放浪騎士   作:赤い月の魔物

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ああ、ですが、私はもう目が見えません。

偉大な奇跡の物語は、少し長いかもしれませんが…

楽しみですね




彼女の語る物語は、あの呪われた旅路の中で

俺の、慰めの一つだった。


第10話 城塞都市

街で馬車を雇い目的の場所へ向かう。

 

その間に俺は、今回行く場所の情報を改めて確認していた。

 

『城塞都市』

 

些細を詳しく挙げると長くなるが、簡単に言うといつからか現れたという北の最果てにある、

死の迷宮(ダンジョン・オブ・ザ・デッド)≫と言われる迷宮に挑む冒険者の為の街だとか。

 

存在自体は知っていたし、時々近場まで来たことはあったが、実際に中に入るのは今回が初めてだ。

受付嬢曰く、迷宮に挑む人ばかりで周辺の依頼をこなす冒険者が減って来てしまい、依頼がたらい回しにされ俺の元に回されたというわけだ。

確かに俺は依頼を選ばないが、わざわざ辺境にいる人に回さんでもいいだろうに…

 

そうこうしてるうちに目的地にたどり着いた。

 

御者に礼を言って馬車を降り、街を見渡す。

難儀な迷宮を相手にする街だからか、さすがに辺境の街ほどの人の賑わいは無かったが、それなりに人々の往来が見える街だ。

 

辺境の街が新米からベテランまでいる冒険者の街ならば、

こちらは、腕の立つ冒険者向けの街、といった印象だ。

 

迷宮に挑むわけではないにしろ、現地の人間が…せめて誰か一人欲しい。

ここの周辺は数回来た程度なので、まだ地理や知識。特に討伐対象の情報などが少ない。辺境と違って手強い敵もいる可能性が高い。こういった事は警戒するにこしたことはないだろう。前回の遺跡探索の例を考えると依頼にイレギュラーがいる可能性も否めない。以前の俺なら一人でどうにかしようとしただろうが、この世界の人達はそこまで弱くはない。自分の先入観を恥じるばかりである。

 

一先ず、冒険者が集まりそうな場所を探すとしよう。

まずは、酒場だ。そこならば冒険者が山ほどいるだろうし、同行者も探しやすい。確か名前は…

 

「『黄金の騎士』亭。だったか…」

 

なんとも大層な名前に苦笑いを浮かべ、俺は目的の場所へ向かった。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

道すがら街の人に場所を聞いて、『黄金の騎士』亭に到着した。

 

案の定というか予想通りに、中は冒険者で溢れていた。

 

辺境の街のギルドとは違い、どの冒険者達も相応に腕の良さそうな者達ばかりだ。まぁあくまで俺の私見なので実際に腕がいいかどうかは分からんのだが、それなりに実力が伴わなければここで談笑などしていられないだろう。

 

一先ず手頃な席についてエールを注文する。

俺にとっては金のかかる水のような物だが酒場で何も飲まないのも怪しまれるだろう。

俺はエールを受け取ると、兜の下から建物内を観察する。

 

人を募っていいと受付嬢は言っていたが、正直そこまで多くの人は必要ない。一人いればある程度の知識は持っているだろうし、依頼の討伐対象は一人でも十分倒せる相手だ。油断しなければ余力を持って倒せるだろう。

 

だが受付嬢曰く、俺はもっと人と関わった方がいいらしい。

 

…これでも以前は、関わりまくっていたのだが。

 

盗人の友人。気のいい鍛冶屋。自らを異端とする魔女…

 

他にも多くの人がいたが、色んな人と関わったものだ。だがそのことを言ったら、「他の冒険者さん」と訂正されてもっと関われとのこと。

 

俺としては関わる必要がないから関わらなかっただけなのだが…

まぁこれから先の事を見越してと考えればいいだろう。

 

多くの冒険者を見渡していると、俺の目の前に誰かが座る。

 

それは、眩いばかりの鎧を来た騎士の男だった。

若いながらも彫りのある顔立ち。

鋭い双眸にがっしりとした体格。

 

