戦姫絶唱シンフォギア×MASKED RIDER 『χ』 ~忘却のクロスオーバー~ 作:風人Ⅱ
また1ヶ月振りの更新になってすみません!(土下座
後編が想定以上に話が長くなってしまい、纏めるのに時間が掛かってしまいました……!
急いで執筆したので粗があるかもしれませんが、その時は気兼ねなく指摘して下さい(汗
では、今回も宜しくお願い致します。
───蓮夜が眠る病室。
本部への報告を終え、外に出ていた翼とマリアが扉を開けて室内に足を踏み入れると、其処には二人が先程部屋を出た時と変わらず未だベッドの上で眠り続ける蓮夜に寄り添うように、ファートムが傍らの椅子に座ったままジッと蓮夜の顔を見つめている光景があり、扉の開閉音に気付いたファートムが無表情のまま二人の方に顔を向ける。
「ただいま、ファートム。さっきは急に出て行ってごめんなさいね」
「…………」
謝罪するマリアにファートムは無言で小さく首を横に振って応え、視線を蓮夜の方に戻して再び黙り込んでしまう。
そんな彼女の淡白な反応に翼は些か怪訝な表情を浮かべるが、今はそれよりもとすぐに気を取り直し、ファートムの隣にまで歩み寄って眠っている蓮夜の様子を覗き込んだ。
「黒月の様子はどうだ?」
「……」
翼の問い掛けに対し、ファートムは一度彼女の顔を横目に見た後、すぐに蓮夜の方へと向き直す。
「今の所、特に問題は無いとは思う。私も出来る限りの処置をして、手術も無事に終えた今、後は彼の体力次第になるが……」
「……そうか」
「こればっかりは、彼自身にどうにか頑張ってもらうしかないわね。……で、それまでは貴女の事情も訊かせてもらう訳にはいかないのよね?」
「……二度手間は好きじゃない……人に何度も説明するほど愉快な話ではないし、何より、事情を説明した所でお前達が協力してくれる保証はないだろ……」
「っ、保証って、そんな言い方……」
あまりに不躾な言い方をするファートムに思わず反論しようとするマリアだが、そんな彼女を翼が軽く手で制し、ファートムを見下ろしながら淡々と言葉を紡ぐ。
「確かに、そう言われれば否定もし切れない。何せこちらも、まだお前とあのイレイザー達の間にどんな繋がりがあるのか分からないのが現状だ。……状況証拠だけを鑑みれば、お前は奴らの元から逃げ出したように思えるが、それだけではまだお前の事を信用し切れないからな」
「ちょっと、翼……!」
「……彼の命を助けて、こうしてお前達と接触を図っていること事態、奴らの考えた詭謀かもしれないと……?」
「少なくとも、私はその可能性も考慮している。本部からのこれまでの報告で、イレイザーという連中はこれまでも狡猾且つ悪辣な手段で何度となく立花達を貶めようとしたと訊く。……仮にお前にその意志がなかったとしても、向こう側がお前も預り知れない所でこの状況を利用しようと目論んでいても不思議はない」
「……なるほど。何事においても警戒心を怠らないという点においては、流石はシンフォギア装者といったところか……」
「……褒め言葉として受け取っておこう」
皮肉を込めて淡々と返す翼だったが、ファートムは特に気にする素振りも見せず、そのまま蓮夜の方に意識を向けたまま口を開く。
「なら、お前達の望む疑問に一つだけ答えてやる。奴らの目的は至極単純明快。……このロンドン全域の支配を皮切りに、お前達の物語を手中に収める……私という存在は、その為だけに生み出された"鍵"に過ぎない」
「……何だと……?」
「鍵って、それは一体どういう──」
「───…………ぅ…………」
ファートムの言葉の意味を尋ねようとする二人だが、その時、蓮夜の口から微かに声が漏れ、それに気付いた二人は驚きと共に揃って蓮夜の方へ目を向ける。
すると、今まで固く閉ざされていた瞼が僅かに動き始め、ゆっくりと開かれていくと、ぼんやりとした様子で天井を見つめながら、蓮夜は掠れた声で小さく呟いた。
「こ、こ……は……」
「黒月……?!目を覚ましたのか!」
「…………っ?おまえ……たちは……?」
まだ意識がハッキリしていないせいなのか、焦点の合わない瞳を揺らしながら起き上がろうとする蓮夜に、翼とマリアは慌てて駆け寄っていく。
「無理に動かない方が良い!まだ手術をしたばかりで、身体の方は万全ではないんだ!」
