戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第八章/繋xX式・調(ツキ)が読み解くわたしの答え×黎明・それでもme侶スは駈ke走ル⑤(前)

 

―市街地―

 

 

―ガギィイイイイイィッ!!―

 

 

「ぐうぅうっ……!!こんのぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

『ィイイアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!』

 

 

 勢いよく飛び掛かった切歌が大振りに振るったイガリマの刃がキマイライレイザーの肉体の前に容易く弾かれ、まるで鉄を叩いたような甲高い音が虚しく鳴り響く。

 

 

 それでも尚、切歌は諦めず大鎌を弾かれた反動を利用して一度バックステップし、再度素早く突進しながら今度はキマイライレイザーの脇腹に目掛けて横薙ぎに大鎌を振るうも、キマイライレイザーは左腕のみで大鎌を払うように弾き、同時に右腕を振り上げ切歌に向かって巨大な拳を飛ばした。

 

 

「っ!?ヤバっ──!!」

 

 

『Final Code x……clear!』

 

 

 武器を弾かれた反動で地から足が離れ、宙に浮いているせいで回避行動に移れず冷や汗を流しながらも咄嗟に防御態勢を取ろうとした切歌。

 

 

 だがその時、不意に響いた電子音声と共にそんな彼女の左側を一筋の真紅の光線が背後から通り、光線はそのままキマイライレイザーの拳に直撃して暫しの拮抗の末に腕を弾き返した。

 

 

『ギィイイイイイイッ?!』

 

 

『今だ切歌っ!下がれ!』

 

 

「っ!」

 

 

 バァンッ!バァンッ!と、立て続けに背後から響く銃声と共にクロスの指示が飛ぶ。

 

 

 その声に引っ張られるように後方へと大きく後退した切歌が横を見ると、其処にはいつの間にかタイプイチイバルに姿を変えたクロスが真紅のライフル銃をキマイライレイザーに連射し続ける姿があった。

 

 

『あまり一人で突出し過ぎるな……!』

 

 

「ご、ごめんなさいデス……!でも、おかげで助かったデスよ!」

 

 

『……そうとも言い切れなさそうだっ』

 

 

「え?」

 

 

 ライフル銃から光線を発砲し続けるクロスの声が何処か忌々しげに聞こえる。

 

 

 そんな彼の視線を追って切歌がキマイライレイザーに再び目を向けると、キマイライレイザーはクロスの光線を防御もせずその身一つで受け止めていた。

 

 

 矢継ぎ早に撃ち込まれる光線の弾幕とその衝撃により身動ぎ、何度か足を後ろに下げたりはするものの、クロスの光線自体が効いている様子はなく、全身に弾幕を浴びせられても一歩一歩確実に足を進めて二人に迫りつつある。

 

 

「ア、アイツ、蓮夜さんの攻撃が全然効いていないデスよ?!」

 

 

『ッ……貫通どころかまともに怯みすらしないのかっ……切歌!俺が後方支援で奴に通じる技を幾つか試す!お前は前衛で奴の注意を引いてくれ!ただしまともに打ち合おうとはするな!奴のパワーはまともに受ければ俺ですら危ういぐらいだ!』

 

 

「っ、了解デスっ!」

 

 

 早口のクロスから指示を受けると同時に、切歌は瞬時に背中のバーニアを噴かしてキマイライレイザーに正面切って素早く突っ込み、クロスは右に駆け出しながらライフル銃を弓矢に切り替え、二人の周りを旋回しながら光の矢をキマイライレイザーに連続で放つ。

 

 

 光の矢が頭や肩等に全て命中するが、キマイライレイザーは特に気にも留めず向かってきた切歌を迎撃してその剛腕を振り回している。

 

 

 それに対して切歌はバーニアを用いた俊敏性と機動力で立ち回って何とか上手くキマイライレイザーの強烈な一撃一撃を回避し続け、クロスはそんな二人の攻防を仮面の下で苦々しげな顔で見守りながらも腰部のリアアーマーからリフレクタービットを全基射出し、ビームガン、ガトリングガンと何度も武器を変えてビットを混えた集中砲火をキマイライレイザーに旋回しながら浴びせていく。