およそ俺が見てきた中で、まるで「騎士」という職業の理想系とでもいうべき男だった。

男は俺の方に向き直ると声を掛けてきた。

 

「いきなりすまないな。他とは随分と纏っていた雰囲気が違った物だから声をかけてしまった。卿はここは初めてか?そのような姿の冒険者は初めて見たのでな」

 

フッと笑いながら、いつのまに頼んだのか、エールを片手に口にしながら男は言う。…何故だろう。悪い人間ではないのだろうが、なんというか、この男といると将来的に面倒事に巻き込まれる未来が見えた気がした。

 

「私はここには依頼を受けて来た。噂の迷宮に挑みに来たわけではないが、ここで一息入れたのちに出ようと思ってな」

 

周りを見ながら答える。彼は見たところ今戻って来たのだろうか?

 

「そうか。私はつい先程迷宮から探索を終えて戻ってきたばかりでね。卿はどこから来たのだ?城塞都市の冒険者というわけではなさそうだが…」

 

「西の辺境にある街からだ。ここの冒険者が迷宮にばかり赴くものだから、消化されない依頼が巡り巡って私の所にきて目的地に近い場所にあるここに来た。というわけだ」

 

「成る程。その出で立ちを見るに迷宮に挑む者かと思ったが私の早とちりだったようだ。しかしこの周辺の依頼ということは悪魔の類か?」

 

「そうだ。下級とはいえデーモンはデーモン。低めの等級に回すわけにもいかず、依頼を選ばぬ私に回された、ということさ」

 

両手を広げ、わざとらしくやれやれといったジェスチャーをとる。

 

「…そうか。すまないな。我々が迷宮にばかりに…」

 

男が申し訳なさそうに顔を伏せるが、俺はそれを否定した。

 

「いや、構わんさ。出来る者が出来る事をするのは間違った事じゃないさ。

私は富や名声、それに迷宮とやらにも興味はないからな」

 

「…フッそうか。そう言って貰えると助かる。冒険者が皆、卿のような人物ならばいいのだがな…」

 

そう言って酒場を見渡すように見る男。まぁ確かに冒険者は荒くれ者や態度が悪い奴も多い。そういった奴等が実力をもっているのもわかるのだが…

 

その時、ガタッと椅子が揺れる音が聞こえてそちらに目を向ける。

ガタイのいい、如何にも荒くれ者とでも言うべき風体の男が立ち上がって何かを言っているようだ。

 

「おい。これがこんなゴミクズみたいな物のわけねぇだろ!?ちゃんと鑑定したのかよ?」

 

男が目の前の…冒険者だろうか?

 

薄い金色の髪をした女性だった。

長い髪を後ろで縛って、司祭らしき服装をしている。

近くに置いてある杖を見るに至高神の司祭だろう。特徴的な天秤の飾りが付いている。

そして、何よりも目を閉じているその顔がとても印象的だった。何故閉じてるのか分からなかったがその疑問はすぐに解けた。

次の瞬間に目を開いた彼女の目は、()()()()()()目だった。

 

恐らく応対している人間の方を向いている事から見えてはいるのだろうが、あれでは殆ど見えないはずだ。見えていてもかなり視力は落ちているだろう。

 

冒険者の司祭といった感じだが先の言葉を聞くに、彼女は鑑定士でもあるのだろうか?

 

「すまない。彼女は一体どういった人物なんだ?」

 

「ん?ああ、あの人ね。彼女、至高神の司教(ビショップ)なんだけど、なんでも最初の冒険で失敗してしまったらしくて」

 

「失敗?」

 

「そ。詳しくは分からないけど。それでこの城塞都市に来たはいいものの、失敗の件が噂になっちゃって、今は…」

 

「一党に見捨てられて、一人。というわけか…」

 

近くを通りがかった女給に声を掛け、彼女について尋ねた。

 

成る程な。『失敗』の内容にもよるかもしれないがやらかした人間を連れて行くのは自分達の命にも関わることだ。

噂では冒険者は験を担ぐとも言われているようだし、その事も考えれば、尚更か。司教一人で冒険に出るわけにもいかず、かといって自分の食事代も稼がねばならない。

 

だが、失敗したとはいえ無事に生き残っているのに何故仲間は彼女を置いていったのだろう。

仮にも仲間なら一度の失敗をしたくらいならば庇って一緒にいてやるのが仲間という物ではないのだろうか?

