戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第九章/運命ノ少女×破壊者†on the load②(前)

 

 

―ロンドン・ハイドパーク―

 

 

───英国でも屈指の観光名所である、ロンドンの中心街にある広大な公園。人々の憩いの場としても有名であり、特に夏場には多くの観光客が訪れる。

 

 

 そのハイドパークの一角にて、一つのベンチに腰掛ける二人の女性の姿があった。

 

 

「──では、あれから捜索に進展はないと……?」

 

 

『……ああ。機体の反応が途絶えた位置を中心に今も探索を続けているが、未だに手懸かりすら見つかっていない状況だ』

 

 

 早朝……まだ朝の早い時間帯にも拘わらず、風鳴翼は人目を避けるように帽子を深く被って俯きがちにベンチに座っていた。

 

 

 その傍ら彼女と同様の変装をして腰掛けているのは、彼女の相棒であるマリア・カデンツァヴナ・イヴ。

 

 

 二人は翼が持つタブレット端末の通信機能を使い、弦十郎とここ数日連絡を取り合っている。

 

 

 その内容は無論、数日前に今二人が滞在してるここ、ロンドンに到着する予定だった筈の蓮夜を乗せた飛行機の墜落事故についてだ。

 

 

「あれから二日……まさかクロスを……いえ、黒月蓮夜、だったかしら……彼を乗せた旅客機を直接狙ってくるだなんて……」

 

 

『我々も警戒を怠っていたつもりはなかった……。襲撃に備えて最小限の人員で動いたつもりだったが、どうやらイレイザー達にはこちらの動きは筒抜けだったようでな……本来あの日搭乗する予定だった筈のクルーも、全員が意識を失い縛られた状態で付近の倉庫内に放置されていた……所々の記憶の欠如は見られるが、それでも彼等が無事だったのは喜ばしいところではある……』

 

 

 マリアの言葉に深刻げに応えつつ、弦十郎は苦々しい表情を浮かべて目を伏せる。しかしすぐに真剣な表情に切り替り、話を戻していく。

 

 

『今現在も、本部は機体が墜落した海域に駐在して周囲一帯の捜索を続けているが、やはり彼の生存の手掛かりになる情報は何も得られていないのが現状だ。……しかしそれでも彼の事だ。必ず生きているに違いない。そう信じて我々は勿論、響君達も諦めず血気になって彼の捜索に励んでいる』

 

 

「立花達が其処まで……」

 

 

「報告で度々話には聞いていたけれど……本当にあの子達からも慕われているのね、その仮面ライダーの彼は」

 

 

『ああ。此方でも色々とあったからな。……それ故に、今の響君達の落ち込み様はとてもではないが見ていられん……彼女達の為にも、一刻も早く彼を見つけ出してやらねば……』

 

 

「司令……」

 

 

 そう言って弦十郎は再び目を閉じると、静かに深呼吸をした後にゆっくりと瞼を開く。

 

 

 そして次の瞬間、まるでスイッチを切り替えたかのように普段の毅然とした態度に戻った。

 

 

『──すまない、少し話が逸れてしまったな……。それで、そちらの状況はどうだ?例のマスクドライダーfirstの行方や、イレイザーの痕跡に関する手掛かり等については』

 

 

「……申し訳ありません。こちらでも独自に調査を進めてはいるのですが、捜査に難航が続き、大した進展も特には……」

 

 

「例の変死した錬金術師のアジトも隈無く調べてはみたけれど、イレイザー達との確固たる繋がりになりそうな、コレといった手掛かりになる証拠も見付からなかったわ」

 

 

『そうか……むう……やはりそう簡単に尻尾を掴ませてはくれないか……』

 

 

「ですが、奴らの尾の先程度までは捉えられてはいると思います。日本で立花達とも交戦したという、例の装者……ヴィーヴルの存在がこちらでも確認出来た以上、この国の中で、奴らが何かを目論んでいるのは先ず間違いない。それも、錬金術師達を使ってまで」

 

 

 錬金術師達を利用するイレイザーの目的の全容は未だ掴めないが、少なくとも、このまま連中を放っておけば何か良からぬ事が起きるという嫌な予感がするのは確かだ。

 

 

 行方不明の蓮夜の安否も気にはなるが、そちらは本部と響達に任せ、自分達は引き続きイレイザーとヴィーヴル、そして仮面ライダーfirstの行方を追う意向を伝える翼の言葉に、弦十郎も画面側の向こうで神妙に頷く。

 

 

