戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第八章/繋xX式・調(ツキ)が読み解くわたしの答え×黎明・それでもme侶スは駈ke走ル⑥(後)

 

 

───綺羅綺羅の刃で 半分コの廃棄物-ガーベッジ-!予習したの 殺戮方法……!

 

 

「デェエエヤァッ!!」

 

 

『チィッ!この……!』

 

 

 クロスとキマイライレイザーの戦いに決着が着いたその一方、ポセイドンイレイザーと相対する調と切歌は阿吽の呼吸による絶妙なコンビネーションを遺憾無く発揮し、相手に一息吐かせる暇すら与えない連携攻撃を絶え間なく繰り出していた。

 

 

 あまりの熾烈さからどうにか距離を開こうと後退を繰り返しながらポセイドンイレイザーが放つ連続水弾攻撃を、歌でフォニックゲインを高める調が無数の小型の丸鋸による遠距離攻撃で迎撃して全て相殺していき、弾け飛ぶ水滴の中を切歌が全力で駆け抜けながらその懐にまで肉薄し、大鎌による鋭い横振りの一撃をポセイドンイレイザーに見舞う。

 

 

 迫る刃を前に反射的に自身の身体を水化させて回避しようと試みるポセイドンイレイザーだが、切歌の大鎌が水と化した己の身体を斬り裂いた瞬間、有り得る筈のない痛みが襲い、苦痛で顔を歪めながらも慌ててバックステップし実体化した自身の胸を抑えた。

 

 

『(っ……!攻撃が透過せずにダメージを受ける……!彼女のギアの能力のせいか……?!よりにもよって厄介な──!)』

 

 

高出力全開で フィールドを駆けよう!勝負も夢も 命懸けのダイブ!

 

 

 『記号』の力が上乗せされたイガリマの特性の前では、自身の肉体を水に変化させて攻撃を透過させる能力も活かされやしない。

 

 

 そんな相性の悪い相手とのよりにもよってなマッチングに、内心毒づいてしまうポセイドンイレイザーの真横から歌声が聞こえて慌てて振り返ると、其処には両脚のローラースケートで素早くポセイドンイレイザーの側面へと回り込むように滑走しつつ、ツインテールを思わせるアームドギアから展開した巨大丸鋸を振るう調の姿があった。

 

 

 ポセイドンイレイザーは咄嗟に左手を突き出し発生させた水の障壁で巨大丸鋸を、その隙に反対側から大鎌を横薙ぎに振るって奇襲を仕掛けようとした切歌の一撃を三叉槍で受け止め、防御する。

 

 

『ッ!ったく、参ったねぇほんと……!まさか君達が此処までやり辛い相手になるとは思わなかったよっ……!』

 

 

「今更後悔したって遅いデスよ!」

 

 

「今度はもう迷わない……!貴方は此処で、私達が倒してみせる!」

 

 

『おー、こわっ。強気に言ってくれるじゃないか。けど前にも言った通り、僕もそれなりに負けず嫌いなんだ。そう易々と勝ちは譲らないさぁ!』

 

 

―バァアアアアンッッ!!!―

 

 

「っ?!う、ぁああっ!!」

 

 

「調っ?!」

 

 

 調の巨大な丸鋸を受け止める障壁の水が蠢いて変容し、球状となった瞬間に爆発を巻き起こした。

 

 

 反応が遅れた調は至近距離からの爆発をもろに喰らって吹っ飛ばされてしまい、そんな彼女の安否に気を取られた切歌をポセイドンイレイザーが素早く身を翻しながらながら放った蹴りで蹴っ飛ばし、更に三叉槍を天に掲げて先端から全方位に向けて雷を拡散させていき、二人に追撃を加え纏めて吹き飛ばしてしまう。

 

 

「「ぐあああぅっっ!!」」

 

 

『蓮夜君から『記号』の力を得て、二人掛りでなら僕を仕留められると本気で思ってたのかい?生憎これでも上級イレイザー、そう簡単にやられてやれるほど容易くないと自負してるつもりだ──』

 

 

 

 

 

『───そうか。なら、こちらも全力で叩かせてもらう』

 

 

 

 

 

『──?!―ガギィイイイイイインッ!!―ぐぅうううっ!!』

 

 

 

