我、死二場所ヲ探s...あ、兎ちゃん   作:IS提督

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長いような短いような連休が終わりますね。
私は一日以外は、ぐーたらに過ごしました。
やらねばならない事が沢山あるのに……。
ともかく、第四話をどうぞ!


第4話

第4話

 

「こ、この方は見ての通り、此処でバイトをやっているリゼさんです。リゼさん……この方達はココアさんと、田中さんです」

 

 チノは、ココアと田中をリゼと呼ばれている少女に紹介し、その後にリゼにココア達の事を紹介した。

 

「よろしくな! ココアと……田中」

 

 リゼはココアと田中に挨拶をするが、ココアには明るい声で話しかけたが、その反対に田中には暗く後ろめたい事があるような声色で声を掛ける。

 しかし、それもその筈である。今さっきまで、自身を殺そうとしていた相手に対して、普通に接する事は無理である。

 

「よろしくね! リゼちゃん!」

「あぁ! よろしく頼む! ココア! それと……田中もな」

「え? あぁと、よろしくお願いします」

 

 まさかこの空気の中で、リゼから言葉を掛けられるとは思っていなかった田中は、一瞬ではあるが不意を付かれた様な反応をしてしまう。 

 

「とりあえず、私はここで失礼する」

 

 2階から聞こえてきていた物音の問題が無いと分かった田中は、留守を任せていた本来の場所に戻るために、一応ではあるがリゼ・ココア・チノに声を掛ける。

 

「あ、あぁ。そうだな……。その、あのだな。突然で、何を言っているのか分からないと思うのだが……。お前に、お願いしたいことがあるのだが……」

 

 女性陣に対して背中を向け、吊っていない方の手である左手で扉のノブを捻ろうとしていた田中に、リゼが何かを伝えたそうな声を出した。

 その声を聴いた田中は、一瞬ドアノブを捻る手を止め、田中に声を掛けたリゼに声を掛ける。

 

「……そんなあられの無い様な下着姿でお願い事ってことは、今夜の『お誘い』って事で問題ないかい?」

「ふぇ!?」

 

 いきなりのセクハラ的な返しをした為、田中の予想に反した人物……ココアが意外にも反応し、顔を赤く染めていた。

 

「た、田中君!? 一体何を!?」

「今夜のお誘いってなんの事ですか?」

 

 チノにとっては聞きなれない単語なのであろうか、夜のお誘いの事を赤くなっているココアに質問する。

 

「おや、まさかアンタが反応するとは思わなんだ……。んで、リゼさん。一体どうします?」

 

 挑発するように、そしてセクハラに対する相手の反応を楽しむかの様な意地の悪い質問を、田中はケラケラと乾いた笑い声を上げながら聞いていた。それはまるで、リゼの恥ずかしがる姿を楽しもうとして居る様に見る事が出来る。

 

「あぁ、そうだな……。私を甘く見るなよ童貞。お前なんか私に掛れば骨抜きだ。今夜は寝られると思うなよ」

「リゼちゃんも!?」

「童貞? お爺ちゃん、童貞って何ですか?」

 

 そんな田中の意図を感じ取ったのだろうか。リゼは口角をにやりと上げると、田中の放った言葉に挑発的な返しをした。

 更に田中の口元がニヤける。中々帰ってくることの無い返し方をされた事による、一種の友人と話す時の様な楽しさを田中は感じていた。

 

「ほぉ……。そこまでの自身が在るならば、今夜はさぞかし激しい夜になるのでしょうな」

「あぁ! 激しすぎて、一生忘れる事の無い夜になるだろうよ」

「激しい夜……? コ、ココアさん……激しい夜ってどういう事なのですか? そ、それに、一生忘れられないって一体何を?」

「もー! 二人とも、その話は禁止!」

 

 あまりにも居た堪れなくなってのであろう。田中とリゼの話を辞めさせる為に、大きな声を出して二人の会話に割って入った。

 田中から始まった悪ふざけは、ココアを巻き込み、そして純粋無垢なチノにまで被害を被っているが、その状況に対してのリゼの反応は嫌悪感を出すわけでもなく、恥ずかしがっている様子も見受けられない。

 そんなリゼをココアは不思議に思ったのだろう。ココアがリゼに質問をする。

 

「なんでリゼちゃんも、そんな話をチノちゃんの前でできるの!?」

「わ、私が聞いては駄目な内容だったのですか?」

 

 チノからしては、田中とリゼが話している事の内容はチンプンカンプンで在るが、ココアからすれば二人が話している会話は教育上とても良いモノとは言えない。

 それに加えて、リゼは女子である。ココア自身も中学生時代には、学友とその様な会話は何度かしたことがあったが、それは同性の場合で在った。異性とその様な会話をすることは考えた事も無ければ、ましては初対面同士の人間が、純粋無垢な年ごろの少女の前で、この様な破廉恥な会話をすることは想像する事が出来ない。

 

「なんでって……。そりゃ、軍人同士ともなれば、下世話な会話が始まってもおかしくはないだろう? ……まぁ、全員が全員とはいかないが、大体の場合はこんな感じだな」

 