『分かった。蓮夜君の事はこちらで引き続き捜索を続けるが、そちらも気を付けろ。このタイミングで彼が襲撃に遭ったという事は、イレイザー側には彼をそちらへ行かせたくないそれ相応の理由があるに違いない。もし仮に連中と相対する事になっても……』

 

 

「承知しています。出来る限り交戦は避け、深追いは決してしない、と」

 

 

「例の『記号』とやらの力を私達がまだ持てていない以上、仕方がないと分かってはいるけど……やはり業腹ね……。仮に奴らの尻尾を掴めたとしても、戦う事もままならないなんて……」

 

 

『こればかりは流石に我々の力だけではどうにもならんからな……。その為にも、蓮夜君は必ず見つけ出す。そちらでも何か進展があれば報告を寄越してくれ。頼んだぞ』

 

 

「「了解」」

 

 

 最後にそれだけ告げると、翼達は通信を切り、同時に深い溜め息をつく。

 

 

「ああは言ったものの、どうにもままならないものだな……。私達がこうしている間にも、敵が水面下で計画を進めているかもしれないと考えると気を逸らせてしまう……」

 

 

「それも何時ものこと……なんて、簡単に割り切れられれば気も楽になるのだけどね。こればかりは何度繰り返しても慣れる物でも無し……何より、今回は私達も煮え湯を呑まされている訳だから、歯痒さを募らせるのも無理もない話だわ」

 

 

 そう言いながらマリアは脳裏に先のfirstとの戦闘で敗北を喫してしまった事を思い起こし、陰鬱な表情を浮かべて二度目の溜め息を吐き出してしまう中、隣に座る翼も難しい顔で暫し遠くの空を眺めていたが、一度目を伏せた後、やがて徐にベンチから重い腰を上げた。

 

 

「とはいえ、此処で腐っていても仕方がない。今は司令の指示通り、黒月蓮夜の捜索は立花達に任せて、私達は私達で動くしかない」

 

 

「……そうね。なら一旦ホテルに戻りましょうか。調査に出ている緒川さんも、もうそろそろ戻ってくる頃でしょうし」

 

 

 翼の提案に同意しつつ、マリアもまた立ち上がると二人はそのまま公園を出ていこうとするが……

 

 

「──っ……ぅ……」

 

 

(……?あの子……?)

 

 

 翼の後に続いてその場から離れようとしたマリアの視界の端で、フラフラと覚束無い足取りで歩く小柄な少女の姿が映り込んだ。

 

 

 体格からして、歳は恐らく年齢は12〜13歳程か。

 

 

 何故か穴だらけのボロ切れの布で顔を隠すように頭から被り、何処か危なげな様子の少女の事が少しだけ気になったマリアは足を止めてその少女を暫し見つめていたが、ふらつきながらも何処へ行くとも分からぬ少女の足が不意にガクリと崩れ落ち、そのまま地面に倒れ込んでしまった。

 

 

「?!ちょっとっ!」

 

 

「!……マリア?」

 

 

 突然慌てて駆け出したマリアを見て不思議そうに声をかける翼だが、マリアはそんな声を無視して倒れる少女の下に駆け寄り、その小さな身体を抱き起こしていく。

 

 

 すると抱き上げられた衝撃からか、少女が微かに反応を見せた。

 

 

「……ぁ……う……」

 

 

「大丈夫!?しっかりして!!」

 

 

 意識が薄れているのか、虚ろな瞳のまま僅かに口元を動かす少女の様子にマリアが必死に声を掛けると、少女はよろよろと顔を上げてマリアの顔を見つめ、暫し間を置いた後、突然ハッと目を見開いて尻餅を着いたままマリアから勢いよく離れ、頭の布切れを深く被り直しながら顔を逸らしてしまう。

 

 

「なんでも、ない……気に、するな……」

 

 

「気にするなって……」

 

 

「マリア、どうしたんだ?」

 

 

「ぁ、いえ、この子が……って、ちょっと待ちなさい?!」

 

 

 遅れて駆けつけた翼に事情を説明しようとするマリアだが、目を離した隙に立ち上がった少女がフラフラと歩き始めた事に気付いて慌てて呼び止めながらその手を掴んだ。

 

 

「ッ?!は、離なせ……!離して!」

 

 

「何を言ってるの……?!そんなボロボロの状態のまま放っておける訳ないじゃない!貴方、親御さんは?一体何処から……」

 

 

「いやぁぁ!!触らないでぇ!!嫌だァああ!!」

 

 

「ちょっ、ちょっと!落ち着いて……!」

 

 

