戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~   作:風人Ⅱ

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第九章/運命ノ少女×破壊者†on the load②(後)

 

 

『クロス、だと……?!馬鹿なっ、何故貴様が此処に?!』

 

 

「!クロスって、まさか……」

 

 

「旅客機墜落事故から消息不明と聞かされていた、黒月蓮夜なのか……?!」

 

 

 突如として戦場に現れたクロスを見てマンティスイレイザーが驚愕する中、マリアと翼も同じく戸惑いを隠せずにいた。

 

 

 確かに、目の前にいるのは間違いなく二日前に行方知れずとなった筈のクロスであり、同時に自分達が探し求めていた人物でもある。

 

 

 しかし、今まで何処に居たのか?どうして今になって現れたのか?疑問ばかりが浮かぶ二人だが、そんな二人の心境など知る由もなく、クロスは空手のままマンティスイレイザーへゆっくりと歩み寄っていく。

 

 

『くッ!何を呆けている!さっさと奴を始末しろ!』

 

 

『『『グルァアアッ!!』』』

 

 

 迫るクロスを前に我に返り、マンティスイレイザーが残ったダスト達を全て差し向けて迎え撃とうと試みる。

 

 

 しかし、クロスは瞬時に両脚のパワージャッキを稼動させて凄まじい瞬発力でダスト達の間を一瞬ですれ違い、それと同時にダスト達の急所を正確に狙った打撃を次々に打ち込んでいき、両脚で地面を削るようにブレーキを掛けてダストの群れの背後に止まった瞬間、ダスト達は断末魔を上げる間もなく連鎖的に爆発を起こし散っていった。

 

 

『何……?!』

 

 

「凄い……たった一瞬で……!」

 

 

「(立花の戦い方と酷似している……?アレもクロスの力の一端なのか……?)」

 

 

 数秒すら経たずにダスト達を瞬く間に撃退したクロスの力にマンティスイレイザーやマリア達も目を見張り驚嘆を覚える中、クロスは燃え盛る炎を背に、マンティスイレイザーに鋭い眼差しを向けていく。

 

 

『これで……終わりか?』

 

 

「っ、舐めてくれるなぁっ!」

 

 

 クロスの挑発的な言葉に激昂し、怒りに任せて両手で握り直した刀を構え、力強い踏み込みから一気に距離を詰めて斬りかかるマンティスイレイザーだが、クロスは素早くサイドステップを踏みながら斬撃を避け、逆に右拳を叩き込んだ。

 

 

『ぐぉおおおおっ?!』

 

 

 派手に殴り飛ばされ、マンティスイレイザーは火花を散らしながら後退りして苦悶の叫びを上げてしまう。

 

 

 たった一撃であれだけ自分達が苦戦したマンティスイレイザーを吹き飛ばす程の威力を誇るクロスの攻撃にマリアと翼も唖然としてしまうが、クロスはそのままマンティスイレイザーとの距離を詰めつつ、両腕のバンカーとパワージャッキを用いた連続攻撃で拳や蹴りを立て続けに放っていく。

 

 

『グッ?!速いっ……!』

 

 

『ふっ、ハァアアアアッ……!!』

 

 

 防御に徹し続けるマンティスイレイザーに対し、クロスは反撃の余地を与えないように素早い動きで攻撃を繰り出し続けていく。

 

 

 そして遂にクロスの猛攻に耐え切れなくなったマンティスイレイザーがクロスの拳を避けるように後方へ飛び退くと、刀を八相の構えに構え直し、その刀身に紫色の炎を纏わせていく。

 

 

『!何だ……?』

 

 

『あまり図に乗ってくれるな……!紫炎ッ!』

 

 

―ズバォアアアアッッ!!―

 

 

『ッ!クッ……!!』

 

 

 紫色の炎を纏った刀を上段から思い切り振り下ろした瞬間、マンティスイレイザーの刀から巨大な紫炎の斬撃波が放たれてクロスに襲い掛かった。咄嵯に身を翻した事で直撃こそ免れたものの、マンティスイレイザーは追撃の手を緩めず刀を連続で振るい、紫炎の斬撃波を何度も撃ち放つ。

 

 

『チッ……!』

 

 

―ドガァアアッ!ドゴォオオッ!バァアアンッ!―

 

 

 クロスはパワージャッキを起動した両足の連続回し蹴りで斬撃波を打ち消し何とか防ぎ切るが、それでもマンティスイレイザーの攻撃の手は一向に止まない。

 

 

