嬉しいよ。こんな吹き溜まりでも、どうして出会いはあるものだ
お互い、協力できることもあるだろう。その時は、よろしく頼むぜ
~~~
俺は一足先によく組んでいた仲間と別れると受付に報告をしにいった。都の方に依頼の報告自体はしているので、本来は必要ないのだが受けたのはここのギルドなので一応報告はしておこうというわけだ。いつの時代も報連相は大事なのだ。
「今戻った。向こうにも報告は済ませたが一応こっちにも報告はしておく。報告書は向こうで書いてきたからな」
いつも俺の応対をしてくれている黒い髪の受付嬢に報告をする。彼女は一瞬明るい表情を見せて報告書に目を落とすとすぐさま真剣な表情になった。
「おかえりなさい、放浪さん。ご無事で何よりです。…やっぱり行方不明の冒険者さんは亡くなっていましたか…」
「…まぁ行方を眩ませた冒険者は生きている可能性の方が低い。認識票はしっかり回収して向こうのギルドに提出済みだ」
「分かりました。…それにしてもキマイラ、ですか。もう驚きませんけど本当に無茶していませんよね?」
「していない、と思う。…多分」
うん。
「疑問形ってことは無茶したんですね。全くもう…冒険者は体が資本なんですから。無茶をしてはいけないんですよ?と言っても貴方は聞かないんでしょうけど…」
「むぅ…だが無茶をしているつもりはない。無理だと思ったら即座に逃げるし、今回は倒せる相手だったから倒しただけだ。幸い相手は
「もう…わかりました。もう何度も言ったか分かりませんが生きて帰ってくるのは最低条件です。依頼の成功はその次でもいいんですから。今回だって撤退して報告すれば他の冒険者さんが討伐に迎えたはずなんです」
「だがその間にまた被害が出たかもしれないんだ。ならば別に倒してしまっても良かったのだろう?」
「それは…そうなんですけど…」
そこまで言いかけた受付嬢が咄嗟に言葉を止めくすりと笑った。
「どうした?何かおかしなことがあったか?」
「いえ。こうしたやり取りももう慣れたものだなって思っただけです。まぁ生きて帰ってきてくれてますから今日はここまでにしておいてあげます」
「そうしてくれると助かる。…それにしても」
何度かもう慣れたやり取りと繰り返して隣の窓口の方を見る。
「ちょっとこれ書類間違っているわよ!ワームドラゴンは孵化したての竜!ワームは長虫!」
「ひゃいっ!?すみませんっ!!」
向こうでは上司にどやされながらも書類や金貨の入った袋を抱えて職務に励む新人の受付嬢らしき人物が見える。薄めの金色の髪をひとまとめにした三つ編みにして前に垂らした女性が涙目になりながらも書類仕事に立ち向かっていた。
「今年は随分と忙しそうだな。最近だと一番忙しいのではないか?」
「そうですね。彼女も都の研修を終えて出てきたんですけど…さすがにこの状況は想定外だったかしら」
書類仕事に四苦八苦している彼女をしばらく見ているとドサりと山のような書類が三つ編みの受付嬢の机に置かれた。あまりの多さにぷるぷると震え涙目になっていた。
「はぁ…あの様子だとあの子お昼も食べてないわね…どうしたものかしら」
後輩を心配そうに見つめるその顔はもうれっきとしたベテランの受付嬢の風格を出していた。まぁ五年も受付嬢をしていれば当然か。…彼女も変わったものだ。
「丁度いい。あそこからいくつか依頼を持っていくとしよう」
「え?でもあそこの依頼は恐らく貴方の…ってこれも今更でしたね。…行きましょうか」
受付嬢にそう促されて新米受付嬢の元へ向かう。ため息をついて多すぎる書類を前に早くも自分の選んだ道を後悔していそうな顔だ。
「大丈夫?少し手伝いましょうか?」
その声に反応した三つ編みの受付嬢は藁にも縋るような顔で返事をした。
「えと…はいぃ。お願いします…」
「ああ、もうほら泣かないの。貸してみなさい。一緒にやれば早く終わるでしょ。お昼がまだなら軽く食べてきなさい」
「えっでも…わわっ」
書類を分けようとして視線を外した瞬間に書類が崩れて一部の書類が受付の外に出てしまう。外に出た書類を拾うついでに中身を確認する。それはここしばらく受けていなかったゴブリン退治だった。