 マリアに手を掴まれた途端に錯乱し、悲鳴を上げて暴れ始める少女に困惑しながらもマリアは何とか宥めようと声をかけるが、一向に収まる気配はなく、しまいには通り掛かる通行人の視線が集まり始めてしまい、このままでは騒ぎになってしまうと判断した翼はマリアの肩に手を置いて首を横に振った。

 

 

「マリア、一先ず手を離してやれ。こんな街中で騒いでいては余計に目立つ」

 

 

「だけど……」

 

 

「いいから。まずは彼女を落ち着けるのが最優先だろう?それにそんな状態では、聞ける話も聞けんぞ」

 

 

「……分かったわよ」

 

 

 翼の言葉を聞き入れてマリアは渋々といった様子で少女の手をゆっくり手放して解放すると、少女はマリアに掴まれた手をもう片方の手で庇いながら怯えるように距離を取り続け、翼は二人の間に割って入りながら視線を合わせるように屈み、少女へ話しかける。

 

 

「君、名前は?随分と汚れた格好をしているが……保護者の方は?帰る家はないのか?」

 

 

「……」

 

 

 翼の問いかけに対し、少女は何も答えずにただただ俯くばかり。

 

 

 その様子に困り果てた翼とマリアはお互いに顔を見合わせ、どうしたものかと考え込んでいると……

 

 

 

 

 

 

「───やっと見付けたぞ」

 

 

「……ッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 不意に聞こえてきた男の声に、少女はビクっと震え上がりながら反射的に振り返り、翼とマリアもその視線を追うように声が聞こえてきた方に振り向く。

 

 

 すると其処には、黒い長髪を後ろで一つに纏めた長身の男の姿があり、その男の姿を見て、少女は大きく目を見開いた。

 

 

「随分と探し回させてくれたな。全く、無駄な時間を取らせてくれたものだ」

 

 

「ぁ……ぁあっ……」

 

 

 そう言って面倒そうに溜め息を吐きながら男がゆっくりと歩み寄ると、少女は何か恐ろしいものを見るかのように後退りを始める。

 

 

 そのただならぬ様子を見た翼とマリアは咄嗟に少女を庇うようにして男の前に立ち塞がり、険しい表情を浮かべて警戒する。

 

 

「誰なの、貴方は?」

 

 

「失礼を承知で聴くが、この子の知り合いなのか?」

 

 

「…………」

 

 

 少女との間に突然割って入ってきた二人の質問に対し、男は何も言わず歩みを止める。

 

 

 そして翼とマリアの顔を交互に見て、一瞬何かを考える素振りを見せた後、すぐに平静を装い軽く頷く。

 

 

「ああ、そうだとも。その娘は知り合いから預かった大切な子でな。我が家の留守番を任せていた所を、勝手に抜け出されて困っていた所だ。さあ、分かったなら大人しくこちらに渡してもらおうか?」

 

 

 淡々とそう言って、男は翼達の背後にいる少女に向かって手を差し出す。

 

 

 だが、そんな男の行動を見て少女は更に怯えた様子を見せ、頭に被った布切れを深く被り直しながら身体ごと顔を背けて俯き、その小さな身体を小刻みに震えさせている。

 

 

 翼とマリアはその少女の反応を見て、目の前にいる男が自分達の後ろにいる少女にとって恐怖の対象である事を察し、少女を護るべく前に一歩踏み出した。

 

 

「悪いけど、そう簡単に引き渡す事は出来ないわね」

 

 

「……何だと?」

 

 

 マリアの言葉を聞いて男がピクリと眉を動かす。鋭い眼差しで睨みつけられるも、翼は臆する事なく言葉を続けた。

 

 

「お前が何者なのかは知らんが、この子のお前に対する怯え様は異常だ。それに何よりこの子の出で立ち……何処をどう見ても一般家庭の子供の身なりではない。これではまるで浮浪児だ」

 

 

「貴方が本当にこの子の保護者であるなら、きちんとした証拠を見せなさい。それが出来ないのなら、この子は私達が病院に連れていく。別に構わないわよね?貴方が本当にこの子の保護者であるのなら、ね」

 

 

「…………」

 

 

 翼とマリアの言葉に、男は黙ったまま二人の顔を交互に見つめ、やがて小さく鼻で笑った後、口を開いた。

 

 

「成程、確かに道理だな。ならば──これでどうだ?」

 

 

 そう言って男は徐に親指と中指を擦り合わせ、パチンッと音を鳴らす。

 

 

 すると次の瞬間、男の身体から突然波紋状の振動が広がり、一瞬にして翼やマリア、少女だけでなく周囲の人々をも包み込んだ。

 