 

 

 だが、やはりクロスの攻撃はどれも通じず、撃ち込まれた弾の全てがその強固な肉体の前に無足に弾けて霧散するだけだった。

 

 

『これでも無理なのかッ……!切歌、下がれ!今度はデカい一撃を奴に叩き込む!』

 

 

『Final Code x……clear!』

 

 

「へ?!わ、分かったデスっ!」

 

 

 必死に動き回る中でのいきなりの指示に一瞬戸惑う切歌だが、クロスが捩じ込むように自身のベルトのバックルにカードを装填する姿を見てすぐにキマイライレイザーの拳を避けながら、言われた通り距離を離す。

 

 

 その間に両手のガトリングガンを巨大な砲口のビーム砲に切り替えたクロスは、砲口に真紅の粒子を溜め込んで巨大な光弾を徐々に形成していき、キマイライレイザーもその気配を察知したのかクロスの方に振り返るも、気付いた時には時既に遅く、光弾を完全に形成したクロスは両足のアーマーからアンカーを展開して地面に縫い付けると共にビーム砲の照準を定め……

 

 

『消し飛べ!』

 

 

―ドォオオオオオオオオオオオオオオオォォンッッ!!!!―

 

 

『ヌンッ!グゥウウウウウウウウウウウッッ……ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!?』

 

 

 引き金を引いて放たれた真紅の巨大な光弾が、キマイライレイザーに向かって一直線の軌道で放たれた。

 

 

 対するキマイライレイザーは自身の強靭さを信じてか、防御もせずにその身一つで正面から光弾を受け止めたものの、僅かな拮抗の末に光弾が押し切り、巨大な爆発と衝撃、そしてキマイライレイザーの悲鳴が爆発音と共に響き渡ったのであった。

 

 

「くうぅっ!っ……や、やった……デスかっ……?」

 

 

 吹き荒ぶ黒煙と衝撃に腕で顔を庇い、時間を掛けて徐々に爆風が収まったのを見計らい、切歌はキマイライレイザーが立っていた場所に目を向ける。

 

 

 もうもうと立ち込める黒煙のせいで直ぐにはその姿を視認出来なかったが、少しずつ晴れていく煙の向こうにその姿……クロスの渾身の一撃を受けて上半身が綺麗に消し飛び、下半身のみが残り佇むキマイライレイザーだったモノの姿があった。

 

 

「や……やった……やったデス……!やりましたデスよ、蓮夜さん!これで宮司さんに掛けられた改竄も……!」

 

 

『──────────』

 

 

「…………?蓮夜、さん?」

 

 

 可笑しい。キマイライレイザーを見事倒したというのに、クロスは何故か力無くビーム砲を下ろし、無言だ。

 

 

 喜ぶどころか、こちらに顔を向けてすらくれない。

 

 

 その様子に小首を傾げ、切歌がクロスに歩み寄ろうとして、

 

 

『────何の……冗談だっっ……!!』

 

 

「…………へ?」

 

 

───そんな、悲痛と無力感、そして絶望が入り混じったかのようなクロスの声が、切歌の耳に微かに届いた。

 

 

 

 

 

 

―……ボゴォッ……ボゴボゴボゴボゴボゴォッ……ドバァアアアアアアアアアァッッッッ!!!!!―

 

 

『───ィイイイイイイイイイイイァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーアアァァッッッッ!!!!!!!』

 

 

「!!!?え……!!!?」

 

 

 

 

 クロスの不穏な言葉に思わず足を止めた切歌の耳に、今度は不快な泡(あぶく)の音と、耳を劈くような絶叫が届く。

 

 

 驚きと共に振り返れば、其処にはなんと、確実に絶命したかに思われたキマイライレイザーの下半身の断面図から、"上半身がいきなり生えてきたのだ"。

 

 

 天を仰ぎ、まるでこの世に再び生誕した事を喜ぶかのように獣の雄叫びを上げるキマイライレイザーの思わぬ復活を目の当たりにした切歌も我が目を疑い言葉を失ってしまう中、クロスが動揺を露わに声を震わせる。