 三叉槍を構え直して更に追撃を仕掛けようとしたポセイドンイレイザーの頭上から、新たな人影が一直線に降下して右腕を振るい、不意打ちを仕掛けた。

 

 

 ザワッ!と、肌に感じた殺気と直感を頼りにポセイドンイレイザーが三叉槍を頭上に向けて振るえば、甲高い剣戟音と共に火花が散り、ポセイドンイレイザーを襲撃した人影……クロスは攻撃を弾かれた反動を利用して距離を離し、宙で身を捻って態勢を立て直しながら地上へ着地した。

 

 

「!蓮夜さん……!」

 

 

『っ……君が此処にいるって事は……まさか……』

 

 

『……ああ。例のノイズ喰らいはこの手で仕留めさせてもらった……二人の、この力のおかげでな』

 

 

『……ッ……』

 

 

 左拳を握り締め、キマイライレイザーの撃退を告げるクロスの言葉にポセイドンイレイザーは僅かな動揺を見せる。

 

 

 その吉報に、傷付いた身体を起こした調と切歌も互いに顔を見合わせて喜びを露わに微笑み、力強く頷き合いながら立ち上がってそれぞれのアームドギアを構え直す中、ポセイドンイレイザーはそんな三人の顔を静かに見回し、一拍置いてめんどくさそうに溜め息を漏らした。

 

 

『あーあ。残念だなぁ。これを機に幾つかの目的も纏めて達成しようかと思ったけど、二兎を追う者は一兎をも得ずってホントにあるんだねぇー。……これも彼の目を欺けなかった、僕の力不足か……』

 

 

『……何をボソボソ独り言を言っている?』

 

 

『いや?こっちの話さ。それより、件のノイズ喰らいを片付けたんならこの辺でお開きって事でよくない?おじいさんに掛けられてた改竄も解けた訳だし、お互い、これ以上無駄に体力を使う必要とかないでしょ?』

 

 

 目的のキマイライレイザーを倒された事で戦う気概も失せたのか、ポセイドンイレイザーはやる気なく肩を竦めて戯けるように停戦を申し出る。

 

 

 しかし、調と切歌、クロスに警戒と構えを解く気配は一向になく、そんな三人のピリついた空気から自分の提案に聞く耳を持つ気はないのだと察したポセイドンイレイザーは「やれやれ……」と首を軽く振り、三叉槍を手の中で回転させながら頭上に掲げ、凄まじいエネルギー量の雷を溜めていく。

 

 

『ま、そう簡単に見逃してもらえるような所業をしていない訳だから、当然っちゃ当然か。……なら、こっちも全力で迎え撃たせてもらうよ!』

 

 

―ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーオオオオォォンッッッッ!!!!!!―

 

 

「同じ技は……!」

 

 

「二度も喰らわないデス!」

 

 

 エネルギーが蓄積された三叉槍から、青白い無数の雷撃が広範囲に向けて放たれる。

 

 

 掲げる三叉槍の真下に立つポセイドンイレイザーの姿を掻き消してしまう程の雷の眩しさに堪らず目を細めながらも、調と切歌は矢継ぎ早に襲い来る雷撃の数々を紙一重で回避しながら雷撃の発生源のポセイドンイレイザーを目指し、突き進むが……

 

 

 

 

───二人が躱した雷撃に紛れて、いつの間にか調と切歌の死角に回り込んだ"二体のポセイドンイレイザー"が三叉槍を突き立てようと振りかぶっていた。

 

 

「え……?!」

 

 

「なっ……(分身?!コイツ、また増え──!?」

 

 

『気付いたところで……!』

 

 

『遅い!!』

 

 

 回避に専念するあまり、反応が一瞬遅れてしまった調と切歌のそれぞれの後頭部に目掛け、二体のポセイドンイレイザーの槍が容赦なく突き出される。

 

 

 それに対して咄嗟に振り返り何とか防御態勢を取ろうとするも間に合わず、青の亜人の槍が二人の目に突き立てられようとした寸前、調の前に緑色の光、切歌の前に桃色の光……タイプイガリマとタイプシュルシャガナにそれぞれ分身したクロスが、身を包んだ死神の羽根と両腕の分厚い装甲で三叉槍の刃をそれぞれ受け止めた。

 

