戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~ 作:風人Ⅱ
―市街地―
『───ィイイイイイイイイァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァアアアーーーーーーーーーーーーーアアアァァッッッッッ!!!!!!』
―ズガガガガガガガガガガガガガガガガァアアアンッ!!!!―
『クッ……!!ハァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァーーーーーーッ!!ハァアアッ!!』
暴走するキマイライレイザーの無差別な破壊活動により、周囲一帯見渡す限り火の海と化した地獄絵図が何処までも広がる市街地。
それでも尚も破壊の手を緩めないキマイライレイザーが背中の無数のトゲから赤黒い雷撃を全方向に拡散させて破壊の限りを尽くす中、EXCEED DRIVEを発動させたクロスは業火に包まれるビルの壁を高速移動で駆け走りながら雷撃の雨を掻い潜って距離を詰め、壁を蹴ってキマイライレイザーへと飛び掛かりながらその顔を全力で殴り付けた。
EXCEED DRIVEで倍加されたタイプガングニールのパワーをまともに喰らってキマイライレイザーが怯む。その隙に、クロスは橙色の雷光を身に纏う両拳で相手に立て直す暇を与えまいと目にも止まらぬ高速ラッシュを異形の胴体に連続で叩き込んでいき、最後のフィニッシュに全力の右フックをキマイライレイザーの顎に叩き込み派手に吹き飛ばしていった。
『ブルグァァアアアアアアアアアアアアッッ!!!?』
(いける……!このまま一気にトドメを──!)
―バチィイイイイイイイイイイイイイイイッッ!!!―
『……ッ?!なっ……!?』
キマイライレイザーが体勢を崩したこの隙に決着を付けようと走り出し掛けたクロスだが、横合いから突如金色の雷撃が襲い掛かって咄嗟に後方へと飛び退き、思わず雷撃が放たれてきた方を見れば、其処にはポセイドンイレイザーが三叉槍の先端をクロスに突き出す姿があった。
『クレン……!!』
『言ったろ?今ソレを倒されるのはこっちとしても困るんだ。ソイツは僕が回収させてもらう!』
『っ、そうはいくか!』
背中を向けて未だ起き上がるのに手こずるキマイライレイザーを捕らえようと飛び出すポセイドンイレイザーよりも先に、キマイライレイザーを仕留めるべくクロスも慌てて走り出す。しかし……
『ィイイイイイイイイイイイイイイイイッッ…………ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーアアアァァァッッッッ!!!!!!!』
―バチチィッ……ズガァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーアアアァァァンンッ!!!!!!―
『ッ?!なっ……?』
『何っ?!ぐぅっ!』
二人が接近する気配を背中越しに感じ取ったのか、キマイライレイザーは倒れたまま頭部の角から青白い光弾を周囲にバラ撒くように立て続けに発射し、更にそれら全てを背中の無数のトゲから放出した雷撃で一度に爆発させ、クロスとポセイドンイレイザーを近付けまいとする。
爆発に巻き込まれる寸前でポセイドンイレイザーは三叉槍を盾にするも、爆発の衝撃を殺し切れず両足で地面を削りながら大きく後退りし、クロスは持ち前の反応速度から瞬時に後退し爆発から免れる。
しかしその隙にキマイライレイザーも身を起こすと、身体を丸めるように二人に背中を向けながら先程より更に激しい雷撃の嵐を拡散させていく。
その勢いや凄まじく、とてもじゃないがこの雷撃の中を掻い潜って接近するなど出来ず、二人は反撃に転じることも叶わず回避と防御に専念するしか出来ずにいた。
『ぐうっ!ああったくっ!素直に大人しくしてればいいものをっ!ほんっとにめんどくさいなぁっ!!』
『ッ……!(このままでは街に被害が広がるばかりでジリ貧にしかならない……!しかもクレンの妨害もある以上、それを掻い潜って奴を仕留めるには───』