 

 

『確実に仕留めた筈だ……上半身を……頭部や心臓の急所を丸ごと消し飛ばしたんだぞ……!不死身なのか奴は?!』

 

 

『ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーアアァァァッッッッ!!!!!』

 

 

 信じられないと、堪らず叫ぶクロスの声を掻き消すかのようにキマイライレイザーの雄叫びが声量を増し、それに呼応するように頭部の角、背中の無数のトゲ、口の中に膨大なエネルギーを蓄積し始める。

 

 

『ッ!不味いっ、切歌っ!』

 

 

「……え……?」

 

 

 その様子を目にし、クロスは咄嗟に切歌の方に振り返るが、キマイライレイザーの不可解な復活から漸く我に返ったものの、あれらの攻撃を一度も目にしていない切歌は事態を飲み込めずに困惑している。

 

 

 すぐさま庇いに向かおうと一瞬考えるも、彼女との間には距離がある上、あれらの攻撃の威力を一度に浴びせられれば彼女を庇い切るのは不可能だと頭の中で断じ、クロスは瞬時に自身の周囲に漂わせていたリフレクタービット全基を一斉に操作して切歌に向かわせると、彼女の周囲にビットによる障壁を展開させた。

 

 

「?!蓮夜さん?!何を──!!」

 

 

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーアアァァァッッッッ!!!!!』

 

 

―シュウゥゥッ……ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオオォォンッッッッ!!!!!!!―

 

 

『くっ?!ぐっ、ァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアアァァッッッッ!!!!!!?』

 

 

「蓮夜さんっ!!ぅ、ぁああああああっ!!」

 

 

 キマイライレイザーの全身から放たれた雷撃、光芒、光線が極光となり、辺り一帯を一瞬で飲み込んだ。

 

 

 クロスはすぐさま両腕を十字に組んで防御姿勢を取るも、それも虚しく光の中に飲み込まれてしまう。

 

 

 クロスに呼び掛ける切歌も障壁ごと光に飲まれ、直後に襲い掛かったあまりの衝撃に立つ事もままならず倒れ込み、視界全てが完全に光に包まれた直後、ドーム状の凄まじい規模の爆発が街の中心に発生したのであった───。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

───光で弾け飛んだかに思われた視力が。音で消し飛んだかに思われた聴力が、少しずつ力を取り戻し始める。

 

 

 視力が蘇って最初に目にしたのは、アスファルトの地面の上で燃える炎と立ち込める黒煙、次に遠くに見えるビル群の全てが消し飛び、残ったビルの残骸が燃え盛る光景。

 

 

 次いで戻った聴力が、轟々と燃える炎の音を様々な方向から拾う。

 

 

 其処で漸く、目の前の地獄が現実であること。自分がまだ生きていることを、暁切歌は自覚できた。

 

 

「……ッ……アタ、シ……は……?」

 

 

 目線を落とすと、自分のギアとスーツが黒く汚れ、破れたスーツの隙間から肌に幾つか切り傷があるのが見えるも、大した外傷は今のところ見受けられない。せいぜいちょっと身動ぎをしただけで、少し身体が痛む程度だ。

 

 

「アタシ……無事だった、デスか……?―ドシャアァッ!―……え……?」

 

 

 未だに視界が僅かに揺らぎ、頭がぼうっとする中で、自身の無事に一先ず安堵したのも一瞬。

 

 

 不意に何かが落下する音と共に、切歌の目の前に何かが転がってきたのだ。

 

 

 ボヤけていた視界が、今度こそ完全に元に戻る。そして目の前に転がる"ソレ"を肉眼で捉えた瞬間、切歌は目を剥き、その顔から血の気が引いて青く染まっていく。何故なら……

 

 

 

 

 

 

『────ァ…………ぐっ…………』

 

 

「……れ……蓮夜、さん……!!?」

 

 

 

 

 

 