 

『『なっ……』』

 

 

『成る程。最初に放った大技は姿を晦ます為のフェイントで、本命はそれに紛れての不意打ちだったか』

 

 

『だが生憎、お前の手の内は既に掴めてる』

 

 

「ぇ……はぇええええ?!」

 

 

「蓮夜さんも……増えた……?」

 

 

 不意打ちを防がれたポセイドンイレイザー達だけでなく、窮地を救われた切歌と調も二人となったクロス達を見て驚きのあまり目を白黒させてしまう中、タイプイガリマとタイプシュルシャガナは三叉槍を掴んでポセイドンイレイザーを無理やりに引き寄せながらそれぞれ鋭い拳と蹴りを見舞い一箇所に集めると、ポセイドンイレイザー達は地面を転がりながら身体を水に変質させて一体へと戻った。

 

 

『ぐっ……それが君が新しく手に入れた姿の能力か……また面倒な力を……なら、さぁ!』

 

 

 僅かによろめきながらも身体を起こし、ポセイドンイレイザーは三叉槍を再び掲げ先端から雷を放つ。

 

 

 そして放たれた雷は遥か天上で別れて二つになると、そのままポセイドンイレイザーの両脇に落ちて同じポーズを取る二体のポセイドンイレイザーとなり、更に三体となったポセイドンイレイザー達の槍から再び雷が放たれ、ポセイドンイレイザーがまたも増えていく。

 

 

 それを何度も繰り返していく内に無数のポセイドンイレイザーによる包囲網があっという間に完成し、クロス達を中心に包囲してしまう。

 

 

「!か、囲まれちゃったデスよ……!」

 

 

『『『『これだけの数、一度に狙われれば幾ら君達でもひとたまりもないだろう!』』』』

 

 

―シュウゥッ……ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォンッッ!!!!―

 

 

 無数のポセイドンイレイザー達が一斉に突き付けた三叉槍の先端にエネルギーが収束され、全方位からの雷の弾丸による集中砲火が迫る。

 

 

 周りを囲まれ、何処にも逃げ場がない絶望的な窮地。

 

 

 しかし、タイプシュルシャガナは即座に背中から生えたアームの先端を巨大な丸鋸に切り替え、丸鋸の表面を前に地面に突き立てながら調に目配りする。

 

 

『調!』

 

 

「……!はい!」

 

 

 そのアイコンタクトだけで調はタイプシュルシャガナの意図を理解したのか、自身のアームドギアから巨大な丸鋸を展開してタイプシュルシャガナと同様に地面に突き立てる。

 

 

 そして二人は地面に立てた丸鋸を回転させながらそれぞれの脚部の車輪も稼働させ、タイプイガリマと切歌の周りをグルグルと高速で回りながらあらゆる方向から飛来する雷弾を丸鋸の表面で受け止め、同時に雷弾をそのままポセイドンイレイザー達に目掛けて反射し、分身達に当てて一体ずつ確実に撃破していく。

 

 

『(っ!攻撃を跳ね返してこっちの戦力をちょっとずつ削ろうって算段か?そっちがそうくるのなら──!)』

 

 

 こちらもまた趣向を変えて別の策に移るまでだと、未だ雷の弾丸を撃ち続ける他の分身達の中に混ざる本体のポセイドンイレイザーは跳ね返される雷弾を頭を横に避けながら焦らず次の行動に移るべく、分身達の群れから一歩引いて離れた、その時……

 

 

『──お前が本体か』

 

 

―ブォオオッッ!!―

 

 

『ッ?!』

 

 

 ギィイイイインッ!!と、鉄と鉄がぶつかり合う金属音が辺りに響き渡る。

 

 

 背後から聞こえた淡々とした声に反応して振り向き様に突き上げた三叉槍が、"視えない攻撃"と激突し火花を撒き散らしたのだ。

 

 

 思わぬ不意打ちにより、分身達を保つ為の集中力を乱されて他のポセイドンイレイザー達が次々に水と溶けて消滅していく中、攻撃を弾いた反動を利用し後方へと飛び退いたポセイドンイレイザーがすぐさま前を向くと、其処には何もない筈の空間からまるでカメレオンのように少しずつ姿を現していくクロス……タイプイガリマが大鎌を振るった姿勢で佇む姿を露わにした。

