実際に工業用の機械を触れる機械工作の演習がある。そのため、俺のテンションは普段と違い、僅かながらに上がっている。
残念ながらこんな時でも俺の鉄面皮は健在のようで、仏頂面から変わることはない。
因みに授業で作るよう指示されたものはすでに作り終わった。今日一日を作成時間として使うらしいがとどのつまり暇なのだ。
「今日は何を作るか……それが問題だ」
作業着のポケットに入ったデバイスを弄る。
『No.134 レーザーセンサーver.6.57』
学校で暇な時に作ってきた小型のデバイス。簡単に手に入る素材で知識から実物を作ることに俺は数年前から虜になった。そんな俺の傑作の一つだ。だがまだ不完全で、小型化や汎用性の上昇などまだ課題はいくつもある。よってこの1週間、いろんな作業をしながらもアイデアや改良メモをこの日のために作ってきた。それを今日、改良し完成への道のスタート地点にこぎつけたいのだ。
思考を加速させ、完璧な状態を自分で作り上げる。指先の状態もミリ単位での作業精度に。
作業着のチャックを上げ準備完了。
「さて、やろう」
放課後
改良が済み、新たなアイテム『レーザーセンサー2nd』として生まれ変わった。サイズは自分の親指と人差し指で作ったリングをギリギリ通るくらい。さらに設定さえ弄れば、可視光線にもなる我ながら素晴らしいデバイスを作ってしまった。
もう夕方であり、そろそろ帰る時間だ。面白くて楽しい時間だったが仕方ない、帰ろう。俺はさっさと荷物をまとめ作業室を後にする。
帰り道、お腹が空いたので商店街でコロッケとパンとコーヒーを買って帰ることを決めて行動スタート。と行きたかったのだが、目の前にはこころのバンドの面々、ピンクのクマとそれに群がる子ども、あとはこころと同じ制服の髪の短い女の子がいる。
どうしたのだろうか?
「千里! バンドメンバーが揃ったわ! ベースのはぐみとクマのミッシェルよ!」
「ミッシェル? バンドに……クマ?」
え……。確か、ボーカル、ギター、ドラムが揃ってるからあとはベースとキーボードだっけ? ん? ミッシェルはあの手で楽器弾くの? 弾けないと思うんだけど。
「ふむ。こころの集めたメンバーは何というか、……個性的だな」
うん、すごく個性的だ。だが、正直それがこころらしいとも言える。思考回路が他人と違ってもこころは目的にまっすぐ進む。そんな彼女に俺は憧れた。それで今は手伝うし、その上で隣に立ちたいのだ。
そんなこころが浮かべるのは満面の笑み。瞳がキラキラと輝いて。そこにいたのは俺の大好きなこころだった。
「そうでしょ! これで世界を笑顔にできるわ!」
だから今は俺のできることで彼女を手伝う。これからこころを支えるためだ。
「あぁ。これからは五人で考えて活動するんだろう。また、何かあったらウチに来るといい。コーヒーと紅茶くらいしか出せんがもてなすぞ」
「ありがとう! 千里!」
「! あぁ」
笑顔を見ただけで高揚し、声をかけられただけで発奮し、感謝の言葉一つで動悸が早くなる。
俺はこれが恋であったなら、と心の底から願っている。
地獄の文系科目代表・現代文が終わり、今日の授業はこれで終わり。これからは各々好きなことができる放課後だ。特に予定もないため、街の方に三人とともにどこかへ遊びに行こうかとも思っていたのだが。ミツはバイト、ゲンは家の手伝い、コーは部活があるとそれぞれ帰るらしい。
まぁ仕方がないから、ジャンクショップにでも行くことにした。最近手が早くなって新しいものがポンポン作れるようになってきたのだ。よって材料の消費も早い。面白いモノのイメージを膨らませてみるのも一興だ。
チャリで駅まで走り———だそうとした時だった。聞き慣れた着信音が鳴り、チャリを止める。相手の名前は弦巻こころ。すぐさま緑のアイコンをタップ。
「もしもし、こころ? 俺だ。 千里だ」
『千里! 今からウチにこれるかしら! バンドの会議をするの!』
「分かった。今すぐ行こう」
それを聞いたこころは多分嬉しかったのだろう。楽しげに笑う声が電話の向こうから聞こえてくる。俺の表情筋はどうやらこの程度で緩むらしい。口角が上がっている気がする。
……そうは言っても、多分鉄面皮のままだ。
「……ふぅ。 すまない、遅れた」
「千里! こんにちは! 作戦会議はこっちでするのよ!」
白亜の城。そんな言葉が似合うような巨大な敷地を持つ城がこころの家だ。洋館と呼ぶべきなのかもしれないが、規模だけで言えば紛れもなく城だ。
こころの案内にそのまま従うこと十分弱(家の中で移動に十分かかる辺り流石と言わざるを得ない気がするけどな)立ち止まったのは大きな扉の前。
「ここか?」
「そうよ! さぁ、行きましょ!」
宣言して扉に手をかけるこころ。押される扉。明かりに照らされた室内が見えてくるにつれ俺の
……なんだか意識の高いポエムみたいになった。
まぁ、とどのつまり
「ワクワクが止まらんな!」
新しい景色を見せてくれ!!
