戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第九章/運命ノ少女×破壊者†on the load①(中)

 

 

―S.O.N.G.本部・発令所―

 

 

───先の騒動から数時間後。弦十郎から突然の招集命令がかかり、蓮夜と響、クリス、切歌、調の五人は本部の発令所に集められていた。

 

 

「よし、皆集まってくれたな。早速だが本題に……うん?どうした、お前達?何やら疲れた顔をしているが……」

 

 

「あー……えーと、そのぉ……」

 

 

「……ちょっと朝っぱらから色々あってな……」

 

 

「うぐぅっ……」

 

 

「気にしないで下さい。別段大した事は何もなかったので」

 

 

「いや十分に大した事だったろうが!!ってか当の本人のお前がそれ言えた口じゃねぇーよ!!」

 

 

「ううっ……ごめんなさいデスー……」

 

 

 蓮夜達が本部にやって来るなり、響とクリスは妙に疲労感を漂わせており、蓮夜に至っては腹を抑えて何時も以上に生気が感じられない程に疲弊してしまっている。

 

 

 そんな彼等の様子に疑問を抱く弦十郎だったが、調だけはいつも通りの無表情で淡々と言葉を返し、その返答にクリスは思わずツッコミを入れるが、調本人は特に問題ないとばかりに無反応を貫き、反対に切歌は申し訳なさそうに項垂れていた。

 

 

「ううむ……事情は良く分からんが、まぁいいだろう。それよりも、今日君達に呼び出しをかけたのは他でもない、この前の戦闘で突然現れ、我々を襲撃してきたシンフォギア装者に関してだ」

 

 

「ッ!」

 

 

「それって、あのヴィーヴルとかいう装者の事か?」

 

 

 弦十郎の言葉を聞き、響はハッとなり、クリスも顔付きが変わり深刻げに聞き返す。

 

 

 先日、自分達を襲撃してきた謎の装者、ヴィーヴル。彼女の話題になった瞬間に一同の間の緩んだ空気が一瞬で引き締まり、弦十郎はクリスからの問い掛けに静かに首肯する。

 

 

「そうだ。正体不明の聖遺物のギアを身に纏い、その圧倒的なまでの強さで響君とクリス君を一方的に追い詰めた謎の装者……どうやらその彼女が、翼とマリア君が現在滞在し活動しているロンドンで姿を現したらしいという報告を受けた」

 

 

「!翼さんとマリアさんがいるロンドンに?!」

 

 

「どーゆーことだ……日本とイギリスじゃ随分距離があるだろ?普通ならこっからイギリスまで飛行機を利用しても半日ぐらいかかるほどに離れてるってのに、一体どうやって……まさか、錬金術師達も使ってた転移用のジェムをヤツらも持ってんのか……?」

 

 

「……いや、奴らならそんな道具も必要としないだろうな」

 

 

 弦十郎の話を聞いて響とクリスが困惑していると、蓮夜が腕を組みながら口を開いた。蓮夜の発言に二人は疑問符を浮かべると、蓮夜は深刻そうな顔付きで話の続きを語り出す。

 

 

「皆も知っての通り、奴らイレイザーには並行世界間を自由に移動出来る独自の手段を持っている。その力を使えば大した時間も労力も掛けず、国と国の間を転移して簡単に行き来する事もできる。……そのヴィーヴルとかいう装者がイレイザーに与しているなら、奴らから同様の力をもらっていたとしても不思議じゃないが……」

 

 

「或いは、彼女が持つギアの並外れた機動力がそれを可能としている、というのも有り得ます。響さんとクリスさんと交戦した彼女の戦闘データをこちらでも計測しましたが、あれだけのスピードにただの人間の肉体で耐えられるなんて先ず有り得ない……そう考えると、彼女も普通の人間ではないという可能性が濃厚だと思われますが……」

 

 

「……そういえばあの子、自分はこの世界の住人じゃないみたいな事を言ってた……此処とは違う世界、私達がフロンティア事変で消えた後の世界で造られた存在だって……」

 

 

 蓮夜とエルフナインの話を聞きながら、先の戦闘の最中でヴィーヴルが語った言葉を響は思い返す。

 