…なんとも薄情な『仲間』もいたものだ。そいつらはさぞ自分達の名誉が大事なのだろう。

 

そんなものは生きていく上でなんの役にも立たんというのに。

 

「またああいった手合いか…喧しいからやめろと言っているに…」

 

騎士の男が呆れたように言うが、俺の目は彼女に釘づけだった。

 

彼女は、まるで……

 

…いや、やめよう。

自分の知り合いに他の人物を重ねるのは失礼にあたる。

ましてや赤の他人なら尚更だ。

 

「…少し、話をしてくる」

 

「卿、どうしたのだ?まさか…」

 

俺はエールを飲み干すと、後ろから聞こえる騎士の男の声を無視して彼女の元へ向かった。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

「錆びた剣に、磨り減った盾だぁ…?ちょろまかしてんじゃねぇのか…?」

 

「いえ、私は…そんなことは決して…」

 

男が睨みながら低い声音で脅すように見下ろす。

私は出た結果そのままを伝えているだけなのに…

 

始めての冒険で『失敗』をしてしまった私は、目を焼かれ心身共に傷を負い、

一党の仲間にも置いていかれてしまった。それでも自分に出来ることをして冒険者の助けになれればと

この城塞都市に来たものの、失敗の件があるためか誰もこんな私を誘う人はいなかった。

 

ならばせめて鑑定をして、少しでも役にたとうとしても、このように脅されたり、

件の失敗の話で笑われる始末。

 

「しっかり鑑定してくれって言ってんだ。そのくらいしかできねんだろ?あんた」

 

「…………」

 

もう一度鑑定をしてみるものの、やはり結果は同じだ。そのことをもう一度告げるが…

 

「はー、つっかえねぇ…そんなんだから失敗すんだろ?確か…」

 

ゴブリン退治だったか。男の発言で全身が強張った。

心身共にぐちゃぐちゃにされた記憶が脳裏に蘇り体が震える。

 

「そんな目をしてるんだったらよ…もっと()()()()したらどうなんだ?」

 

「――――…!!」

 

顎に手を当てられ、耳元にそんな言葉を囁かれる。やっぱり、私は…

目尻に涙が浮かび、顔を伏せて目を閉じる。その時だった。

 

「すまない。少しいいか?」

 

「あ?」

 

もう一つ声が掛けられた。男が反応したことから、別の冒険者の声だ。

 

私が向いた先にいたのは黒い外套を纏った騎士のような…冒険者がいた。

 

 

 

これが「彼」との出会いだった。

 

 