EXCEED DRIVEの活動限界時間も既に近い。このまま防戦一方に徹していては、奴を仕留める好機を逃してしまう。
どうすればいい?この状況を打開する方法は……と、キマイライレイザーの雷撃を必死に避け続けながら思考を駆け巡らせていたクロスはふと三叉槍で雷撃を防ぐポセイドンイレイザーを視界の端に捉え、ある閃きを得た。
『そうか……ッ!』
―ダッ!―
『チィイッ!……っ?蓮夜君……?ちょっ、何でこっちに突っ込んできてっ?!―ダァアンッ!!―うぉおおおっ?!』
一体何を思い至ったのか、クロスは急にポセイドンイレイザーに目掛けて全力疾走し、そのままポセイドンイレイザーへといきなり両脚を向けて飛び蹴りしてきたかと思えば、彼の三叉槍を踏み台に両脚のパワージャッキを稼働してジャンプし、遥か上空へと飛び上がったのだ。
その反動のあまりポセイドンイレイザーも堪らず吹っ飛ばされ、キマイライレイザーもクロスの謎の行動に虚を衝かれて思わず攻撃の手を緩め戸惑うのも尻目に、クロスは空中でのきりもみ回転からキマイライレイザーに向かって橙色の雷光を纏う両脚を突き出す。
そして背部と両足のバーニアスラスターで加速しながら急降下からの全力の必殺キックをお見舞し、キマイライレイザーを全力で蹴り飛ばしていったのだった。
『ウグァアアアアァウウウッッ!!!?ガッ、ァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!?』
『うっ……っ……?!僕を踏み台にして、奴の不意を突いた……?!』
『どうだ……これなら……!』
クロスの必殺技の一つ、絶牙天翔脚をまともに喰らったキマイライレイザーは橙色の火花を全身から撒き散らしながら悶え苦しみ、片膝をついて着地したクロスもその様子と技を打ち込んだ際の手応えから勝利を確信する。
────しかし。
―…………ゴボォッ…………ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボォオオッッッッ!!!!!―
『──!?何っ……?』
『なん、だ……?奴の身体が……また……?』
クロスの技を受けて苦しんでいたキマイライレイザーの全身が突然、先程の頭部の変化の時のようにまたも泡立ち始めたのだ。
その光景を前にクロスとポセイドンイレイザーが目を見張る中、キマイライレイザーの変化は進行し続け、やがて、全身の皮膚がまるでアルマジロを思わせる強固な甲羅状へと変質していったのだった。
『嘘だろ……また進化した?!』
『クッ……一体何なんだこのイレイザー!?一体何処まで──!』
―…………ザザァッ……ザザザザザザザザァッ…………!!!!―
『──?!なっ、ぐっ……?!な、んだっ……?!』
此処に来てまたも新たに進化したキマイライレイザーの異常さに戸惑いながらも再び拳を構えようとしたクロスだが、その時、不意にクロスの頭に痛みが走った。
まるで何かが頭の中に流れ込んでくるような、形容しがたい不快な感覚。
そんな突然の不調に襲われてクロスも困惑と共に頭を抑えながら激痛で顔を歪める中、頭の中に流れ込んでくる"何か"が徐々に鮮明になっていく。それは……
―…………ケテ…………タスケ、テ…………クレェェェェ…………!!―
―イ、ヤダァ…………シニタ、クナイ…………シニタクナイィィィィ…………!―
―オカアサン…………オカアサン…………オカァ…………ザァァァァァァ…………!!―
『ぁ……ッ……!?(これ、は……何だっ……?!声っ……?あの……イレイザー、から……!!?』
そう。クロスの頭の中に流れ込んできていたものの正体は、まるで亡者の呻き声のような、おぞましい"無数の人々の声"だったのだ。
その声の出処が目の前のキマイライレイザーから流れて来ているのを感じ取り、クロスは更に困惑を深めるも、あまりにも多過ぎる数多の声に脳が負担に耐え切れずまともに立っていられない。
そんな明らかな隙を見逃す筈もなく、全身をアルマジロの甲羅のように強固にしたキマイライレイザーは獣の咆哮と共にクロスへと突進し、より固く威力を増したゴリラのように強靭な剛腕を振るい容赦なくクロスを殴り飛ばしてしまった。
『ウグァアアアアアッ!!』
『っ!?何やってるんだ蓮夜君っ!』