 

 自分が異世界からやって来た人間だと彼女は語っていたが、それが本当なのか嘘なのかは分からない。だが少なくとも、ヴィーヴルの持つ力は響達の想像を超える程のものなのは、彼女と実際に戦った時に手も足も出せなかった事から嫌という程痛感させられた。

 

 

「恐らく、その装者がこっちの世界に現れたのもイレイザーの連中の仕業だろうな……お前達が『記号』を得て着実に力を身に付けてきた以上、向こうもその対抗策に戦力を増やしてきたという事なんだろう……」

 

 

 蓮夜が語る通り、ロンドンにいる翼とマリアを除いて今現在ここにいるシンフォギア装者達は『記号』の能力を手に入れ、以前とは比較にならないほどの実力を身につけている。

 

 

 故に、イレイザー側もシンフォギア装者と互角に渡り合える力を持つ謎の装者を仲間に加える事で、こちらの戦力と拮抗させようとしてきたのであろう。

 

 

「確かにそれなら辻妻が合うけど……そのヴィーヴルっていう人は、どうしてイレイザーの仲間になんか……」

 

 

「さあな……けど、気になるような事は幾つか言ってたな。自分は『処刑人』だの、奴のギアがあたし等が消えた後に、とある機関に造られただの……」

 

 

「ああ。そして、彼女のギアの聖遺物のあまりの力に適合出来る者が現れず、適合者がいないのならいっそ作り出した……とも」

 

 

 調とクリスの呟きに弦十郎が肯定すると、響が重苦しい表情で弦十郎に顔を向ける。

 

 

「それってつまり、ヴィーヴルちゃんは人間には危険な聖遺物の為の適合者として、人工的に作られた存在って事ですか……?」

 

 

「……恐らくは、そういう事になるだろう」

 

 

 弦十郎の言葉を聞き、その場は一瞬静まり返った。違う世界での出来事とは言え、自分達がノイズとの戦いで消えた事で彼女が生み出され、その命を弄ばれてしまった事に誰もが心を痛めてしまう。

 

 

 そんな中、同じように沈黙していた蓮夜が不意に口を開いた。

 

 

「いずれにせよ、そのヴィーヴルとやらは今はイレイザーに与する敵だ。どんな事情があるにせよ、情報も少ない今は一先ずその装者の事は置いておくしかない。それよりも問題なのは……」

 

 

「ああ。その彼女が何故、ロンドンにいたのか……それについてもう一つ、向こうで翼とマリア君の支援を行っている緒川から気になる報告を受けた。藤尭、友里。例の映像を」

 

 

「「はい」」

 

 

 指示を受け、藤尭と友里はコンソールを操作してモニターに映像を映し出す。それは翼とマリアのギアに備え付けられた視点カメラの映像であり、其処に映し出されていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

『FINALATTACKRIDE:FIR・FIR・FIR・FIRST!』

 

 

『はぁああああっ……ハァアアアアッッ!!!』

 

 

―ガシャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアアアァァァンンッッッッ!!!!!―

 

 

『なっ?!ぅ、きゃあああああああああっっ!!!?』

 

 

『ぐぁああああああああああっっ!!!!』

 

 

 

 

 

 

「なっ……」

 

 

「あ、あれって……?!」

 

 

 映像に映し出されていたのは、翼とマリアがロンドンのとある地下鉄にて戦闘を行う一部始終。

 

 

 その中で、腰にマゼンタのバックルのベルトを巻き、バッタを模した姿のダークブルーの謎の戦士の突然の襲撃に遭って一方的に追い詰められ、バッタの戦士が放った渾身の跳び蹴りによりマリアが張った障壁ごと粉砕され二人が吹き飛ばされる姿が映っていたのだった。

 

 

「なんだアイツ……?ってか、先輩達を襲ってるアイツの腰のアレは……?!」

 

 

「ベルト……?まさか……仮面、ライダーっ?」

 

 

「…………」

 

 

 映像の中に映し出される衝撃的な光景を目の当たりにし、クリスや響達も驚きの声を上げる中、蓮夜だけが険しい顔付きで黙り込んで映像を凝視している。エルフナインはそんな一同の方に振り返り、説明をするように語り始めた。