作戦会議を見守る中で俺は基本的に書記とか議事録まとめだ。というより、このメンバーだと誰もログを残さなかったんでな。仕方ないと言えば仕方ない。
……ただ、何となく一人だけ妙にクールな子がいる。多分、不満とかそういうものを考えても言わないタイプの。クマがどうたらと言っていたからミッシェル
「どうも、こんにちは。自分は吉野千里だ」
「……はじめまして。私は奥沢美咲っていいます」
……
……
……
お互いに無言。
話を振った方がいいのだろうか。しかし、聞きたいことはお互い同じなんではないかと思わなくもない。……まぁ、考えても仕方がないな。
「美咲。何か言いたいことがあったんだろ?」
「……いきなり名前呼びですか?」
警戒度が3割ほど上昇した気がする。ならば、極めてナチュラルに天然を……装えるか?
「だ、ダメだったか? 下の名前を呼ばれるとお腹が痛くなるとかそういうのか!?」
「そんな人がどこにいるんですか……」
俺の渾身のボケをあっさりと返してきた。少々乗ってくれると思っていたのもありだいぶショックだ。
……こんな時でも顔には出らんがな!
「まぁ、3割ジョークだ。所で美咲はこころのことを変わってるから近づいてみたのか?」
「結局名前呼びだし……。 はぁ、もういいです。 先輩のその質問にはNOって答えておきます。 私はこころとは正直なところ関わらずにいたいんですよ。
それに多分その刺繍は葉叢工業の二年生ですよね。こころの噂はそっちにも広がってるんじゃないですか? 」
もちろん広がっている。異空間だとか散々な言われようだったはずだ。
「私はこころと関わりたくないんですよ。ただ、平穏で平和で何も起こらない平凡な生活を求めてるだけなんです」
理解はできなかった。
もちろん、素直な気持ちだ。安定した生活や安寧の日々に何の面白さがあるのか、と思うのだ。そんな俺だからこそ、こころの思想に惹かれたのかもしれない。
しかし、美咲はなぜそう思うのだろう。少し気になった。
「美咲は平凡な日常に何を欲しているんだ?」
口を突いて出てきた疑問はその程度のものだった。自分が美咲に何かをあげることもすることもできないのに。正直なところ、言ってから後悔していた。
だが、美咲はそんな俺をみて察したのか少しだけ微笑んだ気がした。
「……さあ。何が欲しいんだろうね」
そう言った美咲の瞳はどこか寂しそうだった。
何となくその瞳に覚えがあって、何か言わなければと強迫観念に駆られた。無意識のうちに話していたのは昔話だった。
「俺が小学生の頃のことだ。いとこの家にあったバスケットボールの少年マンガを密かに借りて読んだ。一生懸命に汗をダラダラとかいて練習する姿に憧れた。ライバル達との真剣勝負に心を熱くした。彼らはこの瞬間を後悔しないだろう、とな」
言いたいことがまとまってなくて頭を掻いた。俺を見る美咲の瞳は次の言葉を待っているようで基本的に女性免疫のない俺には少しキツイ。
ヤバイ。冷や汗出てきた。
「つまりな、俺は未来で『ああしてればよかった』『こうしてればよかった』なんてことを言いたくないんだ。自分の選択に責任を持ちたいだけだ」
「へぇー」
……ご高説垂らしたみたいになってないか? 確たる自分持ってる俺かっこいい的なイメージになってないだろうか……。……心配だ。
この日、初対面の俺たちはそれ以上話すことはなかった。
ただ、その後の沈黙はそこまで気持ち悪いものではなかったことを憶えていたいと、そう思った。
遅くなってごめんなさい。それと相変わらず展開遅いというね!
できたら投稿するスタンスでいるのでとりあえず書き続けるのでよろしくお願いします!
バンドストーリーが終わった後は……
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イベントストーリーを見たい
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オリジナルストーリーを見たい
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主人公たちの過去編を見たい
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その他(中身は感想欄に)