「む、ゴブリン退治か」
懐かしい依頼を見て俺は思わず呟いてしまった。それを三つ編みの受付嬢がなんとも言えない表情で見ていた。
「ええと…そのゴブリン退治…なんですけど…」
「一時期減ったと思ったがまた増えたか。この様子だと相変わらず冒険者達の中ではゴブリンは新人の仕事という認識のまま、か…」
依頼を見ながらそう呟いた俺を三つ編みの受付嬢は見たことないような物を見る目で見ていた。
「いくつか受けよう。さすがに全てを捌くことは出来ないが幾らかは
「でも…いいんですか?ゴブリン退治は…その…」
「身入りが良くなくて、面白くない依頼…世間一般ではそのようだがな。
銀等級をゴブリン退治に行かせることで緊急の依頼が入ったときの戦力低下を招くから云々などを以前言われたことがあったが知ったことではない。それが人々に害をなすならそれは俺達の敵だ。
「ほら、中にはこういう変わった冒険者さんもいるのよ?しっかりしなさい」
「は、はい。あの、お二人はそのどういった関係で…?」
「もう、五年程前か。私が冒険者になって以来ずっと彼女に担当をしてもらっているというだけだ」
「そんなところね。…はい、放浪さん。ゴブリン退治の依頼を五件。何度も言いますけど、無茶をしないようにっ」
ビッと指を俺の顔の前に突きつける受付嬢。業務中のはずだが、そんな私情丸出しの態度でいいのだろうか…。
「努力はしよう。保証はできん。…まぁ無茶はするかもしれんが生きては帰るさ」
「はい、お気をつけて。複数人で行ったりした場合はちゃんと報告書に書いてくださいね」
「ああ、分かった。…そうだ」
受付から立ち去る前に三つ編みの受付嬢にソウルから食料を取り出す。酒場で捨てるのも勿体無いと思って持ってきた物だが結局食べていなかった物だ。パンの間に野菜や肉を挟んだ物。俗にいう『サンドイッチ』というものだった。
「食事は取っておいたほうがいい。仕事中に腹の虫が鳴るのは恥ずかしいぞ」
そう言って今度こそギルドを後にする。
後にはきょとんとした三つ編みの受付嬢と、やれやれと言った表情の黒い長髪の受付嬢が残されていた。
~~~
「ほら、これで彼がどういった人物か分かったでしょう?『彼』はああいう人なのよ」
「はい。でもあの人は一体…」
三つ編みの受付嬢は先程立ち去った黒い外套の騎士を思い出していた。騎士にしては無骨な削られた兜。隠密性を意識したような色をした革鎧。どちらかというと戦士の方が合っているような見た目だった。
「彼は『辺境の放浪騎士』。聞いたことない?西の街を拠点にしながらあらゆる場所の依頼を受けて飛び回る冒険者で五年前に冒険者になってこのギルドで最も優れた冒険者とされている人。彼が受けた依頼は今のところ必ず成功しているのよ」
まるで自分のことのように嬉しそうに語る先輩。彼とは五年の付き合いになるようだし、親心のような感じ…なのだろうか。
「あの人がそうだったんですか?そんなすごい方だったなんて…」
「まぁ彼にとってはそんな事どうでもいいとか言うでしょうけどね…彼、名誉名声に興味ないって言っていたし…」
「おーい。大丈夫ー?」
そんな会話をしているともう一人の先輩受付嬢から声をかけられた。黒髪の受付嬢が月のように静かに佇む人とすればこちらは太陽のように明るい笑顔が特徴的な受付嬢だった。長い髪を腰のあたりまで揺らしながら笑顔を振りまいている。
「貴方からも彼女に言ってあげて。受付嬢とは何たるかを」
そんな話をしていただろうか。と三つ編みの受付嬢は黒髪の受付嬢の方を見るが彼女は既に書類に手をつけていた。
「なんだそんなことか。義務って言うのは正義の務めって言うんだよ。もっとビシバシやんなくちゃね!」
「というかあんたお昼食べたの?ちゃんと食べなきゃダメだぞー」
「私は食べてきましたよ。食べないと持たないもの」
「私はその…時間がなくって…」
「だったら早く食べちゃいなよ!そこにあるサンドイッチは?あんたのなんでしょ?」
先ほどあの黒い騎士が置いていったそれを見る。そこには柔らかそうなパンに挟まれた野菜や肉が瑞々しいサンドイッチが置いてあった。
「ほら、早く食べる!次の人来ちゃうよ!」
