戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~ 作:風人Ⅱ
―市街地―
『───ィイイイイイイイイァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァアアアーーーーーーーーーーーーーアアアァァッッッッッ!!!!!!』
響とクリスがヴィーヴルの襲撃に遭うその頃。市街地の中心はキマイライレイザーの猛威によって既に街全体が紅蓮の炎に包まれ、地獄絵図と化していた。
轟々と燃え盛る炎に焼かれるビル群。
アスファルトの地面にも炎が駆け走り、中には巨大なビルがへし折れて隣接していた建物を踏み潰したりなど、そんな凄惨な光景が何処までも続く泥梨の煉獄の中で、キマイライレイザーが黒煙に覆われた暗雲の空を仰ぎながら咆哮する。その様は最早、怪獣映画にでも出てくるような制御不能の化け物にしか見えなかった。
『──ぐっ……っ……!まさか此処までなんて……動きを封じるだけでも一苦労じゃないか……!』
そんな化け物から離れた崩壊した建物の壁際には、奴に幾度となく接触を試みるもただ近づく事すら叶わず、キマイライレイザーの暴力的な力の前に何度吹き飛ばされたかも分からず、それでもなお三叉槍を杖代わりに突き立て何とか起き上がろうとするポセイドンイレイザーの姿もあった。
しかしこの周辺一帯には既に人々も避難して無人と化した今、ただ見境なく暴れ回るだけの暴走の獣となったキマイライレイザーは視界の端で蠢くポセイドンイレイザーを捉えると共に、背中から生えた無数のトゲに再度エネルギーを瞬間充填し、ポセイドンイレイザーに向けて放出した。
『ッ!ホントに見境なしなのかよコンチクショウ!!』
直撃の寸前に全身をゲル状に変質させ、ギリギリのところで雷撃を透過し回避したものの、躱された雷撃はポセイドンイレイザーの背後に建つ建物に当たった瞬間に一瞬で黒い灰と化させてしまい、風に吹かれるように塵となって消え去ってしまった。
実体化しながらその光景を目の当たりにしたポセイドンイレイザーが『マジかよ……!』と絶句する中、キマイライレイザーは雷撃を躱したポセイドンイレイザーを完全に標的と認識してワニのような口を大きく開きながらその口内に黒い光球を形成していく。
それを見たポセイドンイレイザーも忌々しげに舌打ちしながら三叉槍を身構え迎撃しようとした、其処へ……
―ブゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーオオオォンッッ!!!!―
『……?!―ドゴォオオッ!!―ギィイアアッ!!』
『!何……?』
キマイライレイザーの横合いから不意に一台の蒼いマシンが飛び出し、そのままキマイライレイザーの目の前を横切ると共にその顔を蹴り付けたのだ。
思わぬ不意打ちによってキマイライレイザーは口内に溜め込んでいた黒い光球の発射を阻止されてしまい、ポセイドンイレイザーも突然の乱入者に意表を突かれて思わず蒼いマシンを目で追うと、蒼いマシン……クロスレイダーを急ブレーキを掛けて横滑りさせながら停止した蓮夜はヘルメットを脱ぎ取り、ポセイドンイレイザー、そしてキマイライレイザーを交互に見て訝しげに眉を顰めた。
「なるほど……あの気色悪い気配の正体はコイツか……」
『っ、蓮夜君か……タイミングが良いのか、悪いのかっ……』
『本来ならこんな予定じゃなかったのにな……』とポセイドンイレイザーが顔を逸らしながらボヤく。
その呟きも燃え盛る炎の音に遮られて耳に届く事なく、既にクロスベルトを腰に巻いた状態の蓮夜は凄惨な街の惨状を見回しながらクロスレイダーから降りると地面に伏せるキマイライレイザーを睨み付け、次にポセイドンイレイザーに鋭い眼差しを向けた。
「これはどういう状況なんだ……?アレは昨夜お前が従えていたノイズ喰らいの筈だろう?なのにあの姿……それに此処までの惨状を引き起こして、今度は一体何を仕出かすつもりだ……!」
『……それを聞きたいのは寧ろこっちの方だってのっ』
「……何?」
『ィイイイイイイイイアアアアアアアアアアアアァァァァァァッッッ!!!!!!』
何処か吐き捨てるように投げやりな答えを返すポセイドンイレイザー。
その返答の意図が読めず蓮夜が顔色を怪訝に深めて聞き返そうとするが、キマイライレイザーが蓮夜に怒りの矛先を向けて勢いよく起き上がり、背中の無数のトゲから赤黒い雷撃を無差別に拡散させていく。