 それどころかマンティスイレイザーは次第に斬撃の勢いを強めてクロスの身体が徐々に後退していくが、不意に斬撃波の猛攻が止み、紫炎の斬撃波を打ち消した事により発生した紫色の煙を向こうを訝しげに見据えると、其処にはいつの間にかマンティスイレイザーの姿がなく、何処かへと消えてしまっていた。

 

 

『消えた……?』

 

 

「──黒月蓮夜!!後ろだ!!」

 

 

『!』

 

 

 マンティスイレイザーが忽然と姿を消した事に戸惑うクロスだったが、そんな彼に向けて切羽詰まった翼の声が響き渡り、クロスは反射的に振り返ると同時に両脚のパワージャッキを作動させて後ろに跳躍すると、彼の背後にいつの間にか紫色の雷を体中に身に纏って回り込んだマンティスイレイザーが振るった刃の切っ先が紙一重で胸の装甲を掠り、空を切る。

 

 

『チッ、今のも外すか……』

 

 

『ッ……全身に雷を纏った高速移動か……随分と多芸な奴だ……』

 

 

『感心するのはまだ早い。本領は此処からだ……紫電・連覇斬!!』

 

 

 クロスの言葉に不敵な笑みを浮かべながらそう返したマンティスイレイザーは全身に紫雷を纏い再び姿を消すと、次の瞬間には四方八方から無数の斬撃をクロスに目掛けて放った。

 

 

―ズババババババババババババババババァアアッッ!!!!―

 

 

『ぐぅっ……?!』

 

 

 目にも留まらぬ速さから放たれるマンティスイレイザーの斬撃をギリギリの紙一重で回避し続けるクロスだが、その全てを避け切れずに右肩や脇腹、左腕のアンダースーツに傷を負い、血飛沫を噴き出す。

 

 

 だがクロスもやられっぱなしという訳ではなく、マンティスイレイザーが姿を現した一瞬を狙って素早く右腕のバンカーを稼動させ、敵の殺気を頼りに鋭い拳を放った方角に出現したマンティスイレイザーのその土手っ腹に重い一撃を叩き込んだ。

 

 

『ぐぉおおッ!!?』

 

 

『はぁああああっ!!』

 

 

 更にクロスは間髪入れずに重たい打撃音と共に両拳を連続で叩き込むと、最後に渾身の力を込めた右ストレートを放ち、その衝撃でマンティスイレイザーを吹き飛ばした。

 

 

 しかし、マンティスイレイザーは受け身を取ってすぐに体勢を立て直すと、クロスから距離を取り再び紫雷を身に纏いながら高速で動き出し、姿を消してしまう。

 

 

『また消えたかっ。だが……!』

 

 

『Final Code x……clear!』

 

 

 左腰のカードケースから取り出したカードを素早くバックルに装填すると、電子音声と共にクロスの全身の装甲が両脚から上半身に掛けて順に部分展開されていき、露出された内部装甲が橙色に激しく発光する。

 

 

 直後、クロスは全身の内部装甲から稲妻状の閃光を走らせながら凄まじい速さで駆け抜けると、対するマンティスイレイザーも全身から紫電を走らせ同等の速さで真っ向から立ち向かい、お互いに拳と刀を振りかぶる。

 

 

『ハァアアアアアアッッ!!』

 

 

『紫炎ッッ!!』

 

 

 互いの光を纏った煌拳と紫炎に覆われた刀がぶつかり合った瞬間、二人を中心に強大な衝撃波が発生して半径十数メートル内の周囲の大地が吹き飛んで捲れ上がり、周りの木々が激しく揺れ動く。

 

 

 しかしそれだけに終わらず、二人は再度超スピードで動き出すとまるで弾かれたように何度も激突し、激しい攻防を繰り広げていく。

 

 

 何もないあちこちの空間で絶え間なく巻き起こるけたたましい轟音と衝撃波。それはまさに二人の戦闘のレベルの高さを表していた。

 

 

ドゴォオオオオォンッッッッ!!!!!!ドゴォオオオオオオオォンッッッッ!!!!!!