ぐいと無理やり差し出されておずおずと手に取って一口食べる。
(あ、おいしい)
時間がないという理由で食事を取っていなかったが、空腹だったせいか酷く美味しく感じてしまって。二人が笑っているのに気づいてむしゃむしゃとそれを口に押し込んだ。
「はい、食べ終わったら笑顔笑顔!暗い顔してたらいけないぞー?」
冒険者さんを見送る人が暗い顔をしてちゃダメですよね。そう言いきかせて鏡を見て笑顔を作る。だがどうにも上手く笑顔が顔に貼り付かない。そんな感じに四苦八苦しているとぬっと受付の前に一人の少年が立っていた。
「え、と…?」
少年はしばらく無言で立っていたがやがて口を開いた。
「良いのか?」
何に対しての『良いのか』なのだろうか。どうにも要領の得ない会話に思わず隣の席を見てしまう。片方は書類仕事に、片方は依頼の対応をしていた。
―いつまでも甘えるわけには行きませんね。
むんっと気合を入れて彼女はどうにか笑みを浮かべた。
「冒険者ギルドへようこそ!どういったご用件でしょうか!」
~~~
ギルドを出た俺は鍛冶屋に来ている。今日はある物を取りに来たのだ。
それは五年前に回収した螺旋の剣だ。当時は折れていたがようやく直すことが出来たらしい。あれがあれば拠点に使える場所を増やすことができる。都のほうにでも突き刺せば移動時間をぐっと減らせることだろう。
鍛冶屋の扉を開け、店主が俺を視界に入れると視線で少し待ってろと促された。見ると先客らしき冒険者がいた。見る限り新米だろうか?まだ武器を帯刀していないあたり武器を買いに来たのだろう。仕方ない。用が終わるまで武具を冷やかし―
「えーっと。さすがに伝説の剣とかは扱ってない、よね?」
…何を言ってるんだこの新人は。仮にあったとしても扱いきれるわけないだろうに。いやそもそも金が足りるわけないか。夢見がちな新人はいつものことだがまさか鍛冶屋にそんな事をいう奴がいるとは思ってもいなかった。店主が眉間を揉みほぐしてため息を吐いていた。吐きたくもなるか…
「んなもんが店に置いてあるわけなかろうが」
「だよね。じゃあいわくつきの魔剣とか…」
「店で売るもんじゃねぇ。第一そういった魔法の武具は軽い魔法の付与だけで桁が違う」
…そういえば俺が持っている武具の一部を見せたら店主はどんな反応をするんだろうか。
金に困ったことがなかったので何かを売りに出したのはこの街に来たときだけだったが緊急で金が入用になったら一部の余った武具の売却も視野にいれてみようか?
「…とにかく予算を言え。予算を。どれくらいあるのか分からねぇと武具は売れねぇぞ」
呆れながらも店主は本題に戻した。なんだかんだ追い出さずに相手をするのは商売だからか。頑固なようでなんだかんだ面倒見の良い店主だと思う。
「お、おう。じゃあえっと、これで買える一番強い武器が欲しいな」
懐から金貨の入った袋を取り出してジャラジャラと机に予算を出す若い戦士。…何を持って一番強いと表現するのだろうか。武器の種類によっては長所も短所もあるし、何より武器によって戦い方も変わってくる。質のいい武器、とかならまだ分かるのだが…
「盾や兜はいらんのか?」「兜はいいよ。顔が見えなくなるし」
そう言って渡された剣を持って顔を綻ばせる若い戦士。しかし顔が見えなくなるからという理由で防具を買わない奴が本当にいるとは…。確かに都とかでは兜を被っていない冒険者は多かったが、それも全てが歴戦の強者であったが故だ。なりたてのペーペーならば予算はまず度外視して出来得る限りの防具は身につけておくべきだろう。
頭は特に大事だ。飛び道具による
「悪いことは言わねぇそんなら盾くらいは持っていけ」
「使ったことないんだけど…」
「それでもだ」
流石に盾まで捨てるほどこの新人は愚かではない…はず…
緊急時には殴打が出来、攻撃を弾くことも出来る。小盾でもあるのとないのとでは大違いだ。かの地で両手で特大の武器を構える連中ですら小盾を保険として装備していたくらいなのだ。何かあったときに咄嗟に身を守る物があるのとないのとでは大違いだ。完全に持たないのはそれすら捨てて戦える技量を持った変態だろう。俺には真似できん。