 切歌の目の前に転がってきたモノの正体は、全身の装甲や複眼がヒビ割れ、今の切歌の傷の比ではないほどに体中のスーツの隙間から大量に血を流し、仰向けに倒れる通常形態に戻ったクロスだったのだ。

 

 

 驚愕の中、倒れるクロスの向こう側で何かが動くのが見えた。

 

 

 其処には、この街を地獄と化した張本人……キマイライレイザーが何かを殴った後なのか振り上げた右腕を徐に下ろす姿があり、傷付くクロスをもう一度見て、切歌はハッとなる。

 

 

(ま、まさか……アタシが気を失っている間も、戦ってたデスか……?アタシを、守る為に?!)

 

 

『…………ま、だ…………ぅ…………』

 

 

「……っ!蓮夜さんっ!!」

 

 

 切歌が言葉を失う中、傷付いた身体を無理矢理起こそうとしたクロスが力尽きるように再び倒れたと同時に、変身が解けてボロボロの姿の蓮夜に戻ってしまった。

 

 

 慌てて駆け寄ろうとした際に体の痛みで顔を歪めるが、そんなものは振り払って蓮夜の傍に寄ると、額から流れる血で片目を伏せる蓮夜も顔を覗き込む切歌に気付き、枯れた声で口を開いた。

 

 

「にげ、ろ……切歌……おまえ、だけでもっ……」

 

 

「……!」

 

 

 声を絞り出し、自分にこの場から逃げるよう促す蓮夜の言葉に、切歌は目を見開く。

 

 

 その間にもキマイライレイザーは蓮夜にトドメを刺そうとしているのか徐々に迫ってきており、蓮夜もそれに気付いて何とか身を起こすも、見た目通りに相当なダメージを負っているせいでまともに立てず、血を地面に滴らせながら膝から崩れ落ち四つん這いになってしまう。

 

 

「む、無茶デス!そんな身体で……!これ以上戦ったら蓮夜さんが死んじゃうデスよ!!」

 

 

「は…………ぁ…………それで、も…………やるん、だ…………お前の為にも…………あの人の為にも…………調の為、にもっ…………!!」

 

 

「ッ……!」

 

 

 鬼気迫る表情で、この程度の傷でまともに動かない不甲斐ない自分の身体を鼓舞するようにそう呟き、蓮夜はキマイライレイザーをまっすぐに睨み据えて外さない。

 

 

 そんな彼の姿を見て、言葉を聞いて、切歌はあまりの気迫に圧され、同時に、彼が其処までの強い覚悟で自分と調の絆を取り戻す為に戦おうとしているのだと感じ取り、一度目を伏せて俯いた後、顔を上げたその表情に力強さを宿し、蓮夜を守る様に彼の前に立った。

 

 

「……?!きり、かっ……?」

 

 

「アタシだって、守りたいデス。調も、宮司さんも……蓮夜さんの事だって……!どんなにミソッカスなアタシにだって、どうしても譲れない、大切モノがあるんデスッ!!」

 

 

―ダンッ!―

 

 

「!まっ、ぐっ……ごばぁっ……!」

 

 

 取り出した大鎌をブンブンと派手に振り回しながら身構え、キマイライレイザーに正面から突っ込む切歌。

 

 

 その背中を止めようと慌てて手を伸ばす蓮夜だが、胸の内から込み上げてくる血の塊を吐き出し、再び倒れ伏してしまった。

 

 

「だァああああああああっ!!はぁあっ!!やぁっ!!」

 

 

―ガギギギギギギギギギギギギギギギギィイイッッ!!!!―

 

 

 一方で、キマイライレイザーに挑み掛かる切歌は大鎌をまるで手足のように巧みに扱い、斬撃の嵐を高速で何度も何度もその身体に叩き込んでいく。

 

 

 だがしかし、キマイライレイザーのその強靭な肉体、そして何よりもの前提としてイレイザーを倒せる『記号』の力をまだ持たない切歌では、ダメージどころか傷一つすら負わせられず如何なる攻撃も無慈悲に弾かれてしまう。

 

 

(それでも……!コイツを蓮夜さんから遠ざける事ぐらいなら、アタシにも!)