 

 

「っ、なんて速さだっ……!」

 

 

「えぇ……とてもじゃないけど目で追い切れない……なんて戦いなの……」

 

 

 そんな二人の壮絶な戦いを前に、翼とマリアもただただ呆然と立ち尽くす事しか出来ずにいる。それほどまでに目の前の戦いは常軌を逸していたのだ。

 

 

 そうして何度目か分からない衝突の後、マンティスイレイザーから一度距離を離してヒラリと身を翻しながら地上に着地したクロスは左腰のカードケースから新たにカードを素早く取り出し、バックルから立ち上げたスロットにカードを装填し掌で押し込むように戻した。

 

 

『Code Zababa……』

 

『clear!』

 

 

『ッ!姿を変える気かッ!だがやらせんッ!』

 

 

 クロスが新たな姿になろうとしている事を察したマンティスイレイザーは即座に距離を詰め斬り掛かる。

 

 

 だがクロスは今まで身に纏っていたガングニールのアーマーを盾代わりにするようにパージしてマンティスイレイザーの刀を凌ぎ、その隙に新たなアーマーを次々に纏い、タイプザババに姿を変えたクロスに再度斬り掛かるマンティスイレイザーの斬撃を避けるようにその身体が桃色と緑色の光と化して左右に別れ、タイプシュルシャガナ、タイプイガリマとなり分身し、実体化した。

 

 

『なっ……!』

 

 

「分身した……?!」

 

 

「あの姿……もしかして、シュルシャガナとイガリマ?!」

 

 

 突然二人に分身したクロス達を見て驚愕するマンティスイレイザーと翼。

 

 

 一方で、マリアは調のシュルシャガナと切歌のイガリマを彷彿とさせる二人のクロスの姿に戸惑いを隠せない中、そんな一同の反応も他所にタイプイガリマは大鎌を手に、タイプシュルシャガナは両腕のアーマーからチェーソーの刃を展開しながら両脚のランドスピナーの車輪を回転させ、マンティスイレイザーに同時に仕掛けてゆく。

 

 

―ガギィイインッ!!ギィイインッ!!ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァアアッッ!!―

 

 

『ハァアアッ!ぜぇえああッ!!』

 

 

『ハアアアアアアッ!!』

 

 

『チィッ!小癪な……!!』

 

 

 二人に増えたクロス達の攻撃を捌く為に紫雷を纏った斬撃を繰り出す事で応戦するマンティスイレイザーだが、大鎌のリーチを活かすタイプイガリマに繰り出す刀を次々に弾かれ、その隙に両脚のランドスピナーで身体をコマのように回転させ懐に潜り込んだタイプシュルシャガナが両腕のチェーソーブレードによる高速回転斬りを喰らわせてゆく。

 

 

 更にチェーンソーの連撃を受けたマンティスイレイザーが怯んだ瞬間を狙い、透明化したタイプイガリマが背後に素早く回り込んで透明化から姿を現し、大鎌による連続攻撃を仕掛けてトドメに渾身の一撃でマンティスイレイザーを斬り飛ばした。

 

 

『グァアアゥッッ!!?ぐっ、このままではっ……!こうなればせめてファートムだけでもッ!!』

 

 

「ヒッ……!!?」

 

 

「──そうはいかないわ!」

 

 

 このままでは流石に分が悪いと踏み、せめてファートムだけでも回収すべくクロスに残ったダスト達を全て始末された事で解放され、離れた木陰に隠れていたファートムの下へ一目散に走り出すマンティスイレイザー。

 

 

 しかしその前にマリアが横から滑り込むように立ち塞がり、そんなマリアにマンティスイレイザーが忌々しげに舌打ちしながら素早く刀を突き出して刺突を放つが、対するマリアも咄嗟に左腕の掌を突き出し、銀色の逆三角形の障壁を前方に展開。正面からマンティスイレイザーの刀を受け止めて拮抗し、激しく火花を撒き散らす。

 

 

―ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァアアッッ!!―

 

 

『チィイッ!邪魔をしてくれるな装者ァッ!貴様らなんぞに用などないッ!』

 

 

「そちらにはなくともこちらにはあるのよっ!翼ァッ!」

 

 

「──承知ッ!」

 

 

―千ノ落涙―

 

 

 マリアの声に応えるようにいつの間にか遥か上空に跳躍した翼が高らかに刀を掲げると、無数の青い光剣が彼女の周囲に次々出現し、それら全てが雨の如くマンティスイレイザーに向けて降り注いでいく。

 

 

 それを目にしたマンティスイレイザーは慌ててマリアから距離を離しつつ、目にも留まらぬ高速の斬撃で飛来する光剣を全て薙ぎ払い、反撃に転じようとするが、

 

 

『──?!なん、だ……?身体が、動かない……?!』

 

 

 突然、まるで何かに拘束されているかのように身動きが一切取れず焦燥感を露わにするマンティスイレイザー。

 

 

 一体何が起きてる?そんな疑問と共に辛うじて動かせる顔を下に向ければ、其処には先程弾いた筈の翼の無数の光剣が自分の足元の影に突き刺さっている事に気付く。

 

 

―影縫い―

 

 

『これは……?!』

 