『ィイイイイイイイイイイイアアアアアアアアアッッ!!!!』
火花を撒き散らしながらキマイライレイザーに派手に殴り飛ばされ、遥か後方の倒壊した建物の壁に勢いよく叩き付けられて地面に倒れてしまうクロス。
そんなクロスにキマイライレイザーは追撃の突進を仕掛けようとするが、ポセイドンイレイザーがすぐさま三叉槍の先端を地面に突き立てて水のエネルギーを大地に注ぎ込み、キマイライレイザーの足元から無数の水の鎖を生やし雁字搦めに拘束していくが、そんな拘束も大して意味を成さないのか、キマイライレイザーが力任せに身動ぎをするだけで水の鎖の何本かが簡単に引きちぎられてしまう。
『クッソッ……!早く立ってくれないか蓮夜君?!でないと真っ先に君が殺されるぞ!』
『……ッ……お前、に……言われずともっ……!』
―ガコンッ!―
「──ひっ……!」
『……ぇ……?』
ポセイドンイレイザーに憎まれ口を返しながら、おぞましい声こそ止んだものの未だ頭痛が走る頭を抑えつつクロスが半壊した建物の壁に手を掛けてどうにか起き上がろうとした拍子に壁の一部が崩れ、それと同時に、壁の向こうから微かな悲鳴のような声がした。それに釣られて半壊した壁の向こう側を覗き込むと、其処には……
「ぁ……ぅ……ぁあっ……」
『(?!子供……?!何故こんな所に?!)』
半壊した建物内の隅っこで、全身灰で黒ずんだボロボロの姿で縮こまり、目尻に涙を浮かべながらクロスに怯えた眼差しを向けるランドセルを背負った少女の姿があったのだ。
まさか、騒ぎに逃げ遅れてずっとこの場所に身を隠していたのか。少女の存在に気付いたクロスは驚きと戸惑いを浮かべながらもすぐに我に返り、近くの瓦礫などを押し退かし、少女の下に駆け寄ってその身体を抱き抱えると、外に出て戦場の外を目指し走り出した。
『くっ……っ?!ちょっ、まっ、何処へ行く気なんだ?!』
『逃げ遅れた民間人がまだ残っていた!このまま此処にいては戦いに巻き込まれる!何処か安全な場所へ……!』
『馬鹿なのかい君は?!今は他人の事なんか気にかけてられる状況じゃ──!』
『ィイイイイイイイイイイイイイイイイッッ…………ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアァァァッッッ!!!!!!』
―シュウゥゥゥッ……ズガァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーアアアァァァンンッッッッ!!!!!!―
『?!やばっ……!うぉおおおおおおおおっ?!』
『ッ!クッ!ぐぁああああああっ!!!?』
「きゃあああああああっっ!!」
逃げ遅れた少女を安全な場所へ避難させる為に戦線を離脱しようとするクロスを慌てて呼び止めるポセイドンイレイザーの声を遮るように、キマイライレイザーは天を仰ぎながら爆音のような雄叫びを上げた瞬間、背中の無数のトゲから再度赤黒い雷撃を無差別に拡散させて放出したのである。
しかも進化による影響なのかその威力は先程までの比ではなく、自身を拘束する水の鎖を全て破壊するだけでなく、大地を大きく抉りながら撒き散らされた雷撃は三叉槍による防御ごとポセイドンイレイザーを吹き飛ばした。
そしてクロスも咄嗟に少女を庇い背中で雷撃を受け止めたが、その凄まじい威力に踏ん張る事も叶わず派手に吹っ飛ばされてしまい、あまりのダメージに変身も強制解除されて蓮夜の姿に戻りながら地面を何度も転がり、腕の中に抱えていた少女も手放して彼女も地面に打ち付けられてしまう。
「あうぅっ!!ぅ……ぃ、たいっ……」
『ァァァアアアアアアアアアアアアアアアッッッ……!!』
「ぐっ……ぅっ……!ま、ずいっ……!!」
身体を打ち付けた痛みで泣きじゃくる少女の声に反応したのか、キマイライレイザーは徐に地面に倒れる少女の方へと振り返り、彼女に狙いを定めて歩き始めた。
それに気付いた蓮夜も地面を掴んで身体を引きずりながら何とか少女の下へ向かおうとするも、先程の雷撃のせいか全身に痺れが走り、身体を上手く動かす事が出来ない。