 

 

『透明化っ……成る程、それがその姿での君の力、って訳かい?』

 

 

『お前の裏を掻きつつ意表を突く、という点ではこの姿が一番適用だろうからな。何より、コイツの刃はお前にとっても天敵なんだろ……?』

 

 

『……痛いとこを突いてくれるねぇ。君、案外僕より才能あるんじゃない?嫌がらせって意味じゃ、さっ!』

 

 

 言いながら、ポセイドンイレイザーは三叉槍を横薙ぎに振るって扇状に雷撃を放出する。

 

 

 それを見たタイプイガリマは即座に大鎌を下段から振り上げて放った緑色の斬撃波で正面から雷弾を打ち消し、その隙にポセイドンイレイザーが接近戦を避けるべく後方へ飛び退いて再び姿を晦まそうとするが、タイプイガリマはそれを見越していかのように自身の左腕の装甲を変形させ、先端がクロー状になった鎖付きアームの狙いをポセイドンイレイザーに定め射出し、ポセイドンイレイザーの足をクローで捕らえた。

 

 

『ッ!しまっ──!』

 

 

『今だ!切歌!』

 

 

「──でぇえやぁああああっっ!!」

 

 

 クローに備え付けられた鎖に引っ張られて身動きが取れないポセイドンイレイザーに向かって、分身達が全て消滅したのを機に切歌が背中のバーニアで加速しながら大鎌を構えて飛び掛かった。

 

 

 振り下ろされた鎌の刃がポセイドンイレイザーの首を完全に捉える。

 

 

 しかし、ポセイドンイレイザーも己の首に刃が食い込む寸前の所で舌打ちしながら自身の肉体を瞬時に水へと変容させ、更に自ら身体を弾けさせて無数の水粒となり、そのまま水飛沫のように拡散しタイプイガリマの拘束と切歌の一撃から逃れてしまう。

 

 

「っ、避けられたのデスっ!」

 

 

『ソイツも既に読んでいる……!調っ!』

 

 

α式百輪廻―

 

 

「はぁああっ!!」

 

 

 タイプイガリマの短い呼び掛けと共に、空中へ跳躍した調がヘッドギアの左右のホルダーから小型の丸鋸を連続で乱射し、広範囲に飛び散った無数の水粒を尽く撃ち落としていく。

 

 

 それに危機感を覚えたのか、残り少なくなった全ての水粒が慌てて1箇所に集まり、人型を形成して再び姿を形作ったポセイドンイレイザーは両足に水を纏い、地上を後ろ向きに滑走しながら後退しつつ立て続けに空から降り注ぐ小型の丸鋸を右手に握る三叉槍を回転させて何とか全て弾き落としていくも、集まった水が足りないせいかその身体は頭や肩などの所々の箇所が欠損しており、多少なりともダメージを負っている事が窺えた。

 

 

『(クッソッ!調ちゃんの技も結構効くなコレ……!下手にまた分裂すれば、今みたいに身体の一部を削ぎ落とされてっ──……?)』

 

 

 此処でまた分裂すれば、調の波状攻撃に今度こそ耐え切れず下手を打つやもしれない。

 

 

 そんな無様な事態は避ける為にそう易々と能力は使えないと思った矢先、ポセイドンイレイザーはクロス達を見ていてある違和感を覚えた。

 

 

 空中には、未だ連続で小型の丸鋸を連射する調。地上からはバーニアを噴かし自分を追ってくるタイプイガリマと切歌。

 

 

───あと一人、タイプシュルシャガナは何処へ……?

 

 

 そんな疑問を抱いた瞬間、ポセイドンイレイザーの退路の先の大地から突如無数のヨーヨーが地表を突き破って飛び出し、幾つもの桃色の糸を張り巡らせ重糸の壁を作り出した。

 

 

『なっ……(糸で、壁を……!?まずいっ!)』

 

 

 それを見て、自身が此処まで追い込まれていたのだと察し、ポセイドンイレイザーは咄嗟に左腕を真横に突き出して掌から水流を放出。

 

 

 水の勢いを利用してそのままスピードを殺さず、壁に触れるギリギリの距離でカーブして何とか糸の壁に囚われるのを回避したかに思われた、が……

 

 

 