 

「ぐっ?!っ……なんだ、今のは……?!」

 

 

「貴方、今何を……!?」

 

 

「……コイツ等には効いていない……そうか、お前がその二人の近くにいるせいか?ファートムよ」

 

 

「っ…………」

 

 

 翼やマリアが謎の現象に困惑している一方、男はそう言いながら二人に守られてる少女をファートムと呼び、少女はその名前にビクっと反応を示すが、翼とマリアは事態を未だ飲み込めずにいる。

 

 

「一体何の話をしている……?!今の現象はなんだ?!」

 

 

「……そう急かしてくれるな。その答えなら、周りを見渡せば一目瞭然だろうよ」

 

 

「なんですって……?」

 

 

 男の言葉を聞いた二人は、周囲を見渡していく。其処には……

 

 

「──あら?私、こんな所で何してるのかしら?」

 

 

「いけない!早く家に帰らないと、お兄ちゃんが帰って来ちゃう!」

 

 

「そうだった、課題を提出に早く戻らないと……」

 

 

 今まで翼達の様子を不審げに傍観していた筈の周囲の人達が、突如として不自然なまでに普段の日常へと何事も無かったかのように戻って蜘蛛の子を散らすように散り散りになり、あっという間に公園内だけでなく、公園の外にいた人達までも次々と姿を消していく光景が広がっていたのだ。

 

 

 やがて自分達以外、完全な無人となった園内と外を見て翼達は唖然としてしまう。

 

 

「何なの……これは一体……?!」

 

 

「……今ので半径数km内の人間の記憶、その全てを書き換えた。これで直ぐに済む話かと思ったが、よりにもよってソイツの影響を貴様らが受けるとは……一々面倒事を増やしてくれる」

 

 

書き換えた(・・・・・)……?……ッ!まさか、貴様っ……!」

 

 

 男の不穏な口振りからその正体を即座に察し、翼とマリアがそれぞれの首から下げたギアのペンダントを握り締めめながら男に敵意を向ける。

 

 

 しかしそんな二人を見ても男は特に動じる様子もなく、何処かつまらなそうに右腕を荒々しく振るうと、その手に無から出現した刀が握られると同時に男の姿がみるみると変貌していく。

 

 

 まるで武者鎧とカマキリの要素を足し合わせた、全身に紫色の刃状のラインが走る灰色の異形の姿。

 

 

 徐に刀を握る右腕を下ろすその佇まいに何処か武人らしさを滲ませている一方で、その緑色の瞳は無機質に冷たい光を放っていた。

 

 

「その姿は……!?」

 

 

「やはりイレイザー……!立花達が日本で戦ってるという件の怪人か!」

 

 

 弦十郎から情報だけ聞かされていた特徴と一致するイレイザーと初めて相対し、思わず息を飲むマリアと翼。

 

 

 しかしそんな彼女達の反応になど意にも介さず、異形となった男……マンティスイレイザーは淡々と言葉を紡いでいく。

 

 

『本来なら此処で正体を明かす予定などなかったんだがな……こうなってしまった以上、背に腹は変えられんか』

 

 

 気だるげにそう言って、マンティスイレイザーは後ろ腰に回していた左手から幾つもの塵屑を目の前に振り撒く。

 

 

 瞬間、塵屑の一つ一つが次々に人型を成して無数のダスト達に変化し、マンティスイレイザーの前でワラワラとゾンビのような不気味な動きで蠢きながら身を起こしていく。

 

 

「っ、マリア!」

 

 

「ええっ!」

 

 

 現れた大量のダスト達に怯む事なく、翼とマリアは短い掛け合いを交わしながら少女を背にそれぞれのギアペンダントを手に取って身構え、聖詠を口ずさんだ。

 

 

Imyuteus amenohabakiri tron……」

 

 

Seilien coffin airget-lamh tron……」

 

 

 聖詠を紡いだ瞬間、二人は一瞬にして青と白銀の光に包まれ、同時にその身に纏われたインナースーツの上からアーマーとプロテクターが次々と装備展開されていく。

 

 

 そうして光の中から姿を現してそれぞれの得物を手にし、少女を守るべく二人は武器を構えながらマンティスイレイザー達と対峙する。

 

 

『やはり装者か……見覚えのある顔にもしやとは思ったが、まさかこんな所で顔を合わせる事になるとは思わなかったぞ』

 

 

「それは此方も同じよ。だけど丁度いいわ。こちらから探す手間が省けた今、貴方達には聴きたい事が山のようにある。それも全部此処で吐いてもらうわ……!」

 