「っ、俺の……手術……?」
「えぇ……貴方、重傷を負った状態のままイレイザー達と戦ったせいで、戦い終わった後にそのまま倒れたのよ。覚えていないの?」
「…………そう、いえば……」
マリアの言葉を聞きながら、蓮夜は少しばかり記憶を呼び起こすような仕草を見せた後、すぐに何かを思い出したように目を見開く。
「そうだ、奴らは……!?ぁ、ぐっ!」
勢い良く上半身を起こした蓮夜だったが、腹部に痛みを感じたのか、すぐさま顔を歪めて腹を押さえ始める。
そんな彼に翼とマリアが心配し慌てて身を乗り出すと、そんな二人の様子を見て、蓮夜は申し訳なさそうに眉間にシワを寄せて謝罪した。
「すま、ない……確か、風鳴翼と、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、だったか……響達から度々話を聞いてた……助っ人にきたハズが、来て早々迷惑を掛けてしまうなんてっ……不甲斐ないっ……」
「そんなことは良いっ。それよりも、傷が開いたりしたら大変だ。今は安静にしていろ」
「っ……しかし……」
「焦る気持ちは分かるけど、無理をしたところで状況が好転する訳じゃないわ。貴方のおかげでイレイザー達も退けられた訳だし、今はゆっくり休んで」
「…………申し訳ない…………」
翼とマリアに諭され、蓮夜はすまなそうに項垂れながら謝罪の言葉を口にし、再びベットに横になろうとしたところで、ベットの傍らの椅子に座るファートムの存在に気付いて怪訝に眉を寄せた。
「彼女は……?」
「あぁ、彼女はファートム。イレイザーに追われていた今回の件の関係者で、瀕死のお前を治療して一命を取り留めてくれたのも彼女だ」
「……イレイザーに、追われていた……?」
翼の説明を受け、蓮夜は更に疑問を深めてファートムの方へと視線を移すと、当の本人は特に気にした様子もなく、ただ無表情で彼から目線を逸らすだけだが、翼はそんなファートムに目を細めて問い質すように口を開く。
「黒月の今に至るまでの経緯も気になるが、先にファートム、彼はこうして目を覚ました。そろそろ詳しい事情を、先程の続きを含めて説明して貰おうか」
「…………」
黙ったまま俯くファートムだが、その態度こそが何よりも雄弁に語っていた。
恐らく翼やマリア、そして蓮夜の三人に対してこれ以上隠し事をするつもりはないのだろうが、一方で、目覚めたばかりの蓮夜は今自分が置かれている状況に理解出来ておらず、そのせいか困惑するように三人の顔を見回してしまう。
「何の話だ……?俺が眠っている間に、何か……?」
「大した事ではないのよ。ただ彼女が詳しい事情を説明するのは、貴方が意識を取り戻してからと頑なに拒んでいるだけで」
「……俺が?」
自分が目を覚ます前に何があったのか。全く見当がつかない蓮夜は困った様子で首を傾げるが、そんな彼の反応を横目に、ファートムは漸く重い口を開いた。
「約束は守る。ただ私も全てを知る訳じゃない。分かる範囲でしか答えられないぞ」
「それでも構わない。続けてくれ」
翼の言葉に小さく息を吐き、ファートムは静かに語り始めた。
「目覚めたばかりの彼の為にももう一度説明するが、私の名はファートム。錬金術師とイレイザー、双方の技術と知識を掛け合わせた事で生み出されたホムンクルスだ」
「!?何だとっ……?」
「其処までは私も翼も訊いた話よ。問題はその先……何故貴方という存在が生み出され、今こうして此処にいて狙われているのか。その理由を聞かせて欲しいわね」
「……分かった」
起き抜けにとんでもない情報を聞かされて驚愕する蓮夜の傍に移動したマリアに向けて小さく首肯すると、ファートムは淡々とした口調のまま説明を続ける。
「私が生み出された理由は、奴等の計画における鍵を握る為……それは既に語った通りだ。私という鍵が手元になければ、奴らは計画を実行出来なくなる。だから私は隙を見て奴らの元から逃げ出した……アイツらの計画を達成させない為に」
「計画……?」
ファートムの説明を聞きながら翼が訝しげに聞き返すと、ファートムは椅子から徐に立ち上がり、窓の外を眺めながら静かな声で呟く。
「『既存の摂理は終わりを迎え、森羅万象はその意味を変える事となる』……」
「……?何の話?」