 

 

───それを見越していたかのようなタイミングで、ポセイドンイレイザーの死角となる地面が勢いよくめくれ上がり、背中の巨大アームを用いて地中の中を掘り進んでいたタイプシュルシャガナが土砂の津波を巻き上げながら飛び出した。

 

 

『?!なんっ──!?』

 

 

『オオオオォォッ!!!』

 

 

 完全に意表を突かれ、戸惑うポセイドンイレイザーにタイプシュルシャガナがその両手に握り締める、刀身の刃がチェーンソーのように回転する黒と桃色の大剣を全力で振りかぶる。

 

 

 対するポセイドンイレイザーもギリギリの所で全身をゲル状にし、大剣の直撃を液体化した身体で受け止めて切断されるのを免れるが、タイプシュルシャガナは構わず大剣を打ち付けたまま刀身の腹部分でゲル状になったポセイドンイレイザーを力任せに持ち上げ、振り回していく。

 

 

 そして遠方からバーニアで加速して迫るタイプイガリマと切歌に目掛けて思い切り投げ飛ばすと、そのまま二人がすれ違い様に同時に振るった大鎌の刃がゲル化したポセイドンイレイザーを切り刻み、イガリマの特性によりダメージを喰らって実態化しながらゴロゴロと勢いよく地面を転がっていった。

 

 

『ぐぅううぅっっ!!っ……ま、まだだっ……!まだ──!』

 

 

γ式・卍火車―

 

 

「──たぁあああああっ!!」

 

 

『ッ?!―ズバァアアアアァッ!!―ぐっ、ぁああああッ?!』

 

 

 二振りのイガリマの刃の直撃を貰い、再生が追い付いてない傷付いた身体を引きずるように起こそうと三叉槍を杖代わりにするポセイドンイレイザーだが、空から響いた勇ましい雄叫びに釣られて振り向いた直後、ヘッドギアの左右のホルダーから巨大な二枚の回転鋸を展開した調がその小さな身体をグルグルと回転させながら上空から飛び降り、彼女が振り下ろした二枚の回転鋸がポセイドンイレイザーの両肩から腰の下まで一気に斬り裂き、火花を撒き散らしながら派手に吹っ飛ばしていったのだった。

 

 

『ぅっ、ぐぅううっ……!!調、ちゃ……!』

 

 

「……今のは、貴方に大切な記憶を弄ばれた宮司さんの分──」

 

 

 傷を負った身体を抑え、片膝を突くポセイドンイレイザーに向けてそう言いながら徐に身を起こす調の下に、切歌、タイプイガリマ、タイプシュルシャガナが集まる。

 

 

 そして二人のクロスは一つとなってクロス・タイプザババへと戻り、左腰のケースからすかさず取り出した一枚のカードをバックルに素早くセットする。

 

 

「──そして今度は……私と貴方のせいで、傷付いた人達の分……!」

 

 

『Final Code x…clear!』

 

 

『決着をつけるぞ……!調、切歌!』

 

 

「任せるデス!調、ザババの刃を……!」

 

 

「うん……蓮夜さんに、重ね合わせる!」

 

 

 クロスベルトから響き渡る電子音声と共に、切歌と調はそれぞれのアームドギアと身に纏うギアの一部を切り離し、武器とパーツを分離、変容、巨大化させながらクロスの全身に次々と合体させていく。

 

 

 そうして全ての合体を終え、クロスは両腕と両脚、両肩や両腰などに黒のラインが走る緑とピンクの巨大な刃が無数に装備された、正に全身凶器と呼ぶに相応しい凶悪な姿へと変わっていった。

 

 

『!あの、姿はっ……!?』

 

 

───未熟で、未完成でも、逃げないよ……!

信じて、紡いで越えた 歴史は星に!

 

 

「蓮夜さんっ!」

 

 

『ああっ……!』

 

 

 ギアから流れる伴奏に歌を乗せる調と切歌がそれぞれ片腕を突き出し、フォニックゲインがピンクと緑色の光として可視化されクロスへ流れ込んでいき、クロスの全身の刃が展開され、刃に内蔵された幾つものマニューバが一斉に火を灯していく。

 

 

 ピンクと緑色の光を放つその輝きは、まるでクロスの全身から炎が燃え盛っているかのようにも映り、今までの蓄積されたダメージからまともに動けないポセイドンイレイザーも遠巻きからその強大な力を肌で感じて『クッ……!』と忌むように喉を慣らすと、咄嗟に大地に左手の掌を押し当てていく。

 

 

Non ducor, duco.