 

「っ、マリア、今この場で奴らを相手にするのは──!」

 

 

 防衛の為にギアを纏ったとはいえ、未だイレイザーへの対抗手段を持たない今、此処で戦うのは得策でない事ぐらい彼女も承知しているハズ。

 

 

 マンティスイレイザーを前に勇むマリアを翼が宥めようとすると、マリアはマンティスイレイザーと対峙したまま目線だけを彼女に向け、声を潜めて答える。

 

 

「(言われなくとも分かっているわ。風鳴司令からも散々釘を刺されたのだし、此処で奴らとまともに戦うつもりはないけど、相手は何故かその子を狙ってる……。敵の目論見を知れる取っ掛りにもなり得るなら、そういった意味でも彼女をこのまま奴らに渡す訳にはいかない)」

 

 

「(それはそうだが……何か考えがあるのか?)」

 

 

「(その子を連れて逃げるにせよ、奴らを撒くにはそれなりに時間を稼ぐ必要がある。その子を連れて逃げるなら、脚の速い貴方の方が向いている。だから私が連中の足止めをしている隙に、貴方はその子と一緒に安全圏にまで……)」

 

 

「(……判った。ではその作戦で──)」

 

 

 マリアが考える意図を汲み、翼は何時でも動き出せるように自分達の後ろでマンティスイレイザー達に怯えた目を向ける少女を見遣り、マリアも二人が逃げ切る時間を稼ぐ為、マンティスイレイザー達に挑み掛かるべく逆手持つ短剣を手に踏み出そうとして……

 

 

 

 

 

 

『───なんだ。探し物を見付けたと聞いて来てみれば、コイツらも一緒だったのか……』

 

 

 

 

 

 

……翼とマリア、そして少女の背後から、腰にマゼンタのベルトを巻いたダークブルーのバッタのライダー……firstが悠々とした足取りで、首元のマフラーを風で揺らしながら音もなく姿を現したのだった。

 

 

「?!貴様は……?!」

 

 

「マスクドライダー……first……?!」

 

 

『遅いぞ。今まで一体何処で油を売っていた?』

 

 

『随分な言い草だな……。お前達の失態にこうしてわざわざ付き合ってやってると言うのに、口から出るのはお小言だけか?』

 

 

『身の証も満足に立てられていない奴がどの口でほざく?我々の信用を得たいのであれば、それ相応の働きで示してからにしろ』

 

 

『此処まで人をコキ使っておいて、まだ信用が足りないと?全く、相当疑り深い連中だな……』

 

 

 ヤレヤレと、マンティスイレイザーの冷たい対応に腰に手を添えながら、溜め息と共に首を横に振るfirst。

 

 

 一方でそんな二人の会話を他所に、翼とマリアはいきなり現れたfirstの出現に動揺を隠せないまま、慌ててfirstにも警戒心を向けて得物を構え対峙していく。

 

 

「どうしてfirstがこんな所に……?!」

 

 

「っ……このタイミングで現れた上に、今のやり取り……貴様、やはりイレイザーに与しているのか……?!一体何者だ!何が目的で……!」

 

 

『……さてな。親切心から答えてやりたい気持ちもなくはないが、そんな呑気な質問答を交わしていられる状況ではないだろう?今のお前達の立場は特に、な……』

 

 

「「……っ!」」

 

 

 そう言いながら空手のままゆっくりと歩み寄ってくるfirstが身に纏う雰囲気から、明確な敵意の意志が伝わってくる。

 

 

 それを肌で直接感じ取った翼とマリアが顔を強ばらせて内心焦燥感に駆られる中、マンティスイレイザーが刀の切っ先を三人に向けながら告げる。

 

 

『ファートムを捕らえろ。可能な限り傷付けずにな。邪魔立てする装者共に関しては、殺しさえしなければ後はどうなっても構わん。好きにしろ』

 

 

『『『ァァガァアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーァアアッッ!!!!』』』

 

 

「ひっ……!」

 

 

「っ、翼っ!」

 

 

「くっ……!はァああああッ!!」

 

 

 マンティスイレイザーからの指示を受け、まるで獲物を見付けた獣のような雄叫びを上げて無数のダスト達が一斉に三人へ襲い掛かる。

 

 

 マンティスイレイザー達とfirstに前後を挟まれて窮地に陥り、それでも怯える少女の前に出て即座にダスト達を迎え撃つ二人だが、其処へマンティスイレイザーが翼に、firstがマリアへ攻撃を仕掛けて混戦へと突入してしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

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