我、死二場所ヲ探s...あ、兎ちゃん   作:IS提督

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第14話

 右手でアクセルを捻り、整地されていないドロドロの道を進みながら、水が染みて少し肌寒くなってきたカーキ色のトレンチコートの重さを感じながら、サイドカーに乗っている戦友をチラリと見る。

 戦友は鉄帽を深くかぶりながら、両手をみぞおちの辺りで組み、寒さを凌いでいるようだった。

「お前、風邪ひくなよ」

 私の掛けた言葉に声に答える様に右手の親指で鉄帽をクイッと上げる。

「いやー、この寒さはかなわん。ウトウトと来た途端に寒さが倍になった様に感じる。それにもし寝られたとしても、エンジンの真横のせいで音に起こされそうだな。」

「うぅん、ここらでいったん休むか?」

 私の発言に彼は一瞬だけ素っ頓狂な顔をする。

「ここでか?」

「どのみち、こんな遅い速度でバイク走らせてたら、少し止まろうがどうしようが、一発でやられるだろ」

「あー、確かにな、とりあえず、ここにバイクを隠して、偵察活動するのも......」

 そこまで言った所で、無線機から指示が入る。

『本部より各員へ、E-3-C-1方面からE-2-C-9方面へ、敵戦車部隊が進行中。これより野戦砲での攻撃を行う。「カワウソ隊」は射弾観測をせよ。送れ』

 私は、無線機からの音が消えると同時に、バイクのエンジンを切り周囲に聞き耳を立てる。

 それと私の行動と同時に戦友は、地図を取り出し、私たちの現在位置を把握し、私に現在位置を指で指して教える。

『「カワウソ隊」より本部へ、現在地C-9-Z-7の為、当該地域への到着は40分はかかる見込み。誰か別に近くにいる隊はいないか。送れ』

 再度無線からの音声が切れると同時に、サイドカーに座っている戦友と目線を合わせ、彼が無線機を手に取った。

「こちら「アジ班」現在地「E-2-C-9」のため、観測できます。送れ」

 そういうと彼は、無線機の送信ボタンを離し、返信を待つ。

架空図書「英雄の友達」より引用


14話

「人が多くなってきたな......。」

 

 田中がポツリと声を漏らし、空を見上げながら、行進を開始し手からの道のりを思い返す。

 

 

 まだ空に太陽の光が渡り切らず、夕日にも見える茜色の空が我々の小隊を包み込んでいた。

 

「歩くルートは全部君に任せるから」

 

 そう言いながら、田中は4456小隊の姿を見送りながら新田上等兵に声を掛ける。

 

「そう心配そうな顔はしないで、自由でいいんだよ。今日は、我々の姿を沢山の人たちに見てもらう事も目的の一つなんだから」

 

「はい」

 

 どこか少し心配そうな顔つきの新田が行進のための足踏みを始める。

 

 1人の軽い足踏みの音に、ちらほらと別の足踏みの音が1人、また1人と増えていく。

 

 足音の数が多くなると同時に、煩雑に重なった足音が次第に1つの大きな足音にまとまる。

 

 田中は自身の肩にかけていたボルトアクション式の銃のボルトを引き、タカヒロから受け取った空砲を、親指で3発装填し再びボルトを戻して、薬室を密閉する。

 

 彼はそのまま銃口を斜め上に向け、安全機構を解除して引き金を引く。

 

 足踏みの音をすべてかき消すほどではないが、乾いた音が周りの山々に反響して何度も、彼ら4456小隊の耳に届く。

 

 田中は、再度ボルトを引き、空薬莢を排出しボルトを戻し2度目の引き金を引く。

 

 今度は、山々の反響を聞くことなく、4456小隊の田中以外が行進するが、その歩みはどこか遅い。

 

 田中は、再度ボルトを引き、空薬莢を排出しボルトを戻し3度目の引き金を引いた後に空薬莢を排出し小隊と同じように行進を始め、2列に加わることなく、列の真中辺りで3列目として行進する。

 

 行進の足取りは重く、一歩一歩が戦友の死に近づける。

 

 町までは、まだ遠く......。

 

「万朶の桜か 襟の色」

 

 重い空気に耐えかねてか、誰かがつぶやくように声を出す。

 

 その声は、重苦しい空気の中での発声で緊張に負け、細く揺らめいていた。

 

「「花は吉野に 嵐吹く」」

 

 声の主を増やしながら、声は歌を形づける。

 

『大和男子と生まれなば 散兵戦の花と散れ』

 

 本来であれば規律を守らせる立場である田中も、軍帽の鍔を細かく左右に振った後、声を出す。

 

 歩は相変わらず重いが、小隊の心は1つにまとまった。

 

 アスファルトに火が辺りはじめ、照り返しが田中達の小隊を光で包む。

 

 フと目線を前の下り坂に向けてみると、照り返した光が黒いアスファルトを白く染め上げ、1本の光の道筋となり小隊を導く。

 

「これだよ!」

 

 歌声の中から、希望に満ちた声が聞こえる。

 

「俺達もアイツ等に会いたいけど、アイツ等も俺たちに会いたいんだ! なぁ! みんなも小隊長も、暗い顔せず、目線を上げて堂々と迎えに行こうよ!」

 

 その声に田中は先ほど自身が発した言葉を思い出す。

 

 足跡が、歌声が、力強く。しかし、どこか優しいものに変わっていくのを小隊の全員が感じ取った。

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