 

我は導かれず 我こそが導く

 

 

Spemque metumque inter dubiis.

 

希望と恐れの間をさまようべし

 

 

Tamdiu discendum est, quamdiu vivas.

 

私たちは、生きている限り学ぶべきである

 

 

 矢継ぎ早に紡がれる詠唱と共に、ポセイドンイレイザーの身体が水と化して地面に吸い込まれるように飲み込まれていく。

 

 

 瞬間、ザパァアアアアッ!!と、まるでダムの水が決壊したが如く勢いで大量の洪水が地面から溢れ出し、何かを形作るように畝り、全身が水で構築された、空を大きく仰がねばならないほど巨大で屈強な海神の上半身が大地から生えるように出現したのである。

 

 

 全長はおよそ100メートル前後か。まるで神話の中の神が現実世界へ現出したかに思わせる圧倒的な威圧感と力の奔流を前に、しかし三人も決して臆する事なく今出せる全ての力を一つにし、調と切歌から託されたありったけのフォニックゲインをその身に宿したクロスが力強く一歩踏み込む。

 

 

 照らそう 今この瞬間-とき-も

 

 光、支えにほら 待ってる人が……!

 

 一緒にゆこう TWIN-HEART!!

 

 

『勝負だ──クレンッ……!!』

 

 

―ドォオオオオッッッッ!!!!!―

 

 

『ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ…………!!!!!!』

 

 

 調の歌を背に、文字通り光の速さで直線上の地面を派手に吹き飛ばしながら飛び出したクロスに向けて、巨大な海神が莫大な量の水を右手に集め生成した、水の三叉槍を勢いよく突き出した。

 

 

 それに対し、全身凶器のクロスは避ける事なく真っ向から海神の槍と激突して凄まじい衝撃波と閃光を辺り一帯に撒き散らした直後、まともな拮抗すら叶わず、ピンクと緑の無数の斬撃線を宙に描きながら海神の槍と右腕を瞬く間に細切れにし、霧散させた。

 

 

『ッッ!!!!???』

 

 

『これで……エンドマークだっ!』

 

 

「「いっけぇえええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーええぇぇぇぇッッッッ!!!!!!」」

 

 

 最後のダメ押しだと言わんばかりに、調と切歌の掌から放出されるフォニックゲインの勢いが更に増す。

 

 

 それに呼応するようにクロスの仮面のクラッシャーが開かれ発光し、全身から放たれる光も徐々に徐々にその輝きを増していき、残る力の全てを最大限に込めた全速力で海神の胸へ突撃したクロスは紫電の煌めきと共に全身の刃でその巨体を穿ち、そして貫いたのだった。

 

 

―禁合Xx式・Zあ破刃廻ン牙ェZi―

 

 

『ッッ………!!!!!ま、さかッッ……そんなっっ…………!!!!!?』

 

 

 海神の巨大な身体、その全身に緑とピンク、二色の無数の斬撃が何十、何百、何千と次々と鮮烈に刻み込まれていく。

 

 

 そして最後の巨大な一閃が海神の腹部から頭頂部まで一直線に駆け走った直後、その姿を背に地上に降り立ったクロスはゆっくりと立ち上がり、

 

 

『……"俺達"の……勝ちだ……』

 

 

『ァ───ァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーアアァァァッッッッ…………!!!!!!!』

 

 

 クラッシャーを閉じて静かにそう宣告したと共に、海神の全身に刻まれた無数の斬撃から一斉に閃光が走り、最後に巨大な爆発が発生して全てを呑み込んだ。

 

 

 弾け飛んだ海神の身体はただの水となり、まるで土砂降りの雨のように天より降り注ぐ冷たい水飛沫をその身に浴びながらクロスは仮面の下でか細い息をこぼし、足元からゆっくりと変身が解けて血塗れの蓮夜の姿に戻ると、そのままプツンッと糸が切れた人形のように力なく前のめりに倒れてしまったのであった。

 

 

 

 

 

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