若い戦士が盾を見る際に俺をチラリと視界にいれたがすぐに盾の方へと視線を戻した。俺も用を済ませてしまおうか。
「頼んだ物が出来たと聞いたのだが」
「ああ。おめぇがよこした…楔石だったか?あれを使ってようやくだ。ったく一本直すのに五年もかかっちまった」
「すまない。私がもっと早く気づいていればこんなに時間を取らせることはなかったのだが…」
「まぁ構うめぇよ。いい経験にはなったがな。…だがこいつは何に使うんだ。武器としての用途に耐えうるものじゃねぇってのは分かるが」
「儀礼用の剣、と言ったところだ。…ただ私にはとても大事な物、だからな」
「そうかい。まぁ金は貰ってるから何も言わねぇけどよ」
ほれ、と言われて出された螺旋の剣を受け取る。…ようやくだ。これでやっと二本目だ。これで活動圏を増やすことができるというもの。
俺はそれをソウルにしまい出ていこうとすると、新たに別の冒険者が入ってきた。
如何にも田舎から飛び出し長旅をした…悪く言えば無頼漢のような風体の青年だ。
「装備が欲しい」
青年はぶっきらぼうに一言だけそう告げた。それに対し店主は「そりゃそうだ」とごく当たり前に返す。盾を見ていた青年も彼のことを興味津々に見ていた。
「…金はあんのか?」
「ある」
間髪いれずに答えて青年は金貨の入った袋をカウンターへと放った。じゃらりと金貨が中から零れ、崩れる。店主が一枚噛んで本物かどうかを確かめているが反応を見る限り本物のようだ。
「おめぇお袋さんか姉の財布でもちょろまかして来たのか?」
「………そうだ」
一瞬間を開けて青年は答えた。俺はその答えに僅かに怒りが篭っているのを感じた。死んだ家族の残した物だったりするのだろうか?店主も不満げに鼻を鳴らしているが客である以上無碍には出来ないのだろう。
「で、物は何が欲しいんだ」
「堅い革の鎧と、円い盾」
店主が「ほう」と声を漏らすが、俺も兜の下で同じ言葉を呟いた。先ほどの青年と違いこの青年は明確に自分が欲しい物を示した。まるでもう自分が倒しに行くべき物を決めているかのようだ。
「武器はどうすんだ」
「剣。…片手剣だ」
「盾持ちならそうだわな。なら…」
「これだ」と言ってカウンターの後ろに陳列されている内の一本を取り出した。青年は受け取ると躊躇いなく腰に帯刀する。
「(傾いたな…まぁ新人なら当たり前、か)」
「鎧は後ろの棚、盾はそっちの壁に引っ掛けてある」
「わかった」
ずかずかと歩いていき鎧と盾をぐいと引き剥がす。まるで賊が略奪をするような動作だ。
そこへ先ほどの若い戦士の青年が声をかけた。
「な、なぁあんたも今日冒険者の登録をしたのか?」
鎧を身につけつつ、その言葉に青年はこくりと頷いた。若い戦士は意気揚々と胸を張り、続ける。
「実は俺もそうなんだ。良かったら一緒に冒険に行かないか!?」
「冒険…ゴブリンか?」
浮ついた声の若い戦士とは対照的な現実を見ているような低い声音で返す青年。
「いいや、俺の理想はゴブリンなんかよりもうちょっと高いんだ!こう未知の遺跡とか…」
「ゴブリンだ」
「は?」
「俺はゴブリンを退治しに行く」
ゴブリンか…いきなりゴブリン退治に行く新人は大抵帰らぬ人になるのだが大丈夫だろうか。だが彼はゴブリンを侮っているようには見えない。むしろその声音からは
鎧を装備し、盾を持った青年は剣を抜いて軽く素振りをするとカウンターへ再び向かった。
「買った。残りの金貨はいくつだ」
「毎度。…こんなもんだの」
残る金貨は僅か数枚になり、若い戦士が何か言ったのか。店主はギロりと睨んだ。
その後若者は水薬を買って残る一枚の金貨で兜を買った。兜と聞いて若い戦士のほうは店を出て行った。…結局盾も買わないのか…
俺はというとさっきからこの新人の青年が妙に気になっていた。まるで過去の自分を見ているかのようで…気づけば店から出ていこうとする彼に声をかけていた。
「貴公。少しいいか?」
「なんだ」
相も変わらずぶっきらぼうに彼は返す。その態度にふっと思わず笑みが溢れてしまった。
「話が先ほどから耳に入っていたが…ゴブリン退治に行くんだろう?」
「そうだ。俺はあいつらを退治しに行く」