それを見て咄嗟にその場から飛び退いて回避する蓮夜だが、受け身を取りながらカードを構えた瞬間に視界の端でポセイドンイレイザーまでもあの雷撃に襲われている姿を捉え、目を見張った。
「味方まで襲ってる……?どういう事だ、アレをあの姿にさせて街に放ったのはお前じゃないのか……?!」
『ッ!一々こっちに質問吹っかけてる余裕があるのかい?!さっさと変身しないと死ぬぞ!』
「ッ……クソッ……!変身っ!」
『Code x…clear!』
状況が全く理解出来ぬまま、とにかく言われるがままカードをバックルに装填してクロスに変身する蓮夜。
そのまま飛来してくる赤黒い雷撃の一撃一撃を地面を転がって回避しながらキマイライレイザーへと接近し、その顔を殴り付けて雷撃の拡散を妨害するも……
『ギィィイイッ……!!ィアアアアアッッ!!!!』
『っ、何?!―ドゴォオオオオオオオオンッッ!!―がぁああッ!?』
クロスの拳もキマイライレイザーには大して効いている様子もなく、逆にそのゴリラのように強靭な右腕を振るって即座に反撃し、動揺するクロスを殴り飛ばしてしまう。
そのあまりの威力にクロスも地面をゴロゴロと転がりながらも片膝を付いてどうにか身を起こすが、激痛の走る胸を左手で抑えて思わず呻いてしまう。
キマイライレイザーはそんなクロスに追い討ちを掛けて襲い掛かろうとするも、其処へポセイドンイレイザーが横合いから飛び掛かり、三叉槍を振り下ろしてキマイライレイザーの顔面に思い切り叩き付けた。
『ギィエエエゥッ?!』
『?!お前……何の真似だ……?!』
『この際、コイツを止められるなら何だっていいよ!せいぜい君の力を利用させてもらおうって腹つもりなだけさ!』
そう言いながら、ポセイドンイレイザーは三叉槍で続け様に連続突きを放ってキマイライレイザーに仕掛けていく。
一方でクロスは目の前で繰り広げられるイレイザー同士の戦いを目の当たりにして困惑が深まるばかりだが、最初は優勢気味だったポセイドンイレイザーが徐々に押し返され始めているのを見てすぐに思考を切り替え、左腰のケースから取り出したカードをバックルに装填しながら立ち上がり、キマイライレイザーへと突っ込んでいく。
『Code Gungnir……clear!』
『ハァアアアアァァーーーーッ!!ハァアアッ!!』
―バキィイイイイッ!!!―
『ゴァアァッ!?』
『っ、そうそう、その調子……!出し惜しみとか無しに頼むよ、相棒?』
『誰が……!コイツを片付けた後は次はお前だ、忘れてくれるな!』
『クソッ……!』と不快げに毒づきながら、タイプガングニールのパワーでキマイライレイザーが怯んでいる今の内に再度突っ込んで殴り掛かっていくクロス。
ポセイドンイレイザーもそんなクロスの背中を見つめながらポリポリッと呑気にこめかみを掻いて意味深に含み笑うと、クロスの後に続いてキマイライレイザーへの攻撃を再開し、クロスの攻撃後の隙をカバーするように三叉槍を巧みに操り上手く立ち回っていくが、しかし……
『ヌギィッ、ギ、ガァアッ……ィイイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーアアアァァァッッ!!!!』
―……ボゴォッ……ボゴォッ、ゴボゴボゴボゴボゴボォッッ……!!!!―
『……!』
『ッ!何だ……?』
クロスとポセイドンイレイザーの連携攻撃に追い詰められる中、キマイライレイザーの頭の皮膚が突然不気味に泡立ち、その形状を変化させ始めたのだ。
唐突に様子が変わったキマイライレイザーを見て思わず動きを止める二人だが、その間にも謎の変化は更に進行していき、キマイライレイザーの頭部がまるでサイのように鋭いツノが生えた凶悪な形状に変貌していったのだった。
『?!また姿が変わったっ……?!』
『(マージか……ホントに何してくれたんだよデュレン……!)』
カメレオンイレイザーの原型を留めていないレベルに此処まで変化しておきながら、まだ更なる変貌を続けるキマイライレイザーに驚愕を隠せないクロス。
ポセイドンイレイザーもその内心ではデュレンへのヘイトを溜める中、キマイライレイザーは新たに生やしたそのツノから大量の青白い光弾を連続で発射していき、二人の周囲に無数の星のように煌めく光芒を発生させた直後、光芒が次々と誘爆して凄まじい威力の爆発がクロスとポセイドンイレイザーに襲い掛かったのだった。
『ぐぁあああぁッ!!?』
『グゥウウッ!?っ……なんつー、パワーっ……!』