 

~~~

 

 

 

「なんだお前?こんな奴の肩持とうってのか?」

 

いかつい男の声を無視して彼女の方を見据える。目を閉じてはいるがその顔はしっかりと此方を見ていた。

 

「あ…あの…此方の方の鑑定をしているので…今は…その…」

 

弱々しく言った彼女が薄らと目を開ける。その時に俺は確かに見た。いや()()()()()()()

 

彼女の首や顎、そして目尻の辺りに肌の色で誤魔化されてはいるが、傷がついていた。

 

痛々しい傷が至るところについている。恐らくこれが彼女がやらかした『失敗』の傷跡だ。

…かなりの物だ。余程の事があったのだろう。

普通なら始めての冒険でこんな傷を負ったら、心が折れたり、

現実を知ったりでやめることのほうが多いはずだ。…大した物だと思う。

 

「ああ、いや。鑑定の話ではない。実は―」

 

「待てや、おい。すっこんでろよ寺院に叩きこんでやろうか!?」

 

「………」

 

「なんか言えよテメェ…!」

 

男がガンを飛ばしながら睨んでくるが無視する。こういった奴は相手をするだけ無駄だ。

 

「…調子に乗るなよ。舐めた態度とってっとコイツ諸共痛い目を見るぞ」

 

「…あまり、こういう手は好まんのだが」

 

俺は帯刀していた刀を手にかけ、男のほうへ振り向く。瞬間、男が咄嗟に距離を取り、身構えた。

 

「てめぇ…やろうってのか!?」

 

男が腰の剣に手をかけるが無意味だ。奴が剣を抜く前に俺が抜刀するほうが早い。

ならば…

 

「喧しいぞ」

 

声のした方を向くと、そこには先程まで同席していた眩い鎧の騎士の男がいた。

 

「うっ…金剛石の騎士…!なんだ、俺はいきなりきやがったコイツに道理を分からせてやろうと…!」

 

騎士の男は机に置いてある剣を持つと、それを床に放り捨てた。

 

「素人目に見ても分かるものだ。これは特別な物でも何でもない。鑑定をする必要もないだろう」

 

「いや、だからそれを…」

 

「必要はなかろう?。もうこの娘に用は無いはずだ。ならば、静かに酒を呑むのか。引き上げるかだ」

 

「…チッ」

 

騎士の男の言葉を聞いて、いかつい男は舌打ちをして立ち去った。…やれやれ、荒立てずに済んだか…

 

「卿。志は良いがいきなり力で解決しようとするのは感心しないな。周りにも被害が出るところだったぞ?」

 

「…すまない。生憎剣を振ることでしか生きてこなかったのでな。助かった」

 

「…ここでは、ああいった輩は多い。彼奴も以前までは一党を組んでいた。それが今は一人。

卿ならどういうことかわかるだろう?」

 

「…死んだのか」

 

「ああ…迷宮の死に食われたのさ。卿は挑まぬのだろうが、気をつけることだ」

 

そう言って肩に手を置いて、騎士の男は立ち去ろうとする。

その時、不意に彼が俺の腰の辺りを一瞥した。

 

「いい曲刀(サーベル)だな。卿」

 

俺の武器を見て言ったのだろう。彼にとってはサーベルかもしれないが俺に取っては違う。あんな、ひたすらブンブンする武器ではない。こいつは―

 

「違う」

 

俺の言葉に騎士の男が振り返る。俺は彼の目を見て、こう返した。

 

「サーベルではない。…『刀』だ」

 

俺の言葉に彼はフッと笑い、再び背を向ける。

 

「そうか。…いいカタナだな」

 

そう言って今度こそ彼は立ち去る。彼の背を見送り司祭の女性の方へ振り返る。

未だに椅子に座って呆けた表情をした彼女に声をかけた。

 

「騒がしくしてすまなかったな。君に話がある」

 

「…?」

 

まったく、人付き合いとは大変だ。

 

 

 

~~~

 

 

 

 

「え、えっと…あの、本当にわたくしでよろしいんでしょうか…?」

 

「君はアイテムの鑑定が出来て、経験者でもある。私としては是非頼みたいのだが」

 

回りくどくいうのは苦手なので、俺はストレートに誘った。

…のだが肝心の彼女はどうも決めあぐねているようだ。

 

「でも、わたくし初めての冒険で失敗をしてしまって…それで…」

 

「それが?」

 

え、と驚いた表情になった彼女が顔を上げる。

彼女を懸念を俺はバッサリと切り捨てた。失敗がなんだと言うのだか。

生きて戻ってこれさえすれば、勝ちだ。失敗は負けではないのだから。

 

「失敗などするものだろう。斯く言う私も初めての依頼…冒険か。では多くの失敗をやらかしたぞ」

 

「そうなの…ですか?とても…そうには見えないのですが…」

 

彼女が疑いの色を残した声音で恐る恐る聞いてくる。あの時の俺は間抜けもいいところだ。

本当に運が良かったと今でも思う。俺は自分がやらかした例を挙げていった。

 

「暗殺を主体にしたはずなのに、正面戦闘。閉所で長い武器を振って隙を晒す。

その後焦って相手に騒がれるような方法で殺害をして、敵に気づかれる。

他にも挙げだしたらキリがない。ほら、失敗など誰でもするものだろう?」

 