「私を作った錬金術師共が口を揃えて、いつも偉そうに語っていたご高説だ。私にも意味はさっぱり分からないが、どうやら連中はこのロンドンを丸ごと乗っ取るなんて大それた計画を企てているらしい。それを叶える過程の中で私という存在が犠牲になる事を知っていたから、私は死にたくない一心でこの街まで逃げてきて、どうにかして見付けようと思った。錬金術師達の目論見を阻止し、イレイザーを殺せる存在……お前をだ、黒月蓮夜」
ファートムはそう言って振り返ると、真っ直ぐに蓮夜の方を見つめて指差す。
そんな彼女の瞳には、今までの無機質な印象とはまるで違う感情が宿っている事に気付くが、それを指摘する間もなく、ファートムは指を下ろして再び話を続けた。
「お前の噂は、私がいた施設の錬金術師達の間でも知れ渡っていた。異世界からの異端者。イレイザーと聞けば情け容赦なくその命を刈り取る卑劣漢。……其処まで恐れられる男なら、必ず奴らを止めてくれるだろうと期待してな」
「……卑劣漢か……会った事もない相手に、随分と好き放題言ってくれる……」
何の面識もない錬金術達からの誹謗中傷を聞かされて何処か不快げに顔を歪める蓮夜。そんな彼に対し、ファートムは更に言葉を続けていく。
「しかし、想定外のトラブルもあった。本来の私の脱走プランでは、研究に必要な材料集めの為に人が出払い、施設の警備が薄くなる日を狙って奴らが常備している転移用のジェムをどうにか入手し、そのままお前の存在が確認された日本へと向かう予定だった。だが、私欲に目が眩んだ錬金術師共が突然イレイザーを裏切り、私を秘密裏に施設から連れ出したんだ。……最も、そんな目論見も見抜かれていたようで、連中が内輪揉めで混乱している隙にどうにか目を盗んで逃げ出せはしたが、肝心の転移用のジェムを手に入れる暇すらなく……後はお前達も知る通り、街まで何とか逃げ果せた私とお前達が偶然にも出会い、追っ手のイレイザーと戦う羽目になったって訳だ」
「……そんな事があったのね」
「錬金術師とイレイザーの間の同盟関係は、既に瓦解しているという訳か……それで、お前を利用してロンドンを乗っ取るとやらの計画、他に何か情報はないのか?いつ
「それについては、私もそれとなく奴らに問いだした事はあった。……ただそれで返ってきた返答は、「道具如きが余計な詮索をするな」と、躾という名目で半日以上の暴行の末、3日間の断食を命じられて独房に幽閉されて終わったがな……」
「っ……何よそれ……酷いっ」
(……司令が語っていた推察、あながち間違いではなかったという訳か……しかし、今の話は何処まで信用出来る?こちらの同情を誘おうとしている線も捨て切れないが……)
左腕を強く抑え、何処か遠く見つめるその瞳に何処か悲哀の念を宿しながら遠い記憶を思い返すファートムから聞かされた事情に、マリアは静かに憤り、翼も自分と弦十郎の懸念と推測が少なからず的中していた事に複雑な心境になりつつも、彼女の話の全てを信用出来るか否か見定めるように怪訝な眼差しをファートムに向けつつ、質問を続ける。
「もう一つ質問する。あのマスクドライダー……firstは何者だ?何故奴はイレイザーに与している?」
「……あの飛蝗男か……生憎、私も奴の事は何も知らない。何の前触れもなく、ある日ふらっと施設に現れて、何度かイレイザーの連中と話してる所を目にした程度だ……ただその時の会話の内容からして、あまり良好な関係には見えなかったが」
「……そう……(ファートムもfirstの事は知らない……戦場でのやり取りからして彼等が信頼し合ってないのは見て取れてたけど、彼は一体何者なの……?」
firstについてはファートムも何も知らないらしく、ますます謎が深まるfirstの正体について最早不気味さにも似た感覚を覚えて険しい表情を浮かべてしまうマリア。
一方、未だ目覚めたばかりではっきりとしない頭に何とか一同のやり取りを叩き込んだ蓮夜は口元を手で覆いながら何やら思案する素振りを見せると、口元から手を離しながらゆっくりと視線を上げていき、ファートムの顔をジッと見つめる。
「正直な話、こちらとしては意識を取り戻したばかりで、お前の話の全てを今すぐ理解し切れてるとは言えない。……ただ一つ、確認させて欲しい。俺の命を助けてくれたのは、俺にお前をイレイザー達から守って欲しいからか?」
