最近、恋に落ちました。   作:母は歯はいい

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平成最後の投稿になると思います。
正直ギリギリ間に合わせてゴリ押した感じは否めませんが。

いつもより短いですが、どうぞ


五話

「みんなー! 一緒に歌ってー!!」

 

 

そんな呼びかけを聴きながら、俺は羽丘の屋上から予定通りであることを確認しソフトを起動した。

 

 

1週間前、ハロハピのライブ予告のポスターを学校の掲示板に貼り出した。同時にSNSアカウントも作った。これからは彼女たちがいつもの日常を投稿することになる。

管理はもちろん俺だ。

 

作った要因は2つ。

一つは情報を拡げやすくすることで変な推測や憶測を減らすこと。二つ目は、このバンドを知った人たちがこのアカウントにDMを送れるようにするためだ。

これで宣伝もやり易い上にライブの依頼も簡単に作ることができる。SNS様々だ。これで、ライブの依頼や、ファン対応もある程度はできるようになった。

 

だが、俺は甘くみていたのだ。

瀬田さんという[カリスマ持ち王子様]の影響力を。

 

その証拠が眼下に広がる女子高生の群衆たち。ほとんどが羽丘の制服だが、花女の方にもファンがいたのだろう。見慣れた制服も混じっている。狭くはないコミュニティだが、知名度は未だ低い。にも関わらず結果がこれというのは正直予想外だった。

 

 

 

「さあ、始まった! 一曲目から派手に行こうか!」

 

 

俺はいつのまにか無表情なのにテンションが上がるという変な状態にトランスしていた。もう誰かに見られたらそりゃあもう敬遠される可能性が無限大なレベル。

俺はその状態のままタンッとEnterキーを押した。

 

 

曲を消化していくに連れて観客のボルテージも上がっていく。準備片付けを無視しておよそ20分のライブだ。勢いを止める必要もないし、ハロハピの曲にそんなゆっくりとした曲は入ってない。

次第に思考はこの後のメインプロジェクトについて頭が回り始めた。

それは最後の曲の最後の瞬間にライブ会場周辺から霧を作り、その中に虹を架けるというものだ。空気の流れを計算して弾き出した場所に前もって許可を取り昨日設置した霧雨生成装置に指示を送っている。

 

最後の曲のサビに入った。同時に通信開始。相手はミッシェルだ。

 

「ミッシェル、曲の終わりでみんなの視線を上に向けてくれ」

 

『え! そんなムチャな!』

 

「後は任せた」

 

ほぼ無責任に放置し、トン、トン、トン、と指先でリズムを取る。

彼女らのペースに合わせるには時間よりもリズムでプランを立てる方が上手くいくことは何度か試して見るうちに分かってきた。

 

あと四拍。

 

アイコンをクリックした瞬間、ライブ会場からそこそこ大きな破裂音が鳴った。予定通り指定したタイミングだ。こころたちの上空に虹は架かり、見事なエンドを飾った。

 

 

 

『ありがとー!!』

 

ハロハピのメンバー全員が最後の挨拶を済ませるのを確認しながら、俺は反省の意を込めて記録に残す。キーボードをかたかたと言わせながら、より簡単な作業で複雑なプログラムを作り出せるように改変中だ。

する内容も決まっているため、作業時間は極めて短い。

 

「……やはり、楽しんでもらえるというのはいいものだ」

 

 

「あれ〜、羽丘って共学になったっけ〜?」

 

 

やけに間延びした声だった。優しそうな声音だが、何となくからかわれているような気分になってくる。

……それと、マイペースな感じがビンビンする。反応しないで待っても背後の女の子は言葉を畳み掛ける様子はない。

雰囲気から察して俺は声の主人の方へ振り返った。

 

「いや、ここは共学ではない。だが俺はこの通り来校者、つまりゲストだ。犯罪を起こしにきたわけではない。だから、そのスマホから手を離せ」

 

「えぇ〜、やけに冷静だなぁ。じゃあ、そこで何してるの〜?」

 

俺が弁明している最中もこのショートヘアの女の子はスマホを手放さない。内心汗ダッラダラだが察しの通り、俺の表情に変化はない。

……こういう尋問系は苦手なのだがな!