俺の言葉に目を見開いてパチクリさせながら、彼女は呆然としている。

…何かおかしな事を言っただろうか。

 

「あ…すみません。ふふっ…少し楽になりました」

 

「…そうか。君は何故冒険者になったんだ?噂話を聞いた限りでは失敗をして仲間に置いていかれたらしいが、何故ここに?」

 

俺の言葉に彼女は目を閉じながらもまっすぐ俺の顔を見て答えた。

 

「世界を、平和にしたくて」

 

その言葉に否定的な返しをしようとして黙る。俺にキッカケや夢を否定する権利はない。いや誰でもそんな権利はないが、俺には尚の事否定することは出来なかった。一体どうすれば否定できようか。

他者を殺し、奪い、己がために戦った俺に。

 

迷宮(ダンジョン)のお話を聞いて、わたくしが迷宮に行けなくても、迷宮に挑む方々のお手伝いをすることができれば、それが…」

 

「…世界の平和に繋がる、と?」

 

俺の言葉に彼女は小さく頷いた。…平和か。思えばあの呪われた旅も見方によっては、平和のために戦っていたのだろうか。幾度なく繰り返した終わりに終ぞ答えを得ることは出来なかったが。

 

平和のために戦うなど、口で言うのは簡単だが、それを抱いて戦い続けるのはとても辛い道だろう。

終わりのない戦いに身を投じるような物だ。いつかは身も心も磨り減って最後には心が折れる。

一向に訪れない平和に、世界に、絶望して。

 

だが彼女の言葉にそれを何としてでも成し遂げる。そんな覚悟が見えた。

自分が無力だと分かっていながら、出来る事をして、尚足掻き続ける。ならば…それ以上は不要だろう。

 

「なら、尚更頼みたい」

 

俺は手を差し出した。

 

「改めて俺の依頼に付き合って欲しい。一時的な一党ではあるが何かの縁だ。…頼めないだろうか?」

 

手を出して、ゆっくりと言葉を紡いでいく。俺は頼む側だ。

最終的に決めるのは彼女だし、こうした場所で冒険にいかず裏で支えるやり方を良しとするならば俺に止める権利はない。

 

「あ…あの、気をつかってくださらなくても、わたくし笑われたり怒鳴られたりするのには慣れてますし…それに経験と言っても失敗した私では、お力には…」

 

「違う」

 

自傷するように笑いながら顔を伏せる彼女を否定する。謙遜も過ぎれば自虐と同じだ。だからこそ、そこだけはハッキリ言わせてもらおう。

 

「言っただろう?失敗は誰でもするものだ。私はそんなこと気にはしないし、失敗をして生き延びたならそれを糧に成長すればいい。仮に私と来てくれるなら君に危害が加わらぬよう私が全力で守り抜こう。一度の依頼の間だけではあるが、私には君が必要なんだ」

 

俺の言葉に彼女は、胸に手を当てて、

 

「………わかりました」

 

「わたくしでよければ、よろしく、お願いします」

 

しっかりと、決意をした表情で彼女は応えてくれた。

 

「ああ、よろしく頼む」

 

お互いに頭を下げる。

…自分から一党に誘うのがこんなに大変だとは思わなかった。

俺に声をかけて誘ってくれた戦士の男もこんな心境だったのだろうか?

一時的ではあるが、俺の一党が初めて出来た瞬間だった。

 

 

〜〜〜

 

 

こうして彼女の了承を得て一党を組んだ俺達だが、一つ個人的に気になる事があった。

 

「そうだ、先程鑑定をしていると言ったが…」

 

「はい。わたくしはアイテムの鑑定が出来ますが…それが、何か…?」

 

「予め謝ってはおく。疑うわけではないがどんな物なのか知りたくてな。…このアイテムの価値や用途は分かるか?」

 

そう言って俺は『炭松脂』を机に置く。彼女はそれをじっと見つめると、尋ねてくる。

 

「手に取って見てもよろしいですか?」

 