「そうか。…なら武器はもう少し短い方がいいな。
野戦なら話は別だがな、と付け加えると青年は自身の武器を見つめて、依頼書を取り出した。
俺が見せてみろ、と言うと青年は無言でそれを渡してきた。…やはり巣穴か。
「巣穴ならこういった武器の方がいいな。長いのがダメとは言わん。大物相手にはそちらのほうがいいだろうしな」
俺はそういうと
青年はその二つをまじまじと見つめると口を開いた。
「…いいのか?」
「構わんよ。先達からの餞別だ。どちらか好きな方を選ぶといい。ショートソードは単純に扱いやすさに優れるし、ブロードソードの方は少し重みが増すが威力が高い」
青年はしばし悩んだ末にブロードソードを手にとった。鞘から抜いて軽く振るともう片方の腰に帯刀した。
「すまない。必ず返す」
「返す必要はない。新人にいきなり金をせびっていては先達の名が廃る。あとは…」
俺はそのまま気になっていた事を新人に告げた。
「その兜の角だな。まさか貴公、その角で牛のように頭突きをしてゴブリンを倒すわけではあるまい?」
「…ああ」
「なら切っておけ。ゴブリン共に掴まれたりして動きが止まれば、そこで袋叩きにされてしまうぞ」
「そうか。…まだ何かあるか?」
兜を店主に渡して角を落として貰うついでに俺に聞いてくる青年。あとは…
「その背嚢だが…失礼」
軽く彼の背負う背嚢に触れて材質を確かめる。…薄いな。
「水薬はここにいれてあるんだな?」
「ああ」
「背嚢でこれだけ薄いと壁や床に背中からぶつかったりすればすぐに割れてしまうぞ」
そう言って俺は厚目の布と紐を渡した。
「これは?」
どう使えばいいのか分からない青年に説明する。
「それを水薬の瓶に巻けば少しはマシになる。いい
「そうか」
「ああ。…あとはこれを持っていけ」
そう言っていくつかの道具を彼に渡す。…思わず苦笑いが溢れてしまう。何故こんなに肩入れしてるのだか…
彼に渡したのは『火炎壺』『毒紫の花苔玉』『花付きの緑花草』だ。
「…これは?」
「ゴブリン退治に役立つであろう物だ。奴等は良く燃える。その壺を群がっているところに投げ込んでやれ」
「………」
その手に乗っている素焼きの壺をじーっと見る青年。俺は構わず続けた。
「その毒々しい色をした苔は解毒の作用がある。解毒薬よりも効き目が強く、効果が出るのも早い。並の解毒薬では手遅れの状態でも、それならば助かるだろう。奴等の刃物には気をつけろ。雑ではあるが強力な毒を塗っている場合があるからな」
「わかった」
「あとその緑の草は簡単に言えば
「ああ」
そうしたやり取りを繰り返していると後ろからごとりとカウンターに店主が兜を置いていた。
側面の角が綺麗になくなり、普通の騎士の兜に近い見た目になっている。頭頂部に施されている赤い房飾りがそれを助長していた。
「ほらよ、兜だ。ご要望通りにしておいたぞ」
「感謝する。…助かった」
「それなりに形にはなったじゃないか。…貴公、死ぬなよ」
そう言って鍛冶屋を出て行った青年を見送る。果たして彼は無事に生き残れるだろうか?
「珍しいな? 『放浪の騎士』が新人にあそこまで自分から肩入れするたぁな」
「…どうにも彼を見ていると昔の自分を思い出したのさ。まるで死に急ぐような目が昔の私にそっくりだった」
「まぁ冒険者ってのはどいつもこいつも訳ありか。おめぇも含めて」
「訳なしの冒険者の方が少ないだろうよ。私もそろそろ行く。また見つけたら持ってくるかもしれん」
「…ちっ、分かった。ただ今度は材料も持って来い。あれがねぇと直せねぇぞ」
「分かっているさ」
そう言ってギルドへ向かい仲間たちの元へ。斥候は嫌な顔をするかもしれないが、気軽にできる依頼としては十分だろう。何だかの道も一歩からだ。
俺も『冒険』に出るとしようか。
この時は知る由もなかったが、彼こそが後に「
分割した物を時間差で。
こっからちょいちょい原作と混じって行くのでそこまで投稿ペースは落ちない…はず
ただ作者が結構あーでもないこーでもないと悩むタイプでもあるので…ね
気長に待っていてくだせぇ。
毎度の事ですが感想・ご指摘・誤字報告。
ありがとうございますm(_ _)m