 

「──貴様の動きを封じさせてもらった。これでもう、お前は自由には動けまい」

 

 

『っ……!貴様っ!』

 

 

 翼の放った最初の光剣は陽動で、真の狙いはマンティスイレイザーの動きを封じる事。

 

 

 まんまとそれに引っかかってしまった事実に苛立ち、マリアの隣に着地した翼を睨みつけるマンティスイレイザーだが、その隙を逃さず、マンティスイレイザーの背後からクロスがタイプザババから通常形態へと戻りながら疾走してバックルにカードを装填し、マンティスイレイザーへと飛び掛かった。

 

 

『Final Code x…clear!』

 

 

『ハァアアアアァッ!!』

 

 

『ッ!おのれっ──紫炎ッ!!』

 

 

 蒼光を纏った右脚を突き出しながら背後から迫るクロスに気づき、マンティスイレイザーは自身の両脚から足元の地面に掛けて紫色の炎を放出し、自身の影を縫う翼の光剣を地面ごと焼き払い拘束から逃れてしまい、クロスの飛び蹴りが当たる寸前に身を翻して直撃こそ免れたものの火花を撒き散らして左肩を掠め、そのままふらつきながらクロスから距離を離して真横へ跳び退くも、直後に片膝を着いて蹲ってしまう。

 

 

『ぐっ、ぅ……!ま、さか……これ程までとは……!』

 

 

『……どうする……?まだ続けるつもりか……?』

 

 

『ッ……』

 

 

 振り返るクロスの静かな言葉にマンティスイレイザーが悔しげに歯噛みしている間にも、翼とマリアがクロスの背後に駆け付けてそれぞれ身構えていき、そんな三人を前にマンティスイレイザーは視線を動かしてfirstの姿を探す。

 

 

『(奴はいない……クロスが駆け付けたのを察して先に逃げたのか……?クッ、やはり奴は信用ならん……!)』

 

 

 自分を置き去りにしたfirstへの悪態を内心で吐き、マンティスイレイザーは地面に突き立てた刀を杖代わりにフラリと起き上がる。

 

 

 それを見て翼とマリアが更に警戒心を強める中、マンティスイレイザーは離れた場所の木陰に隠れるファートムを一瞥した後、クロスに再び視線を戻す。

 

 

『……ファートムの身柄は今は預けておいてやる。だが忘れるな……次こそは、必ず──!』

 

 

 そう言いながらマンティスイレイザーは地に突き立てたままの刀で地面を削る様に斬り、其処から巨大な紫炎を巻き起こす。

 

 

 その突然の行動に驚く翼とマリアだったが、やがて炎は静かに消えていき、完全に消えると同時にマンティスイレイザーは姿を消してしまっていた。

 

 

「……消えた?」

 

 

「逃げたのね……」

 

 

『…………』

 

 

 マリアの言葉にクロスは無言のまま俯いてしまう。

 

 

 今の状況では敵であるマンティスイレイザーを逃がす結果になってしまった事を悔いているのだろうが、そんなクロスの背に翼がアームドギアの刀を収めながら声を掛ける。

 

 

「敵には逃げられはしたが、救援に駆け付けてくれたのは助かった。礼を言わせて欲しい、黒月蓮夜」

 

 

『……?俺の、名を……?』

 

 

「えぇ、貴方の事は風鳴司令との情報通達で度々聞かされていたから。それに先の事件だと、調と切歌が世話になったそうね。その件についても、改めてお礼を言いたいと思ってて」

 

 

『……調……切歌……ああ……そうか……貴方達が、天羽々斬とアガートラムの装者……の……』

 

 

「……?黒月蓮夜?どうした?」

 

 

「何だか様子が可笑しいけど、もしかしてさっきの戦闘で受けた傷が──?」

 

 

 何やら言葉がたどたどしく、明らかに言動が可笑しいクロスに翼とマリアが怪訝な表情を浮かべて彼に歩み寄ろうとし、

 

 

 

 

 

 

───クロスの全身のスーツの隙間から、突然夥しい量の赤い血が流れ出した。

 

 

「なっ……」

 

 

「なに、これ……?血……!?ねぇ!貴方──?!」

 

 

『ァ……ッ……がふッ……!!』

 

 

 マリアの呼び掛けに答えようとするも、クロスはいきなり身体をくの字に折り曲げながら仮面のクラッシャーの隙間から赤い鮮血を吐き出し、そのまま変身が強制解除され、元の姿に戻った蓮夜の露わになった姿を見て翼とマリアは思わず絶句してしまう。

 

 