「……そうだ。この中で奴らを消せるのは、現状お前の力しかない。連中が何を企んでいるかなんて知らないが、少なくとも、奴らの目論見が果たされれば私もきっと無事ではいられない。そんな確信がある」
「…………」
「死にたくない。勝手な理由で造られて、勝手な理由で犠牲にさせられるだなんて私はぜったいに御免だ。……だから頼む。私を、助けてくれ」
まっすぐ、淀みない瞳を向けて助けを願うファートム。
その目には今までの無機質な印象とはまるで違う感情が宿っている事に気付き、蓮夜は目線を落として少しの熟考の後……
「……分かった。お前からの頼みを引き受ける」
「……!本当か……?」
「ああ。理由がどうであれ、命を救ってもらった恩義はきちんと返すつもりだ。ただ、俺個人はともかくとして、S.O.N.G.であるこの二人が賛同してくれるかはまた別な話なんだが……」
そう言いながら翼とマリアに目を向ける蓮夜に釣られるように、ファートムも二人に視線を向ける。
そんな二人からの視線に一瞬キョドってしまうマリアだが、一度咳払いをし気を取り直した後、気を引き締めた真剣な表情に切り替えて頷く。
「私も別に構わないわ。助けた縁もあるのもそうだし、奴等が貴方を狙っているのなら、傍に置く事でその目論見を暴く事も出来るかもしれない。そうでしょう、翼?」
「……そうだな。今の私達にはイレイザー達の目的を知る手掛かりを何一つ得ていない。未だ疑い、信頼出来ない部分はあれど、お前と行動を共にすれば向こうからの接触が望める以上、調査を進めるに当たったってはこれ以上ない手掛かりとなる」
「……そうか。利害が一致してる以上、私はお前達の力を利用して自分の身を守り、お前達も私を利用して奴等の目的を探る……正にギブアンドテイクという訳だな。いいぞ。そういう打算的な関係の方が、私としても逆に信頼出来る」
フッ、と、マリアと翼からの返答に目を伏せて小さく微笑むと、ファートムは蓮夜の傍らに歩み寄り、そっと右手を差し出した。
「では、これで交渉成立と受け取ってもいいな?私も何か重要な情報を思い出せば、お前達に惜しみなく提供する。その代わり……」
「……ああ。俺達三人で、お前を必ず守り切る」
そう言って、差し出された手を握り返す蓮夜。
一方で翼はまだファートムへの疑心を捨て切れていないのか、その様子にどこか浮かない顔を見せており、マリアはそんな彼女を横目に見つめた後、あからさまに話題を逸らすように両手をパンッと叩いて皆の注目を自分に集めた。
「さて、それじゃあ話も纏まった事だし、次は貴方の番よ。黒月蓮夜」
「……?俺の、番?」
「ええ。貴方、飛行機が墜落してから今の今まで何処で何をしていたの?私や翼は勿論、風鳴司令やクリス達も相当心配してたわ。その辺の経緯、聞かせてもらえるわよね?」
「それは構わないが。……いや、待て。待ってくれ。クリス達も心配してた、と言ったか……?」
「……?ああ。雪音はともかくとして、普段は温厚な立花や、物静かな月読すら大層ご立腹な様子だったぞ?確か……目を覚ましたらすぐに連絡しろ、目覚め次第説教の二時間コース延長有り、とも」
「────────」
響達からの伝言を思い返すように顎に手を添えて伝える翼の言葉を聞き、途端、蓮夜の顔色がみるみると真っ青に染まっていく。
「……ちょ、ちょっと、大丈夫?何だか急に顔色が悪くなってきてるようだけど……?」
「…………問題、ない…………ただ、一つだけ頼みを聞いてもらえると助かるんだが、良いだろうか…………?」
「「…………?」」
弱々しい声で呟きながら、恐る恐ると手を挙げる蓮夜。
そんな蓮夜の先程とは打って変わってこ様子に翼とマリアが小首を傾げると、蓮夜は目を泳がせながら酷く怯えた様子で……
「皆への連絡は、俺の方からする……その時に二人にも今までの経緯を説明したいと思うんだが……その前に、その……胃薬を、沢山用意して貰えると……助かる……ホント、凄く……」
「「…………((……ああ、成程)))」」
絞り出すような声で、胃の辺りを抑えながら言う蓮夜の一言で全てを察したのか、二人は揃って何とも言えない微妙な苦笑いを浮かべ、響達への連絡の前に彼の為に胃薬を用意する事に決めたのだった……。