戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~ 作:風人Ⅱ
「だぁああっ!ハァアアッ!」
クロスとポセイドンイレイザーがキマイライレイザーの驚異的な進化スピードに翻弄されるその一方、出自不明の謎のギアを身に纏うヴィーヴルの襲撃を受けた響とクリスも、彼女の戦闘力の前に苦戦を強いられてる最中にあった。
クリスが遠距離からの射撃、その援護を受けた響が正面からの近接戦を挑み鋭い拳戟や蹴りを次々に振るっていくが、二人が放つ技や銃弾の全てはヴィーヴルが驚異的な速さで移動した後に残る残像しか捉えられず、一向にダメージを与えられないどころか、明らかに手玉に取られて弄ばれてしまっていた。
―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァッ!!―
「クソッ……!何なんだコイツっ、速すぎる?!」
「っ……攻撃が当たらないどころか、動きも目で追い切れない……!」
クリスの間断のない銃弾も、響の速い拳も確かにヴィーヴルを捉えられている。
しかし、それでもそれらを上回る速度で縦横無尽に動き回るヴィーヴルの姿を捉え切るには叶わず、移動する筋の動きどころか移動の瞬間の予備動作すら見えない。
此処まで一撃らしい一撃も入れられぬままただ弄ばれてばかりで二人が悪戦苦闘する中、息をつく間もなく高速移動を延々と繰り返していたヴィーヴルはそんな二人の戦いぶりを悠々と観察しながら「ふむ……」と頷き、距離を離した。
「成る程……『記号』の力を烙印された装者が一体どれ程のモノかと思ったけれど……案外大した性能はしていないようだね」
「っ、ちょこまかしてるだけのクセして言ってくれるじゃねぇかよ……!しかもいつの間にか剣まで収めやがって……!」
「君達を仕留めるのにわざわざ武器を用いる必要はないと判断したまでの事さ。それにボクのスピードに追い付けないなら、これくらいのハンデはあげないとただの弱い者いじめにしかならないだろ?」
そう思われるのはこちらとしても不本意だからねと、あんなとんでもない速さで動き回った後とは思えない余裕に満ちた様子を崩さず、此処までの戦いの流れから二人に武器は必要ないと踏んで既に刃を収めた自身の盾を撫でるヴィーヴル。
そんな彼女をまっすぐ睨み見据え、響もクリスも額から汗を伝らせながら間合いを測り、次に彼女に仕掛けるタイミングを見計らいつつ疑問を投げ掛けた。
「貴方は一体、何者なんですか……?何が目的でこんな事を……!」
「……?何がって、このタイミングで君達を邪魔しに来た時点で大体の検討はつくだろ?君達『記号』持ちの装者をイレイザーに近付けさせない。それがボクに与えられた役目だ」
分かりきってることだろ?と、ヴィーヴルは響からの疑問を愚問だと言わんばかりに小首を傾げながら不思議そうに返すと、クリスはそんな彼女の態度が癪に障りながらも警戒心は緩めず、周囲や足元に目を配らせながら口を開く。
「あたし等が聞きてぇのは、何でお前がイレイザーに与するのかって話だ。それにそのギア、本部が照合してもデータがない聖遺物を用いているらしいが、一体何処でそんなモン手に入れやがった……?さっきは"この世界"じゃ、みたいな言い方してたが……まさか、お前……」
目を細め、戦闘前にヴィーヴルがこぼしていた呟きを言及するクリス。その問い掛けに対し、ヴィーヴルは「ほう……?」と感心を含んだ笑みを浮かべた。
「その口ぶりだと、半分くらいはもう確信を得ているようだね。そうとも。ボクはこの世界の住人じゃない。此処とは違う世界……"君達装者が、フロンティア事変で消滅した後の世界"からやって来たのさ」
