廃駅の奥の闇の中に潜み、ジッとこちらを見つめている謎の少女の姿があった。

 

 

 しかも、その姿は普通ではない。

 

 

 身長は遠目に見て調や切歌と同じくらい。だがその全身には露出の多い黒のアンダースーツの上にまるで騎士のような黒鉄の鎧を纏い、何より特徴的なのは両腕の盾と一体化したような長剣、そして顔を隠すバイザーのような仮面を身に付けているが、その鎧の特徴にはとても見覚えがあった。

 

 

あれは、まさか……

 

 

「……シン、フォギア……?」

 

 

「──────」

 

 

 翼が思わず呟きを漏らす中、黒鉄の鎧の少女はまるで錬金術師の死を見届けて用事が済んだかのように、踵を返して廃駅の闇の向こうのトンネルの奥へと何も言わず歩き去っていく。

 

 

「ッ!待てっ!」

 

 

「え……?ちょ、翼!何処へ行くの?!待ちなさい!」

 

 

 あの黒鉄の鎧の少女はきっと先程の錬金術師の謎の死と何か関係がある。そうでなければあのような格好でこんな場所に居合わせる訳が無いと踏んで翼は慌てて謎の少女を追い掛け、マリアの静止の声も振り切りトンネルの奥の闇の中へと躊躇なく駆け込んでいった。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

──更に奥へと進んだ廃駅は、先程自分達がいた場所よりも更に薄暗い空間だった。

 

 

 謎の少女を追い掛けてその薄暗い闇の中へ駆け込んだ翼は、辺りを見回して少女の姿を懸命に探していく。

 

 

(ッ……!何処へ行った?!奴は恐らく、あの錬金術師とも何かしら関係があったハズ……!それにあの姿、仮にもしあれがシンフォギアであるなら……!)

 

 

 もしそうなら、奴はこのまま放置していていい人間ではない。何としてでも身柄を捕らえて事情を聞き出す必要があると、翼はこの辺りに少女の姿がないのを確認して更に奥へ走り出した、その時……

 

 

 

 

 

 

 彼女の横合いから突然、何者かの鋭い蹴りが襲い掛かった。

 

 

「ッ?!なっ、くっ!」

 

 

 いきなりの不意打ちに驚きながらも、身体が反射的に反応し直撃の寸前の所で後退した。

 

 

 すると、蹴りが飛び出してきた物陰からユラリと何者かが現れ、翼の前に立ち塞がった。

 

 

「っ?貴様……何者だっ?」

 

 

 一瞬例の少女かと思われたが、体格からしてそれは違うとすぐに分かった。

 

 

 黒とダークブルーのツートンカラーのアンダースーツ。

 

 

 首元には赤いマフラーを身に付け、暗闇の中でも淡く光輝いているのが分かる両目の複眼を持つその仮面は、まるでバッタを模しているようだ。

 

 

 そして何より目を引くのは、その腰に巻かれたベルトのバックル中央の周りに18つの異なるエンブレムが刻まれた、カメラを連想させるデザインのマゼンタのドライバー。

 

 

 ひと目で分かる異形の姿。

 

 

 不審の眼差しを向ける翼からの問いに、ダークブルーのバッタの異形は鼻を軽く鳴らし、ドスの利いた声で淡々と答える。

 

 

『通りすがりの仮面ライダーだ……』

 

 

「何……?―ドゴォオオッ!!―うっ?!ぐぁああああっ?!」

 

 

 バッタの異形が口にした『仮面ライダー』という聞き覚えのある名に翼が動揺する中、バッタの異形は有無も言わさずいきなり翼に素早い拳を打ち込んで襲い掛かってきた。

 

 

 突然の不意打ちに動揺する間もなく、バッタの異形は次々と翼に拳を繰り出して追い詰めていき、其処へ、翼を追いかけてきたマリアがバッタの異形に襲われる彼女を見て驚愕した。

 

 

「翼?!それに、あれは……?」

 

 

「くっ!はぁああああっ!!」

 

 

 翼が謎の敵に襲われているという状況に理解が追い付かず、呆然と立ち尽くすマリア。

 

 

 その間にもバッタの異形の拳を喰らい続けていた翼も自身のアームドギアである刀を抜き、素早く刃を振るってバッタの異形へと果敢にも挑み掛かるが、バッタの異形は最小限の動きだけで軽々と翼の斬撃を躱し、翼がその顔面に目掛けて放った刺突を首を僅かに逸らしただけで避け、その切っ先を中指と人差し指の間で挟んで抑え込んだ。

 

 

「なっ……!」

 

 

『剣筋が実直過ぎる……実に読みやすい』

 

 

 まるで師事でもするように呟くと共に、バッタの異形は刀を払い除けながら大きく身体を仰け反らせた翼の胸に目掛けて瞬速の左ストレートを叩き込み、そのまま派手に翼を殴り飛ばしてしまった。

