最近、恋に落ちました。   作:母は歯はいい

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バンドストーリー 一章
一話


 華の高校二年生となった。といっても俺の生活に大した変化があるわけでもない。せいぜい変わって下駄箱くらいだった。席はなんの因果か大概窓際一番後ろなのだ。いつもの四人組は一括りにされているのか今年も同じクラスだったのである。

 

 寧ろ俺の生活に初っ端から影響を与えてきたのはこころのイベントによるものが大きいと思う。

 

 急に呼び出されたと思えば、制服が届いたから一緒に写真撮りましょう!とか言う話だったり、千里を笑顔にするならどうすればいいのかしら?と俺に聞いてきたり、挙げ句の果てには、こころの入学式になぜか俺がカメラを持って参加していた。

 

 最後に関しては俺も全く意味がわからない。

 

 

 そんなこんなで春は過ぎようとしていた。まさに破竹の勢いだ。

 

 

 

 

「それで、どうしてここにいるんだ?」

 

「あたしバンドを始めたの! だから、千里にも入って欲しいわ! きっと楽しいもの!」

 

「あー、うん。……は?」

 

 朝8時。開校記念日で自堕落に眠りに落ちていた俺だ。休日の行動が基本的にトロい俺にとってはまだ睡眠時間なんだが、目が覚めたら隣にこころがいた。残念ながら(?)ソファの横にいるだけだ。横になってない。目に入れても痛くない可愛いこころを視界に収めれば俺の頭はそこそこ活動しだすのは最近になって分かったのだが、うん。まぁ……聞きたいことはいくらでもある。

 

 バンドを始めたと言ったか? ……こう言っては悪いがよく仲間が見つかったものだと思う。入学して一ヶ月で『異空間』だったかそういうアダ名をつけられていたはずなんだが。

 バンドと言うからには仲間がある程度いるのだろう。何人揃ったのだろうか?

 

「因みに今何人そのバンドに入っているんだ?」

「あたしと花音よ!」

 

 ズコッと、ソファーから床に落ちた。即答だ。心の準備も間に合わないくらいの即答。

 しかも、中身は二人だけという異常事態。これでバンドと言えるのか? まぁ、ギターボーカルとキーボードなら何とかなる……のだろうか?

 ……全くもって知らんのだが。

 

「因みに花音?とこころはなんの楽器をするんだ?」

「ドラムとボーカルよ! 楽しみだわ!」

 

 ズルッと手が滑った。机に伸ばした手は空を切り、床に衝突。手首が痛かったです。まる。

 小学生並みの感想が頭に浮かぶ中、俺の頭は真剣に現実逃避をしていた。……いやいや、しちゃいかんだろ。

 

「……こころ、どうやってドラムとボーカルだけでバンドするんだ?」

「それはできないわ!」

 

 あ、良かった。そこは分かってるのか。

 

「昨日、花音が言ってたんだけどね、あたしの歌にいろんな音が重なってバンドになるの! だから、今メンバーを探してる最中よ!」

 

「ほう、そうか。とは言えうちの学校は休みなんだが、こころの学校は普通にあるだろ? 行かなくていいのか?」

 

「大丈夫! 走れば余裕よ!」

 

 走らんとならんほどギリギリなのか……。仕方がない、送ろうか。

 

「こころ。荷物持って、送るから」

 

 そう言って俺は急いで服を着替え始める。嬉しいことにこころはすぐにリビングから出て行った。外で待つようだ。バイクのキーを持って俺は家を飛び出した。

 

「二人乗りなんて楽しみね!」

 

「俺の誕生日が四月で良かったな……」

 

 俺はさっさとスクーター型の二輪に跨りキーを回した。

 

 

「レッツゴー!」

 

「……ごー」

 

 

 

 こころを送り間も無く家に帰った。そこからの俺はだらだらとメシを食い、風呂に入り、趣味である機械いじりを始めた。ミツからは羽丘でちょっとしたイベントがあるから行かないかという話だったが、全く興味がなかったので行かなかった。

 それによってできた時間で飛行船のラジコンを改良した水風船を落とせるイタズララジコンが出来上がったのだ。何かに使えるかもしらんので、作品ボックスに入れておく。

 

「……こころはどうなっただろう? ちゃんとメンバー見つけられてるかな?」

 

 

 

 それから三日後のことだった。

 

 ピンポーン!