「構わない。好きなだけ見てくれ」

 

炭松脂を手に取りじっと見つめる。難しそうな顔をしたり、驚いたような顔をしたりと表情がコロコロ変わる様は見ていてとても可愛らしい。

 

暫く眺めていると彼女は炭松脂を机に置いて、結果を伝える。

 

「出ました。…これは武器に付与(エンチャント)を施す消耗品です。火の魔力が籠っていることから、武器に火の力を付与するもの。というのがわたくしが見た、結果です。…高価な魔法道具(マジックアイテム)の類ですね」

 

…成る程。正確に用途を答えたあたり鑑定士としての腕は本物だろう。…俺にとっては高価でも何でもないが。

俺は少し興味が出てしまった。炭松脂をしまうと、次の物を取り出す。

 

「成る程、助かる。ではこちらも頼めるか?」

 

そうして俺は、毒紫の花苔玉を置いた。

 

再び彼女が手に取って、見定める。

こちらはそこまで時間はかからなかった。

 

「微弱な毒素が含まれている物ですが…同時に非常に強力な解毒効果がある物ですね。これならば解毒剤が間に合わない人でも救うことが出来る物ですね…あの、これらはどこで…?」

 

道具の出所を聞かれる。さすがに気にはなるか。既存の品よりも効果が高かったり、未知の物を見れば当然か。

 

「昔、旅をしていた場所でな。どうにも捨てきれず持ってしまっていたのさ」

 

そう言って俺はまた、複数の小道具を取り出して彼女に鑑定をしてもらう。これで少なくても彼女が、優れた鑑定技術を持ってることは証明出来るはずだ。誰にするのかは自分でも分からんが。

 

俺がただ知っておきたかっただけかもしれない。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

「こんなものか。すまない、助かった」

 

「いえ、わたくしも見慣れぬ多くの物を見れましたから…」

 

彼女に鑑定代を渡しながら、礼を言う。そろそろネタばらしをするか。

 

「実はな、さっき見せた物の効果だが全部知っていたんだ」

 

「…えっ?」

 

キョトンとした表情で固まった彼女を見て、そのまま続ける。

 

「いや、先の男が言っていたのもあって実際に、鑑定内容が本当の事を言っているのか試してしまったんだ。だから最初に謝っただろう?すまない、と」

 

「あの…でしたら、お代の方は…」

 

彼女は金貨の袋を返そうとするが、俺は手で制止した。

 

「それはそのまま受け取ってくれ。仮にも疑っていた事に変わりはないし、それに鑑定をしてもらったことにも変わりはない。受け取って貰えないと示しがつかないからな」

 

そう言うと彼女は考えるそぶりをし、金貨をしまって、少し頰を緩め微笑んだ。

 

「…分かりました。意地悪なお方ですね。あなたは」

 

「そうでもないさ。私以上に意地の悪い輩は沢山いるとも」

 

具体的には後ろから崖に蹴落そうとしたり、檻のドアに鍵かけて閉じ込めてきたりする奴のことだ。

 

「…さて、そろそろ行くとしよう。依頼の内容は追って話そう。報酬は山分けだ」

 

「あっ、えっと、待っ…」

 

「慌てなくていい。…置いて行ったりはしないさ」

 

あたふたと慌てる彼女を出口で待ち、共に酒場から出る。

 

 

 

 

 

さて、二人ばかりの一党だが、此度はどんな旅路になるだろうか。

 

この残酷な世界で、俺は知らぬ内に新たな世界を旅することに一抹の幸せを感じてもいたのだ。

 

…もう前回のような例は、さすがに勘弁して欲しいが。

 

 

 

 

 

 




冒険まで行けなかった。orz(土下座)
不死の失敗談は彼らにとっては笑い話。
尚四方世界では笑えない模様。

ようやくの原作登場キャラ。しかし主要人物ではないという。
口調とかおかしい所もあるかも。
そこは二次創作ってことで多目に見てくだせぇ。

時系列?細かい事は(ry
でも、どうしても絡ませたかったんじゃ。

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