『ァアアアア……。アァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーーーーアアアァァァッッッ!!!!!!』
爆発に吹き飛ばされて地面に転がり、全身から白煙を立ち上らせながらキマイライレイザーの新たな技とその威力に戸惑うクロスとポセイドンイレイザーを他所に、キマイライレイザーは頭部のツノからの光芒に加えて、背中のトゲからの雷撃、更には口から連続光弾を乱射し、街への無差別破壊を再開してしまう。
『ッ……!マズイ、このままだと街が──!』
『──ロ──ス───クロ、ス──……現場のクロス!聴こえていますか?!』
『……?!本部からの、通信……?オペレーターか?!』
街が次々に凄まじい速さで破壊されてゆく光景を前に慌ててキマイライレイザーを止めようと起き上がり掛けたクロスだが、突然仮面に取り付けられた通信機にノイズ混じりの通信……S.O.N.G.の銃後、オペレーターの一人である友里の声が届いた。
その声にクロスが応答すると、通信の相手が友里から弦十郎に変わった。
『聴こえているか、蓮夜君?!こちらは今君の反応を何とか捉えられている状態だが、現場の映像が何者かからのジャミング工作により状況を観測する事が出来ない!そちらの今現在の状況を口頭で伝える事は出来るか?!』
『ジャミング……?やはりそちらでも……いや、それよりも響達の到着はまだか?!例のノイズ喰らいが急激な進化を繰り返して、街への被害が甚大化している……!このままだと俺一人での対処が難しくなる!』
『ノイズイーターの急激な進化、だとっ……?いやしかし、響君達は今っ……』
『蓮夜さん、ボクです!聴こえますか?!』
『っ?エルフナイン……?』
今度は通信の相手がエルフナインに変わる。声に焦燥を含ませた彼女のその様子にクロスが疑問を覚えるが、エルフナインは切羽詰まった声音で構わず続けていく。
『響さんとクリスさんは今現在、出自不明のシンフォギアを身に纏った装者による襲撃を受けています!このタイミングからして恐らく、イレイザー側が嗾けた『記号』持ちの装者を足止めする為の妨害だと思われます!』
『出自不明の、シンフォギア装者……?』
『…………(あのヴィーヴルって子か……デュレンの差し金だな……』
困惑した様子でポツリと口から漏らしたクロスの呟きから、ポセイドンイレイザーは昨晩デュレンと共に現れた黒い戦姫、自分達の"処刑人"を名乗っていた謎の装者であるヴィーヴルの顔を思い出す。
そんなポセイドンイレイザーの内心など露知らず、クロスへの通信相手が再び弦十郎に変わる。
『その謎の装者の襲撃により、響君もクリス君も苦戦を強いられ救援には向かえない状況だ……!聞き齧った情報の限り状況は厳しそうだが、何とか君一人でそのノイズイーターを撃破する事は可能か?!』
『……ああ。これ以上はもう、そうするしかない!』
そう答えると共に調との約束が脳裏を過ぎるが、あのキマイライレイザーは現在進行形で尚も進化を続けている。これ以上奴を野放しにするのは危険だ。
ただでさえ厄介な今の状態から更に今より進化でもされれば、もし響達の救援が間に合ったとしてもその時にはもう手が付けられなくなっているかもしれない。
街への被害も未だ広がりつつある中、そんな最悪な事態になる前に最早悠長にはしていられないとキマイライレイザーを速攻で撃破すべく走り出そうとしたクロスだが、そんなクロスを阻むようにポセイドンイレイザーが急に三叉槍を横から突き出した。
『?!クレンっ……?!』
『悪いけれど、アレを止めるだけならともかく、倒すのは流石に御免こうむりたいんだよね』
『っ、正気なのか……?!アレはもうお前達の手で制御出来る範疇を超えている!分かっていない筈がないだろう?!』
『それでもまだあのおじいさんに掛けた改竄自体は活きてる。それがある以上、此処でアレを倒させる訳にはいかないんだよ』
『っ、こんな時になってまで貴様はっ……!!』
『ィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーアアアァァァッッ!!!!!』
こんな非常時になっても尚、まだ宮司に掛けられた改竄に拘るポセイドンイレイザーに対する憤りをぶつけるかのように目の前を阻む三叉槍を叩き落として睨み付けるクロス。
其処へ街への破壊活動を続けていたキマイライレイザーの攻撃が今度は二人に標的を変えて一点集中で襲い掛かり、それに気付いたクロスとポセイドンイレイザーも慌てて左右に別れて攻撃を回避していくのだった。