 

 

 そう、自分ではこの異形の相手にすらならないと分かってる。

 

 

 だからせめて、傷付いた蓮夜から遠ざける為にこの不死身の怪物を自分が引き付け、まだ到着していない響とクリスが来てくれるまで何とか時間を稼ぐ。今の自分に出来るのはそれぐらいだ。

 

 

(それに、もしコイツが本当に不死身なら響さんのガングニールの力……!"神殺し"の力が通じるかもしれないデス!それまでは、アタシが!)

 

 

 

『ギィイイイイイイッ……!』

 

 

 不死の神を殺す力を持つ響のガングニールならば、自分達では倒し切れなかったこのイレイザーを何とか出来る可能性がある。

 

 

 其処に一途の望みを掛けて奮闘し、食い下がる切歌の存在をいい加減に鬱陶しく感じ始めたのか、大した脅威としても見ずに彼女を無視して蓮夜にトドメを刺しに向かおうとしていたキマイライレイザーが唸り声と共に切歌を一瞥し、彼女が振りかざした大鎌を片手で正面から受け止めると同時に、もう片方の手で切歌の胸を殴り付けて派手に吹き飛ばしてしまった。

 

 

「うぐぁあうううううっぅ!!ぐっ……ぁ……!」

 

 

「はぁっ……っ……切歌……!!」

 

 

 土埃を巻き上げながら何度も何度も地面を転がり、漸く勢いが止まったと同時にギアの変身も解除されてしまう切歌。

 

 

 俯せに倒れる彼女を目にし、蓮夜は身体を引きずって血の跡を地面に描きながらも切歌の下へ向かおうとするも、キマイライレイザーは動かない切歌を見つめたまま、その背中に生えた無数のトゲに再び赤黒いエネルギーを充填し始めていた。

 

 

「っ!ク、ソッ……!!切歌ぁ!!立てぇ!!立って逃げろぉ!!」

 

 

「ぅ……っ……」

 

 

 血粒を吐き出しながら大声で切歌に呼び掛ける蓮夜。その声に反応して切歌が僅かに身動ぎをし、冷や汗の流れる顔を何とか上げてキマイライレイザーが自分を狙っているのに気付く。

 

 

 身体を動かして立ち、もう一度ギアを纏わねばと震える手の中のペンダントを握り締めるが……

 

 

(こえ、が……息も……でき、…………!)

 

 

 声が出ない。それどころか、呼吸もままならない。

 

 

 恐らく、先程の一撃をまともに喰らったせいだ。これでは、ギアを起動させる為の聖詠すら歌えない。

 

 

 過呼吸気味に、必死に何度も呼吸を繰り返して肺に空気を送り続けるが、そんな切歌の回復よりも早く、キマイライレイザーの背中に溜まったエネルギーが一気に放出され、切歌に牙を剥いた。

 

 

「切歌ぁああっっ!!!」

 

 

「……ぁ……」

 

 

 目前に迫る、死の雷撃。

 

 

 これは駄目だ。もう間に合わない。

 

 

 瞬時にそう理解すると共に、蓮夜の悲痛な声を耳に、心の内で彼に謝罪する。

 

 

(ごめんなさいデス、蓮夜さん……ごめん、デス……しら──)

 

 

 何も出来なかった、果たせなかった無力な自分を、どうか許して欲しい。

 

 

 降り注ぐ雷撃を前に静かに目を閉じ、瞼の裏に蘇り、いつもの笑顔を向けて振り返る"彼女"に謝り、自分の命を刈り取る雷を受け入れようとした、直前──

 

 

 

 

 

 

「───切ちゃん!!!」

 

 

 

 

 

 

──幻聴か、はたまた死を前に自身の走馬灯が見せた幻影か。

 

 

 何処からともなく"彼女"の声が聞こえた直後、自分の身体が何かに突き飛ばされる勢いで抱き抱えられ、

 

 

 "彼女"の声の残響ごと掻き消すかのように、自分の世界は再び爆音と光に支配されたのだった。

 

 

 

 

 

 

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