 

 

「うぐぁああああああっっ!!っ……くっ……ならば、これでどうだっ!!」

 

 

 地面に思い切り叩き付けられて転がり、それでも何とか殴られた胸を抑えながら身を起こした翼は脚部のブレードを展開して刀を構え、そのままバーニアによる縦回転で加速し、まるで風車のように高速回転しながらバッタの異形へと突進していく。

 

 

―無想三刃―

 

 

『成る程、技の趣向を変えてきたか……しかし……』

 

 

 ボォッ!と、バッタの異形の右手が炎に包まれる。

 

 

 そして縦回転の斬撃で何度も迫り来る翼の攻撃を軽快な動きで避けながら何かを見極めるように彼女の動きを観察し続け、やがてその軌道と速さを見切り、正面から再度迫る縦回転の斬撃が上段から振り下ろされる前に素早く炎を纏った右拳を突き出し、翼の腹を抉るように殴り付けた。

 

 

「がぁっっ!!?はっっ……?!!」

 

 

「翼ァ!!」

 

 

 腹に深くめり込んだ炎拳のあまりの威力に、翼は両目をかっ開きながら盛大に殴り飛ばされて地面をゴロゴロと勢いよく転がっていってしまう。

 

 

 そんな彼女の下にマリアが慌てて駆け寄るが、バッタの異形は構わずマゼンタのバックルのサイドハンドルを悠然と開いていく。

 

 

『流石は歴戦の装者。実力に申し分はない……が……』

 

 

 そう言いながらバッタの異形は左腰のケースからエンブレムが描かれた金色のカードを取り出し、マゼンタのバックルに装填して両手でサイドハンドルを元の位置に戻すようにスライドさせた。

 

 

『……俺に挑むには、10年早い』

 

 

『FINALATTACKRIDE:FIR・FIR・FIR・FIRST!』

 

 

 廃駅中に反響して響き渡る電子音声と共に、バッタの異形は徐に右腕を斜め左上へと静かに構える。瞬間、バッタの異形の複眼が輝き、それを合図のように両脚を揃えて跳んだバッタの異形は空中でのきりもみ回転から右脚を突き出し、翼に目掛けて飛び蹴りを放った。

 

 

「ッ!そうはっ……!」

 

 

 迫り来るバッタの異形を目にしたマリアは咄嗟に翼の前へと飛び出し、左腕を突き出して逆三角形状の銀色の障壁を展開し、バッタの異形の技を凌ごうとするが、しかし……

 

 

『はぁああああっ……ハァアアアアッッ!!!』

 

 

―ガシャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアアアァァァンンッッッッ!!!!!―

 

 

「なっ?!ぅ、きゃあああああああああっっ!!!?」

 

 

「ぐぁああああああああああっっ!!!!」

 

 

 バッタの異形の放つ飛び蹴りはマリアが展開する障壁と拮抗すら叶わず、意図も容易く破壊しながらマリアと翼に容赦なく炸裂し、二人はそのまま地面を転がって倒れ付すと共にギアも解け、元の姿に戻ってしまったのだった。

 

 

「ぅ……っ……な、何なの……この、強さはっ……!」

 

 

「マ、リアっ……ぅ、ぐっ……!」

 

 

『……………………』

 

 

 あまりのダメージに立つ事すらままならない二人を見据えて、地上に片膝を突いて着地したバッタの異形は両手を軽く叩くように払いながら身を起こし、翼とマリアに交互に視線を向ける。

 

 

『この件に関して、これ以上深追いするのは止めておけ……今のお前達では奴等に太刀打ちするのも叶わず、返り討ちにあうのが関の山だ……』

 

 

「ッ……!なん、だとっ……?」

 

 

「ッ……あな、た……なにを、知ってっ……?!」

 

 

 何かを知っているかのような意味深な口振りでそう忠告するバッタの異形に、マリアが肩を抑えて疑問を投げ掛ける。

 

 

 しかしバッタの異形はそれ以上は何も答えず、首元のマフラーを靡かせながら二人に背中を向けて歩き出すが、途中で足を止め、僅かに二人の方に顔を向ける。

 

 

『それでもまだ諦める気がないのなら、そうだな……せめて日本にいる仮面ライダー……クロスを頼る事だな……』

 

 

「……っ……?クロ、ス……?」

 

 

「どうして、貴方がそれを……ま、まちな、さいっ……!」

 

 

 それだけ伝えると、バッタの異形はマリアの静止も聞かずに廃駅の奥の闇の向こうへと歩き出して姿を消してしまい、辛うじて伸ばした腕がその背中に届く筈もなく、二人の意識は其処でパタリと途切れてしまったのだった。

 

 

 

 

 

……その後、二人と連絡が取れない事を不審に思った緒川が現場へと急行し、廃駅の奥で倒れている翼とマリアを発見したのはそれから約三十分が経ってからの事だった。

 

 

 

 

 

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