そうしている間にもキマイライレイザーは徐々に徐々に少女へと迫り、大量の涎を滴らせながらその巨大な口を大きく開き、恐怖と痛みで動けない少女を喰らおうと容赦なく襲い掛かり、
真横から、両肩のアーマーのバーニアで加速しながら猛スピードで飛び出してきた切歌が両脚を突き出し、寸前のところでキマイライレイザーの顔面を横から蹴り付けたのであった。
『ゲェアアアアゥッッ!!?』
「?!切歌……?!」
「ぐううううううううっっ……!!!!デェエエエエエエエエエエエエエエスッッッッ!!!!!」
ゴウウゥゥッ!!!と、バーニアの勢いを更に最大まで加速させ、切歌はキマイライレイザーの横顔を両脚で蹴り付けたまま強引に遥か遠方の建物に向かって押し出し、そのまま自分ごとキマイライレイザーを建物に叩き付けて壁をブチ破り、建物内へと共に姿を消してしまった。
蓮夜も突然乱入者してきた切歌に驚いて一瞬呆然となるが、すぐにハッと正気に戻り、未だに痺れが残る身体に鞭を打って起き上がると、少女の下へ覚束無い足取りで駆け寄りその身体を抱き起こす。
「っ、大丈夫かっ……?何処か怪我は……?!」
「ぅ……へ、へいき……だいじょうぶ……」
「っ……そうか、良かったっ……。この先に行けば、安全な場所に出られる。一人で逃げられるか……?」
「っ……う、うんっ……」
恐らくまだ化け物に襲われた恐怖が残っているだろうに、気丈にもしっかりと頷き返して少女は蓮夜が指差す方向に向かって走り出し、その後ろ姿を見送りながら蓮夜も一先ずは安堵するが……
―バキィイイィッ!!―
「うぐぁあああぅっ!!?」
「!?切歌っ!」
キマイライレイザーと共に消えた建物の中から、切歌が悲痛な悲鳴と共に宙を舞い勢いよく殴り飛ばされてきた。
それを見た蓮夜は慌てて切歌が吹き飛ばされる先に回り込んで彼女の身体を抱き留めるも、あまりの勢いに受け止めきれず一緒に倒れ込んでしまう。
「ぐうぅっ!っ……大丈夫、かっ……切歌っ……?」
「っ……へ、へっちゃら、デスよ……これくらいっ」
「にへへっ……」と、キマイライレイザーに殴られた痕が残る頬を力任せに拭いながら苦笑いを浮かべてそう返し、切歌は大鎌を杖代わりにしてフラフラと身を起こす。
其処へ、切歌が吹き飛ばされてきた建物の壁を派手に破壊しながらキマイライレイザーが獣の咆哮を上げて姿を現し、蓮夜は鋭い眼差しでキマイライレイザーを睨み据えながら切歌の横に並び立つも、ふとその顔色に影が差し、隣に立つ切歌に目を向ける。
「切歌……お前、戦えるのか……?」
「………………」
何かを案じるような、蓮夜の短い言葉。
それだけで彼が何を言わんとしているのかを理解し、切歌は一瞬口を閉ざし俯いた後、徐に口を開く。
「正直……アタシにはまだどの選択が正しいとか、間違いだとか、ちゃんとした答えは出せていないデス……」
「…………」
未だに迷いが心の内に残っているのが分かる、か細い声音。
蓮夜もそれを聞きながら彼女の心情を察して複雑げな顔を浮かべるが、切歌はギュッと、大鎌を握り締める両手に力を込めながら顔を上げ、キマイライレイザーをまっすぐ見据えた。
「ただ、それでも……アイツにこれ以上好き勝手させる訳にはいかないって事だけは、アタシにだって分かるデス……!だから今は、アタシも戦うデスよ!調が……調が自分で、自分に納得出来る答えを見付けられるまで、此処で皆を守り切る……それが今の、アタシが自信を持って言える、ただ一つの答えデス!」
「……切歌……」
『ィイイイイイイイイイッッ……グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーアアアァァァッッッ!!!!!!』
力強い決意を胸に、大鎌を手に身構える切歌。
その勇ましさを感じさせる姿に蓮夜も一瞬目を見開いて気圧されるモノを感じながらも微笑を浮かべると、キマイライレイザーが咆哮を上げながら大地を振動させて二人に目掛けて勢いよく突進してくる。
それを見た切歌は瞬時に両肩のアーマーのバーニアに火を噴かしながら先陣切ってキマイライレイザーへと正面から猛スピードで突っ込んでいき、蓮夜もバックルにカードを装填し再度クロスに変身しながら切歌に続き、キマイライレイザーへと挑み掛かっていくのだった。