 何かおかしな会話をしていたか? とリゼは一瞬不思議におもったが、目の前にいる明るい少女が軍人について余り知っていないだろうと結論づける事で、一人で会話について慌てていた行動について自信を納得させる。

 

「へ? 軍人? リゼちゃんと田中君が?」

「あぁ、と言っても私はまだ正式には軍人ではなく、軍人になる為の教育を受けている最中だ。ほら、この前新しくできた制度の『第一期予備兵力補填計画』って奴だよ」

「なるほど……。って事は田中君も、第一期予備兵力補充計画の人?」

 

 ココアのその言葉に、一瞬ではあったが田中の顔が歪む。苦痛にも、哀れみにも、悲しみにも見える事が出来る表情を、一瞬だけではあったが表情に滲みでていた。

 その一瞬をリゼは見逃さなかった。

 

「あのだなココア。田中は……。田中は現役の軍人だ……。それも実戦を経験している……」

「え?」

 

 恐怖に染まった様な声をココアが上げるが、この反応は今現在のこの国では全く不思議な事ではなく、むしろココアの様な反応が至極全うな反応である。

 軍人……つまり兵士は『人殺しの犯罪者で在る。兵士は多くの命を奪い、奪った命の数を自慢の数字としている』と、ココアが中学校に上がる位の時から学校で教え込まれてきた。

 危険な存在。その危険な存在が、自身の目の前に居る。今さっきまで、リゼの一件でパニックになっていたが、目の前の男はリゼの事を本気で殺そうとしていた……。もし目の前でリゼが撃たれてしまっていたら……。目の前の男は、その奪った命をも自慢の材料として扱うのだろうか? いや、それだけでは無いかもしれない。リゼだけの命では足りず、目の前にいる自分と、そしてチノの命まで奪っていた可能性も無きにしろあらず……。

 

 先ほどまでのココアとは、打って変わった雰囲気を醸し出す。

 

「や、野蛮人……」

「……」

 ココアの言葉に、虫の居所が悪くなる田中。ココアは無意識の内に漏れてしまった言葉を、ココア自身が自分の言葉を国や否、健康そうであった顔色から一瞬にして血の気が引いた顔色に変わった。

 

「ごめんなさい! そう言うつもりじゃ……」

 

 すぐにココアは謝罪の言葉を口にしたが、田中は前触れもなく口元をニヤっとさせると同時に、先ほどまで、リゼと下世話な会話をしていた雰囲気は何処に行ったのだろうか。先ほどまでの雰囲気とはまた違った雰囲気を醸しながら、田中は口を開いた。

 

「野蛮人?……まぁ、その言い方はあながち間違ってはいないな。あぁそうさ。俺は紛れもない野蛮人だ。それだけじゃないぞ! 俺の首元にある階級章……これが見えるか? これが一体何を表していると思う?」

「た……田中君?」

 

 突然と早口で喋りだす田中に、ココアは付いていく事が出来なかった。付いていくことが出来ないというのは、何も話しに付いていく事が出来ないというだけではなかった。そもそもとして、従軍経験の無いココアがこの様な話を聞いた所で理解できない事は、ココア自身も分かりきっていた。ココアが付いていけないと感じた場所とは『目の前にいる男と、自分達との温度差』である。厳密に言ってしまうと、温度差という表現は正しくない。

 何か、乾ききった……固い土の様な。兎にも角にも、目の前に居る男は、普通とはかけ離れた。そんな感覚がした。

 

「あぁ、そうだ! これは如何に多くの人間を殺したかを物語っている物だ。そもそも俺みたいな一兵卒は、戦場で武功を上げなければ、短期間でここまで上がる事は不可能だからな! アンタらの言う『奪った命の数を自慢の数字としている』だったか? そうさ! 一番の自慢さ! 夜になると毎日毎日、語り合ったものさ! どの様に敵を殺したか! 敵がどのような命乞いをしてきたか! 少年兵を何人殺したか! 女性兵士をどんな辱めに合わせたか! どの様な拷問を、苦痛を与えたか! そうだ! そうだよ! 俺達は、いや俺は野蛮人の殺人者だ! 人殺しだ! ……あぁ、そうだよ。俺は罪に問われないだけで、人殺しだ」

 

 一気に捲し立てる様に一通り喋り終わった田中は、先ほどまでとは違い、覇気が一切無くなり、項垂れているかのような印象をココアを初めとするリゼ、チノに与えていた。

 この話の発端を作ってしまったリゼと、心に無い事を言ってしまったココアは二人して目線を下に向け、田中を見ないようにしていた。正確には『見ないように』していた訳ではない。田中の事を見れないと言うのが本当の所であった。

 学校で習う倫理の授業で聞くよりも詳しい内容ではなかったが、一人の兵士の言葉は生々しく、そして悲しみにあふれていた。

 

「すまない……こんな話をするつもりじゃ無かったんだ……。忘れてくれ。……本当に済まない」

 

 そういって田中は、改めて部屋を出る為にドアノブに手をかけ扉を開ける。

 

「た、田中君……」

 

 戸惑った声でココアは田中を呼ぶが、田中は一切の反応を見せずに部屋から出ていく。

 その背中は、悲しみに満ちている……その様な感覚をココア達は感じた。




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ではまた、次回にお会いしましょう。
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