 

 

「今の映像は、翼さんとマリアさんがロンドンに潜伏していたアルカ・ノイズの製造器具の密売を行っていたとある錬金術師を追っていた際、お二人がギアに取り付けていた視点カメラのモノです。お二人が例の錬金術師を追い詰めた際、目の前で突然錬金術師が黒い炎に焼かれて変死し、その現場近くでヴィーヴルらしき装者を翼さんが発見して後を追ったそうです。……ですがその道中、映像にも映っている謎の戦士の妨害に遭い、そのままヴィーヴルらしき装者と謎の戦士に逃げられてしまったらしく……」

 

 

「マリア達に、そんな事が……」

 

 

「そ、それより、翼さん達は?!二人は大丈夫だったの?!」

 

 

「はい。お二人の怪我は幸いにも軽傷で済んだようで命に別状はなく、既に回復して謎の戦士の追跡を続けているそうです」

 

 

「そ、そっか……それならよかったぁっ……」

 

 

 マリア達の無事を聞いて安堵したように胸を撫で下ろす響。だが、一方で蓮夜の方は相変わらず難しい顔を浮かべたまま、一時停止されたモニターの映像に映る、謎の戦士の腰に巻かれたマゼンタのバックルを見つめていた。

 

 

(あのベルト……なんだ……?記憶にはない筈なのに、何故か見覚えが……)

 

 

 初めて見る筈のベルトに何処か既視感を覚え、蓮夜は訝しげに眉間にシワを寄せて考え込み、そんな蓮夜の様子に気付いた弦十郎が声をかける。

 

 

「どうした、何か気になることでもあるのか?」

 

 

「……いや、大した事ではないんだ。気にしないでくれ。それより、このベルトの戦士について、他に何か情報は?」

 

 

「いえ、この戦士について大した情報はあまり……。ただ、声の感じからして性別は恐らく男性であること。それから翼さんと交戦する前、彼は自分の事をこう名乗ったそうです。……『通りすがりの仮面ライダーだ』、と」

 

 

「仮面ライダー!?」

 

 

「やっぱり、コイツも不器男のクロスと同じって事なのかよ……」

 

 

 見た目の系統こそ蓮夜の変身するクロスとは全く異なるが、腰に巻かれているベルトを用いて戦う姿は何処かクロスと通ずるモノがある。それを察して呟くクリスに、弦十郎が首肯と共に言葉を続ける。

 

 

「それに加えて、翼とマリア君を撃退した直後に気になる発言を残したそうだ。……『これ以上この件に関わるつもりなら日本にいる仮面ライダー、クロスを頼る事だ』、と」

 

 

「……!」

 

 

「それって……この仮面ライダーはクロスを、蓮夜さんのことを知ってるって事ですか?!」

 

 

「何だかますますキナ臭くなって来やがったな……先輩達の邪魔をしたといい、このバッタ野郎もヴィーヴルやイレイザーの仲間なんじゃねぇのかっ?」

 

 

「その可能性も十分に有り得る。加えて、イレイザーに与するヴィーヴルがあの場にいたのなら、件の錬金術師の変死も彼女の仕業という線が濃厚だ。もしかするとイレイザー達は錬金術師とも結託し、ロンドンにまで勢力を伸ばして何か良からぬ目的を企てているのやもしれん。……其処で蓮夜君、君に頼みたいのが」

 

 

「……分かってる。イレイザー達が潜んでいるかもしれないロンドンに向かい、奴等の目論見を暴きつつ、この謎のライダーの正体も探ればいいんだな……?」

 

 

「そうだ。翼とマリア君の件もある以上、此方としても放置しておく訳にはいかない。何よりイレイザーがこの件に関わっているとなれば、『記号』の力を持たない二人の身が危ない。そこで、蓮夜君には翼達のサポートもお願いしたい。頼めるか?」

 

 

「了解した。なら、今からでも出発の準備を──」

 

 

「ちょっと待って下さい!」

 

 

 弦十郎の指示に従い頷く蓮夜だったが、そこで響から突然待ったが掛けられた。

 