 何故なら、変身が解けた蓮夜の姿は全身から流血が流れ出てるだけでなく、ボロボロに焼き焦げて破けた服の隙間のあちこちから重度の火傷が見え隠れするなど、とてもじゃないが生きているのが不思議なぐらいの重傷を負っていたからだ。

 

 

「そ……その傷は……!?」

 

 

「……ぇ……ぁ、す、まない……すこし、耳がとおくて……何故か、声が聞き取りづ、ら……ぁ……」

 

 

―ドシャアァッ!!―

 

 

「ちょっ、ちょっとっ!?」

 

 

 翼の声が聞こえていないのか、蓮夜は血に濡れた顔で苦笑いを浮かべながら聞き返そうとするも、そのまま前のめりに倒れてしまう。

 

 

 そんな蓮夜に二人も慌てて傍に駆け寄って地面に膝を突き必死に大声で彼に呼び掛けるが、完全に意識を失っているのか、どれだけ必死に呼び掛け続けても返事どころか僅かな反応さえ返ってこず、しかも流血が止まらず血溜まりが広がっていく事に二人は愕然としてしまう。

 

 

「何なのこれ……?!一体どうして此処までの傷を?!」

 

 

「この火傷…………ッ!まさか、旅客機の墜落事故からそのまま駆け付けてきたのか……?治療もまともに受けぬままっ……!」

 

 

「そんな状態で戦ってたっていうの?!なんて無茶を……!とにかく、早く救急車を……!!」

 

 

「ダメだ血が止まらん……!急げマリアッ!!このままでは本当に彼が死んでしまうッ!!」

 

 

 蓮夜の身体の傷口を両手で抑え込んで必死に流れる血を止めようと試みる翼だが、出血量が多過ぎて一向に止まる気配がなく、それを見てマリアは携帯端末を取り出して一刻を争う事態である事を理解しながらも冷静さを保ちつつ、救急への連絡を急ぎ試みる。と、其処へ……

 

 

「──少し、通してくれ……」

 

 

「「……え……?」」

 

 

 不意に二人の背後から聞き覚えのある声が響き渡り、二人が振り返ると、そこにはいつの間にか木陰に隠れてたファートムが立っていた。

 

 

「あ、貴女……?」

 

 

「……時間がない。邪魔するぞ」

 

 

「何……?おい待てっ、いきなり何を?!」

 

 

 ぶっきらぼうにそう言ってファートムは二人を押し退け蓮夜の側にしゃがみ込むと、彼の身体を無造作に仰向けに寝かせ、その胸元に両手で触れていく。

 

 

 そんなファートムの突然の行動に翼も異を唱えようと彼女の肩を掴むが、すぐに手を離して驚いたように目を見開かせる。

 

 

「なんだ……?手から、何か光が……?」

 

 

 そう、翼の言葉通り、蓮夜の胸元に手を当てたファートムの手からは眩いばかりの白い輝きが溢れ出ていたのだ。

 

 

 更にそれだけでなく、白い光に包まれる蓮夜の傷口が徐々にだが塞がれ始めていた。

 

 

「傷が、治って……?!」

 

 

「……あくまでも応急処置だ。完全には治せないから、早く病院に運んで適切な処置を。……彼が本当に黒月蓮夜なら、このまま彼に死なれるのは私も困る……」

 

 

「え……?」

 

 

「待て、何故彼の名前を知っている?それにその力……お前は、一体……?」

 

 

「………………」

 

 

 蓮夜の傷を治癒出来る謎の力や、まるで彼の事を知っているかのような口振りをするファートムに翼が訝しげな眼差しと共にそう問い掛ける。

 

 

 その質問に対し、ファートムは蓮夜の治療を続けたまま何かを考え込むかのように目を伏せた後、やがて徐に目を開き、重く口を開いた。

 

 

「私の名はファートム。数多の錬金術師と、ソイツらを集めたイレイザー達の手によって造られた、人間もどき。───ホムンクルスの技術と、イレイザーの力を掛け合わせて生み出された……化け物だ……」

 

 

「「……なっ……」」

 

 

 無愛想に、まるで何処か他人事のようにファートムの口から告げられたのは、二人も予想だにしてなかった内容。

 

 

 その衝撃的過ぎる事実に理解が追い付いていないのか、翼もマリアも驚きのあまり目を剥いて硬直してしまう中、ファートムはそんな二人の反応を背中越しに察して一瞬物悲しげな顔を見せるも、すぐに真剣な表情に切り替わり、力の行使に意識を集中させ蓮夜の治療に専念してゆくのだった。

 

 

 

 

 

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