「なっ……」
「私達が……消えた後の、世界っ……?」
何でもない事のようにヴィーヴルの口から告げられたのは、"自身が響達がフロンティア事変で消滅した世界"から、この世界にやって来た来訪者であるという衝撃的な事実。
その内容に響もクリス、通信で三人を観測している本部も驚きのあまり言葉を失う中、ヴィーヴルは自身の顔を覆う黒いバイザーを指先で撫でながら話を更に続けていく。
「それ故に、君達がこのギアやその聖遺物を知らなくとも無理はない。これらは全て、とある機関が君達がいなくなった後に次なる装者を生み出す過程の中、新たに発見され、造られたモノだからね。……最も、この聖遺物のあまりの力に適合出来る者は現れず、果てには"適合者がいないのならいっそ作り出してしまえばいい"などと、愚かにも人の道を踏み外した"禁忌"にまで手を伸ばしてしまった訳だけど……」
「「…………?」」
ふう……と、何処か呆れ気味に溜め息を漏らすヴィーヴルの意味深な言葉に響とクリスは揃って怪訝な反応を返すが、何かに思いを浸らせていたヴィーヴルは顔を上げて気を取り直すように腰に手を当て頭を振る。
「ボクの話なんか今はどうだっていいさ。それより、こうしてペラペラ話して考える時間を与えてあげたんだ。いい加減、この状況を打開する策は何か思い付いたのかな?」
「っ、ちょ、ちょっと待って!もう少し話し合おうよ!どうして貴方がイレイザーに味方するのか、事情を話してさえくれれば戦わないで済む方法だって……!」
「理由?そんなのは簡単な話だ。ボクが好き好んでイレイザーに味方しているだけで、そう大したモノでもない。つまり、彼等の邪魔をする君達はボクにとっても敵だという事だ。分かってもらえたかい?」
「そ、そんな……!」
徐々に徐々に戦闘の構えを取っていくヴィーヴルを制止して話し合いを試みようとするも、取り付く島もなく背中の機械的な黒翼を展開するヴィーヴルにキッパリ切り捨てられて響の顔が悲痛げに歪むが、ヴィーヴルは構わず二人に再度狙いを定めて徐に腰を落としていく。
「まあでも、安心はしてもいいと思うよ。幸いにも『記号』を持つ君達にはまだ利用価値があるとの事で、今はまだ生かしておけとも命じれている。事が終わるまで此処で暫く寝ていてくれるだけでいいから、安心してボクに負けるといい!」
―バッ!―
「くっ……!」
勢いよく地を蹴り、正面から再び迫るヴィーヴルの脚は先程までの異常なまでのスピードに比べて、目に見えて段違いに遅い。恐らく二人を仕留めるのにわざわざ本腰を入れる必要もないと高を括ってるのだろう。
説得も通じず、問答無用で襲い掛かってくるヴィーヴルを前に仕方なしに拳を構える響だが、そんな彼女の腕をクリスが横から掴んで一緒に後方へと飛び退いた。
「?!クリスちゃん?!」
「あんなバケモンに一々まともに付き合うな!今はとにかく不器男と合流すんのが先だ!」
「逃げる気かい?でも生憎、君達の足程度じゃボクから逃れられやしないよ」
クスッと、この期に及んで自分から逃れられると思っているクリスの愚かしさを滑稽だと嘲笑い、口端を釣り上げて微笑むヴィーヴル。
クリスは「ちぃ!」と忌々しげに舌打ちしながらそんな黒い戦姫の顔面に向けてすぐさまリボルバーを発砲するが、ヴィーヴルは飛来する弾丸を頭を横に動かし、そのまま無情にも弾丸を軽々とかわしてしまい、
いつの間にか彼女の背後に設置されていた赤いバルーン状の空中機雷に、かわされた弾丸が着弾し、機雷の起爆と共に凄まじい熱風と爆炎が背後からヴィーヴルに襲い掛かったのであった。
「?!なっ……?」
(今だ!)