 

「私達も一緒に行きます!蓮夜さん一人じゃ心配だし、翼さんとマリアさんのことだって──!」

 

 

「駄目だ。お前達の同行は許可出来ん」

 

 

「えっ……」

 

 

「何言ってんだよおっさん……!向こうにはイレイザーがいるかもしんないんだろ?!しかも先輩達を襲ったあのバッタ野郎も敵かもしれねぇんだ。相手の戦力がどれだけの規模かも分かんねーなら、『記号』持ちのあたし等の誰かが不器男と同行した方がいいだろ!」

 

 

 響の提案を即座に却下した弦十郎に詰め寄るように言うクリス。だがそれでもなお弦十郎の意思は変わらず、険しい表情のまま首を横に振った。

 

 

「お前達が『記号』持ちだからこそ、だ。ヴィーヴルの存在が確認されたとは言え、イレイザーの存在までは未だ不確か……。もし仮にコレが敵の罠であり、我々の戦力を分散させる目的も連中が視野に入れていると仮定した場合、クロスと装者が数名、ロンドンへ出向いた状況下でこの国に残っているイレイザー達がその隙を突き、突然襲撃を仕掛けてくる可能性も捨て切れない」

 

 

「……風鳴司令の言う通りだな。そんな状況で、もしアスカやクレンのような上級イレイザーまで出張って来れば、少ない戦力で奴等に挑むのは危険過ぎる。そう考えると、響達には日本に残ってもらい、奴等の襲撃に備えてもらうのが堅実だ」

 

 

「っ……」

 

 

「そ、それはそうかもデスけど……」

 

「……でも、やっぱりもどかしい……マリア達が危険な目に遭ってるかもしれないのに……」

 

 

 弦十郎と蓮夜の言い分に納得せざるを得ないのか、クリスと切歌は渋々ながら口を閉ざし、調も二人の言葉にも一理あると考えながらも納得し切れてないようだった。

 

 

 そんな彼女達に蓮夜は視線を向けると、苦笑を浮かべながら口を開く。

 

 

「そんな顔をしないでくれ。何も皆が頼りないから同行を拒否してる訳じゃない。寧ろ、皆の力を頼れるから、俺は安心して行く事が出来るんだ」

 

 

「……蓮夜さん」

 

 

「ロンドンにいる二人の装者の事は任せて欲しい。必ず二人を助けつつ、イレイザー達の目的も阻止して彼女達と一緒に無事に戻ってくる。俺を信じてくれ」

 

 

 自身の胸に手を当て、自信に満ちた声色で言う蓮夜。

 

 

 響達はそんな蓮夜の言葉と真剣な眼差しを受けて互いに心配を帯びた顔を見合わせるも、今一度蓮夜の淀みのない表情を見て、やがて観念したように全員揃って溜め息を吐いた。

 

 

「……分かりました。蓮夜さんと師匠の言う通りにします」

 

 

「……そうか。ありが」

 

 

「でも!もう前みたいに無茶をするのはダメですからね?!本当に、絶対にっ!」

 

 

「え……ぁ、ウン、ハイ……それはちゃんと肝にも銘じて」

 

 

「お前の肝にどんな信用があるってんだよっ。この前もその前も、どんだけ死ぬような無茶を繰り返してきたと思ってやがんだっ」

 

 

「いや、その……今までのソレも全部不可抗力というか……どれも仕方なかったと言うかだな……」

 

 

「仕方ないで済まされるレベルですか?」

 

 

「『お前の物語を顧みろ』とか言う前に、蓮夜さんは一度真面目に自分をもっと顧みるべきだと思うデス」

 

 

「────────」

 

 

「(み、皆さん……蓮夜さんにスゴい厳しいですねっ……)」

 

 

「(うむ……まぁ、実際に皆に心配を掛けるような無茶を繰り返してきたのは事実だからな……さもありなん、だ)」

 

 

 響、クリス、調、切歌と順に責め立てられて心做しか若干涙目になりつつ項垂れる蓮夜。

 

 