 

「……ライブの演出だ。俺の仕事でな」

 

「へぇ〜、それじゃあ、ハロハピの?」

 

Yesという意味で首を縦に。女の子はそこまで聞いて、ポケーッとした唇を笑顔に変えた。同時にスマホはポケットに戻した。

 

「へぇ〜、それならモカちゃんのバンドにも演出してくれたりするの?」

 

「さぁ、知らん」

 

「え〜、ツレナイなぁ」

 

もかちゃんとやらはどこか残念そうに肩を落とした。だが、俺にも時間がたくさんあるというわけではない。ただでさえでも、学生とバイトと演出担当とバンドまで掛け持ちしているのだ。四足のわらじなど手で掴んでも用途がない。

この状態に演出の担当を増やすなんてクオリティを維持できない。

 

そういえばこんな所で話している暇はなかった。

さっさと片付けねば。

 

「……おにーさん、これから用事でもあるんですか〜?」

 

「あぁ、会議と練習、それからバイトだ」

 

「……うわぁ、本当に忙しそうですね〜」

 

うへぇと嫌そうな顔をしたもかちゃん。

なかなか表情が豊かで、少々面白い。

 

「そういえば、もかちゃんとやら。この際だ。君の名前を教えてくれないか?」

 

「私ですか〜。 私はー、美少女女子高生 青葉モカで〜す」

 

「吉野千里だ。縁があればこれからもよろしく」

 

「こちらこそ〜」

 

簡素な別れの挨拶を済ませ、そこそこなスピードで階段を降りる。知り合えたことに気分の高揚らしきものもないが、繋がりが増えることに悪いことはないだろう。

 

 

 

 

 

……とはいえ、何故だかこいつとは腐れ縁になる気がする。

 

 

まぁ、気のせいだろう。

俺の勘は外れることが多いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを考えていたからか、俺は隣を通る女の子に気がつかなかった。髪を一房赤く染められた、一度見たら忘れられない女の子を。

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブから日が経ち、今日も今日とて弦巻邸のスタジオでの練習だ。俺もDJセットやアンプ、エフェクターなどの機材を調整しながら四人の会話を聞き流していた。

 

そう、四人である。今日ははぐみが間に合っていないのだ。

 

「ミッシェル、はぐみから遅れる理由を聞いてはいないのか?」

 

「んー、そういうのは無かったと思います。 先輩は? 何か聞いてませんか?」

 

俺はそれに対し首を横に振った。

残念ながら、あまりはぐみとサシで話し合ったことはないのだ。俺はマネージャーではないため、メンバーの踏み込んだ事情とか詳細な情報を持ち合わせてはいない。

俺はハロハピの演出担当だ。メンバーが家族だとすれば俺は親戚。家族で話し合うべきことに親戚連中が口を出すべきではないだろ?

 

「そうですか……。 あとで、もう一回連絡してみますね」

「任せ「ゴメンッ! 遅れちゃった!」……もう良さそうだな」

 

俺たちは慌てて入ってきたはぐみに近寄った。だが、どうにもはぐみの顔は浮かない表情が浮かんでいる。

 

「何かあったのか?」

 

 

心が萎びたような顔をするはぐみ。彼女の口から語られたのは決して笑顔になんぞになれるわけのない重たくて暗い話だった。

 

 

「歩けなくなる、か……」

 

俺は残念ながら治療薬を提供できる医者でもないし装具を作ってリハビリをさせやすくする義肢装具士でもない。

……そんな俺にできることは、無いのではないか?

 

「あかりを笑顔にしましょう! はぐみが笑顔じゃないのにライブハウスなんて行ってられないわ!」

 

眺めていて思った。こころはいつも変わらない。

 

俺たちの理想論がこころの現実論なのではないか?

 

それほどまでの優しさで溢れる傲慢さでワガママさだ。

 

「君はやっぱり太陽だよ」

 

こころへの想いは、今はまだ届かないで欲しいと切に願う。

バンドストーリーが終わった後は……

  • イベントストーリーを見たい
  • オリジナルストーリーを見たい
  • 主人公たちの過去編を見たい
  • その他(中身は感想欄に)
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