ズダダダダダァッ!!と、先の会話の合間に自身がこっそり仕掛けておいた空中機雷が起爆したのを見計らい、クリスはリボルバーを自分達の足元に狙いを定めて素早く床を撃ち抜き、ヴィーヴルを攫う爆発が目前まで迫る直前で響と共に床下……キマイライレイザーの出現により、人々が慌てて避難した後の痕跡を物語るように辺り一面に散乱した書類や倒れたデスクなどがあちこちに見受けられるオフィス内へと飛び降りて避難した。
「っ!クリスちゃん、これからどうするの?!」
「奴が不意を突かれてる隙にこっから離れんだよ!今は一刻を争う!このまま何とか奴の目を掻い潜って、不器男と合流を──!」
「──誰が誰の目を掻い潜るって?」
「……?!―ドゴォオオォッ!!―ぐぁあああっ!!?」
「?!クリスちゃ──!?―バキィイイィッ!!―うぐぁうっ!!?」
この隙に急いで身を隠し、何とか奴の目を盗んでクロスの下へ向かおうと提案するクリスの言葉を遮るように背後から声が響き、驚きと共に二人が慌てて振り返った瞬間、響とクリスは黒いオーラを纏った強烈な拳と蹴りを喰らってしまう。
二人はそのままデスクを薙ぎ倒しながら派手に吹っ飛ばされて壁に叩き付けられてしまい、床に倒れ伏して痛みで身体を震わせながら顔を上げると、其処には今の衝撃の余波で無数の書類が宙を舞う中、振り上げた足を徐に下ろす全く無傷のヴィーヴルの姿があったのだった。
「こ、こいつ、いつの間に……?!」
「今のは中々面白かったよ。けれど、ボクを振り切るにはまだまだ考えが浅いね。もう少し頭を凝らす事だ!」
―バゴォオオンッ!!―
「っ……!ハァアアッ!!」
そう言いながらヴィーヴルは二人に向けて、足元に無造作に転がるデスクをまるでサッカーボールのように勢いよく蹴り飛ばす。
それを見た響はすぐさま身を起こしながら猛スピードで飛来するデスクを肘打ち、裡門頂肘で粉砕するが、その隙にヴィーヴルが一瞬で懐に肉薄し、鋭い左フックを響の脇腹に容赦なく突き刺してしまう。
「!!?がっ、は……!!?」
「反応が遅いよ。今のが刃なら一瞬でお陀仏だ」
「くっ、テメェッ!!」
瞬く間に眼前にまで接近したヴィーヴルに向けて慌てて銃を発砲するクリスだが、ヴィーヴルは脇腹を抑えて悶え苦しむ響ごと素早い回転蹴りでその銃弾を蹴り飛ばしながらクリスの目の前まで踏み込み、彼女の腕を左手で掴んで銃口を真上に向けさせつつもう片方の腕でクリスを壁際まで殴り跳ばす。
其処へ何とか受け身を取って体勢を立て直した響がクリスを助けようと背後から拳を振りかざし飛び掛かるが、ヴィーヴルは背中に目でも付いているかのように振り返りもせず右腕だけ伸ばして拳を受け止めてしまい、更にそのまま響の手首を掴んでクリスに目掛けて全力で投げ飛ばし、二人纏めて壁を突き破りビルの上層から投げ出されてしまった。
「ウグァアアアアッッ!!?」
「ぐぅうっ!!?く、クリス、ちゃっ……!!―ガシィッ!―がぁうっ?!」
「逃がしやしないよ?君達にはまだまだ付き合ってもらうとも!!」
―シュンッ……!!チュドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーオオオオォォンッッッッ!!!!!!―
外に放り出されて落下中の響とクリスに瞬きする間もなく追い付き、二人の首を掴みながら背中の黒翼を展開するヴィーヴル。
瞬間、バーニアを噴かして一気に加速し、地上に目掛けて猛スピードで垂直落下。
そのまま二人を地上に思いっきり叩き付けた衝撃のあまり大爆発が巻き起こり、大地が大きくめくれ上がり地下まで崩落を始めてしまうのであった。