 エルフナインと弦十郎はそんな彼の様子を憐れみの籠った瞳で見つめながらも、響達の心情も理解出来るので暫し静観を決め込んでいたが、徐々にこちらを放って説教がヒートアップしつつある響達を見ててこれ以上は話が脱線すると思い、弦十郎が小さく咳払いをした。

 

 

「ンンッ!話が大分逸れたな。……ともかく、蓮夜君には一人でロンドンに向かってもらう。皆もそれで納得してくれるな?」

 

 

「むう……正直不満がない訳じゃないですけど……分かりました」

 

 

「私も……蓮夜さんが心配だけど、信じます」

 

 

「……(タスカッタ……このまま前のようにまた延々と叱られ続けるかと……」

 

 

 弦十郎の一声で渋々ながらも納得し、漸く引き下がってくれた響と調達を見て蓮夜も密かに安堵し、胸を撫で下ろす。

 

 

 エルフナインはそんな蓮夜の反応を見逃さず苦笑いを浮かべると、蓮夜に歩み寄って彼にタブレット端末を手渡した。

 

 

「蓮夜さん、取り敢えずコレを。ロンドンにいる緒川さんが送って頂いた、今分かっている情報を僕なりに分かりやすく纏めておきました。何処かのタイミングでいいので、一度目を通しておいて下さい」

 

 

「ん……ああ、すまないわざわざ。……ところで一つ大事な確認なんだが、コレは俺が触っても大丈夫だろうか……?」

 

 

「ふふっ。はい、蓮夜さんが機械が苦手なのは伺ってますから、その辺りもちゃんと考慮してあります。滅多な事では壊れないようにしてありますし、響さん達からも教わったとお聞きした携帯端末と同じ要領で使えますよ」

 

 

「そうか……何から何まで手間を掛けてすまないな……ん……?」

 

 

 エルフナインの配慮に感謝しつつ、彼女から受け取ったタブレット端末の画面に映し出された幾つかの項目の内、気になるワードを発見し、蓮夜はその項目を画面をタップして開く。

 

 

 その内容を無言で目で追っていく蓮夜の反応が気になり、響達も蓮夜の両脇からタブレットの画面を覗き込むと、其処には……

 

 

「……『MASKED RIDER FIRST』?」

 

 

 蓮夜が目を走らせるタブレットの画面には、今も発令所の大型モニターに映し出されている謎の仮面ライダーについて今現在まで判明している情報の詳細が事細かに載っており、その項目欄のタイトルに『MASKED RIDER FIRST』と名前らしきワードがあったのだ。

 

 

 それを響がポロリと口にすると、弦十郎が軽く頷きながら答える。

 

 

「それが翼とマリア君を襲撃した、我々が名付けた謎のライダーの呼称だ」

 

 

「映像の中で、この仮面ライダーが使用していたベルトの音声からその名前が分かったんです。形状やシステムこそ異なりますが、蓮夜さんの使うベルトと幾つか類似している点を踏まえると、恐らくそれがあの仮面ライダーの名称なのではないかと」

 

 

「FIRST……蓮夜さんが仮面ライダークロスなら、あのライダーは仮面ライダーfirst、って事になるのかな……」

 

 

「『FIRST(始まり)』、ねぇ……先輩達をいきなり襲っておきながら、御大層な名前してやがるっ」

 

 

「…………」

 

 

 MASKED RIDER FIRSTの名称を『仮面ライダーfirst』に言い換えながらマジマジとタブレットの画面に映るfirstの情報を目で追う調の隣で、クリスが気に入らなそうに舌打ちをする。

 

 

 そんな中、調同様にfirstの情報を見ていた蓮夜が不意に顔を上げ、大型モニターに映し出されているfirstの静止画に目を向けた。

 

 

「(仮面ライダーfirst……何処か聞き馴染みがある気がするが……しかし、なんだ?何故かアレをそう呼ぶ事に違和感があるような……)」

 

 

 胸に湧き上がる奇妙な感覚に眉根を寄せ、蓮夜は首を傾げる。

 

 

 しかし、幾ら思考を繰り返し、タブレットの画面に再び目を落としてfirstの情報を追ってもその正体を掴むには至らず、妙な感覚は蓮夜の胸の内で晴れる事なく燻り続けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

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