『千里ぃー! お願いがあるのー!! 開けてー!!』

 

 んー噂をすれば、っていうか唐突だなぁ。

ん?イケメンとふわふわ系。こころの周りにも見知らぬ人が二人いるし、とりあえず開けようか。

 

「どうしたんだ、こころ? 俺に用事ってなんだ?」

 

「薫のポスターを作って欲しいの! いいかしら!」

 

 んー……なんか色々すっ飛ばされてる気がしないでもないなぁ。でもまぁ、やるのは決まってるし。

 

「んー、了解。分かった、作ってみようか」

 

「え? ……え? えぇぇぇぇ……」

 

 そうやって驚いたのは、青みがかった髪の女の子だった。なんとなく小動物的な可愛さがある女の子だ。愛でたくなる。

 

「とりあえず、入るといい。 俺も色々やってるから忙しい」

 

「おじゃましまーす!」

「し、失礼しまーす……」

「ありがとう。失礼するよ」

 

 はてさて。とりあえず三人入れたわけなんだが、……どうしようかなぁ。

 

 

 

「インパクトが欲しいわ!」

「……儚いものがいいね」

「バンドメンバーの募集も兼ねてるので、お、お願いします……」

 

 というような依頼だった。

 うーん。儚くてインパクトがあってっていうのがまず、分からん。ほぼ、対極じゃね? それに、バンドメンバーの募集もかけるとは詰め込むなぁ。

 そんな感じで俺は考えながらWordやillustratorなんかを使って色々作ってみた。

 

 ……なかなか難しいなぁ。

 

 

 

 

 四苦八苦しながらも隣にいる彼女たちの意見を取り入れながら、色々頑張った。結果、二時間ほど色々考えてたら瀬田さんの姿を前面に押し出したポスターになってしまった。

 こころと瀬田さんの二人は満足しているみたいだ。だがな……

 

「……バンドメンバーの募集も兼ねているのにこれでいいのか?」

 

「やっぱり、そう思うよね……」

 

 返事を返してくれたのは花音さんだった。このコメントからいっても彼女が真っ当な価値観を持つというのはわかるだろう。正直、その事実にこの短い間で何度助かったか。

 ……まぁ、俺も半分くらいは価値観がズレているので彼女のおかげでなんとかなったというだけの話だ。このバンドにまともな人がいて良かったと思いました。

 

「それじゃあ、何枚刷る?」

 

「1000枚くらいかしら!」

「150枚くらい、だろうか……」

「ふえぇ! 分かんないよぉ〜……」

 

 おっと、予想よりも多いな。俺はてっきり多くとも50枚くらいなものだと思ってたんだが……。

 ……ポスター用紙どのくらいあったっけ?

 

「……ちょっと探してくる」

 

 俺はそう言ってその場から離れた。

 

 

 

 

 10分後、戻ってくるとこころはソファーでうたた寝を始めていた。まぁ、この時間ならば仕方ないだろう。初めてあった時に連絡先を交換した黒服の人たちに一本入れておく。

 これで俺が狼になることはないな。

 

 そんな間に花音さんと瀬田さんはボリュームは小さめで、部屋の隅で談笑をしていた。

 

「落ち着かないのか? 当たり前か、男の家だものな」

 

「あ、千里くん。見つかった?」

 

「あぁ、もちろん。A4が50枚と少し、それにB5が100枚前後というところだな。プリントしている最中だ」

 

 花音さんはそれを聞くとどうやら安心したよう。瀬田さんは……分からん。だってこの人『儚い』しか言わねぇからな。なんというか自己陶酔している感じ。

 ……何気に男の家で緊張してるのかもしれん。

 

「二人とも、紅茶とコーヒーどちらがいい?」

 

「それなら、紅茶をお願いするよ」

「うぅ、苦くないコーヒーで……」

 

「分かった」

 

 俺がキッチンに行くと、二人は目の前のカウンターテーブルに座った。

 

「千里くんは、ここに一人暮らしなの? こんな大きな家で?」

 

「そうだが?」

 

「……へぇ、そうなんだ。自立してるんだね、すごいなぁ」

 

「アパートを持ってるんだ。名義は俺じゃないが、お金は入ってくるようにしているだけ。それに、良心的な住人しか住まわせてないからな。面倒ごとも少ない」

 

 それからすぐに湯が沸いた。紅茶と甘めのコーヒーを彼女らに手渡す。俺はキッチンでブラックのコーヒーを持ちながら立ったままだ。

 彼女らが飲み終わり、少しの談笑を以って帰っていった。

 ……もちろん近くまで送った。

 

 

 明日はどんな報告が聞けることやら……。

 

 それを少し楽しみにしている俺がいた。

バンドストーリーが終わった後は……

  • イベントストーリーを見たい
  • オリジナルストーリーを見たい
  • 主人公たちの過去編を見たい
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